「ブランド時計の電池交換はどこでするのか分からない」
「高級時計でも家電量販店で電池交換をしていいのか迷う」
腕時計の針の動きが急に遅くなったり、止まってしまったりすることがありませんか?
それは「そろそろ電池交換のサイン」です。
でも、いざ交換となると「どこに頼めばいい?」「料金はどれくらい?」「自分で交換できないかな…」と迷う方は少なくありません。
特にブランド時計や高級モデルをお持ちの方なら、街の時計店でいいのか、家電量販店でも安心なのか、正規店にしか頼めないのでは…と不安になりますよね。
この記事では、ブランド時計をはじめとする腕時計の電池交換について、正規店・街の時計店・百貨店・家電量販店などの選び方とそれぞれの特徴をわかりやすく解説。
さらに、自分で交換する際のリスクや費用相場まで網羅しています。
大切な時計を長く愛用するためのポイントを押さえ、中古時計購入前のチェックとしてもぜひご活用ください。
目次
まずブランド時計の中でも、電池交換が必要なのは「クォーツ式」だけです。
クォーツ時計は一般的に2〜3年ごとに電池交換を要する一方で、機械式時計はゼンマイで動くため電池交換の必要がありません。
購入時にこの違いを理解していないと、思わぬメンテナンス費用や使い勝手の違いに戸惑うこともあります。
電池交換のコストが定期的にかかる点も踏まえて、自分に合った時計を選ぶ判断材料としましょう。
いざ腕時計の電池交換をしようと思った時、どこに持ち込めばいいのかわからない…いくらかかるか不安…そんな風に思う方もいらっしゃるでしょう。
そこで、「持ち込み先」「電池交換の価格」についてご紹介いたします。
はじめにまとめると、ブランド時計の電池交換は、主に以下の6つの場所で対応できます。
ブランド時計の電池交換は「どこでするか」によって、品質・価格・時間に大きな差がうまれます。
正規店は信頼性が高く、街の修理店は手軽でコストを抑えやすいです。
ブランドやモデルによっては対応できない場所もあります。
この記事では、主な選択肢とそれぞれの特徴を整理しながら、あなたの時計に合ったベストな電池交換の方法を見つけられるよう解説していきます。
電池交換したい腕時計の持ち込み先として、一番のお勧めはその時計の購入店です。
安価な時計であれば購入店ではなくても対応してくれるケースが多く、価格も大抵数千円で済みます。
ただ高級時計の場合は他店で購入した時計のメンテナンスは断られることが多いです。そのため購入店に持ち込むのが一番確実な方法と言えます。しっかりとした時計専門店で購入したのであれば、独自保証が設けられていることも少なくなく、そういったお店は提携工房を抱えているもの。早ければ持ち込んだその日に電池交換を済ませてくれるでしょう。
腕時計の電池交換はメーカーへ直接依頼するのも安心です。
電池交換の際は裏蓋を開く必要があります。詳細は後述しますが、一般的には「スクリューバック式」「スナッチバック式」等が裏蓋仕様に見られ、専用オープナーで開くこととなります。
しかしながらメーカーの中には特殊な裏蓋を用いていることも。
また、メーカー以外の器具で裏蓋が開かれた個体は「外部の手が加わった」を見なされ、正規メンテナンスの一切を断られてしまうケースもあるのです。そのため、メーカーは一番安心できる依頼先と言えるかもしれません。
百貨店や時計専門店では、熟練スタッフによる電池交換が受けられます。
正規店ほどではないものの、ブランドに応じた対応が可能な場合もあります。
利便性と安心感のバランスを求める方に人気です。
料金は4,000円〜6,000円程度が目安で、受付から仕上がりまでが比較的スピーディな点もメリットです。
家電量販店やモール内の時計コーナーでも電池交換サービスを提供しています。
利便性が高く、買い物ついでに利用できる点が好評です。
料金は1,500〜3,000円程度が多いですが、ブランドや構造によっては対応できないこともあるため、事前確認が必要です。
ただ家電量販店やリサイクルショップはその時計に対して必ずしも知識が豊富というわけではなく、専門の技術者ではなく店舗のスタッフが電池交換を行うこともあります。
電池交換は裏蓋を開くことで行われるため、時計の命とも言えるムーブメントが外気にさらされることとなります。しっかりと経験・ノウハウのある技師が手掛けないと、ゴミが入ってしまったり、外装に傷がついてしまったりすることも…!
