「いま買わなかったら次は出会えないかも…」 これはアンティーク時計を買う時に常に頭を悩ませる問題です。 希少性・状態・値段など様々な要素がありますが、相場は人気や情勢でも変化します。 そこで現在入手困難なアンティークロレックスをランキング形式でまとめてみました。
アンティーク時計の購入を迷っているあなたの背中を押すきっかけになれば幸いです。
目次
第10位 ロレックス エクスプローラーⅡ Ref.1655
1971年に発表されたロレックス エクスプローラーIIの初代モデル。
1655は文字盤が何度かマイナーチェンジされており、大きく3種類に分かれます。
最初期の「マークI」ダイヤルは、王冠マークやロゴの表記が小さく、秒針にドットが無いストレート針でした。1972年頃に「マークII」ダイヤルが登場。夜光塗料が塗布された秒針に変更され、ダイヤルの表記も大きくなります。そして1974年頃に「マークIII 」が登場。ダイヤルのクロノメーター表記がセンタースプリットになっています。
特に「マークI」ダイヤルの価値が高いなど、価格を決定する要素が多面的なモデルです。
第9位 ロレックス シードゥエラー Ref.1665
ロレックス シードゥエラーの初代モデル。
深海調査会社͡コメックス社と共同開発で作られた、プロユースの本格ダイバーウォッチ。
パッと見の外見はサブマリーナと変わりませんが、ケースの厚み・デイト表記付きなのにサイクロップレンズがない・ケースサイドにエスケープバブルがあることなどから、違うモデルだと認識できます。
このモデルも上記のRef.1655同様、一般向けではなくプロユースとして生産されていたので、流通本数が少なく希少価値から値段があがっていきました。
昔は赤シードも普通のシードも値段が変わらない時代もありましたが、今は赤シードの中でもダイヤルの種類によっても値段が大きく変わってきます。
例えば、コチラの赤シード。シリアル番号が“40xxxxx”となっていることから1974年頃の製造と思われます。ダイアルは赤シードの最終形のマーク4となっており、状態のよい個体ならば350万円前後が相場になります。
さらにレアなマーク1、マーク2は500万前後で取引されることも多く、赤シードがどれほど貴重なのかお分かりいただけると思います。
関連記事:ロレックス シードゥエラー赤シード文字盤(マーク1,2,3,4)の違い
第8位 ロレックス シードゥエラー Ref.16660
ロレックス シードゥエラーの2代目モデル。
プラスチック風防からサファイヤクリスタルに変化したことと、エスケープバブルの大型化により、防水性が2倍の1220mまで進化しました。
生産時期によって文字盤インデックスにフチ有り・フチ無しの違いあります。フチ有りの方が古く、生産時期が短いので希少です。
左:フチ有り 右:フチなし
Ref.16660はこれまであまり注目されていませんでしたが、ここに来て値段が上がり始めています。
第7位 ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6265
ロレックス デイトナ3代目のモデルであり、手巻き式デイトナとしての最終型番でもあります。
プッシャーがスクリューロック式に進化し、ダイヤルにもオイスター表記が追加され、いかにもロレックスらしい外観になりました。
アンティーク業界でも言わずと知れた人気モデルで、おそらく「アンティークロレックス=高い時計」という認識を世間に広めた最右翼モデルなのではないかと思います。
これまた生産された時期によって「DAYTONA」表記が有ったり無かったり、プッシャーの位置や形が違ったりと、同じRef.6265の中でも細かく分類されています。
左;DAYTONA表記無し 右:DAYTONA表記あり
昔のカタログを初めて見た時に、Ref.1601デイトジャストよりも定価が安かったことに驚きを覚えてつつ、時代が変わると価値観も変わるものだと思わされる一本です。
第6位 ロレックス ミルガウス Ref.1019
ロレックス ミルガウスの2代目モデル。
ロレックスの中で唯一の帯磁モデルでしたが、医者や科学技術者向けという特殊な用途だったため、流通数が極端に少ないモデルです。
それでも針の形状やケースの厚み、「ROLEX」ロゴが大きいことなど、今となっては特徴的ではありますが、当時はそのような認識が広まらなかったのでしょう。
余談ですが、稲妻針を搭載した初代ミルガウスのRef.6541は、私が学生の時に80万円位で、社会人になったらがんばってこれを買おうと決めていたのですが、いざ社会人になった時ですでに200万円オーバー。幻と評さるようになった今ではどう逆立ちしても買えない時計になってしまいました。
あと数年早く産まれていれば・・・ねえ!お父さん!お母さん!などと、どうにもならないことを叫びたくなってしまう昨今です。
アンティークロレックスドリームの象徴とも言える時計ですね。
関連記事:ロレックス ミルガウスの耐磁性ってどれくらい凄いの?
