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WEBマガジン, ロレックス, 池田裕之, 腕時計選びのためのお勧め記事

価格推移から見るロレックス ミルガウスの価値と人気【2023】

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ロレックスの数あるコレクションの中でも、通好みなミルガウス。

フランス語で「1,000ガウス」を意味する名前の通り、耐磁性能を誇るプロフェッショナルモデルとして誕生しました。

最近のモデルではムーブメント自体に耐磁性能が備わるものの、ミルガウスの持つプロユースとしての精悍な雰囲気やイナズマ針に代表されるアイコニックなデザインは、特別感が満載。違いを楽しめる一本をお探しの方に、ぜひお勧めさせて頂きたいロレックスとなっております。

 

こういった通好みな味わいゆえにミルガウスは、デイトナやGMTマスターIIなどと比べると人気も相場も安定していたものです。しかしながら最近ではその傾向が大きく異なってきています。いったい、ミルガウスはどのような価格推移を経て、どんな人気を形成しつつあるのでしょうか。

この記事では、歴代ミルガウスの価格推移から、現在の価値と人気について調査してみました!

ロレックス ミルガウス

※掲載している定価・相場は2023年4月現在のものとなります。

※当店に入荷した中古個体をもとに平均相場を採っております。状態・仕様によっては価格は上下します。

 

ロレックス ミルガウスとは?

まず最初に、ミルガウスとはどのようなコレクションであるかを、ご紹介致します。

 

①耐磁時計の必要性

冒頭でもご紹介したように、ミルガウスは仏語で「1000(ミル)ガウス」を意味します。ガウスは磁束密度の単位です。1000ガウスとは1ステラまたは80,000 A/m(アンペア/メーター)。すなわち、ミルガウスは1,000ガウスの磁場にも耐えられる腕時計として1956年にロレックスからリリースされました。

とは言えこの数字、あまりピンと来ないかもしれません。

現在、JIS(日本工業規格)によって耐磁腕時計は下記のように定義されています。

第一種耐磁時計・・・JIS保証水準4800 A/m。磁気に5cmまで近づけても、ほとんどの場合性能を維持できる
第二種耐磁時計・・・JIS保証水準16,000 A/m。磁気に1cmまで近づけてもほとんどの場合性能を維持できる

 

ちなみにスマートフォンのスピーカーからは密着状態で16,000 A/m、タブレット端末などでは38,000 A/mの磁場が発生していると言われています。

この数値を見れば1950年代と言う早い段階で既に80,000 A/mの耐磁時計を開発・市販化していたロレックスというブランドの底力が、垣間見えてくるのではないでしょうか。

ロレックス ミルガウス 116400

なぜ耐磁時計が必要かと言うと、時計は磁気にきわめて弱いためです。

時計のムーブメントは金属製であるため、磁石に近づけるとしばしば磁化してしまいます。この状態を磁気帯びと呼びます。

磁気帯びしたパーツは磁石のようにふるまうため、正常な働きが妨げられてしまい、結果として時計は正しく時間を刻むことが叶わなくなります。つまり、精度が狂ってしまうのです。磁気帯びを解消するには専用の脱磁機が必要となるため、時計修理店や購入店に持ち込まなくてはなりません。

近年はスマートフォンやノートパソコン,あるいはバッグのマグネット等といった磁気発生源が、本当に多いものです(マグネットが埋め込まれたスマートフォン等も登場していますね)。そのため各時計メーカーがデイリーユースを考えた時、耐磁性能は重要なコンポーネントとなってまいりました。

ロレックスでも、現行モデルには基本的に耐磁性能を備えつつあります。

機械式時計 磁気帯び

ミルガウスが発表される二年前の1954年、欧州原子核研究機構(CERN)が設立されており、同機構で働く科学者・技術者らが磁気による時計への影響を問題視しました。そのためロレックスではCERNと共同のもと耐磁時計「ミルガウス」を開発。実際にCERNのスタッフらに使用されることで、商品認知度を上げていきます。

 