その点、信頼できる購入店であれば商品知識があるため、メーカーに持ち込むか該当店舗の提携工房で行うかを提案してくれることでしょう。メーカーでの電池交換を希望する場合でも、購入店が時計専門店であれば、一度相談することをお勧めいたします。
街の時計店は、価格の安さと即日対応が魅力です。
費用は2,000〜4,000円前後で、短い待ち時間で気軽に利用できます。
ただし、防水検査や純正パーツの使用がないケースも多く、ブランド時計には向かないこともあります。
サブウォッチや気軽なモデルのメンテナンスにおすすめです。
電池交換は必ずメーカーに持ち込んだ方がいい…!とも、一概には言えません。なぜならメーカー正規メンテナンスは高額になるためです。
高級時計になれば4,000円以上かかることが多いです。
民間の時計修理店であれば、1,000円~、高級時計または特殊機構が付属したモデルだと2,000円~になります。
正規店では、ブランド基準に沿った電池交換が行われます。
使用部品や工程は純正仕様で、保証を受けられるので信頼性が高いのが特徴です。
費用は高めで時間もかかることがありますが、大切な時計を長く使いたい方には安心できる選択肢といえます。
電池交換を正規メンテナンスに持ち込む場合、4,000円以上の費用がかかるとお伝えしましたが、厳密にはブランドによって大きく差があります。
ここでは主要メーカーの電池交換費用を記載いたしますので、参考としてご活用ください。
※価格は税込となります。また、推奨公示価格のため、パーツ交換などによっては別途料金が追加されます。
※一部国内対応不可モデルもあり、その場合は別途料金が発生します。
ブランド | 価格 |
---|---|
ダグホイヤー 3針/クロノグラフ | 9,900円 / 9,900円 |
オメガ 3針/クロノグラフ | 18,000円〜 |
ブライトリング 3針/クロノグラフ | 15,400円 / 26,400円 |
カルティエ 3針/クロノグラフ | 5,170円〜 |
ブルガリ 3針/クロノグラフ | 12,100円〜 |
ハミルトン 3針/クロノグラフ | 5,500円/7,500円 |
グランドセイコー 3針/クロノグラフ | 1,540円〜 |
シャネル 3針/クロノグラフ | 6,500円〜 |
ユンハンス 3針/クロノグラフ | 4,000円〜 |
ロンジン 3針/クロノグラフ | 4,400円 |
ブライトリング 3針/クロノグラフ | 6,600円〜/11,000円〜 |
メーカーによる電池交換を希望する場合、電池交換のみ可能なメーカーとメンテナンスも合わせて行うメーカーに分かれます。
電池交換のみであれば費用を抑えることができますが、メンテナンス込みの場合は1万円以上かかることが多いです。
ブランドによって電池交換の対応内容は大きく異なります。
料金、対応窓口、所要時間、さらには点検内容に差があり「どこで交換するか」の判断に直結します。
ここでは主要ブランドの電池交換対応を比較しながら、ユーザーの選び方に役立つポイントを整理します。
費用については、公式サイトに記載がないことが多く、モデル名を正規窓口に伝えて確認するしかありません。
同じブランドでもモデルによって費用が異なりますので、ここではネット上での情報を参考に相場感のみ目安として記載します。
グランドセイコーでは、正規販売店やメーカーのサービスセンターで電池交換が可能です。
交換時には防水検査や精度確認も同時に行われるため、品質維持の面でも安心できます。
電池交換費用は約5,000円〜8,000円前後が一般的で、所要期間は1週間から2週間程度です。
タグ・ホイヤーの電池交換は、モデルによっては正規販売店や認定修理店などメーカー以外での対応が可能です。
ただし、高精度クロノグラフや複雑なムーブメントを搭載したモデルでは、専門的な技術が求められるため公式サービスセンターでの対応が推奨されます。
費用は20,000円前後〜が相場です。
オメガでは、スウォッチグループジャパンのサービスセンターが窓口となります。
電池交換には防水性の再確認や外装の点検が含まれることが多く、費用は20,000円前後からです。
所要時間は1〜2週間から数週間ほどかかる場合があります。
参考:オメガウォッチフォーラム
パテックフィリップの電池交換は、正規代理店やスイス本国とのやりとりが必要になる場合があります。
それ相応の時間が必要になることも想定しておきましょう。
非常に高価なモデルが多いため、自分での対応や街の修理店での作業は避ける方が安心です。
