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高級時計の世界は、しばしば天井がないなどと称されます。プライスレンジが幅広く、数十万円~億超えの個体が市場を構成しています。

そんな中において、最高峰の呼び声高いブランドをご存知でしょうか。

それは、パテックフィリップです。

オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンとともに世界三大時計に名を連ねますが、さらにその中でも頭一つ抜きんでていると言われるパテックフィリップ。当然ながら手掛ける製品も最高峰で、定価1000万円超、あるいは「時価」としてローンチされることも珍しくありません。

さらに、こういった「定価」のみならず、オークションを始めとした二次流通市場では「高くても欲しい」という需要に下支えされ、他ブランドに比べても高額な値付けで取引されています。

パテックフィリップは、なぜここまで高い価格になるのでしょうか。
どのように人々の所有欲を満たし、「高くても欲しい」という購買マインドを作り上げているのでしょうか。
パテックフィリップの時計は、どういった価値があるのでしょうか。

この記事では「パテックフィリップはなぜ高いのか?」を、わかりやすく解説いたします。

パテックフィリップ

 

パテックフィリップとはどのようなブランドか?

パテックフィリップは1839年、スイス ジュネーブで創業したブランドです。

ポーランドから亡命してきたアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック氏とフランソワ・チャペックとともに設立したパテック・チャペック社から、その歴史がスタートします。

1844年にはフランス パリの時計師ジャン・アドリアン・フィリップ氏が経営に参画。氏は鍵巻き式が一般的であった時代の中で、リューズ巻き上げ式懐中時計を発明したことで知られています。

そうして1851年には、パテックフィリップへと社名が変更されました。

「リューズ巻き上げ・時刻合わせ式時計」や「高精度緩急調整機構」、「ダブル・クロノグラフ(スプリット秒針クロノグラフ)機構」などといった革新的な開発・製造で特許を取得していくかたわら、美しくデザイン性に富んだ時計を連綿と作り続けていき、イギリスやハンガリー、イタリアなどといった各国の王侯貴族にパテックフィリップは愛されていきます。

出典:https://www.patek.com/en/home

 

1932年に入ると、スターン家が経営を引き継ぎます。

この同年、現行パテックフィリップを代表するモデルであり、「丸形時計の規範」などと称されるカラトラバの初代モデルRef.96が誕生しています。

 

その後も連綿と歴史を紡いでいくパテックフィリップですが、スイス時計業界は1970年代に大きな転機を迎えることとなりました。

それは、クォーツ式時計の誕生です。

後述しますが、伝統的な時計はゼンマイを駆動力とした機械式が採用されています。しかしながら1969年、セイコーから「アストロン」と命名された、電池で駆動し、水晶振動子(クォーツ)によって精度を取る新機構が開発されると、シェアはまたたく間にクォーツに奪われていくことに。なぜならクォーツ式時計は量産可能で、しかもある程度の精度・性能が担保されるような構造であったためです。

当時はスイス時計業界全体が不振に陥っていたことも重なって、老舗ブランドが休眠したり、倒産に見舞われたりすることとなりました。

そんな中においてもパテックフィリップは歩みを止めません。むしろ、クォーツ式への開発も、いち早く始めていたと言います。

さらに1976年には同社初となる傑作スポーツウォッチ「ノーチラス」を発売。

やがて機械式時計が復興していった1989年には、パテックフィリップ創業150年ということもあり、33もの複雑機構を搭載した懐中時計「キャリバー89」を発表しました。

パテックフィリップ キャリバー89

出典:https://www.patek.com/en/home

 

そして現在、時計業界では主に三つのコングロマリットが存在します。

「スウォッチグループ」「リシュモングループ」「LVMHグループ」です。

多くのブランドがこのいずれかのコングロマリットに参画し、巨大資本のもと、高度な時計製造や開発を行うのですが、パテックフィリップは一貫して独立経営を貫いていることも特筆すべき点です(何年か前にパテックフィリップが株式を売却するなどといった噂が流れましたが、明確に否定されています)。

例年意欲的に新機構や新デザインの発表を行っており、パテックフィリップの時計業界での存在感は、いっそう高まるばかりです。

 

