GMTマスター, WEBマガジン, エクスプローラー, サブマリーナ, シードゥエラー, デイトナ, ヨットマスター, ロレックス, 池田裕之
価格が高騰するロレックスはどれ?時計専門店のスタッフが予測してみました【2023】
2022年も、ロレックス相場は何かと目が離せませんでした。
2022年、新型コロナウイルスの影響は色濃いながらも各国でじょじょに経済活動が再開し、わが国でも入国制限が緩和。政府の全国旅行支援なども手伝って、レジャーや飲食が再び活性化しました。
一方で、2021年のコロナ禍に引き続き、高級腕時計市場も堅調です。
この市場の背景として、円安によるインバウンド需要は大きな影響を与えているでしょう。しかしながら日本国内での需要も活発で、スイス時計協会(FH)の統計によると、2022年1月から10月までにかけてのスイス時計の日本への輸出額は前年比+19.3%の141億スイスフラン超えに。2021年を大きく上回ることはもちろん、史上最高であった2019年を超えてくることがわかりました。もっとも日本のみならずスイス時計輸出高は全体的に好調で、過去最高となった2021年を、2022年は凌駕すると言われています。
ちなみに、当店GINZA RASINが出店している大手ショッピングモールの担当者に聞くと、高額品の中心は相変わらず高級時計だと語っておりました。
この好調の波を牽引し、需要に比例して実勢相場を上げに上げてきたのがロレックスです。
しかしながら2022年5月頃より、長らく右肩上がりを続けてきた相場上昇がストップ。下落を見せた後、9月頃には再び上昇を見せるものの、不安定な状態です。
いったい、ロレックスの実勢相場は、2023年にどのような動向を見せるのでしょうか。とりわけ「価格が高騰する」ポテンシャルを秘めた一本は、気になるものです。
将来、その時計の相場や価値が上がるか下がるか。これは誰にもわかりません。しかしながら、過去の相場推移や市況を見て、ある程度の予測を立てることはできます。
そこでこの記事では、2023年のロレックス相場を予測してみました!
2017年から2022年の、当店GINZA RASINの中古モデルの買取金額をもとにCAGR(年平均成長率)を算出。すなわち高騰に勢いがあり、2023年も成長していくであろう個体の予測を立てております。
この定量的評価に加えて、当店の時計バイヤーが2022年の相場感や過去情勢から、2023年の動向に対する定性的評価を調査し、掲載いたしております。
まだまだ勢いは止まっていないロレックス相場。2023年、注目すべき一本はこれだ!!
※将来の価値を保証するものではありません。参考程度にご覧になってください。
※相場などの情報は全て2022年12月現在のものとなります。
目次
過去6年間のCAGR(年平均成長率)から見る、価格高騰するロレックスTOP20
まず最初に、ロレックス各モデルの買取金額の、2017年~2022年までのCAGR(年平均成長率)を算出。成長率が高い、すなわち2023年も価格が上昇するであろうモデルを、ランキング形式で掲載致します。
※CAGRとはCompound Annual Growth Rateの略称で、複数年の成長率を指します。この成長率をもとに各一年あたりの幾何平均(相乗平均とも。一般的な算術平均ではなく、平均してどれくらいのペース・割合で成長しているかを示す)を算出することで、直近6年間でどのモデルがどれくらいのペースで成長を続けているのかを知ることができます。
例えば「このモデルの価格のCAGRは15%」と言われたら、平均して毎年15%ずつ伸び、来年は現在価格から15%上昇する可能性があることを示唆します。
また、CAGRによって伸び率を比較し、安定的な成長を続けているモデル、あるいは今後も成長していくであろうモデルを予測することも可能です。
なお、直近6年以内に発表されたモデルは、初出年度からのCAGRを算出しています。
それでは第20位から、ご紹介いたします!
※CAGRは買取価格から算出しておりますが、各グラフは当店の中古販売金額の年度ごとの平均に基づきます。
第20位 ロレックス エクスプローラーII 16570 ホワイト【CAGR:16.0%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3185
防水性:100m
参考定価:567,000円
製造期間:1991年~2011年
CAGRランキング、まず第20位にランクインしたのがエクスプローラーII Ref.16570 ホワイト文字盤です!
ちなみに2021年も同様の集計を行っており、Ref.16570 ホワイト文字盤の2017年~2021年までのCAGRは18.4%。第6位でした。
エクスプローラーIIについて解説すると、単独稼働する時針を有することで、第二時間帯を表示することが可能な多機能機です。
GMTマスターIIも同様の機構となりますが、こちらが回転ベゼルを用いて第三時間帯を表示させることに対して、エクスプローラーIIは固定ベゼル。この固定ベゼルには24時間スケールが印字されており、洞窟や鍾乳洞といった太陽光の届かない場所での時刻視認や昼夜判別をサポートしてくれる「エクスプローラー」というわけです。
Ref.16570は、1991年~2011年まで製造されたエクスプローラーIIの第三世代です。
この次の世代以降のエクスプローラーIIがケース直径42mmであることに対して、Ref.16570は40mm。このサイズ感や現行にはない赤い24時間針、あるいは5桁リファレンス時代の独特の風合いから、根強い人気を誇ってきました。
一方で長らくエクスプローラーII自体が定番ではなかったこと。加えてRef.16570は20年選手と非常に製造期間が長く、出回りが豊富であったことも手伝って、かつては40万円~50万円台で購入できるといった「安く購入できるロレックス」でもありました。
しかしながら、ロレックス相場が顕著な上昇をスタートさせた2017年頃から、Ref.16570もジワジワと価格高騰。
2020年には販売価格がついに大台の100万円超を超えてなお、上昇が止まらず(すなわち、買い控えが止まらず)。Ref.16570登場以来、見たことのないような値付けが記録されていきました。
この背景には「ロレックス全体の相場が上がった」ということもあります。
円安も手伝って、ロレックス相場は2016年頃からジワジワと上昇していきました。とは言え、定価を大きく超えるようなプレミア価格・・・といった現象は、一部の人気モデルに留まっていました。当然と言うべきか、Ref.16570も、今ほどの上昇幅は見せず落ち着いていたものです。
この状況が一変したのは、2019年の夏前頃だったでしょうか。これまで高値安定といったモデルも相場急騰を遂げ、いったん下落した後に、多くのモデルで(スポーツロレックスに至っては、ほとんどのモデルで)定価超えの実勢相場を記録することとなったのです。
これに加えてエクスプローラーIIは、ここ3・4年ほど根強い「生産終了」の噂が立っていました。これは、ベーシックモデルのエクスプローラーIしかり。
ロレックスは近年、1980年代後半からロレックスの信頼性を下支えしてきたCal.3100系ムーブメントを、最新世代Cal.3200系へと載せ替えることでモデルチェンジしています。エクスプローラーIIとベースムーブメントを同じくしてきたGMTマスターIIが2018年にモデルチェンジしたことで、「次はエクスプローラーIIの番だ」と囁かれたがゆえの、生産終了の噂です。
「生産終了したロレックスの相場は上がる」とは、現在のような相場感がなかったころから言われている方程式ですが、最近だとこの傾向が加速。新作発表前ともなると、「生産終了の噂がある個体」への買いが集中し、さならる価格上昇を招くといった事象が頻繁にみられるようになりました。
「生産終了の噂があるモデル」のみならず、歴代コレクション全体の相場が押し上げられるというのも、近年の特徴の一つです。
果たして2021年、エクスプローラーIIは誕生から50周年の節目を迎えたこともあってか、新型Ref.226570へと移行します。
歴代エクスプローラーIIの多くが、この新作発表前夜から大きな値上がりを果たし、Ref.16570も急騰。
とは言え、新作自体デザイン面での大きな変更がなかったこと。現在では比較的出回りも増えてきたことから、「上昇率」といった面では落ち着きを取り戻した結果、2021年ほどの成長率は見せず、第6位⇒第20位といった結果になりました。
しかしながら、当然価格が上がっていないわけではありません。
2022年12月現在、エクスプローラーII Ref.16570 ホワイト文字盤の販売価格は通常個体でも110万円台~、仕様によっては150万円台~。かつて40~50万円で購入できたとは信じられないほどの相場高騰を果たしています。
「ロレックス相場は落ち着いてきた」とは言われるものの、Ref.16570は100万円を切るような下落の気配は見せません。
さらに言うとRef.16570、まだまだポストヴィンテージと考えれば伸びしろは大きいと言えます。
同世代のGMTマスターII 16710やサブマリーナ 16610などが160万円、物によっては180万円が当たり前の世界。人気上昇中のエクスプローラーIIはこれらと比べればお得感がありつつも、まだまだ相場の伸びしろがあるのではないか、と。
ちなみに、ポストヴィンテージは高年式個体ほど値付けが高くなる傾向にあります。
しかしながら、こういった5桁時代のポストヴィンテージロレックスの中で、「古い仕様のレアリティが上がっている」という特有の現象があります。
それは、「シングルバックル」および「トリチウム夜光」。
ロレックスは実用時計の王者としてムーブメントのみならずバックルやブレスレットの改良も重ねてきていますが、1990年代の大きな変更点としてバックルの留め具が「シングルロック」から「ダブルロック」に変遷した、ということが挙げられます。だいたい1995年頃~順次ダブルロック式へと変わっていっており、通常ですと堅牢性の高いダブルロックの価値が上がるものです。しかしながら、このシングルロックバックルの方の市場評価が早い段階から高くなってきており、実勢相場にも反映してきているのです。
これは夜光にも言えることです。
1999年頃~、ロレックスでは従来のトリチウム夜光をルミノバ夜光へと変遷していくこととなりました。ルミノバの方が発光時間が長く強いうえ、トリチウムは?がれやすかったり、経年によって変色してしまったりしがち。しかしながらトリチウム夜光の文字盤・針の方が価格が高くなるという現象がこれまた早い段階から見られているのです。
※オールトリチウムのホワイト文字盤の中でも、非常に美しく焼けた個体「パティーナ文字盤」。高い値付けとなることは、言わずもがなの美しさ
シングルバックルやオールトリチウム個体というのは、「オリジナルを保っている」ということの証左でもあります。
と言うのも、ロレックスではオーバーホール等のメンテナンスを受けた時、パーツが劣化していると判断した場合交換を顧客に提案します。「提案」とは言うもののこれを受けないとオーバーホールに出すことはできないため、年式の古い個体は結構これらパーツが交換されてしまった個体が流通しているのです。
すなわち、シングルバックル・オールトリチウム(文字盤・針ともにトリチウムであること)を備えたエクスプローラーII 16570の市場価値が高くなっており、しかも年式を経るごとにこの稀少性はますます強調されるからして、2023年はさらに価格高騰が見込まれると言えるのではないでしょうか。
もっとも、繰り返しになりますが、ポストヴィンテージの中ではまだお値打ち!