第5位 ロレックス エクスプローラーⅡ Ref.16550
ロレックス エクスプローラーIIの2代目モデル。
初代と比べて外観面で大きく変化しました。
こちらのRef.16550は生産期間が僅か4~5年と短期間のため、本数が少なく希少性が高いモデルとなっております。
アイボリー文字盤やセンタースプリットなど、1970年代以前のヴィンテージから現行モデルへ移行する過程で試行錯誤を繰り返した、変わり種が多い時期です。
個体によって色味が異なるRef.16550
左:通常印字 右:センタースプリット
関連記事:短命に終わったからこそレア度が高い。今注目のエクスプローラーII Ref.16550の特徴
第4位 ロレックス プレデイトナ Ref.6238
デイトナになる直前のクロノグラフで、プレデイトナと呼ばれています。
良くも悪くもロレックスっぽくない外観のためか、このモデル以降のデイトナよりも希少価値は高いはずなのに、価格はむしろ安いという悲しい時計です。
アンティークの相場は珍しいだけではなく、認知度が高くて人気もあることが重要な要素なんだということを教えてくれます。
しかし「あえてこれを選んだ感」はとても表現できるので、そういう天邪鬼的な要素が強い方にはおすすめしたい一本です。
ちなみに私個人はデイトナよりもこっちの方が好きだったりします・・・
ムーブメントには今となっては貴重となったバルジュー社のCal.72Bが搭載されています。1959年頃製造されたムーブメントでありながらも、今尚現役で動いていることにロマンを感じざるをえません。
第3位 ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6263
Ref.6265と同様に、デイトナ3代目のモデルであり、手巻き式デイトナとしての最終型番です。
Ref.6265との違いはベゼルの素材とデザインで、こちらのRef.6263はプラスチックベゼルです。
これもまた面白いもので一時期は「金属ベゼルが高級感があって良い。プラスチックベゼルなんておもちゃみたいで安っぽい」なんていう風潮もありましたが、今ではすっかり立場が逆転しました。
世間では「プラスチックベゼルこそ、アンティークらしくてかっこいい」という雰囲気になっているため、Ref.6263の方が高値ですし、すぐに売れてしまいます。
したがって探すのがより困難、というモデルです。
Ref.6263はスクリューロック式のプッシャーが採用されたことにより防水性能は50mに向上し、オイスターケースの称号を得た歴史も持ち合わせます。
現代においてその防水性能が残っている可能性は低いですが、確実に進化を遂げていたことが伺えます。
ムーブメントにはバルジュー社製のクロノグラフムーブメントCal.72をベースにロレックスが改良を加えたCal.727を搭載。裏蓋で見えない部分ではありますが、現行モデルにはない魅力が詰まっています。
第2位 ロレックス コスモグラフ デイトナ Ref.6240
謎多きデイトナ。
デイトナ2代目と3代目の違いはプッシャーがねじ込み式か否か。
しかしながらRef.6240は3代目のRef.6263とRef.6265の発売前に、すでにねじ込み式プッシャーを装備しており、プロトタイプではないかと言われています。
ダイヤルも「ROLEX」の表記しかないソロ、「OYSTER」表記が入っていないものと、入っているものなど、ダイヤルのパターンがいくつか存在します。
いずれにせよ、この型番に巡り合えること自体が、貴重な体験であることは間違いありません。
それくらいレアなモデルです。
また、Ref.6240の最大のポイントはやはりブラウンダイヤルでしょう。インダイヤルがブラウンに焼けることで他のデイトナとは一線を画す独特な美しさを放ちます。
まさにRef.6240はヴィンテージロレックスファン垂涎のレアモデル。時計好きであるならば一度は手に取ってみたいものです。
第1位 ロレックス GMTマスターⅡ Ref.16760
ロレックス GMTマスターII 赤黒ベゼル Ref.16760
ロレックス GMTマスターIIの初代モデル。
このモデルが一位であることに「なんで!?」「まさか!!」という声が多々聞こえてきそうですが。笑
しかし希少性と急激な人気の高まり方を考えると、絶滅危惧種という点ではあながち外していないと思います。
Ref.16550も然りですが、搭載しているムーブメントはCal.3075です。
ロレックスは1989年頃から順次、デイト付きキャリバーをダブルブリッジ式の3100番台に変更しました。
1988年頃にはCal.3075などのムーブメントは生産が終了され、大幅なモデルチェンジの準備をしていたと考えられます。
したがって生産開始自体が1980年台半ばからだったRef.16550とRef.16760は生産数が少ないのは当然と言えます。
加えてこの時期、Ref.16750 GMTマスターIが併売されており、自社内の競合商品となるわけですから、自ずとエクスプローラーIIよりもさらに生産数が絞られていることが予想できます。
さらに昨今のGMTブームが加わり、おそらく今最も勢いのある絶滅危惧種はこのRef.16760ではないかと思っているわけです。
「別に珍しくないはずなのに、確かに探してみると実物が見つからない」
そんな時計になっていく気がしてならない今日この頃です。
関連記事:ロレックス GMTマスターII ファットレディの魅力を語る
最後に
今回調べてみて、5桁シリアルのモデルもランキングに混ざってきたのが、個人的に印象的でした。 ちょっと前までは「5桁なんて型落ちの中古でしょ!?」的な雰囲気だったのが、時代の経過と共にいまや立派なヴィンテージの時計の仲間入り。 4桁シリアルは予備知識が必要のなうえに相場も軒並み高くなってしまい、ちょっと遠のいてしまった人がいるのも事実。 買いやすい5桁シリアルの中で、ちょっとマニアックなこのあたりのモデルに注目が集まるのは、必然のことなのかもしれません。
*筆者独自の調査によるもので、少なからず主観も入っていますので、悪しからずご了承ください。
この記事を監修してくれた時計博士
田所 孝允(たどころ たかまさ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 営業物流部長/p>
1979年生まれ 神奈川県出身
ヒコみづのジュエリーカレッジ ウォッチメーカーコース卒業後、かねてより興味のあったアンティークウォッチの世界へ進む。 接客販売や広報などを経験した後に店長を務める。GINZA RASIN入社後は仕入れ・買取・商品管理などの業務に従事する。 未だにアンティークウォッチの査定が来るとついついときめいてしまうのは、アンティーク好きの性分か。
時計業界歴18年。