②ミルガウスの系譜

こうして生み出されたミルガウス初代 Ref.6541。

ロレックス ミルガウス

初代ミルガウス(画像出典:https://www.rolex.com/ja/watches/milgauss/m116400gv-0001/magazine.html)

Ref.6541を見ると、現行とは大きく異なるデザインが見て取れるでしょう。回転ベゼルを伴った精悍な顔立ちやイナズマ針はレトロフューチャーであり、1950年代当時の、新しい時代への風を感じさせるスタイルです。

なお、1959年頃には二代目ミルガウスのRef.1019がリリースされますが、スムースベゼルやストレート針といったベーシックなスタイルへと変更が加えられています。

 

この1950~60年代というのは、まだ家電すらもそう多くは出回っていない時代ですね。そのため耐磁時計はややニッチなきらいがあり、前述した科学者らやレントゲン技師,無線技師などのプロフェッショナルが主なターゲットとなっていました。機械式時計への磁気帯びへの脅威が、まだ民生市場ではそこまで知られていなかったことも、ニッチの域を出なかった大きな理由でしょう。

こういった経緯にくわえてクォーツ式腕時計の普及もあったためか、ミルガウス二代目Ref.1019は1990年頃に生産終了し、しばらくロレックスのカタログから姿を消すこととなりました。

 

ロレックス ミルガウス

しかしながら2007年、にわかにミルガウスの復刻が果たされます。2000年代に入って携帯電話を始めとした小型デバイスが普及したため、腕時計の磁気対策が市場で求められていたためでしょう。

しかもミルガウスの名とともに、イナズマ針も一緒にリバイバルされることとなりました!一方でスムースベゼルやバーインデックスといった、二代目を彷彿とさせるベーシックさをも持ち合わせていることが第三世代の特徴です。

2007年復刻時のラインナップは計3種。

基本の黒・白文字盤 Ref.116400に加えて、珍しいグリーンのサファイアガラスを搭載させた、Ref.116400GVも登場します。もっとも黒・白も決してベーシック一辺倒というわけではなく、ヴィヴィッドなオレンジが差し色となった、ロレックスでは珍しいユニークな顔立ちをしております。

ヘアライン仕上げ(ツヤ消し)が多いロレックスのスポーツモデルでは珍しく、ポリッシュ(鏡面)が他用されることでエレガントな印象をも持ち合わせます。

ロレックス ミルガウス

出典:https://www.rolex.com/ja

さらに2014年には、「Zブルー」と呼ばれる新たな文字盤カラーがRef.116400GVに追加。このZはジルコニウムが由来となっているようで、サブマリーナやオイスターパーペチュアルとはまた違った淡いブルーが大変美しい色合いです。

2015年にRef.116400の黒文字盤、次いで2016年に白文字盤が生産終了して以降は、Ref.116400GVの黒文字盤・Zブルー文字盤が現行モデルとしてラインナップされてきました。

 

なお後述しますが、2023年にはRef.116400GVがロレックスのホームページ上から消えて、ミルガウスの生産終了が嘆かれています。

 

③ミルガウス特有の耐磁構造

機械式時計 ヒゲゼンマイ

https://www.rolex.com/ja/watches/rolex-watchmaking/new-calibre-3255.html

ミルガウスはデザインのみならず、性能面でも他のスポーツロレックスと大きく異なる点が散見されます。なぜなら耐磁性能を実現するために、ミルガウスのみインナーケースが搭載されているためです。

 

前述の通り、現行ロレックスは耐磁性能が標準装備となりつつあります。これは、ヒゲゼンマイに非耐磁性能のパラクロム製ヒゲゼンマイを採用することで実現しています。

ヒゲゼンマイはムーブメントの「脳」にあたるため、最も磁気の影響を受けやすいパーツ。そのため近年では、ヒゲゼンマイを非磁性素材とすることで磁気帯びリスクを低減させる動きが業界全体で見られます。ちなみにシリコン製ヒゲゼンマイが耐磁時計としてはポピュラーになりつつありますが、シリコンは軽量で変形しづらいため、ヒゲゼンマイ以外のパーツにも採用されています。