これから価格高騰に期待して買う一本としてはうってつけです。
逆に40万円台であった頃にご購入された方がいらっしゃるとしたら、大きな資産を有していると言えますね。
なお、色違いのRef.16570 ブラック文字盤のCAGRは14%で、TOP20にはランクインしませんでした。
上昇は続けているものの、エクスプローラーIIのモデルチェンジからしばらく経ったこともあってか、落ち着きを取り戻してきた印象です。
ちなみにホワイト・ブラック文字盤で、これまで大きな価格差はありませんでしたが、最近はホワイト文字盤の方が10~20万円程度高値となっております(通常個体の場合)。
さらに付け加えると、現行から一世代前のRef.216570は、ホワイト文字盤が15.5%。ブラック文字盤が13.9%のCAGRでした。
第19位 サブマリーナー 16613 ブルー【CAGR:16.2%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール×イエローゴールド
ムーブメント:Cal.3135
防水性:300m
参考定価:903,000円
製造期間:1989年~2009年
CAGR16.2%で、第19位となったのはサブマリーナーのコンビ(イエローロレゾール) Ref.16613です!
上の価格推移グラフをご覧頂くと、2018年~2020年の成長率はそう大きくなく、2021年・2022年に大きな上昇を見せていますね。
前項でも言及しているように、ロレックス相場は2016年頃からジワジワと上昇していき、2019年頃には「未曾有の相場感」などと言われることもありました。
この相場高騰の中心はステンレススティール製のスポーツロレックスで、ステンレススティール製モデルがゴールドまたはコンビモデルの実勢価格に肉薄することに。こういった背景から、ゴールドやコンビのお得感が増し、需要が波及していったこと。また時計市場の拡大とともに嗜好が多様化したことなども手伝ってか、ステンレススティールモデルのみならず、ゴールドが使われた個体の相場も高騰していくこととなりました。
これは現行モデルに限った話ではなく、5桁リファレンス時代のポストヴィンテージもしかり。
1989年~2009年までと、20年に渡って好事家に愛され続けたサブマリーナー コンビ Ref.16613も、もともとコンビモデルの中では人気が高かったとは言え、現在ではいっそうの価格高騰を遂げています。
ちなみに2017年頃は80万円台~90万円台が販売価格の相場感でしたが、現在は160万円台~とほぼ二倍の高騰を遂げております。
ちなみにサブマリーナーは、ロレックスを代表するダイバーズウォッチです。
300m防水の堅牢なオイスターケース、ダイバーらがダイビングタイムを誤作動なく計測できる逆回転ベゼル、そして夜光が施された視認性の高い文字盤はいかにもツールウォッチ。それでいてロレックスらしく、無骨さのないデザインに仕上がっていることが魅力ですね。
「無骨さのない」と表現するのには、サブマリーナーのラグジュアリーなバリエーションにも根拠があります。
もしサブマリーナーが純然たるツールウォッチであったのなら、その素材バリエーションはステンレススティール製に限られてきたことでしょう。ブラックやホワイトなどといったベーシックなカラーリングを基調に。しかしながらサブマリーナーは、スポーツロレックスの中でも非常に早い段階からラグジュアリーなモデル展開が行われてきた歴史を有します。具体的には、1965年に同コレクション初のゴールドモデルを、1980年代にはステンレススティールとイエローゴールドのコンビモデルをリリースしております。
そしてRef.16613は、そんなコンビサブマリーナーの第二世代です。
長らくロレックスの信頼性やメンテナンス性を担保してきたCal.3135を搭載したことが、第二世代Ref.16613の大きな特徴となります。
ラグジュアリーなサブマリーナーは文字盤タイプも豊富なことで知られていますが、Ref.16613もまたシャンパンやブラック(黒サブ)、あるいはダイヤモンドやサファイアがインデックスにセッティングされたモデルなどがバリエーション展開されてきました。
しかしながら「青サブ」とも称されるこちらのブルー文字盤は、サブマリーナーならではのカラーリングということもあって、特別な存在感を担います。
現行にも青サブはラインナップされていますが、アルミベゼルならではの発色やポストヴィンテージ時代らしい雰囲気は、Ref.16613ならではですね。
なお、サブマリーナー Ref.16613もまた、20年に渡る製造期間の中で何度かのマイナーチェンジ―ロレックスらしく、性能面のアップデートをもとに―が行われてきましたが、基本的には高年式の個体が高い値付けとなる傾向があります。
しかしながら、Ref.16613もオールトリチウムへの評価があること。またRef.16613の、製造初期にあたる1990年代前半頃までに生産された一部に、文字盤がブルーからヴァイオレット(パープル)へと変色する個体が見受けられ、高い評価を得ていることは、価格高騰するロレックスを語るうえでは知っておきたいところですね。
ヴァイオレットはあくまで変色なので色味に個体差がありますが、極上の美しい色づきを見せるものもあり、特別感を味わえるのも嬉しいところです。
第18位 ロレックス デイトナ 16520 ブラック【CAGR:16.4%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.4030
防水性:100m
参考定価:597,400円
製造期間:1988年~2000年
第18位は、デイトナ Ref.16520 ブラック文字盤、CAGRは16.4%!
昨年まではCAGR28.6%で、当ランキングにて1位につけたモデルですが、第16位という結果となりました。
とは言え、詳細は後述しますが、「販売価格が大幅に下落した」というわけでもありません。なぜならあくまで「成長率」であり、もともと相場感がずば抜けて高かったRef.16520は、そうでないモデルに比べてCAGRは低くなる傾向にあるためです。
そう、歴代デイトナは現在のような狂騒的な相場になる以前から定価を下回ることはほとんどなかったと言われる超人気機種で(実際、リーマンショックの頃を除けば、歴代SSデイトナは定価超えのプレミア相場が主流です)、中でもトップとして君臨していたのはRef.16520と言っていいでしょう。
なお、デイトナは1963年にファーストモデルがリリースされたとロレックスでは公式発表されています。
実際にはそれ以前からプレデイトナと言われるクロノグラフモデルが登場していましたが、いつの時代もレーシングスピリットを感じさせる、とにかくかっこいいロレックスウォッチであることは不変にして普遍です。
そんな中で1988年、これまで手巻きであったクロノグラフモデルを自動巻きへとシフトし、かつ現代デイトナのデザインの礎を築くこととなったRef.16520。
ちなみにゼニスが1969年に開発した、伝説的なハイビートムーブメント「エルプリメロ」がベースムーブメントとなっていることが特徴です(手巻き時代もバルジューと呼ばれる名門のクロノグラフを使用していました)。
ゼニスは1970年代に一時機械式時計の生産が休眠せざるをえない状況に追い込まれ、エルプリメロの供給も停止することとなります。その際、エルプリメロに関する金型や設計図を破棄するよう上層部から命じられますが(当時はゼニスがアメリカ企業に買収されていた)、同社の技術者シャルル・ベルモ氏が密かに隠したことで、エルプリメロは守られます。
1980年代後半、再び機械式時計市場が返り咲くとともにエルプリメロは日の目を見るという、何かと時計好きの心をくすぐるエピソードを持つ名機でもあります。同時期、ロレックスもまたこのエルプリメロに目を付けたことに、この時計のロマン溢れる歴史をいっそう感じさせます。
とは言えエルプリメロと完全に同じムーブメントというわけではなく、ロレックスはエルプリメロをチューンアップし、Cal.4030としてリリース。これがまた信頼性と実用性に溢れる銘クロノグラフとなり、今なお特別感を覚える昔ながらのファンは少なくありません。
また、ムーブメント以外にもハイグレードな904Lステンレススティールがいち早く使われたモデルであったりと、何かと話題性に事欠かないロレックスの代表モデルとなっております。
前述の通り、デイトナ Ref.16520の実勢相場は、もともときわめて高いものがありました。
確かに円高時代に100万円前後となったこともありますが、それでも定価は下回らず。円安が顕著になっていった2016年以降は急激に相場が高騰し、現在は特にレア仕様でなかったり低年式であったりしても、340万円台~というプライスレンジです。
さらに高年式(特に最終品番のP番)であったり、パトリッツィ(ブラウンアイ)などと呼ばれるレア仕様なら、600万円前後~といった驚くべき値付けも、ザラにあります。
※生産終了直前に製造されたシリアル「P番(2000年頃)」およびその一つ前の「A番(1998年~1999年頃)」が高年式16520の代表格です。さらにA8番、A9番あるいはP1番、P2番などに分類され、後期型であればあるほど価格は上がっていきます。
なお、パトリッツィとは、この画像のような個体です(必ずしも、ここまで美しくハッキリと変色する個体ばかりではありませんが)。
※パトリッツィ(ブラウンアイ)のデイトナ Ref.16520。
インダイアル部分のオーナメントが琥珀のようにブラウンチェンジした個体です。ちなみにパトリッツィというのは、この仕様を発見したイタリアの研究家オズワルド・パトリッツィ氏にちなみます。
1994年~1995年にかけて製造されたS番~W番(あるいは多少の変化に留まるものの、1996年~1997年製造のT番・U番でも出現)で見受けられる仕様ですが原因はハッキリとわからず、そのミステリアスさも相まって、相場は他の16520を凌いで青天井となっております。
このように高値続きであったRef.16520ですが、確かに2022年5月以降、じょじょに相場が落ち着いてきたとも言われています。
それでもまだまだ高値であることに変わりなし。
また、2022年に買取価格が下落し、CAGRも第18位となりましたが、この背景には前述の通りそもそも2017年時点での買取価格も高額であり、2021年の上昇率が凄まじかったこと。加えてRef.16520は仕様による価格差が非常に大きく、入荷個体によって平均価格が変わること。さらには生産終了から年数を経ているため、人気個体の流通量も豊富というわけではないことは考慮に入れるべきでしょう。
すなわちRef.16520の稀少性や高い価値は、2023年も相変わらず健在と言えるのではないでしょうか。
2023年はデイトナ誕生60周年ということもあり、現行Ref.116500LNのモデルチェンジも囁かれております。
そうなってくれば、歴代デイトナ、とりわけRef.16520の相場上昇は必至。
少しでも安くなっている今、買っておきたい一本ではないでしょうか。
なお、ホワイト文字盤 Ref.16520のCAGRは10.9%でした。
CAGRで見れば当ランキングには入りませんでしたが、2021年~2022年にかけては135%の上昇幅となっており、ブラック文字盤と同じく今後の動向から目が離せません。
ちなみにホワイト文字盤 Ref.16520の方の販売価格は通常個体で350万円台~、高年式やオールトリチウムの個体は400万円台~が相場感です。
最終品番はもちろん、ホワイト文字盤の方は初期製造個体や同じく初期製造に見られるタキメーターベゼルの「200タキ」仕様、あるいはホワイト部分が陶器のような輝きを有したポーセリンダイアル等のレアモデルの市場評価がきわめて高く、オークション級の価格となる個体も珍しくありません。
デイトナ 16520のレア仕様については、ぜひ下記の記事をご参考にしてみて下さいね。
第17位 サブマリーナー 126610LV【CAGR:16.9%】
ケースサイズ:直径41mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3235
防水性:300m
参考定価:1,259,500円
製造期間:2020年~
第17位は、サブマリーナー最新世代のRef.126610LV、CAGRは16.9%でした!
