IWC, WEBマガジン, グランドセイコー, セイコー, ミドルクラスのモデル特集, レディースウォッチ

精巧かつ繊細。ジャパニーズウォッチの名門ブランド「セイコー」の魅力を語る

2017/04/12

日本人で知らない人はいない、国内ナンバー1の時計メーカー「セイコー」。わたしたちの身の回りは”掛時計・置き時計・低価格時計”など、セイコー製の時計で溢れています。

一般的に「堅実、真面目、シンプル」といったイメージがあるセイコーですが、セイコーが”高級腕時計”の分野でも世界トップクラスのメーカーであることは意外と知られていません。

そこで今回は日本が世界に誇る時計メーカー「セイコー」の”精巧かつ繊細な腕時計”の魅力を語っていきます。

①セイコーの歴史

セイコーは1881(明治14)年に輸入時計を販売する服部時計店として服部金太郎が創業した時計メーカーです。1892年には時計工場である精工舎を現在の東京都墨田区に設立し、本格的な時計製造を開始します。

創立当初の精工舎は製造コストの低い掛け時計を中心に製造。他の時計メーカーとは違い、機械部分からケースに至るまで全てのパーツを自社で開発したことが精工舎の最大のポイントであり、その結果高品質な時計を量産することに成功しました。

その後、精工舎は順調に成長を遂げ、創立10年ほどで「置時計・掛け時計・懐中時計」の3部門をもつ国内唯一の総合時計工場にまで上り詰めます。1895（明治28）年には銀座4丁目に時計塔を建て、店舗としての営業を開始します。

設備を一新し、大量生産体制を整える

1899（明治32）年に服部金太郎は欧米の時計工場を視察。最新鋭の動力用蒸気機関や工作機械等を多数購入したことにより、精工舎の工場設備は一新、大量生産体制を整えます。そして開発された大衆向け懐中時計「エンパイヤ」が大ヒット。さらには国産初の腕時計「ローレル」を発売します。

輸出も本格化し、1911（明治44）年には、精工舎は日本生産時計の60％占め、世界に誇る日本の時計メーカーとして躍進を始めます。

セイコーの誕生

1923（大正12）年に精工舎は「関東大震災」に見舞われ、大きな損害を受けます。工場も全焼し、生産・販売は完全にストップすることに。。。

しかし、懸命の復興努力により約1年という短さで精工舎は復活を果たします。

そして翌年の1924（大正13）年、新たなスタートを精工舎は「精巧な時計を作る」という創業時の原点に立ち返るという想いを込めて、新しいブランド「セイコー」を創立させました。

銀座のシンボルになっている銀座和光の時計塔。現在銀座にある建物は1932（昭和7）年に立て直した二代目にあたります。そして、今なおセイコーホールディングス株式会社の登記上の本店でもあります。

世界のセイコーへ

第二次世界大戦による停滞・縮小があったセイコーですが、戦後の日本政府が”生産力の回復”を最優先とし”輸出立国”を基本とした行政施策をとったことが追い風となり、終戦5年ほどで再び経営を軌道に乗ることに成功。

戦後のセイコーは積極的に宣伝を強化し、需要の喚起とブランド認知の向上に力をいれていきます。そして、技術面でも独自の技術の確立を目指していきます。

出典：https://museum.seiko.co.jp/
1956（昭和31）年にはセイコーが初めて独自設計した機械式腕時計「マーベル」を開発。国際コンクールで優秀な成績を収め、世界で大きな注目を集めます。そして、「マーベル」をベースとして作られた「クラウン」、さらには当時の最高傑作「初代グランドセイコー」と次々と新型を発表。特に「初代グランドセイコー」は当時の世界最高の精度基準よりも厳しい規格により作られた最高品質の時計であり、遂にセイコーは世界最高峰の精度を誇る時計メーカーとしての地位を確立します。

セイコー独自の技術は更なる高みへ

1964（昭和39）年の東京オリンピックでは公式計時を担当し、大舞台で活躍したセイコーは時計業界のみならず、世界に認知されました。
セイコーの技術力は留まるところを知らず、「クォーツ時計」「デジタルクォーツ」「テレビウォッチ」「時計の小型化」「スプリングドライブ」など、世界初の商品を次々と展開。特にクォーツ時計の開発は時計史に大きな変化を与える出来事となりました。

現在もセイコーは腕時計の進化を促進するために日々開発に勤しんでおり、「正確・壊れない・見やすい・使いやすい、そして美しい」というセイコーの腕時計への理想を追求しています。

②時計の概念を変えた「クォーツ時計」

電池式時計とも呼ばれている「クォーツ時計」を作り上げたのは、日本のセイコーということをあなたはご存知でしたか？

現代の腕時計は「機械式」ではなく「クォーツ時計」が主流。クォーツ時計は極めて高い精度を誇り、更には機械式時計と比べて非常に安価で購入することが出来る量産化に最適な時計です。

2-1 クォーツ時計の開発

世界初のクォーツ時計は1969年に発表された「セイコークォーツアストロン35SQ」です。

出典：https://museum.seiko.co.jp/

「クォーツ」を搭載したセイコーの腕時計は、それまで機械式が主流であった腕時計の概念を変えていきます。
当時のクォーツの精度は日差”0.2秒”ほど。月差も”5秒”程度となっており、当時の機械式時計を凌駕する驚きの性能でした。