一方ロレックスでは2005年にパラクロム製ヒゲゼンマイを開発して以降、順次ムーブメントへの搭載をスタートさせていきました。耐磁技術が整ったため、ミルガウスの復刻に至ったのかもしれませんね。

※初めてシリコン素材を用いた時計ムーブメントで市販化に成功したのがパテックフィリップです。2005年にシリコン製ガンギ車を、2006年にシリコン製ヒゲゼンマイ搭載機を堂々発表しました。ただしブレゲも2006年にシリコン製脱進機を開発。実はパテックフィリップ・ブレゲ・ロレックスがシリコン製ヒゲゼンマイを共同開発していた、などと言われています。

※パラクロム・・・ロレックスが200年に開発した「ニオビウム」とジルコニウムなどで構成される合金素材。優れた耐磁性能の他、耐衝撃性(従来品の10倍!)や温度変化への耐性をも備えます。ブルーに着色されており、見た目にも美しいヒゲゼンマイとして話題になっています。

 

ミルガウスも歴代モデルでムーブメントへの対磁気帯び策が採られていますが(詳細は後述)、これに加えてインナーケースも装備されています。

116400

出典:https://www.rolex.com/ja/watches/milgauss/m116400gv-0001/magazine.html

ミルガウスは、オイスターケースの内側にムーブメントを包み込む軟鉄製インナーケースを備えることで、例え磁気発生源が身近にあってもムーブメントに影響することを防いでくれる、というスタイルを採っています。このインナーケースを磁気シールドとロレックスでは呼び、二つの異なる強磁性合金パーツを組み合わせて製造しているとのこと。

ロレックス曰く「「高性能磁気遮断システム」」です。

そう、この軟鉄製インナーケースはシリコンなどと異なり強磁性体であることも知っておきたいところです。いったん磁気をインナーケースが引き受け(帯磁)、外部へと一気に受け流すという仕組みになります。強磁性体ならなんでも良いわけではなく、磁気を保持せず、すぐに通して逃せる合金であることが求められます。そのためロレックスでは厳選した合金によって、この軟鉄製磁気シールドを作り上げていると言います。

ロレックスの磁気シールド上には磁束密度を表す「B(ベクトル量)」が刻印されており、さらに裏蓋にはROLEX OYSTER MILGAUSS」とプリントされています。

うーん、特別感溢れますね!

 

なお、この磁気シールドによってケースに厚みが出て、ミルガウス特有の精悍な雰囲気を実現しています。そのケース厚は現行モデルで約13mmとなっており、現行サブマリーナとだいたい同程度。一方でポリッシュ部分が多いため、武骨な印象はありません。

ロレックス ミルガウス 116400GV

なお、直近のモデルでは専用ムーブメントCal.3131が搭載されています(2016年に登場したエアキングにも採用)。

このムーブメントは前述したブルーパラクロムヒゲゼンマイに加えて、常磁性のニッケル・リン合金をアンクル・ガンギ車に用いることで、いっそうの対磁気帯び策が練られました。

 

④再びの生産終了

前項でも言及していますが、2023年にRef.116400GVがカタログから消え、いったんミルガウスは生産終了となりました。

 

もともと生産終了の噂が根強かったコレクションでもあります。当初この噂が立ったのは2019年頃で、その当時は「新作発表前にロレックスの公式SNSに、ミルガウスが多数アップされた」といった理由だったように記憶しています。しかしながら、ロレックスが各コレクションを新世代ムーブメントに載せ替えてモデルチェンジさせていたことが、後に生産終了の噂を大きなものとしました。

どういうことかと言うと、ロレックスは近年Cal.3200系への載せ替えを図ってきました。

ロレックスは1980年代から、信頼性・実用性・メンテナンス性において死角のないと言って良いCal.3100系を基幹ムーブメントとしてきました。この優秀すぎるムーブメントによって、ロレックスの中古モデルの信頼性は担保されていると言って過言ではありません。