2020年が初出であるにもかかわらず、大きな上昇幅で以て第17位にランクイン。高値続きであるにもかかわらず、正規店ではおろか並行輸入店でも常時品薄続きなところを見ると、「高くても欲しい」というマインドを集める実力派であることがわかりますね。
サブマリーナー Ref.126610LVは、ブラックのRef.126610LNおよびノンデイト Ref.124060とともに、ロレックスの2020年新作として発表されました。
ベーシックなブラックカラーも高い人気を誇りますが、通称「グリーンサブ」と呼ばれるロレックスのコーポレートカラーをまとったグリーンサブマリーナーの新作を心待ちにしていた方も多いのではないでしょうか。
先代Ref.116610系と比べて、新型サブマリーナーは最新世代ムーブメントCal.3235を搭載したこと。またケース直径が伝統的な40mmから41mmへとアップサイジングされたことなどが話題となりましたが、加えてグリーンサブは先々代のRef.16610LVを踏襲した、ブラック文字盤となったことでもファンを驚かせたものでした。
そもそもグリーンサブがロレックス史に登場したのは、2003年です。
サブマリーナー誕生50周年に当たるこの年に登場したRef.16610LVは、ロレックスにとって特別であることを感じさせるグリーンカラーをアルミベゼルにまとっており、スタイリッシュでハイセンスなデザインコードとして次世代のRef.116610LV、現行Ref.126610LVへと引き継がれていきます。
※ちなみにアメコミのキャラクターになぞらえて、Ref.16610LVはカーミットといった愛称で呼ばれることもあります。
Ref.116610LVでオールグリーンとなったことで「ハルク」の愛称が定着しましたが、2020年の新型で再びカーミットと相まみえたというわけですね。
Ref.116610LVからは現代的で高級感漂うセラクロムベゼルが採用されたことも手伝ってか(繰り返しになりますが、アルミベゼルの風合いも素晴らしいですが)、人気が加速。デイトナやGMTマスターIIに次ぐような価格高騰を見せており、サブマリーナー Ref.126610LVも、最も価格が上がった2022年5月は、300万円近い実勢相場を記録することとなりました。当時の定価は1,259,500円です。
現在は少し落ち着きつつあり、230万円台~がRef.126610LVの相場感です。
とは言え、ここからなかなか落ち着く気配が見受けられません。
サブマリーナーのようなダイバーズウォッチは、人気が季節的要因に左右されることもしばしばです。そのため冬場は少し落ち着くものの、また春から夏のボーナス時期にかけて高騰するであろうことは想像に難くありませんね。
ちなみにサブマリーナー Ref.126610LNのCAGRは12.4%でした。
様々なファッションに合わせやすいブラックカラーの人気もひとしおです。
こちらは現在の実勢相場190万円前後~と、高値とは言え安定しておりますので、予算を抑えて最新サブマリーナーが購入したいと言う方にはオススメです。
第16位 ヨットマスター 116655【CAGR:17.0%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:エバーローズゴールド
ムーブメント:Cal.3135
防水性:100m
参考定価:2,618,000円
製造期間:2015年~2019年
第16位には、ラグジュアリーかつスポーティーなヨットマスターがランクイン!
ゴールドモデルの、近年の上昇率を感じさせる結果ですね!CAGRは17%でした。
繰り返しになりますが、ロレックス相場はまず「ステンレススティール製スポーツモデル」を中心に、値上がりしました。
その後にコンビ、あるいはゴールドモデルやデイトジャスト、あるいはスカイドゥエラーといったラグジュアリーなモデルも急騰していくのですが、まだゴールドモデルの価格が上がりきっていなかった時代から「品薄すぎてなかなか入荷できない」「個人買取にしろ業者間オークションにしろ、見つけたら高値でも仕入れたい」とバイヤー陣に言われてきたのがこちらのヨットマスター Ref.116655です。
ヨットマスターは1992年にロレックスのラインナップに加わったシリーズです。
ダイバーズウォッチに通じるデザインコードを有しつつも、その様相は一貫した「ラグジュアリー」。発売当初はゴールドのみを素材として扱っており、現行も必ずゴールドまたはプラチナといった貴金属があしらわれるモデルとなります。
両方向回転ベゼルはメタルまたはセラミックインサートがエンボス加工されており、ラグジュアリーとしての風格と独創性を両立させているのも、さすがロレックスの仕事と言えるでしょう。
Ref.116655は、2015年に登場したヨットマスターです。
ロレックスが独自開発した美しきエバーローズゴールドモデルであることも素晴らしいですが、オイスターフレックスを搭載していることも、Ref.116655の魅力を押し上げる点ですね。
オイスターフレックスはロレックス独自の剛性に富んだラバーストラップで、現在ではデイトナやスカイドゥエラー等、ゴールド製のスポーツモデルにも搭載されておりますが、初採用はヨットマスター Ref.116655でした。
オイスターフレックスについて説明を加えると、メタルブレードを「ブラック エラストマー」という、豊かな弾性を有したゴム状の高分子物質でコーティングされたストラップです。なお、エラストマーは「erastic(弾性のある)」+「polymer(重合体)」を合わせた造語です。
メタルブレスレットのような堅牢性・防水性を保ちつつも縦方向クッションシステムによって快適な装着感をも実現しており、加えてラグジュアリーな雰囲気の中にも巧みにスポーティーを添えることにも一役買っておりますね。
このRef.116655は、2019年に新世代ムーブメントCal.3235を搭載させたRef.126655が登場したことで生産終了となります。
このRef.126655はデザインコードはRef.116655を踏襲していますが、発表から3年が経つ今なおなかなか市場に出回らないこと。また相場が450万円台~とかなり高値になっていることから、旧型のRef.116655の方に「売り上げ本数」では軍配が上がります。
とは言え、Ref.116655も品薄&高値は相変わらず。現在は中古であっても370万円台~となっており、また相場が下落した際にも、大きな値下がりは見せなかったことから、2023年も同様の動きを見せるであろうことが予測できます。
なお、発表は2015年ですが、前述した「高値仕入れでも在庫として確保したいモデルだけど、なかなか市場に出回らない」といった事情から、ようやくデータが取れるほどの入荷数となったのは2019年以降。そのためCAGRおよび上記の価格推移表は2019年~2022年をもとにしております。
第15位 ロレックス GMTマスターII 116710LN【CAGR:17.0%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3186
防水性:100m
参考定価:864,000円
製造期間:2007年~2019年
第15位は、GMTマスターIIで長らくベーシックモデルの立ち位置を担ってきた、116710LNです!そのCAGRは、17%。2021年版では14.9%でしたので、直近一年間での成長のほどが伺えますね。
ちなみに第16位でご紹介したヨットマスター Ref.116655もCAGR17%で同率でしたが、Ref.116710LNの方が圧倒的に売買履歴が多かったため、こちらを第15位といたしました。
GMTマスターIIは、単独稼働する短針とGMT針によって複数時間を確認できる多機能機です。
そしてGMTマスターIIは、まさにこの機構において歴史的にも、プロダクトとしても時計業界を代表するコレクションです。
GMTマスターIIが誕生したのは1950年代です。
第二次世界大戦が終結し、ボーイング707といった一般旅客機ジェットが盛り上がりを見せていた当時。パン・アメリカン航空(パンナム航空)のためにロレックスが「ローカルタイムの他に第二時間帯を表示できる腕時計」として製造したのがGMTマスターです。
発売当時は時分針の他にGMT針を持ち、回転ベゼルを使って第二時間帯を24時間表示させられるという代物でした。
当時からして画期的ではありましたが、1983年にこのGMT針を単独稼働させることで、第三時間帯表示をも可能としたGMTマスターIIがラインナップされることとなります。
GMTマスターの方は1999年頃に生産終了となり、以降、ロレックスのパイロットウォッチと言えばGMTマスターIIを指し示すような、アイコニックな存在へと至っていきました。
そんなGMTマスターIIもまた他のコレクション同様、いくつかのモデルチェンジを経ています。そして2007年、第三世代としてこちらの116710LNが誕生しました。
サブマリーナの項でもご紹介したように、2000年代は多くのスポーツロレックスのベゼルがセラクロム製へと移行します。
アルミのヴィンテージテイストも素晴らしいものですが、このセラクロム、メモリ部分にプラチナコーティングを施すことで独特の高級感を醸し出していることが大きな特徴です。
2007年に116710LNがリリースされたことで、歴代GMTマスターのどのモデルとも一風異なるラグジュアリーを獲得した当モデルは、当該シリーズ人気の大きな火付け役となりました。黒にGMT針でグリーンの差し色が入った、さりげないアクセントもロレックスらしいセンスですよね。
一方で黒というベーシックな色合いもあり、「価格高騰」といったようなモデルではなかったことも事実です。事実、ロレックス相場が既に高騰した後も、「100万円以下で購入できるロレックス」のうちの一つでした。
しかしながら、116710LNもまた、「生産終了」によってにわかに急騰し、現在では相場が青天井の状態となっております。なぜなら黒の116710LNは、完全にラインナップから姿を消すこととなったためです。
GMTマスターIIもCal.3285へとムーブメントの載せ替えが行われたのですが、2018年に往年の「ペプシ」と愛された赤青ベゼル 126710BLROが、2019年には「バットマン」の青黒ベゼル 126710BLNRがラインナップされています。つまり、黒ベゼルの126710LNが登場することはなく、そもそものバリエーションから完全に生産終了してしまったということです。
もっとも126710系の発売当初は新作の話題性も相まってか、価格高騰はしていたものの、今ほどではなかったと記憶しています。しかしながら2020年、新作がじょじょに市場に浸透し始めるのと時期を同じくして一気に高騰。
2022年12月現在の中古販売価格は160万円台後半~と、大人気バットマンの116710BLNRに肉薄するようになりました。
12年という長きに渡って製造されていたがゆえ、人気の生産終了モデルの中では出回りは少なくありません。それでも一般ユーザーのみならず、業者の買いも集中してか(絶対に在庫を切らしたくないモデルのため)、ジワジワと良質な個体が減っていっている現象も見受けられます。
2023年、まだまだ成長の伸びしろが大きいと見る業界筋も多く、価格高騰するロレックス第15位に列挙させて頂きました。
なお。「スティックダイアル」「スクエアダイアル」と呼ばれるレア仕様は既に価格高騰が著しく、状態にもよりますが200万円超の値が付けられています。
第14位 ロレックス GMTマスターII 116710BLNR【CAGR:17.1%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3186
防水性:100m
参考定価:918,000円
製造期間:2013年~2019年
第14位は、GMTマスターIIの中でも「バットマン」と呼ばれて親しまれてきた、116710BLNRです!CAGRは17.1%と前項でご紹介したRef.116710LNと僅差でしたが、その売買履歴は1.5倍ほど!また以前から高値続きであったにもかかわらず、相も変わらず高い相場上昇を続けているとあって、2023年も目が離せない一本となっております。
前述の通り、GMTマスターIIは2018年・2019年に渡ってモデルチェンジが行われました。
Cal.3186からCal.3285への移行がメインとはなりますが、赤青ベゼル「ペプシ」が復刻されたこと。加えて現代スポーツロレックスではお馴染みとなっていたオイスターブレスレットから、デイトジャスト等に用いられるジュビリーブレスレットへと仕様変更されたことで、大きな話題を呼びました。
2019年に青黒ベゼルの126710BLNRが登場したことで116710BLNRは生産終了に。そのためオイスターベルトのバットマンは、GMTマスター史上で116710BLNRのみになると思われましたが、2020年に新バージョンとして同ベルトのモデルもラインナップされることとなりました。
※ジュビリーブレスレットを搭載した新型GMTマスターII 126710BLNR
新旧で大きくデザインが異ならないと、旧型の方はそう大きな価格高騰を遂げるものではありません。事実、2018年~2019年にかけての上昇幅は、デイトナに次ぐ高騰を続けるGMTマスターとして鑑みれば、目立つほどではありませんでした。しかしながらバットマンのもともとの人気が凄まじかったこともあり、2020年から2021年にかけて大きく上昇した後、2022年にも躍進!