費用は公式サイトに130スイスフランと掲載(2025年時点)がありますので、日本円で2万円前後(為替変動がある為注意が必要)です。
ただし時計の状態やモデルによっては数万円になるケースもあります。
カルティエの電池交換は、正規ブティックや公式修理窓口で対応しています。
かかる期間は2週間程度、5,000~7000円前後からが相場とされています。
参考:カルティエ公式サイト
ハミルトンはアメリカ発のブランドですが、国内でも広く展開されています。
正規代理店やスウォッチグループ系列の店舗での電池交換が可能で、費用は4,000円〜程度です。
ユンハンスのクォーツ時計は、一般の時計店では断られることがあるので正規販売店や輸入代理店での電池交換が基本です。
費用はおおよそ4,000円前後からになります。
ブライトリングは防水性や耐衝撃性を備えたモデルが多く、電池交換には高い専門性が求められます。
正規サービスセンターでの交換が基本で、費用は3針であれば6,000〜、クロノグラフであれば12,000円程度が目安です。
対応には1〜2週間かかることが一般的です。
シチズンは全国の正規販売店や一部量販店でも対応しています。
エコ・ドライブモデルなど特殊構造の時計も多いため、純正部品が使われる店舗での交換が安心です。
費用は一般的に2,000円〜5,000円程度です。
参考:シチズン公式サイト
カシオのクォーツ時計は、G-SHOCKやEDIFICEシリーズを中心に展開されています。
街の時計店や家電量販店でも対応していますが、高機能モデルは正規対応が望ましいです。価格は約1,650〜5,500円が一般的です。
参考:カシオ公式サイト
IWCは精密機械を搭載した高級時計のため、必ず正規サービスでの電池交換を行ってください。
防水や磁気対策など繊細な要素が多く、費用は10,000円以上に及ぶこともあります。
期間は2週間程度を見ておくとよいでしょう。
現在はロレックスのクォーツモデルは非常に希少であり、電池交換に対応できるかは店舗と相談が必要です。
また、ロレックスは公式サイトにはクォーツモデルの電池交換サービスを掲載していないため、対応可能な修理店を事前に確認することが重要です。
正規サービスを通すことが望ましいですが、外部の修理店に持ち込むことも視野に入れましょう。
エルメスの時計は、ジュエリーに近い繊細な構造を持つモデルが多いため、正規ブティックでの対応が推奨されます。
ブティックでは動作確認も含まれ、費用は8,000円〜12,000円程度が相場です。
参考:ボンマルシェ公式サイト
シャネルでは、J12などのクォーツモデルを中心に電池交換サービスを展開しています。
正規ブティックまたは公認修理センターを通じて対応することで、防水性やパーツ互換性の問題を防げます。費用は10,000円前後が一般的です。
ブルガリの時計は装飾性が高く、精密な構造を持っています。
そのため、電池交換は正規店またはブランド指定の修理窓口で行うことが基本です。
費用は1万円前後を見込んでおくとよいでしょう。
ロンジンはスイスの老舗ブランドで、スウォッチグループがサービス対応しています。
電池交換は正規販売店またはサービスセンターで行い、価格は4,000円〜程度です。
腕時計の電池の寿命は、だいたい2~3年程度。高級機や高性能機の中には5年~10年といった長寿命の個体も存在しますが、いずれにせよ末永く使い続けていくために電池交換は避けて通れません。
では、腕時計の電池交換は、どのようなタイミングで行えばいいのでしょうか。
一般的には運針が止まった時に行う方が多いと思います。
しかしながら高級機やソーラー電波時計を始めとした一部の腕時計には、電池交換が近づくと秒針の動きがおかしくなるものが存在します。「おかしい」と言うのは時刻の遅れ・進みが見られるわけではなく、秒針の運針が2秒に一回のステップになったり4秒に一回のステップになったりするのです。
これは、電池の電圧低下を示すものです。通常、クォーツ時計は1秒間に1回のパルス信号が電子回路に送られることで運針を果たしています。しかしながら電池切れを起こすとこの省エネのためにパルスを低減させ、間隔を広げて信号が伝送されます。
前述の通り、一部の時計に見られる機構ですが、故障と間違われやすいので覚えておくと良いでしょう。
なお、電池切れをそのまま放置しておくと内部で液漏れを起こしてしまい、ムーブメント全体に被害が及ぶ可能性があります。そのため電池が切れたら、早めに対処しましょう。
ブランド時計の電池交換は、専門的な知識と技術が必要です。
自分で行うことは推奨されません。