しかしながら2015年、このCal.3100系を大幅にアップデートした、最新世代Cal.3200系をローンチ。いっそう堅牢かつ信頼性が高まったことはもちろん、カレンダー操作禁止時間帯が取り払われたり、約70時間にパワーリザーブが延長されたりといった、まさに新世代と呼ぶにふさわしい機能のブラッシュアップが図られています。

 

現在、このCal.3200系を搭載していないモデルは非常に限られています。そして、その一つがミルガウスだったのです。

さらにこの新世代ムーブメントが前述の通り、耐磁性能を備えていたことから、ミルガウスの行く末が喧々諤々だった次第です。

b

果たして噂は誠となってしまった今、忸怩たる思いのファンも少なくないでしょう。かく言う私も、その一人です。

もっとも、個人的には希望は捨ててはいません。

ミルガウスは早すぎる耐磁時計というコンセプトやその後の休眠などといった、数奇な運命を辿ってきましたが、その実ロレックスにとって大変歴史あるコレクションであることは間違いありません。

そのため、2007年のRef.116400のように、劇的な復活を遂げる可能性だって大いにあります。ちなみにロレックスは近年、自社のレガシーを少しずつリバイバルする傾向にあります。ミルガウスも、もしかしたら初代デザインが復刻するかも・・・?

真相はロレックスのみぞ知る、ですが、今後の動向に要注目です!

 

次項では、そんなミルガウスの歴代モデルの、価格推移を追ってみました!

 

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ロレックス ミルガウスの価格推移と価値

このように、他モデルとは一線を画すロレックス ミルガウス!歴代モデルは、いったいどのような価値や人気を築いてきたのでしょうか。詳しく見ていきたいと思います。

なお、歴代モデルの系譜は下記のようになっております。

初代 Ref.6541:1956年~1960年代前半
二代目 Ref.1019:1959年頃~1990年前後
三代目 Ref.116400:2007年~2016年(黒文字盤は2015年に生産終了)
現行モデル: Ref.116400GV:2007年~2023年(Zブルー文字盤は2014年~2023年)

 

冒頭でも述べているように、本稿で取り上げる価格推移は当店GINZA RASINに入荷した中古個体をもとに各年の平均相場を採っております。2023年は4月初旬までに平均です。中古商品は状態・仕様によっては価格は上下しますので、実際にご売却をお考えの方は査定依頼をしたうえで各社の買取額を確認しましょう!

また、初代Ref.6541と二代目Ref.1019はきわめて流通量が少ないため、2023年4月時点でのだいたいの市場相場を掲載致します。

 

①初代ミルガウス Ref.6541

ロレックス ミルガウス 6541

ケースサイズ:35mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.1065M,Cal.1066M,Cal.1080
防水性:生活防水(当時)
製造年:1956年~1960年代前半

画像出典:https://www.instagram.com/rolex/

ロレックスは数多くのロングセラーを抱えているため、ヴィンテージ(アンティーク)と呼ばれる世代の人気モデルは今なお人気です。とは言え年数を経るに従って市場から上質な個体が少なくなっていること。加えて過去類を見ないロレックス需要の高まりが背景にあることから、実勢相場を年々上昇を続けているのが現状です。

そしてミルガウスの初代Ref.6541は、そんなヴィンテージロレックスの中でも屈指の稀少性を誇ると言って良いでしょう。

しかも、製造期間はそう長くないにもかかわらず、幾度かのマイナーチェンジを経ていることが、この稀少性に拍車をかけます。

 

初代ミルガウス Ref.6541は、誕生した1956年当初は、回転ベゼルを搭載していました。

ロレックス ミルガウス 6541

出典:https://www.rolex.com/ja

これより少し前の1953年、回転ベゼルをやはり搭載したサブマリーナがラインナップされていますが、赤い三角マークを始めとした特徴的なミルガウスのベゼルとサブマリーナのそれは、かなり印象が違いますね。

また、現行ミルガウスでアイコンともなっているイナズマ針は、オレンジではなく針と同様にシルバーのスティール製です(現行の針・インデックスはホワイトゴールド製。イナズマ針にはオレンジの着色を施している)。

 