2022年12月現在の販売価格は210万円超えが当たり前となりました。
ちなみに116710BLNRの人気の秘訣は、何といっても青・黒のツートーンベゼルでしょう。
アルミベゼル時代と異なり、セラクロムベゼルは複数色のカラーリングが技術的に難しいとされていましたが、2013年、こちらのGMTマスターIIで実現。以降、ロレックスの一つのアイコンへと昇華されていきました。
高くなっているとは言え現行よりかはまだお値打ちですので、「予算を抑えてバットマンが欲しい」という方は、116710BLNRをご選択頂くことがお勧めです。まだ高年式の個体が多く出回っているので、さらに価格高騰してしまう前に入手しておきましょう!
第13位 ロレックス デイトナ 116519LN スティール×ブラック【CAGR:17.3%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ホワイトゴールド
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
参考定価:3,628,900円
製造期間:2017年~
第13位は、金無垢デイトナを代表する116519LNです!
金無垢というとキラキラしたイメージを覚えるものですが、116519LNはステンレススティール製デイトナのようなスポーティーさ、そして洗練された都会的な印象を持ち合わせます。
その秘訣は、ホワイトゴールドを素材として使っていること。116500LN同様、セラクロムベゼルを搭載していること。さらに加えると、オイスターフレックスと呼ばれるロレックス独自の剛性に富んだラバーベルトを採用していることにあるでしょう。
ホワイトゴールド製デイトナ自体は、歴代で存在していました。
見た目は派手すぎないにもかかわらずずっしりとした重厚感を有することが特徴で、「さらにラグジュアリーなデイトナを」といった客層から根強い指示を集めていたものです。
長らく116506でオールホワイトゴールド、116519でホワイトゴールドケース×革ベルトの個体がラインナップされていましたが、2017年に前述の通りセラクロムベゼル・オイスターフレックスを備えた新バージョン116519LNが登場。以降、金無垢デイトナを代表するモデルとして語られています。
中でも大きな特徴は、オイスターフレックスベルトでしょう。
第16位でご紹介したロレックスがヨットマスター Ref.116655でも言及しているように、ただのラバーベルトではありません。
このラバーにはブラック・エラストマーと呼ばれる弾性に富んだゴム状の高分子物質がコーティングされることで、メタルブレスレット並みの堅牢性や防水性を担保することとなっております。
こういった実用性に加えて、前述の通り金無垢なのに洗練されたスポーティーテイストを持ち合わせるとあり、人気が出ないはずがありませんよね。
ロレックス相場の高騰はまずステンレススティール製のスポーツモデルから起こりますが、116519LNは金無垢ながら2018年末という早い時期に高騰。ステンレススティール製デイトナの高騰に比べれば割安感が強かったことも、早い段階の高騰として背景にあったことでしょう。
その後は長らく定価の10%~20%ほど高いといった相場感でしたが、2020年、新型コロナウイルスの影響などが重なって流通量が激減し、販売価格400万円の大台へ。
現在も下落する傾向は一向に見られず、2022年12月現在、中古であっても530万円超という販売価格を記録することとなりました。
この状況を鑑みるに、買取金額から見たCAGRは17.3%でしたが、あるいはそれ以上の価格高騰を2023年には遂げるかもしれません。
第12位 ロレックス ミルガウス 116400GV ブラック【CAGR:17.4%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3131
防水性:100m
参考定価:1,085,700円
製造期間:2007年~
第13位にランクインしたのは、現行ミルガウス 116400GVのブラック文字盤です!CAGRは17.4%です。
フランス語で「1000ガウス」を名前に冠する当モデルは、ロレックス屈指のプロフェッショナルモデルとして1956年に誕生しました。
医師や研究職、エンジニアなどといった高磁場で働くプロたちのために製造された高耐磁性ウォッチで、当時はまだ特殊環境下という市場規模の小ささから1989年に一度生産終了するものの、2007年に復活。
スマートフォンや便利な家電に囲まれることで機械式時計を常に磁気の危険からさらしている現代において、耐磁性能へのニーズは高まり続けています。すなわちミルガウスは、現代人必携の一本と言えるでしょう。
※磁気帯び・・・時計のムーブメントの金属パーツが磁気を帯びてしまうことで磁石の性質を有してしまい、精度を司るヒゲゼンマイが正確な働きをしなくなってしまった結果、時間がズレてしまう現象のこと。一般的に専用の脱磁機で磁気帯びを解消することができます。
現行の116400GVは、2014年に発表されました。
ミルガウスのコンセプトである高耐磁性は維持しつつ、ほんのりとグリーンに色づいたサファイアガラス、そしてオレンジを帯びた3・6・9時位置のバーインデックス、さらにはヴィヴィッドなオレンジのイナズマ針と、ミルガウスならではの魅力を多数有していることが大きな特徴となります。イタリアンスタイルでおなじみのアズーロ・エ・マローネ(青系と茶系の組み合わせのこと)を時計デザインとして採用した形ですが、そこにロレックスらしいクラス感が光りますね。
また、ムーブメントを磁気から保護するためにケース内部に磁気シールドを持ちますが、これによって他モデルにはない重厚感を有します。
とは言え、こういった「他モデルとの大きな違い」から定番外しといった立ち位置であったため、価格は落ち着いていたものです。
しかしながら2019年頃より、ジワジワと高騰。2020年~2022年にかけて大きな伸び率を記録し、この度第12位にランクインしました。
出典:https://www.rolex.com/ja/watches/milgauss/m116400gv-0001/magazine.html
この背景には、ミルガウスの生産終了説が流れて久しいことが一因として挙げられます。
ロレックスはロングセラーを数多く抱えていますが、各シリーズいずれも定期的にモデルチェンジを行いながら、進化させる傾向にあります。この進化は外装にも及びますが、近年顕著なのがムーブメントです。
ロレックスはムーブメントも内製化している真のマニュファクチュールとして高名ですね。さらにロレックス製ムーブメントの性能―精度や耐久性、メンテナンス性―はきわめて優れており、ロレックスがこれだけ活発な中古市場を形成しているのは、「経年による劣化が少なく、ムーブメントにメンテナンスを施すことで末永く愛用できる」ことが大きく寄与していると言えるでしょう。
そんなロレックスの基幹ムーブメントは長らくCal.3100番台でしたが、2015年以降、Cal.3200番台へと移行しています。
この流れでほとんどのモデルがCal.3200番台ムーブメント搭載のうえ、モデルチェンジに至っているのですが、ミルガウスはまだ対象ではありません。
そのため、近年にわかにミルガウスのモデルチェンジが囁かれているというわけです。
何度か言及しているように、「生産終了したモデルの価格が高騰する」というのは、ロレックスに見られる現象です。
モデルチェンジによって廃盤となった先代モデルは、おのずと市場から流通量が低減していくこととなります。しかしながら廃盤品の需要が低減すると言えないのが、ロレックスの味!
「最新こそ最高」とは言うように、歴代モデルの中で現行こそが最も性能面では優れています。しかしながらロレックスは歴代モデルでファンが多く―それは仕様であったり、デザインであったり―、「新作よりも前作の方が好み」「生産終了したモデルが欲しい」という声が非常に根強いのです。
そのため、生産終了によって供給がなくなった個体の相場が上昇する傾向にある、と。
もっとも近年は「生産終了したモデルは価格高騰する」という考え方が独り歩きし、さらなる買いの集中を招いている傾向があることは注視しなくてはなりませんが、いずれにしろ現行ミルガウスの近年の価格高騰はこの「生産終了」が要因の一つとして考えられるでしょう。
なお、モデルチェンジではなく、ミルガウス自体が廃盤になるのではといった声もあります。
インナーケースに備わった磁気シールドで耐磁性能を担保するミルガウスですが、実は現行ムーブメントはデフォルトで耐磁性能を有しています。ムーブメントの中で最も磁気の影響を受けやすいヒゲゼンマイをブルーパラクロムという耐磁性に優れたパーツを採用しているためです。
事実、ミルガウスとムーブメント共有していたエアキングも、お先にモデルチェンジ。専用耐磁ムーブメントではなく、エクスプローラーIやサブマリーナー ノンデイトと同一のCal.3230が新生エアキングに搭載されたことは、特筆すべき点です。
そのため耐磁性能という特色がアイデンティティであったミルガウスの、今後の存続を危惧する声も出ているといった背景があります。
もちろんいつモデルチェンジするのか、ミルガウス自体が存続するのかどうかはロレックスのみぞ知る。
とは言え価格高騰は紛れもない事実であり、CAGR17.4%から、以下の予測を打ち立てることが可能です。
2022年のミルガウス 116400GV ブラック文字盤の平均買取価格は1,117,000円でした。2023年に17.4%成長したと仮定すると、平均でも130万円ほどの買取価格を記録している可能性があります。
ちなみに2022年12月現在の、Ref.116400GVの中古モデルの販売価格は130万円前後~。2023年には、生産終了するか否かを問わず、150万円超の実勢相場を記録しているやもしれません。
第11位 ロレックス GMTマスターII 126710BLNR【CAGR:17.4%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3285
防水性:100m
参考定価:1,272,700円(ジュビリーブレス)/1,247,400円(オイスターブレス)
製造期間:2019年~
第11位にランクインしたのは、現行「バットマン」ことGMTマスターII Ref.126710BLNRです!
