一年間で数えきれないほど多くの時計を扱う我々でも年に数回、あるいは数年に一回にしか出会えないような逸品があります。
今日は私のテンションを最高潮にまで高めた「ロレックス エクスプローラー1016 トロピカルブラウン」をご紹介したいと思います。
ロレックス エクスプローラーI Cal.1560
目次
ロレックス エクスプローラー 1016 トロピカルブラウンとは
トロピカルダイヤル。
初めて耳にする方は、色鮮やかなダイヤルを想像するかもしれませんが、
「(南国の)強い日差しにさらされ続けた結果、紫外線によりダイヤルが褪色して元々の色とは違う色味になったもの」
概ねこんな解釈の時計です。
*パテックフィリップの場合は、トロピカルというと
「変色しないようにポーセリンで作られた文字盤を使用した時計」
をこう呼ぶので、ニュアンスも意味も変わってくるので注意が必要です。
今回ご紹介するエクスプローラー1016の場合、元々は黒だった文字盤が長い年月の経年によりここまで茶色く変化したものです。
文字で表してしまえばそれだけのことですが、この希少性をご理解いただけるとこの時計の本当の価値が見えてくるのではないかと思います。
1)ミラーダイヤル
まず最初にお伝えしておきたいのは、そもそもこの時計はミラーダイヤルであるということです。それだけでも充分に希少性と価値の高いものだということはある程度ヴィンテージ好きな方ならご理解いただけるかと思います。
今の相場だとおよそ200万~250万円前後、通常のマットダイヤルは120万~150万円前後です。
サブマリーナ1680や、シードゥエラー1665、GMTマスター1675などのマットダイヤルでもブラウンチェンジしたトロピカルダイヤルは存在しますが、マットダイヤルはROLEXのロゴや王冠マークが白文字です。ここはダイヤルが焼けても変色しません。
しかしミラーダイヤルの場合は、王冠マークやロゴが元々ゴールドレターになっています。写真を見ていただいてもお分かりいただけると思いますが、ブラウン文字盤とゴールドレターの相性は最高です。
ブラウンチェンジした1016でマットダイヤルのものは私は見たことがありませんが、一応まず大前提としてミラーダイヤルであるということを再度お伝えしておきます。
2)ブラウンチェンジ
上記のようにミラーダイヤルが経年により変化したわけですが、必ずしも全てのミラーダイヤルがこのような褪色をするとは限りません。
と言うよりも茶色く褪色するものはごく一部で、ほとんどのミラーダイヤルは経年変化が起こったとしても、ただひび割れたり艶の塗装が剥がれたりするだけです。それも味わいとしては素晴らしいのですが、それはトロピカルとは言いません。
その中において変色するトロピカルダイヤルは本当に希少なのですが(体感的には1016のミラーダイヤルを30本集めて1本あるかどうか)、数少ない変色ダイヤルでもきれいに焼けているとは限りません。
今までいくつかトロピカルブラウンダイヤルの1016を見てきましたが、焼けムラが出やすいモデルなのか、片焼けしたもの(ダイヤルの半面や一部のみがブラウンに変色したもの)がほとんどでした。
それでもごく稀に全面均一に焼けたものと遭遇することがありますが、ブラウンというよりは煤けたグレーに変色したような個体だったり、夜光が真っ黒だったりと、なかなかきれいな全面ブラウンに変色した1016とは出会えないのが現実です。
つまり今回の個体は
1016→ミラーダイヤル→トロピカルブラウンチェンジ→ムラなく焼けているか→きれいなブラウンか
これだけの淘汰を経て、ようやく適った条件だということです。
私自身、これだけきれいなトロピカルダイヤルの1016を見るのは数年ぶりです。
同じくらい良い雰囲気のトロピカルダイヤルを当時まだ100万円位の金額で販売していたので、おそらく8~10年位前の話なのではないかと思います。
最後に
長々と書きましたがこの時計の希少さと価値は、言葉など不要で時計を見ていただければご納得いただけるはず。
本来私なんぞが語ることなど何もなく
「黙っていても時計が物語ってくれる」
そんなオーラを纏った時計です。
搭載キャリバーは1560。
裏蓋刻印は1965年。
鳥足バックルのリベットブレス(FF58/ブレス7206/72年)です。
ブレスに使用感はありますが、年式を考慮したら程度は上々かと思います。
ダレや遊びはありますがクッタクタという感じではなく、クタッという感じです。(これで伝わるでしょうか。笑)
過去に1016のミラーを所有し、それが少し片焼けていたことがどうしても気になって手放してしまった経験を持つ私。今回入荷した個体を見てテンションがうなぎ登りになってしまいブログまで書いてしまったことは、いた仕方ないことかと思います。
それくらい貴重で良い個体です。
ということの熱量さえ伝わっていただければ、それで本望でございます。