ケース直径は35mm。同時代のスポーツロレックスと比べてもベーシックなサイズ感ですね(ちなみに初代サブマリーナは37mm)。しかしながら耐磁性能を持たせているための軟鉄製インナーケースにより、厚みはボリューミーとなっております。

なお後年、この回転ベゼルではなく幅広なスムースベゼルが搭載されたRef.6541も登場しました。

 

さらに言うと、ムーブメントもRef.6541だけで三度の変遷を経ています。

ロレックス ミルガウス 6541

出典:https://www.rolex.com/ja

Cal.1065M、1066M、そして1018へと続きます。Cal.1065はサンダーバード等にも搭載された自動巻きムーブメントをミルガウス用としたものです。ちなみに末尾にMが付くことが特徴です。サンダーバードはデイト表示を備えますが、デイト窓からの磁気を防ぐためにあえてCal.1065Mではノンデイト仕様が採られています。これはCal.1066Mも同様です。

さらに耐磁性能を高めたCal.1080が後年採用されるに至りますが、1080搭載機は市場にはほとんど出回っておりません。

 

こういった、そもそもの個体数の少なさやマイナーチェンジも相まって、初代ミルガウス Ref.6541は紛れもないコレクターズアイテム!

一般市場に出回ることはほとんどないと言ってよく、オークション級のレアモデルです。そのため落札価格は状態や仕様にもよりますが、1000万円超が当たり前といった世界観です。

もっとも、こういったレア個体の存在こそが、ヴィンテージ世代の醍醐味とも言えます。

 

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②三代目ミルガウス Ref.1019

ロレックス ミルガウス 1019

ケースサイズ:38mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバーまたはブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.1580
防水性:50m(当時)
製造年:1959年頃~1990年前後

初代ミルガウスと大きく意匠を変えてローンチされたのが、二代目Ref.1019です。

回転ベゼルは取り払われ、幅を絞ったスムースベゼルを搭載。見た目はいっそうベーシックとなりましたが、ケース直径は38mmへと3mmサイズアップ。引き続き耐磁性能を備えているため、ケース厚も比較的しっかりしています。

なおRef.1019より、裏蓋内部に新たに十字ケースが組み込まれています。これはインナーケースのフタを抑えるために取り付けられたと言われています。

秒針はイナズマ針からストレートへと変更され、時分針のドーフィン仕様もシンプルスタイルに変わっています。

 

ロレックス ミルガウス 1019

ムーブメントはCal.1080を改良したCal.1580を搭載。ちなみにCal.1080を搭載した二代目Ref.1019が存在するといった説もあるようですが、前述の通りCal.1080自体がめったにお目に掛かれない代物のため、あくまで諸説あるうちの中の一つとなっております。

Cal.1580はCal.1080と比較して、振動数が18,000振動/時から19,800振動/時へとハイビート化。

さらにヒゲゼンマイやテンプに耐磁素材を使用しており、いっそうの磁気対策が図られていたことを示唆します。

ちなみにフリースプラングテンプが早くも搭載されていることも特筆すべき点です。これによって長年に渡る安定的な信頼性を確保しており、当時から熟成していたロレックスの時計製造技術に舌を巻く思いです。

※フリースプラングテンプ・・・精度調整方式の一つ。従来は緩急針によってヒゲゼンマイの長さを変えることでテンプの振り幅を調整するスタイルが一般的でしたが、現在の高級スポーツウォッチなどはフリースプランツテンプが採用されています。
このフリースプラングテンプは、ヒゲゼンマイの長さではなくテンワの慣性モーメントを調整することで時間の遅れ・進みを修正します。フリースプラングテンプは精度調整に技術がいる一方で長期間の安定的な高精度を維持し、耐久性にも優れるという特徴があります。
ロレックスでは1960年代から採用していたCal.1560・Cal.1570で、独自のフリースプラング方式「マイクロステラスクリュー」を搭載させるようになりました。ちなみに1970年代に入るとハック機能(時刻合わせの際にリューズを引くと、秒針が止まる機能)も搭載されており、ロレックスの高精度のためのこだわりが感じられる一幕です。