CAGRは17.4%と、やはり第12位のミルガウスと同率ですが、2022年の売買履歴がほぼ2倍であったため、こちらを第11位といたしました。すなわち、非常に活発に売買されたモデルということを示唆しています。
第14位でご紹介したRef.116710BLNRの後継機として誕生したGMTマスターII Ref.126710BLNR。
現行GMTマスターIIは2018年発表ですが、その際には赤青ベゼル―通称ペプシ―のRef.126710BLROのみのリリースでした。
この現行GMTマスターII、発売当初はジュビリーブレスレット搭載モデルということで大きな話題となったものです。ロレックスのスポーツモデル(プロフェッショナルモデル)は―往年のGMTマスターではジュビリーブレス搭載機はあったものの―3列のオイスターブレスを採用するのが通例であったためです。
さらに2018年当時の新型GMTマスターIIのステンレスモデルは赤青ベゼルのみであり、Ref.116710BLNRやRef.116710LNが併売されていたことも、驚きを禁じえませんでした。
しかしながら翌2019年に、ジュビリーブレスモデルの青黒ベゼルも登場。それが、こちらのRef.126710BLROというわけです。
Ref.116710BLNRおよびRef.116710LNはカタログから消えた結果、GMTマスターIIのステンレスモデルはジュビリーブレスのみのラインナップになるかと思いきや、2021年にオイスターブレスも追加!
このデザインコードが復活したことに、歓喜したファンも多いのではないでしょうか。
CAGRはジュビリーブレス・オイスターブレスを区別しておりませんが、2021年から2022年にかけての大幅な伸びを見るに、オイスターブレス人気によって成長が後押しされたであろうことが予測できます。
とは言え、人気はどちらも甲乙つけがたし。
実勢相場で見ても、大きな価格差は見受けられません(ただしオイスターブレスの方が発売から日が経っていないモデルがほとんどなため、高値になる傾向はあります)。
2022年12月現在の販売価格は、どちらも230万円台~260万円前後。ステンレスモデルとしては相変わらず高騰しておりますが、実は2022年に多くのロレックスが相場下落を見せた折も大きな影響が見られなかったモデルですので、安定した資産価値を有すると言えるでしょう。
第10位 ロレックス ミルガウス 116400 ブラック【CAGR:17.5%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3131
防水性:100m
参考定価:788,400円
製造期間:2007年~2015年頃
TOP10にランクインしたのは、一世代前のミルガウス Ref.116400 ブラック文字盤です!CAGRは、17.5%でした!
第12位で現行Ref.116400GVをご紹介した折にも触れましたが、やはり今ミルガウスが熱い!
前述の通り、耐磁時計として誕生したミルガウス。
一度の生産終了を経て、2007年に現行Ref.116400GVとともに復活を飾ったのがこちらのRef.116400です。ガラスがグリーンではない分、ベーシックで普遍的な魅力を有しますね。
一方でオレンジカラーに稲妻針というミルガウスならではの個性を持つため、人と被らないメリットも嬉しいところです。
決して派手な人気を誇るモデルではないため、長らく60万円台~70万円台ほどとお手頃な中古価格が続きましたが、2015年の生産終了とともに流通量は減少していき、ジワジワと高騰。
2019年は平均を採れるほどの個人買取数がなかったためCAGRからは抜かしましたが(市場仕入れはあったため、販売価格推移表には記載)、実は2019年を除いてもそう流通数は多くはありません。そしてミルガウスのモデルチェンジ・あるいは生産終了が囁かれる今、大いに価格を値上がりさせているといった状況です。
ミルガウス Ref.116400の2022年12月現在の中古価格は、状態にもよりますが110万円台~。
現状、市場の供給はこれ以上は増えないため、現行ミルガウスがモデルチェンジして買いが集中すれば、市場でグッドコンディションの個体の争奪戦が繰り広げられるのではないでしょうか。
なお、同時代に生産されていたミルガウス Ref.116400 ホワイト文字盤(ただしこちらは2016年まで製造)は現在の中古価格130万円台~と、ブラック文字盤よりも高値です。
ロレックスのスポーツモデルでホワイト文字盤は少ないため、人気が集中しやすい傾向にあるのでしょう。
通称「トロピカルマンゴー」などとも称される文字盤のカラーリングも、おしゃれですよね。
実勢相場は長年高いものの、2021年が価格上昇しすぎて170万円台を一時記録していたためか、2022年にはいったん落ち着きCAGRではランク外となりました。
最後に付け加えると、全てのロレックスに言えることですが、ロレックスは堅牢性や信頼性に大変優れた実用時計を生産することにかけては、他の追随を許しません。そのため多少年式の古い個体であっても(そもそも116400は2007年以降のモデルのため、むしろ中古市場の中では高年式と言える)、信頼できる時計店であればしっかりと機械点検やオーバーホールを行っております。
とりわけミルガウスは早い段階から耐磁性能に配慮された造りとなっており、経年に強いモデルの一つ。
モデルチェンジで話題になってしまう前に。本当に欲しい方はぜひ買っておきたいモデルです。一生のパートナーとなってくれることでしょう。
第9位 ロレックス デイトナ 116520 ホワイト【CAGR:17.7%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
参考定価:1,242,000円
製造期間:2000年~2016年
第9位は、デイトナ 116520のホワイト文字盤!第18位でRef.16520 ブラック文字盤をご紹介しておりましたが、その次世代にあたるのがRef.116520です。
「キングオブクロノグラフ」とも称されるデイトナの中でも、この精悍な顔立ちこそ印象に残っている、昔ながらのファンも多いのではないでしょうか。
約16年に渡って愛され続けてきたモデルであり、また、ロレックス初となる自社製クロノグラフCal.4130を搭載した、同社にとっても歴史的に意義深一本ともなります。
なお、デイトナと言えば「高価格ロレックス」の代表格のような存在です。
一方こちらの116520は製造期間の長さゆえかデイトナの中では比較的流通量が多く、相場もプレミア価格とは言え他のSSデイトナと比べれば落ち着いている傾向にありました。
とは言え「高値」という点では変わらずで、2016年の時点から既に販売価格は140万円台~150万円台が当たり前といった状況でした。デイトナは常時定価超えではあったものの歴代モデルの中では落ち着いていた116520。この「落ち着いていた」が既に定価超えのプレミア価格なのだから恐れ入りますね(しかも中古価格で、です)。
とは言えこの驚きは、2018年以降、さらに大きなものとなっていきました。
上記の平均販売価格の変遷からもおわかり頂けるように、年度を超えるごとに右肩上がりに上昇。生産終了から日が経つにつれて上質な個体が少なくなっていることもあり、大きな下落は一切ありませんでした。現行116500LNの登場でさらにホワイト文字盤の人気が高まったことも、この価格上昇に一役買うこととなります。
現在では少し落ち着いてきたとはいえ、通常個体の中古モデルでも300万円を切ることは滅多にありません。
「デイトナだけは今後、よっぽどの経済状況にならない限りは価格下落しないのでは」と予測するバイヤーもおり、それだけ人気の実力のほどを伺い知ることができますね。
なお、116520は長い製造期間の中で、数々のアップデートが施されてきた世代でもあります。
そのため年式や仕様によって、相場が数万円~数十万円変わってくることがあるので、これからご購入になる方は要注意!
基本的には高年式の個体ほど価格が高くなる傾向にあり、今後の高騰の成長率も高いことが見込まれます。
繰り返しになりますが、やはり時計は精密機器になるため、新しいものほど性能は高いと言えます。特にロレックスはモデルチェンジとまではいかなくとも、内外ともに細かなブラッシュアップを加えることで、性能を進化させる「実用時計のエキスパート」。それゆえ仕様によって新旧があり、価格差が存在します。
年式を見極めるポイントは、まずシリアルです。
ロレックスはシリアルによってある程度の製造年代を判別することができ、例えば「116520のM番」と言った時、だいたい2007年~2008年頃に製造された個体であることを示唆します。
なお、2010年以降は「ランダム番」「ランダムシリアル」などと呼ばれる、英数字がランダムに羅列されたシリアルに変わったため、詳細な製造年の特定は難しくなりました。一方で「116520のランダムシリアル」と聞けば、116520の中でも2010年以降に製造された、比較的新しい個体であると予想することは可能です。
また、バックルや夜光、ルーレット刻印などの仕様によっても、ある程度の年代の区分けが可能となりますが、基本的には新しい仕様程高値が付く傾向にあります。
もっともどの個体をご購入になるかは人それぞれ。「少しでも安く買いたい」「これからの価格高騰に期待して、大穴を狙いたい」なんて方は、低年式のモデルから選ぶのも通なものです!大切なのは信頼できるお店で購入すること。また機械式時計にとって適切な取扱いを心掛け、定期的なオーバーホールを欠かさないことですね。
さらに付け加えると、116520 ホワイト文字盤には屈指のレア仕様があります。
それは初期製造個体(2000年~2004年頃まで。シリアルにするとP番・K番・Y番・F番)で確認できる仕様で、もともと白であった文字盤がクリーム色(アイボリー)に変色している、というもの。
デイトナ 16520のブラウンアイ(パトリッツィ)のように、なぜこのようなエイジングを経るのかはわかっておらず。どうもホワイトとは異なる文字盤塗料が使われているようなのですが、この謎めいた背景も相まって、実勢相場は400万円前後が当たり前に・・・!
ちなみに、このアイボリーへエイジングするのでは、と思われる個体の選定も始まっているようです。
詳細は下記記事をご覧頂ければと思いますが、もしアイボリーの「青田買い」ができるとしたら・・・夢が広がりますね!