誤った手順での交換は、故障や防水性能の低下、保証の無効化などのリスクを伴います。
安全かつ確実に電池交換を行うためには、正規のサービスセンターや認定修理店に依頼することをおすすめします。
ネットには交換用キットや解説動画も多く、コストを抑えたい人にとって魅力的な選択肢に映るかもしれません。
しかし、時計の種類によっては構造が複雑なので誤って部品を破損したり防水性を損ねてしまうリスクもあります。
特に数万円を超えるモデルや防水仕様の時計では、結果的に高額な修理費が発生することもあるため、自分での交換は慎重な判断が必要です。
電池交換は工具と知識があれば自分でも可能ですが、高級時計の場合はリスクが大きくなります。
内部機構やパッキンを傷つけてしまうと、防水性が失われたり故障の原因となることもあるため注意が必要です。
ブランド時計の電池交換を自分で行う場合、費用や時間の面でメリットがありますがリスクも存在します。
特に高級時計では、構造が精密なため工具の使い方を誤ると破損や不具合の原因になりかねません。
防水性能や内部の気密性が損なわれることで、結果的に修理費用が高くつくケースもあります。
費用を抑えたいという理由だけで判断するのではなく、時計の価値や使用頻度に応じて適切な方法を選択することが重要です。
自分で電池交換を行う最大のメリットは費用の節約です。
工具セットを揃えれば、1,000円以下で作業が済むこともあります。
郵送や店舗訪問の手間が省け、自分のタイミングで作業ができるのも魅力です。
最大のデメリットは、防水性能や精度に対する保証がなくなる点です。
うまく開けられなかったり、パッキンがズレたりすると故障の原因になります。
高価なブランド時計の場合、修理費が高額になるリスクがあるため注意が必要です。
「時計の電池交換は自分でできますか?」
こんなお問合せを頂くことがあります。
裏蓋を開けるための専用工具をお持ちの方で、ご自身でおやりになる方も見受けられます。
専用工具とは、まず時計を固定するための保持器(上の画像をご参照ください)。
そしてケースオープナーが必要になってきますが、前述した通り裏蓋にはいくつかの種類があります。
まず防水性・気密性確保に適したねじ込み式のスクリューバック。裏蓋をケースにねじ込んだ仕様となり、ケースオープナー(側開器)が必要です。
また、裏蓋をケースをはめ込んだスナッチバックでは、「こじ開け」オープナーを用います。
裏蓋とケースがネジで止められた仕様だと、精密ドライバー等でネジを開きます。
ブレスレットやベルトを外してから行うため、バネ棒外しも必要になってきます。
これらを、経験のない方が用意したり、実際に扱うのは大変です。
ムーブメントを外気に晒すことになるため、ゴミや塵といった異物が混入してしまうリスク。
誤って落下させて、ムーブメントにダメージを負わせてしまうリスク。オープナーで開閉を行ったりブレスレットを外す際、外装を傷つけてしまうリスクが考えられます。よほど慣れている方でない限り自分で電池交換をするのはお勧めいたしません。
電池交換を行う際、防水モデルとソーラー時計(ソーラー電波時計含)は特に注意が必要です。
防水モデルは裏蓋とケースにパッキンが仕込まれているなど特殊仕様となっているため、不用意に開けてしまうと防水性が著しく低下します。
同様に特殊機構ムーブメントも、個人では電池交換できないことがほとんどです。
これはソーラー時計にも言えることですが、汎用クォーツムーブメントと比べて複雑な機構をしているムーブメントは、一度蓋を開けると元に戻せなくなってしまい、かえって費用がかかってしまう場合があります。
繰り返しになりますが、電池交換は自分でやろうとはせず、購入店に相談したり、信頼できる修理店にお任せしましょう。
クォーツ式腕時計の電池交換について解説いたしました。
腕時計の電池は通常2~3年、高級機や高性能機であれば5~10年スパンで交換の必要が出てくること。電池交換の費用は民間で1,000円~、メーカーで4,000円~であること。しかしながらご自身でやるには工具が必要だったり様々なリスクが考えられるため、信頼できる修理店やメーカーに依頼した方が良いことをご理解いただけたでしょうか。
大切な腕時計を末永く愛用するためにも、適切な対応を心掛けていきましょう!
当記事の監修者
廣島浩二(ひろしま こうじ)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 課長
1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年