 

そんなRef.1019は約30年に渡って製造されたため、やはり何度かのマイナーチェンジが見受けられます。

例えば文字盤。

製造期間が前期となる個体に、シルバー文字盤にヘアライン仕上げが施されたものが見受けられ、ベーシックな中にもエレガンスを感じさせる仕様です。

ロレックス ミルガウス 1019

また、ミニッツサークルも有名な仕様変更の一つ。

初期は1秒刻みが0.2秒ごとのピッチとなっていますが、1980年代~製造された個体では0.5秒ピッチへと変更が加えられています。ちなみに前述したヘアライン仕上げがなくなったのも、1980年代頃からです。

夜光も初期はインデックスの上に塗布されていたものの、1980年代以降は先端部分へ。なぜこういったマイナーチェンジが行われたのかは定かではありませんが、仕様によって価格を大きく上下させるヴィンテージロレックス。ぜひチェックしておきたいところですよね。

 

とは言え製造期間の長さとはうらはら、二代目Ref.1019も稀少性がきわめて高いミルガウスです。ニッチゆえに普及機というほどではなく、またクォーツショックも相まってそうたくさんは製造されなかったのでしょう。

そのためどの仕様であっても高価格帯となる傾向にあり、相場は300万円前後~が当たり前。付属品が揃っていたりコンディション良好であったりする個体は400万円を大きく超えることも珍しくなく、コレクター垂涎の一大コレクションと言えるでしょう。

なお、Ref.1019を最後に、いったんミルガウスはコレクション自体が生産終了となり、休眠に入ります。

 

③三代目ミルガウス Ref.116400

ロレックス ミルガウス 116400

ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ホワイトまたはブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3131
防水性:100m
製造年:2007年~2016年(黒文字盤は2015年に生産終了)

20年ぶりにミルガウスが帰ってきました!それが、こちらのRef.116400です。ちなみにRef.116400GVも同時リリースしましたが、こちらに関しては後述します。

Ref.116400の大きな特徴は、初代意匠で見られたイナズマ針が戻ってきたこと!とは言えオレンジにカラーリングされており、非常にインパクトのあるデザインではないでしょうか。

ラインナップは黒・白文字盤です。

黒の方は各インデックスの外側に四角いオレンジマーカーを、白の方は各インデックスが薄いオレンジ・その外周のミニッツサークルもオレンジで彩られていることが特徴です。ちなみに白の方はこの配色から「トロピカルマンゴー」の愛称でも親しまれています。

ロレックス ミルガウス 116400

特筆すべきは、新しくなった耐磁性構造です。

軟鉄製インナーケースによって磁気を防ぐといった基本構造は変わっていませんが、二つの異なる強磁性合金パーツを組み合わせたシールドになっております。このインナーケースは磁束密度を表す「B」の上に矢印を配したロゴが刻印されており、

さらにミルガウス専用の耐磁ムーブメントCal.3131が採用されるに至りました。これは前項でもご紹介したように、磁気の影響を最も受けやすいヒゲゼンマイを常磁性合金であるパラクロム製としたもの。さらに常磁性のニッケル・リン合金によって製造されたガンギ車・アンクルを組み込むことで、いっそうの耐磁性能を有するに至りました。

現在ロレックスはムーブメントを3200系へとアップデートしています。そしてこのムーブメントにはブルーパラクロム製ヒゲゼンマイ及びニッケル・リン合金製ガンギ車やアンクルが標準装備となっておりますが、その先鋒を切っていたモデルの一つがミルガウスとなっております。

ノンデイトによって文字盤側からの磁気干渉を防いでいる点は、先代と同様です。

※ちなみにブルーパラクロム・ヒゲゼンマイは2005年にローンチされ、同年誕生したGMTマスターII 116718LNのCal.3186に搭載されたことがスタート地点です。2010年から製造されたエクスプローラーI 214270や2011年~のエクスプローラーII 216570にもパラクロムヒゲゼンマイは採用されており、ロレックスがいかに耐磁性能を実用時計にとって必須項目と捉えていたかがわかる軌跡です。