第8位 ロレックス デイトナ 116500LN ブラック【CAGR:17.7%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
参考定価:1,720,400円
製造期間:2016年~
第8位は、現在の高騰するロレックス相場を牽引してきたと言って過言ではない、現行デイトナ 116500LNです!上昇率は屈指と思いきや、CAGRとしては第8位。
発表当時から既に価格高騰が著しかったこと。また、2019年の一時期と2020年の緊急事態宣言下で若干価格が落ち着いたことが原因かもしれません。しかしながらロレックス投資やらロレックスマラソンと言えば、まずデイトナ 116500LNが出てくると言っていいほど、2023年も価格高騰ポテンシャルが高いと言える一本です。
ちなみに第9位のデイトナ Ref.116520とCAGRは同率ですが、入荷数がRef.116500LNの方が2.7倍も多かったため、こちらを第8位といたしました。Ref.116520も決して仕入れ数が少ないモデルではありません。にもかかわらず、それを遥かに上回る売買を記録したRef.116500LNには恐れ入ります。
そんな現行116500LNはバーゼルワールド2016で発表されました。
ムーブメントは先代116520から引き続きCal.4130を搭載していたものの、大きな変更点はベゼル。そう、デイトナにもついにセラクロムベゼルが採用されるに至った、記念すべきモデルとなります。
初出時から非常に話題性の高いモデルで、「初値は200万円を超えるのでは」などと囁かれていたものでした。
今でこそロレックスが200万円と聞いても、もはや通常営業などと思う向きもあるかもしれません。しかしながら2016年の当時は、たとえ新作に対するご祝儀価格であったとしても、200万円となると超プレミア価格として語られていました。
結局2016年の初年度は平均販売価格は200万円程度。
驚くべきは、以降、この価格を下回らなかったこと。
新作モデルは、当然出たばかりであればあるほど相場は高くなります。もちろん前述したご祝儀相場といった背景もあるでしょうが、市場での流通量が圧倒的に少ないため、需要に追いつけずどうしても並行相場が上がりがちなのです。この相場感は、新作がじょじょに出回ることで落ち着きを取り戻していくものです。
しかしながらデイトナ116500LNは、発表から年を経るにつれていっそうの高騰を果たしている、大変稀有なモデルです。
2022年、Ref.116500LN ブラック文字盤は過去類を見ない500万円前後といった実勢相場を記録することとなりました。
「さすがにもう下がるだろう」と囁かれ、確かに現状は中古相場で360万円台~で落ち着いてきてはいます。
しかしながら、価格高騰の気配がやまないのがデイトナ。と言うのも、2023年にモデルチェンジが予測できるため、新作発表が行われる3月(2023年は3月27日~)前後にかけて、デイトナ相場が騒がしくなりそうなのです。
第7位 ロレックス GMTマスターII 126710BLRO【CAGR:18.1%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3285
防水性:100m
参考定価:1,272,700円(ジュビリーブレス)/1,247,400円(オイスターブレス)
製造期間:2018年~
第7位は、GMTマスターII屈指の人気を誇る、Ref.126710BLROです!CAGRは18.1%でした。
何度か言及しているように、GMTマスターIIは単独稼働する時針と回転ベゼルを用いて、第三時間帯までを表示できる多機能機です。
GMTマスター時代からスポーツロレックスの中では珍しく多彩なバリエーションを抱えてきた一大コレクションでもあり、とりわけツートンカラーのベゼルはアイコニックです。
GMTマスター誕生50周年にあたる2005年(ちなみにロレックスの創業者ハンス・ウイルスドルフ氏が設立し、ロレックスを名乗る以前の時計商社ウイルスドルフ&デイビス社100周年でもありました)に発表されたイエローゴールド製GMTマスターII Ref.116718LNのリリースを皮切りに、同コレクションはセラクロムベゼルを採用していくこととなりました。
このセラクロム、技術的な面もあったか、長らくツートンカラーは採用されてきませんでした。しかしながら2013年に赤青ベゼルのRef.116710BLNRが登場したのは前述の通り。
こうなってくると、往年のGMTマスターで昼夜判別にも一役買っていた赤青ベゼル「ペプシ」のリバイバルが期待されていきましたが、2018年にRef.126710BLROで実現した次第です。
セラクロム特有の光沢と深みを感じさせる色合い、そしてジュビリーブレスのエレガンスが多くの時計好きを虜にしたか。
発売以降、デイトナ Ref.116500LNのように常に右肩上がりの相場感を続けていき、価格高騰モデルの代表格となったことはご存知の通りです。GMTマスターの歴代モデル全体に影響を及ぼし、特に赤青ベゼルの個体の高騰幅は大きなものとなりました。
CAGRを集計した際、第11位に最後のGMTマスター世代 Ref.16700(CAGRは16%)、第15位に先々代のGMTマスターII Ref.16710(CAGRは15.4%)がランクインしましたが、赤青ベゼルの高騰は成長率の大きな背景となったことでしょう。
そんなRef.126710BLROの2022年12月現在の販売価格は、260万円台~。販売日からそれほど日が経っていない個体などは、300万円近くにまで及ぶこともあります!
ちなみにRef.126710BLROも、2021年にオイスターブレスレットモデルが追加されています。
こちらもジュビリー・オイスターブレスレットモデルで大きな人気の差は今のところは見受けられませんが、ジュビリーモデルの方が実勢相場はやや高くなる傾向にあります。
ただしオイスターブレスモデルの方が販売日から浅い個体が多く流通しております。
第6位ロレックス スカイドゥエラー 326934 ブルー【CAGR:20.5%】
ケースサイズ:直径42mm
素材:ステンレススティール×ホワイトゴールド
ムーブメント:Cal.9001
防水性:300m
参考定価:1,808,400円(オイスターブレス)/1,832,600円(ジュビリーブレス)
製造期間:2017年~
第6位はロレックス屈指のコンプリケーション(複雑機構)モデル・スカイドゥエラーから。一番人気のブルー文字盤がやはりランクインしてきました!CAGRは20.5%です!
スカイドゥエラーのSS×WGモデルは2017年にラインナップに加わっていますが、シリーズ自体は2012年が初出です。
大きな特徴は、GMT機能とアニュアルカレンダー機能を有していること!さらにその表示機構もユニークであることです。
GMT機能とは、ローカルタイムの他に別途一つないしは複数の時間帯を表示させるものです。有名どころはGMTマスターで、単独稼働するGMT針と回転ベゼルを用いて、第二時間帯・第三時間帯を表示してくれますね。
しかしながらスカイドゥエラーでは、文字盤からオフセットされたインダイアルで第二時間帯を読み取るという、きわめて珍しい仕様を楽しめるモデル!加えてアニュアルカレンダー(年次カレンダー)を搭載しているため、日付修正は年に一度、2月の末日のみともなっています。ロレックスは実用時計を訴求してきたブランドゆえか、クロノグラフ以外の複雑機構はそう多くはありません。
すなわちスカイドゥエラーは、異色のコレクションとして君臨していると言えます。
さらに「リングコマンドベゼル」という特殊機構を有していることも特筆すべき点です。
これはヨットマスターIIにも採用されている機構で、回転式ベゼルを回して各ポジションにセッティングすることで、リューズでの多彩な操作を可能にするという優れものです。
例えばベゼルを1のポジションにセッティングすると、リューズでは文字盤外周に取り付けられた月と3時位置の日付設定が、2のポジションにセッティングすると時針の単独稼働が、3のポジションにセッティングすると通常の時刻調整が可能、といった具合です。さすがロレックス、ただコンプリケーションを製造するのみならず、他社とはひとあじもふたあじも違う機能を付加させています。
こういったコンプリケーション仕様からハイエンドに当たり、コレクションが出た当初は金無垢のみのラインナップでした。また、文字盤もバータイプの他、アラビアタイプが同時リリースするなど、かなり珍しいコレクションでした。流通量も決して多くはなく、知る人ぞ知るといった立ち位置に。
しかしながら2017年、ステンレススティール×ホワイトゴールドおよびステンレススティール×イエローゴールドのコンビモデルへとコレクションが拡充。とりわけSS×WGのRef.326934は「スポーツロレックスを彷彿とさせる」として、一躍大人気商品に(もっともスカイドゥエラーはデイトジャストやデイデイトなどと同じクラシックウォッチにロレックスでは分類しています)。
そんな326934、コンビとは言え金無垢と同様に大量生産されるようなモデルではなかったため、どの文字盤色であっても発売当初から定価を上回る実勢相場で売買されていました。ユーザーを選ぶ面はありましたが、2017年の発表から十分出回る前にロレックス相場が全体的に上がったことが一つの背景として挙げられるでしょう。
さらに、2017年末から2018年頃にかけてロレックス相場が軒並み上昇。
2019年にはほとんど全てのステンレススティールモデルのスポーツロレックスが定価を上回るプレミアム価格となり、結果として上位機種であるスカイドゥエラーの方が安いなどといった逆転現象が起き始めます。
しかしながらスカイドゥエラー自体も魅惑のロレックスウォッチ。
そのため需要がどんどん流れてくるばかりか新たなファンを世界各国で増やした結果、2022年の平均販売価格は3,737,000円(オイスターブレスのみの場合)に上りました。定価1,808,400円となるため、正規店で購入できた方が売却する場合、思わぬ得をする可能性を示唆しています。
ちなみに2022年、スカイドゥエラーにジュビリーブレスモデルが追加されました!