また、発表当時のクォーツ搭載モデルは最新技術を組み込んだ高級時計として扱われましたが、次第にクォーツの量産体制が整えられ、高精度で低価格の腕時計が増えていくことになります。

そして、このクォーツ時計の開発が「クォーツショック」と呼ばれる時計史に残る出来事を引き起こします。

2-2 クォーツショック

クォーツショックとはセイコーがクォーツ時計を開発したことにより、時計産業のあり方そのものが変わってしまった出来事です。
機械式時計の精度をはるかに凌駕してしまったクォーツ時計は、高級機械式時計を製造していたスイスの時計産業に大打撃を与えます。スイスの時計産業にとって一番問題となったのは「安価で精度の高い時計が量産できる」ということ。機械式に愛着がなく、正確な時間が知れればいいという人は機械式からクォーツにシフトしていき、スイスの機械式時計はどんどん追い詰められていくことに。。。

さらにはオイルショックやスイスフランの高騰により、追い打ちをかけられたスイスの時計産業は廃業するメーカーが続出。IWCといった一流メーカーですら倒産の危機を迎えるほどになります。

2-3 クォーツ時計とは

クォーツ時計とは「水晶の振動」を活用して時計を動かす技術を応用して作られた時計です。水晶は圧電体の一種である為、電圧を与えることで均一に振動を繰り返します。
水晶の振動を利用した技術は以前からあった技術ですが、腕時計に用いることができるほど小型化にできたのは、セイコーの高い技術による功績が大きいです。
また、比較的簡単な構造で、メンテナンスが容易なこともクォーツ時計をここまでメジャーな存在に押し上げた要因ではないでしょうか。

セイコーは「スピリット」「ワイアード」など低価格のクォーツブランドも展開しており、多くの人に親しまれています。しかし、低価格帯の印象が強いせいか、最高級の技術を誇る時計メーカーとしての認知度は国内では高くない現実もあります。

③完全マニュファクチュールによる時計製造

マニュファクチュールとは機械内部からケースまで全てを”自社一貫製造”する時計メーカーを指す言葉ですが、日本が世界に誇るセイコーもマニュファクチュールメーカーとして有名です。ただし、セイコーはただのマニュファクチュールではなく「完全マニュファクチュール」という世界でも極めて珍しい特徴を持つメーカーでもあります。

マニュファクチュールという定義は非常に曖昧で、内部パーツの一部を他社製で賄っていたとしてもマニュファクチュールと言われています。

機械式ムーブメントで一番製造が難しいとされている「ヒゲゼンマイ」と呼ばれるパーツの製造には極めて高度な技術力を要するため、世界三大メーカーを含む世界のほとんどのメーカーでも「ヒゲゼンマイ」だけは他社製であることがほとんどです。

そんな中、セイコーではヒゲゼンマイまでも自社生産しており、その高い技術力を世界に証明し続けています。

④実用時計の最高峰「グランドセイコー」

実用時計の最高峰と高い評価を得ている「グランドセイコー」。発売開始されたのは1960年で、スイス製の独壇場だった高級機械式時計に挑戦すべく、国産最高級腕時計として生まれました。
一見地味に見えるグランドセイコーのデザインですが、それは堅実に「実用時計の最高峰」を目指して進化を続けている証拠。現在のグランドセイコーは大きく分けて3つのムーブメントタイプの時計に分かれています。特に「スプリングドライブ」はセイコーが生み出した独自の機構であり、最高の精度を誇る機械式ムーブメントです。

グランドセイコーメカニカル

出典：https://www.grand-seiko.jp/about/movement/mechanical/

9Sメカニカルは機械式時計の仕組みを知り尽くした熟練の職人によって作られる「超高精度」のムーブメント。現在9Sメカニカルには6つのムーブメントラインナップがあり、どれも1/100mm単位の緻密な調整を手作業で組み上げていくことで完成させています。ヒゲゼンマイまでも自社で製造している完全マニュファクチュールだからこそ作り上げることができたムーブメントです。

グランドセイコー　9Fクォーツ

出典：https://www.grand-seiko.jp/about/movement/quartz/

グランドセイコーにのみ搭載されている9Fクォーツ。これが、グランドセイコーの大きな特徴の一つです。

9Fクォーツの魅力は何といってもその精度の高さ。「日差」を遥かに通り越して「年差」±10秒という凄まじい精度を誇ります。また、機械式時計よりも針を動かすトルクが弱くなってしまうのがクォーツ時計の特徴ですが、9Fクォーツは機械式時計に匹敵するトルクにするために「ツインパルス制御モーター」を搭載しています。

グランドセイコースプリングドライブ

出典：https://www.grand-seiko.jp/about/movement/springdrive/
機械式に限りなく近い構造を持ちながら、クォーツ並みの高精度を実現した画期的なムーブメント「スプリングドライブ」。電池も充電池も搭載せずに、クォーツ並の高精度”平均日差±1秒”を実現したハイブリット型の新型ムーブメントです。

機械式時計と同じゼンマイを動力源としており、ローターの回転運動を電気エネルギーに変換するのが特徴。僅かに発電された電気エネルギーが水晶振動子を動かし、高精度を実現しました。

スプリングドライブは機械式時計よりも複雑な機構になるため、製造に必要なパーツ数は400を超えるほど。そして、パーツはネジ一本からセイコー独自で作られています。

「機械式とクォーツの両方」を自社一貫生産している”完全マニュファクチュール”であるからこそ完成できた、セイコーにしかできないムーブメント。それがスプリングドライブです。