 

ロレックス ミルガウス 116400

ケース・ブレスレットの素材も、高性能スティール「904L」へとアップデート。

904Lはスーパーステンレスとも呼ばれるように(ロレックスではオイスタースティール)、通常のステンレススティールと比べて優れた堅牢性や耐蝕性を誇ります。904Lは化学産業等で用いられるような素材で、加工には技術力が必要です。しかしながらミルガウスは美しいポリッシュ仕上げを主体にヘアライン仕上げとコンビネーション。また美しいフォルムも実現しており、美しさと実用性を兼ね備えた外装を完全装備させました。

ちなみにバックル部分にはイージーリンクが取り付けられており、工具で簡単に微調整が可能です。

 

そんなミルガウスの価格推移は下記の通りです。

◆黒文字盤

 

 

付属品 平均相場
2017年 箱/保証書 有 598,000円
2018年 箱/保証書 有 678,000円
2019年 箱/保証書 有 747,000円
2020年 箱/保証書 有 787,000円
2021年 箱/保証書 有 997,000円
2022年 箱/保証書 有 1,317,000円
2023年 箱/保証書 有 1,175,000円

 

◆白文字盤

 

 

付属品 平均相場
2017年 箱/保証書 有 566,000円
2018年 箱/保証書 有 675,000円
2019年 箱/保証書 有 782,000円
2020年 箱/保証書 有 862,000円
2021年 箱/保証書 有 1,408,000円
2022年 箱/保証書 有 1,557,000円
2023年 箱/保証書 有 1,498,000円

 

上記が、ミルガウス 116400の価格推移です。

もともと定番外しであったためかそう大きく価格を上げていなかったものの、2015年に黒文字盤が、そして2016年に白文字盤が生産終了になったことで様相を一変させます。流通量の少なさから稀少性がいや増し、ジワジワと相場を上昇させていったのです。

とりわけ2018年頃から、現行116400GVがそろそろ生産終了するといった噂が立ち始めてより、一気に高騰。この頃はロレックス相場全体が大きく上昇させていた時期でもあるため、その影響もあったことでしょう。

 

特筆すべきは白文字盤です。

長らく黒文字盤の方が白に比べて人気では軍配が上がっていました。相場的にも、だいたい黒よりも白文字盤の方が数万円程度お得に買えたものです。

しかしながら、もともとスポーツロレックスに白のバリエーションがそう多くないこと。またデイトナ 116500LNの登場によって白文字盤の人気が高まったことなども背景となり、白文字盤こそが急騰とも言って良い相場情勢を描いているのです。116400GVには白がないことも大きく影響していることでしょう。

 

2023年に入ると少し落ち着きを取り戻したものの、116400GVの生産終了の余波を受け、ミルガウス 116400 黒文字盤の中古実勢相場は110万円台~。白文字盤は150万円前後~と再びの上昇傾向に。

生産終了したロレックスは供給が今後増えていかないため、年々市場から良い個体が消えていきます。116400のように、その年月を経ていればなおのことです。そのため欲しい方は早めに買っておくのが吉と言えるでしょう。

 

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④四代目ミルガウス Ref.116400GV

ロレックス ミルガウス 116400GV

ケースサイズ:40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラックまたはZブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3131
防水性:100m
製造年:2007年~2023年(Zブルー文字盤は2014年~2023年)

最後にご紹介するのは、長らく現行ミルガウスとして人気を誇ってきたRef.116400GVです!