エレガンスですよね。
現在、ジュビリーブレスレットモデルの方がオイスターブレスと比べて10万円程度実勢相場が高くなりますが、まだ流通量がそこまで多くないことも相まって、時計店にとっては争奪戦致し方なしの一本となっております。
第5位 ロレックス デイトナ 116503 ブラック【CAGR:21.0%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
参考定価:2,132,900円
製造期間:2016年~
第5位は、イエローロレゾール(コンビ)の現行デイトナ Ref.116503 ブラック文字盤です!CAGRは21%!やはりデイトナは強いですね。
かつてロレックス相場高騰の中心はステンレススティールモデルであり、ステンレスモデルよりもお得に買える。コンビモデルはそんなイメージがあったかもしれませんが、コンビならではの多彩なカラーリングや「スポーティー×ラグジュアリー」といった雰囲気は格別。特にイエローゴールドは華やかですので、スーツの袖口からチラリと覗く存在感に、惹きこまれてしまうものです。
この魅力は、価格だけでは語れないものがありますよね。
とは言え、ステンレス製のRef.116500LNが300万円、400万円が当たり前となってしまった時代。コンビは今でもお得感が強いことは事実です。
イエローロレゾールのRef.116503にはシャンパンやホワイト等の多彩なバリエーションがラインナップされておりますが、大きなCAGRを記録したのは、スポーティーさを強調するブラック文字盤でした。
「お得」とはいえ、定価超えのプレミア価格であることはご存知の通りです。
2022年12月の販売価格は320万円前後~350万円台となっており、「相場が下落した」と言われる中、依然として高値。やはりデイトナ人気は止む気配がありません。
一方でステンレスモデルのRef.116500LNが400万円超が当たり前となっていること。加えてCAGRが第5位ということは、まだ相場が上がりきっておらず、2023年にもさらなる成長のポテンシャルを秘めていることを示唆しています。
事実、コンビモデルであるにもかかわらず、仕入れ数が多く、積極的に売買されていることが垣間見えます。
「人気」に裏打ちされたリセールバリューは、なかなか値崩れしづらいでしょう。
なお、現行Ref.116500LNがモデルチェンジとなると、Ref.116503も同様に世代交代となるであろうことは付け加えておきます。
第4位 ロレックス ミルガウス 116400GV Zブルー【CAGR:21.4%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3131
防水性:100m
参考定価:1,085,700円
製造期間:2014年~
第4位は、グリーンガラスに特徴的なZブルー文字盤が美しい、現行ミルガウス Ref.116400GVがラインクイン!CAGRは21.4%でした。
Ref.116400GV Zブルーも、かつては「安く買えるロレックス」だったものですが、2022年は多くの人気モデルを凌いだ価格成長率を見せることとなりました。
現行Ref.116400GVのブラック文字盤は2007年にリリースされていますが、Zブルー文字盤は2014年に追ってラインナップされた形となります。
ゴールド製サブマリーナやシードゥエラー ディープシーなどでもブルー文字盤は採用されていますが、そのいずれとも全く異なる淡い色味を携えたこちら。ジルコニウムが含有された文字盤に下処理・メッキ加工を施すことで、ジルコニウムが持つ青色を発色させる、という仕様が用いられています。ジルコニウム由来だから「Zブルー」というわけですね。
本当に美しく、グリーンのガラス越しに見ると、その魅力はひとしおです。
Zブルー文字盤は他のミルガウスと比べると発売当初から実勢相場が高かったですが、それでも70万円前後~で買える期間も短くありませんでした。
しかしながら2019年頃から、ミルガウス自体の生産終了やモデルチェンジの噂が飛び交ったことで、一気に高騰が加速。既存のスポーツモデルにもドレスモデルにもない「特別なカラーリング」に対し、需要が集まったということもあるでしょう。
とりわけ2021年から2022年にかけての上昇幅は凄まじいことが、上記の価格推移表から伺えます。2022年の新作発表前の1月頃から200万円超の相場を記録。現在は150万円台~160万円台に落ち着いていますが、まもなく新作発表をまた迎えるとすると「今度こそは」と買いが集中することは容易に予測できます。
相場や資産価値は抜きにしても、グリーンガラス×Zブルー文字盤のデザインコードの行く末は気になるところ。
どうする?どうなる?ミルガウス Ref.116400GV!
ロレックスからの新作発表を待ちましょう!
第3位 ロレックス デイトナ 116500LN ホワイト【CAGR:21.6%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
参考定価:1,720,400円
製造期間:2016年~
第3位は、現在の高騰するロレックス相場を牽引してきたと言って過言ではない、現行デイトナ 116500LNです!
ちなみに仕入れ数を見ると、今回のTOP20の中ではダントツでした。デイトナ Ref.116500LNほどの高額モデルがこれほどまでに活発に売買されるというのは、絶大な人気があるからに他なりません。
さらに発売当初から高値であったにもかかわらず第3位のCAGRを誇るということは、もはや高騰が青天井ということをも示唆しているのではないでしょうか。
前述の通り、Ref.116500LNは2016年に発表されました。
これまでもデイトナはホワイト・ブラックの二色展開でしたが、Ref.116500LNでは同コレクション初となるセラクロムベゼルを採用。
セラクロムのブラック×ホワイト文字盤の組み合わせが発売当初から大受けし、デイトナ自体の人気を押し上げたことはもちろん、スポーツモデルの「ホワイト文字盤人気」にまで火をつけることとなりました。
繰り返しになりますが、初出時から非常に話題性の高いモデルで、「初値は200万円を超えるのでは」などと囁かれていたものでした。
結局2016年の初年度は平均販売価格は200万円程度。
以降、この価格を下回らず、いったいRef.116500LNの相場はどこまでいくのかと囁かれてはや6年。今なお、いっそうの高騰を果たしている常識破りの存在です。
2019年、過去類を見ない300万円前後といった実勢相場を記録した時、「さすがにもう下がるだろう」と囁かれていました。確かに一度は下落したものの、その期間はごくわずか。
2020年から続くコロナ禍の高額品消費の加速も相まって、今や400万円超が当たり前といった世界線へと到達することとなりました。ひところの600万円超と比べれば落ち着いたといった声もありますが、そもそも定価2倍のプレミア価格で「落ち着いた」のだから、デイトナ相場の凄まじさ。併せて資産価値の高さを実感できるのではないでしょうか。
なお、デイトナ 116500LNはそのものの高騰も凄まじいですが、やはり時計としての魅力もまたピカイチ。
とりわけロレックスが得意とするホワイトラッカー文字盤は美しく視認性高く、インダイアルのオーナメント及びセラクロムベゼルのブラックと対照的なカラーリングを持つことで、完成されたパンダ顔を獲得するに至りました。
100m防水と堅牢な設計であるにもかかわらず薄型で、装着感に優れているのも「実用時計の王者」と呼ばれる所以ですね。
これだけ高くなっても買い控えは見られず、今なお世界的な需要を誇ることを鑑みれば、2023年も価格高騰は必至(特にモデルチェンジの噂も相まって)。当店でも絶対に在庫を切らさないように気をつけてはいますが入荷即完売が続くモデルであり、それでも在庫確保したいというマインドから、買取相場はどんどん吊り上がっていっている状況です。
20%超えというCAGRですが、2023年、いったいどのような相場を描いていくのか。2023年、最も目が離せないロレックスのうちの一つと言えるでしょう。
第2位 ロレックス サブマリーナ 116610LV【CAGR:24.5%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3135
防水性:300m
定価:987,800円(生産終了時)
製造期間:2010年~2020年
第4位、CAGR19.4%と高い成長率を誇ったのは、グリーンサブ 116610LVです!第17位でご紹介したRef.126610LVの先代機となり、10年間に渡って「オシャレなサブマリーナ」の地位を確立してきました。
サブマリーナはロレックスを代表するダイバーズウォッチであり、大変長い歴史と高い信頼性を有していることは前述の通りです。
一方で歴代モデルでよく流通してきたことから、アンティークを除いてそう大きく価格高騰している・・・というシリーズでもありませんでした。
しかしながらサブマリーナも現状、ほとんどのモデルで定価を大きく上回るプレミア価格となっているのは既にご紹介してきた通り。
そんな中でもいち早く高騰したのが、このグリーンサブ 116610LVです。
2015年頃から既に80万円台後半~と高値でしたが、2017年には常時100万円超えの実勢相場に。その後も高騰を続け、2019年6月時点でついに実勢相場が過去最高の200万円超を記録しました。
何度か言及しているように、2020年の生産終了でさらに価格高騰することとなりますが、2019年時点ではまだその噂は大きく立ってはいませんでした(もともとグリーンサブが50周年記念の特別枠なのでいつ廃盤になってもおかしくない、というようなことは言われていましたが)。
そのためこの価格高騰は、グリーンサブ 116610LVの魅力そのものが関係していたのでしょう。
現在では既に販売価格が300万円前後~といった勢いで、生産終了からまだ間もない2023年も、あるいは本年から150%超えの成長率を実勢相場で叩き出すやもしれません(ちなみに2022年の前年比は139%・・・!)。
価格が落ち着く気配を見せず、それでも買いがいっこうに止まないグリーンサブ 116610LV。現行モデルも素晴らしい出来栄えですが、「やはりハルク(116610LVの愛称)でなくては」といった声は小さくありません。
第1位 ロレックス デイトナ 116509 スティール×ブラック【CAGR:30.5%】
ケースサイズ:直径40mm
素材:ホワイトゴールド
ムーブメント:Cal.4130
防水性:100m
参考定価:4,801,500円
製造期間:2004年~
第1位は、2位以下とCAGRで大きく差をつけた、デイトナ 116509 スティール×ブラックモデルです!
第13位でホワイトゴールド製116519LNをご紹介致しましたが、その116519LNと同時にバーゼルワールド2017で発表されたのが、こちらのオールホワイトゴールド製デイトナ 116509 スティール×ブラック文字盤モデルです。
とは言え116509自体の歴史は古く、ラインナップは2004年~となっております。
この歴史の中で様々なバリエーションの116509が輩出されてきましたが、近年いっそう美しく高級感溢れる文字盤モデルが話題になっております。2016年にはブルー文字盤の116509が出て大きな話題となりましたが、このスティール×ブラックも、スタイリッシュな金無垢デイトナとしての地位を確立してきました。
ホワイトゴールドはずっしりとした金無垢特有の高級感を有しながらも、派手過ぎずステンレススティールのようなシンプルさも楽しめるのが良いですよね。
こういった魅力から、116509 スティール×ブラック文字盤は、2019年頃までは中古であっても販売価格400万円前後で推移してきました。金無垢デイトナの相場高騰はステンレススティール製モデルよりも遅かったものですが、116509は定価に肉薄する勢いを長らく保ってきたことを示唆します。
2020年に入ると相場高騰が多くの金無垢モデルにも及ぶようになり、コロナ禍で一時下落を見せるものの、すぐに急騰。2021年の平均販売価格は548万円、2022年は平均で693万円と、116500LNも驚きの上昇率を記録しました。
デイトナ全体の価格が上がっているということもありますが、デイトナ屈指の、そしてロレックス全体でも第1位につける成長率を見せたのが、こちらの116509 スティール×ブラック文字盤というわけです。
なお、年末ということもあり、2022年12月現在、既に販売価格は660万超となっております。
モデルチェンジなどなくとも、このままの成長を見せれば、あるいは2023年には700万、800万などといった価格を見せてくるかもしれません。2023年、相場動向を追っていきたいと思います。
ちなみに、スティール×ブラック文字盤と並んで非常に人気の高いブルー文字盤のCAGRは9.1%でした。
2020年まではスティール×ブラック文字盤の販売価格を上回っていましたが、2021年、スティール×ブラック文字盤が追い抜いた形となります。
2023年のロレックス価格動向を予測する
CAGRから、人気モデルの翌年以降の成長予測をある程度行うことは可能だ、と冒頭で申し上げました。
しかしながら高級時計の相場は、為替や社会情勢によって左右されるものです。
とりわけ2022年はコロナ禍、および近年の国際情勢による原価高騰、そして円安などといった外的要因が時計市場に大きな影響をもたらしました。
そこで本項で、2022年の高級時計市場とロレックス相場を振り返るとともに、2023年の動向を予測いたします。
2022年の高級時計市場とロレックス相場について
2021年7月、市場調査レポートプロバイダーReport Ocean(レポートオーシャン)より、下記の調査レポートが発表されました。
曰く、2021年から2027年までにかけて高級腕時計の世界市場は4.5%のCAGR(年平均成長率)で伸びていき、2027年までに513億1730万米ドルを達成する、と。
また、スイス時計協会(FH)の統計データによると、スイス時計の総輸出額は好景気だった2019年・そして過去最高だった2014年を凌いで2021年に223億スイスフランを記録!すなわち2021年はスイス時計の輸出規模が史上最高額につけたことを意味していますが、さらに2022年は、これを凌ぐのではないか、と。
こういったデータからわかるのは、現在高級時計市場が拡大し、ユーザー数も増え、売買が活発に行われているということです。
これは、何もここ最近といった話ではありませんが、やはり顕著なのは直近1・2年でしょう(ただし2020年は各国でロックダウン等があった関係で、スイス時計輸出額は大幅下落しております)。
この背景の一つには、コロナ禍があります。
新型コロナウイルスは人々の行動制限に繋がり、リアルでのコミュニケーションが鈍化しました。感染拡大の要因となりやすい会食や、旅行を始めとしたレジャーもまた控えられることとなりましたね。
このレジャーや飲食への消費が、高級嗜好品へと流れた、と言われています。実際に高級腕時計のみならず、高級食材や車の需要が大いに高まり、好景気を迎えてきたことは事実です。
もっとも、行動制限が緩和された後も、多少のアップダウンはあれ高級時計業界は堅調であったことは、特筆すべき点です。
これまた様々な要因があるとは思いますが(個人的には、腕時計の魅力やデザイン性における価値によって、ユーザー層を拡大させているという説を信じたいところですが)、「腕時計の資産価値」または「リセールバリュー(再販価値)」に対する認知度が格段に上がった、というものがあるように思われます。
ここで言う資産価値やリセールバリューには、様々な捉え方があります。
例えば高級腕時計の「再販しやすさ」がその一つでしょう。
かつて「中古」「セカンドハンド」と言った時、あまり良いイメージを持たない方も多かったのではないでしょうか。
しかしながら「高級腕時計は一大中古市場を築き、高い価値と価格で売買されている」ということが知られてきたからこそ、中古腕時計へのニーズが高まっていったと考えられます。中古腕時計は研磨や洗浄によって綺麗になること。情報化社会やeコマースの発達によって、中古品といえどコンディションを購入前にユーザーが把握しやすくなったこと。加えてサスティナビリティの観点から、メンテナンスによって次世代へ受け継ぐことのできる中古腕時計が改めて評価されている、ということが挙げられますね。
さらにここに加えて、「売却時、高級腕時計はある程度の価値・価格で手放すことができる」ということが知られてきた、というのも大きいです。
もともと、「腕時計を売買しながら楽しむ」といった好事家は結構いました。長らく中古市場を確立してきた腕時計ならではですね。
一方でここ最近では「買った時計を楽しんで、また別の時計が欲しくなったら下取りや資金源にする」といった購買マインドを持つユーザーが増えてきたことはもちろん、「腕時計の相場が上がっているから、投資対象になる」。このような情報が大手メディアでも取り上げられるようになってきました。
確かに腕時計はきちんとメンテナンスをすれば次のオーナーに受け継ぐことができるため、再販価値は高くなります。とりわけ人気ブランドであれば中古であっても値崩れしづらく、価値を維持しやすい傾向にありますね。
とは言え、「購入時の価格が売却価格を大きく上回る」などといった、投資対象となるような腕時計はほんの一部です。
しかしながら何度も言及しているように、ロレックスは「購入時の価格が売却価格を上回る」「定価を中古価格(二次流通価格)を上回る」といった相場を実現し、近年の中古価格の高騰を牽引してきました。
基本的にロレックスは一部モデルを除いて「ある程度量産されている製品」です。そのため「一点もの」「レアもの」といった稀少価値はあまり当てはまりません。
しかしながら高級ブランドとしての価値を守るために供給制限をしているであろうこと(いくら量産品とは言え、高級時計として作りこまれているため生産数には限りがある、という側面は有しているでしょう)。にもかかわらず、世界的な需要―中国などといった人口大国を中心に。ちなみに2021年のスイス時計輸出額の世界ランキングでは、1位がアメリカ。2位が中国。3位が香港。4位が日本です―が高まり、流通が追い付かないほどの買いが集中していること。これらの結果として、実勢相場が右肩上がりに高騰し、前述したような「購入時の価格が売却価格を上回る」「定価を中古価格(二次流通価格)を上回る」などといった様相を近年呈しているというわけです。
一方でこれだけ価格が上がってしまうと「買い控え」が見られるものですが、こういった現象も見受けられず、ロレックス相場は青天井などと囁かれるようになりました。
例えば現行デイトナ Ref.116500LNですが、過去最高の実勢相場を記録した際、黒文字盤は500万円前後、白文字盤は600万円超が続きました。現在の定価が1,720,400円であることを鑑みれば、凄まじいですよね。
とは言え、さすがに上がりすぎた感があったか。
2022年5月頃を境にジワジワと下落を見せ、9月に一度上がった後、現在では不安定な状態が続いている、というのは冒頭で述べた通りです。
さらに現在、これまでとは違った社会の動きも見受けられます。
新型コロナウイルスの感染防止策として各国で行われていた行動制限は、じょじょに緩和。日本でもまた以前のようにレジャーを楽しんだり、外国人観光客で賑わう日々が戻りつつあります。
また、ゼロコロナ政策を推し進めてきた中国も、大幅緩和を実施。依然として感染者は増加しているため、人手不足などといった状況で経済は混乱していると聞きますが、政府がワクチン追加接種を呼びかけるなどしていると聞きます。
では、こういった状況下で、2023年にロレックス相場はどのような動きを見せていくのでしょうか。
高騰するのか?下落するのか?現状維持か?
当店GINZA RASINの、時計バイヤーに聞いてみました!
時計バイヤーに聞く!2023年のロレックス相場動向
不安定な状況下での時計バイヤーの予想、かなり意見が分かれましたが、いずれもキーポイントは「新作発表」でした。
ロレックスは2021年より、Watches & Wonders Geneveに参画して新作発表を行っています。リアル開催し、さらにかつての大規模見本市のように一般客の参加日程も用意された2023年の同展示会は、3月27日~。
この新作発表の時期や内容いかんで、相場が大きく動くのでは、と。
時計バイヤーからは、下記のような意見が寄せられました。
「現状、相場が落ち着きを取り戻しているかに見える。事実、時計業界最大の繁忙期と言われる12月も、需要が高まっているがゆえに値上がりはしているが、近年の高騰に比べるとそこまでではない。
しかしながら、最近のロレックスの相場動向を見ていると、実は新作発表時期の値上がり率が高いことがわかる。これまでは閑散期にあたる1月~3月に、大いに価格が上がるのだ。そのため今後三か月間が、大きな山場となる可能性あり」
「年末から新作発表時期にかけて、現行ロレックスは5%は上がると予想。ただしWatches & Wondersでデイトナが新作発表されず、現行リファレンス継続となった場合は値下がり、デイトナモデルチェンジした場合は20%ほど爆上がりすると予想!」
また、これからジワジワにしろドカンとにしろ、上がる、と予測する声もありました。
「確かに2022年下半期は、ロレックス相場が不安定だった。しかしロレックス以外のブランドに目を向けると、高騰を続けている。例えばオメガやウブロ、ロレックスの兄弟ブランドのチューダーなどは、この一年で大きく実勢相場を上昇させた。つまり、時計市場は縮小の兆しを見せておらず、2022年上半期までのような爆上がりはなくとも、ロレックスも確かな需要のもと、高値更新することが予測できる」
「そもそも、まだまだプレミア価格。この6年、ロレックス相場は多少にアップダウンがあった。デイトナのモデルチェンジや市場拡大など、相場高騰の要因が散見される」
一方、今後は高値安定と予測するバイヤーの中には、ロレックスの購入層を分析する声も挙がりました。
「かつて、デイトナ Ref.116500LN ホワイト文字盤が400万円程度で推移した頃に揺り戻るのでは、と予想。なぜなら、ロレックスの購入者層が変わると考えられるから。
現在のロレックスの狂騒的な相場を形成したのは『時計好き』『手放す時に下取りに出せる、あるいは損しない程度に資産価値を購買マインドに入れるユーザー』に、『投資目的のユーザー』が加わったため、と分析する。ロレックス相場が落ち着いてきた今、投資目的のユーザーが離れて、純粋にデイトナが欲しいユーザーだった頃の相場感に戻るのでは?
それでも400万円という高値に驚きを禁じ得ないが・・・」
その他では、スポーツモデル以外の値上がりが予見されていました。
「今まで異常なプレミアがついていた商品は、このままいくと落ち着きを取り戻すと思います。一方でドレスウォッチや、オイスタークォーツなどの『これまで定番ではなかったモデル』が値上がりすると予想!
これは国内市場に限った話ではなく、海外のお客様がスポーツモデル以外を免税でご購入されるケースが増えています(実際、当店では免税販売は現行ロレックス以外の個体が強いです)」
以上が当店GINZA RASINの時計バイヤーが予測する、2023年のロレックス相場動向です!
いったい2023年はどのような情勢を描くのか。
2023年も、GINZA RASINはロレックス相場を追っていきたいと思います!
まとめ
過去6年間の買取相場から見るCAGR(年平均成長率)で、価格の伸び率が高いロレックスをご紹介するとともに、当店の時計バイヤーからのロレックス相場分析を掲載いたしました!
ロレックス相場の予想はなかなか難しいものがあります。何が起こるかわからないためです。でも、今は空前の高級時計ブーム!この機会に、今後の値上げに期待しつつ、お気に入りの一本を手に入れてみてもいいかもしれません。
文:鶴岡
■時計業界10年目。私がロレックス デイトジャストを勧めたい三つの理由
■サウジアラビアのロレックス正規店に行ってみた!日本で買えないデイトナ等スポーツモデルはあるのか?
■ロレックス相場研究所より。まだ安く買えるねらい目モデル9選
■東京 銀座で人気の高級腕時計ランキング。1位はロレックス、2位は?
■中古ロレックスを安く買うなら「年式」「仕様」「交換パーツ」を把握せよ!
この記事を監修してくれた時計博士
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年