もともと前項でご紹介したRef.116400と同時リリースされましたが、その後、116400GVに一本化されました。

搭載するムーブメントはCal.3131であり、磁気シールドと併せてスペックにRef.116400との大きな違いはありません。オレンジのイナズマ針が踏襲されているところもRef.116400同様にアイコニックですね。

 

しかしながら116400GVのモデル名が示す通り―フランス語で緑のガラスを意味するGlace VerteのイニシャルがGVと言われている―、グリーンがかったサファイアクリスタルガラスが大きな魅力であり特徴です。

約20年ぶりの復活ということもあり、アニバーサリーモデル的な立ち位置であったRef.116400GVは、ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンをガラスに落とし込むという驚くべき手法が採用されたのでしょう。

ロレックス独自の特殊製法ガラスと言われていますが、発表当初はどうも日本メーカーが手掛けていたようです。なお、製法の特殊さゆえか、偽造防止のためのロレックスの王冠透かしマークは116400GVには入っていません。

 

2014年にはZブルー文字盤がラインナップに加わりました。

ロレックス ミルガウス 116400GV

ジルコニウムを含有した特別な塗料によって再現されたこの美しいブルーは、グリーンサファイア越しとなったことで、唯一無二の存在感を示しますね。オレンジのイナズマ針は健在で、イタリアンスタイルでおなじみのアズーロ・エ・マローネ(青系と茶系の組み合わせのこと)が文字盤上で再現されました。ちなみにこのZブルーは、ジルコニウムが含有された文字盤に下処理・メッキ加工を施すことで、ジルコニウムが持つ青を発色させているのだとか。

なお、黒文字盤の方は3・6・9部分のバーインデックスがオレンジに彩られていますが、Zブルーの方はホワイトです。

 

そんな116400GVの価格推移は下記の通りです。

◆黒文字盤

 

 

付属品 平均相場
2017年 箱/保証書 有 684,000円
2018年 箱/保証書 有 752,000円
2019年 箱/保証書 有 817,000円
2020年 箱/保証書 有 873,000円
2021年 箱/保証書 有 1,123,000円
2022年 箱/保証書 有 1,342,000円
2023年 箱/保証書 有 1,273,000円

 

◆Zブルー文字盤

 

 

付属品 平均相場
2017年 箱/保証書 有 760,000円
2018年 箱/保証書 有 816,000円
2019年 箱/保証書 有 864,000円
2020年 箱/保証書 有 974,000円
2021年 箱/保証書 有 1,286,000円
2022年 箱/保証書 有 1,751,000円
2023年 箱/保証書 有 1,813,000円

前述の通り、ミルガウスはモデルチェンジではなく、コレクション自体が生産終了となりました。

 

「生産終了したロレックスの相場は上がる」はもはや定説となり、むしろ過剰なまでの効果を発揮している昨今。生産終了がまだ噂の段階だった頃よりRef.116400GVに買いが集中した結果、相場は一挙に上昇。もともとデイトナやGMTマスターIIといった早い段階から相場高騰していたモデルから需要が流れて、右肩上がりに価格を上げていたといった背景もあるでしょう。

 

なお、上記の「2023年」は1月~4月までの平均相場です。新作発表が一通り済んだ2023年4月現在、Ref.116400GVの黒文字盤の実勢相場は140万円前後~、Zブルー文字盤は180万円前後~という実勢相場を記録しています。

もともとZブルー文字盤の方が高年式個体が多いゆえに(ローンチが2014年~と新しいため)相場は黒よりも比較的高値を維持してきましたが、黒文字盤の年式を経たモデルであっても、高騰と無縁ではないといった状況です。

 

ロレックスの中でも特別な立ち位置にいると言って過言ではないミルガウス。

コレクションとしてはいったん生産終了となったものの、今後もロレックス市場を大いに賑わせることは必至です。

 

 

まとめ

ロレックス ミルガウスの歴代モデルの、価格推移から価値と人気についてご紹介致しました!

本稿でも繰り返し述べたように、ミルガウスそのものの先進性に加えて生産終了により、いっそうの価値と人気を誇りつつあり、相場は現状ではまさに青天井となっております。

かつてないほど実勢相場が上昇している一方で、資産価値もまた高まり続けていることは事実です。とりわけミルガウスのように磁気に強く堅牢なプロフェッショナルモデルは、メンテナンスを施せば年式を経てなおデイリーユースできることがほとんどです。

そのため中古市場では活発に売買されており、売るもよし、買うもよしの逸品と言えるでしょう。

文:鶴岡

 

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この記事を監修してくれた時計博士

池田裕之(いけだ ひろゆき)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長

39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年

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