なお、「パテックフィリップがどれくらい高額か」の一例として、いくつかの代表モデルをご紹介いたします。

まずノーチラス。

パテックフィリップ 人気

前述したように1976年に発表された、同社初のスポーツウォッチで、オーデマピゲ ロイヤルオークと並んでラグジュアリー・スポーツウォッチといったジャンル分けがなされます。

現在ノーチラスは世界的な需要が急騰しており、ステンレススティールモデルのRef.5711/1Aなどは定価3,872,000円のところ、2000万円超で売買されることも!5711/1Aは生産終了したことも相まって、パテックフィリップのレギュラーモデルの中では、過去類を見ない相場急騰を記録しています。

 

また、カラトラバもパテックフィリップを代表するモデルです。

パテックフィリップ カラトラバ

クラシック&ドレッシーであり、理知的な大人に着けこなしてほしいこのコレクション。

ノーチラスほど価格高騰していなかったものの、近年では高級時計市場の拡大とともに買い手が増えたこともあり、高年式のモデルは中古であっても200万円台~。カラトラバは歴史が長く、そのため流通量は少なくないのですが、それでも昔から100万円を切ることはなかなかありません。

その他では1997年、同じくスポーツウォッチとしてリリースされた「アクアノート」やアールデコ調が華麗な「ゴンドーロ」、往年の名作「ゴールデンエリプス」等と豊富な代表作が存在しますが、レギュラーモデルであっても100万円台~5・600万円台~が中古の相場感。

さらにコンプリケーション(複雑機構)コレクションは数百万円~。中にはパテックフィリップが「時価」として打ち出している、恐ろし気なモデルも・・・!

 

世界的オークションを覗くと、さらに高額な時計が行きかいます。

パテックフィリップ グランドマスターチャイム

※Cal.300 GS AL 36-750 QIS FUS IRMを搭載したグランドマスターチャイム 2019年発表モデル(画像出典:https://www.patek.com/en/)

オークションに出品されるようなレア・タイムピースは億超えが当たり前となっており、2019年11月に行われたンリーウォッチ・オークションにて、パテックフィリップのグランドマスター・チャイムがおおよそ33億5千万円で落札されました。

ちなみに前述したSS製ノーチラスであっても、2021年にティファニーとのダブルネームで発表されたモデルが約7億3500万円で落札されているというのだから、恐るべしパテックフィリップ。

 

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パテックフィリップはなぜ高い?四つの理由

華やかな歴史とブランドストーリーを有するパテックフィリップ。

とは言え、高級時計の世界にはこういった伝統を保持するブランドは少なくありません。

例えばパテックフィリップとともに世界三大時計に名を連ねるヴァシュロンコンスタンタンは、1755年の創業以来、一度も途切れることなく歴史を紡いできた老舗中の老舗です。また、ブランパンは1970年代に一度休眠するものの、1735年創業と、現在の時計業界屈指の歴史を誇っています。

その他にもオーデマピゲやブレゲ、ジラールぺルゴにジャガールクルト等々・・・歴史的ブランドを挙げ出すとキリがありません。

すなわち、パテックフィリップが「超」高級品で、業界最高峰に位置するのは、歴史や伝統だけが理由ではない、ということです(もちろん、上記で並べたブランドもまた、いずれも高級時計業界を代表する名門であり、素晴らしい製品を連綿と作り続けておりますが)。

歴史と伝統に加わる、パテックフィリップの実力とは?

 

理由①最高峰のムーブメント

世界三大腕時計

「ムーブメントがすごい」と言った時、いくつかの意味合いがあります。

例えば「仕上げや装飾が美しい」あるいは「精度や性能が素晴らしい」「実用性が素晴らしい」等です。

そしてパテックフィリップは、その全てを兼ね備えていると言って良いでしょう。

※ムーブメント・・・腕時計を駆動させる、エンジンに当たるパーツです。このムーブメントで、時計の精度(正確さ)や性能の大きい部分が決まります。
時計のムーブメントには機械式とクォーツ式とがあり、前者はゼンマイを、後者は電池を駆動力としています。一般的に機械パーツが増える機械式の方が、製造コストが高い傾向にあります。

 

まずパテックフィリップのムーブメントを知るうえで、知っておきたいのはマニュファクチュールという用語です。

時計業界でマニュファクチュールと言うと、時計のムーブメント設計・製造・組み立て、ケーシング、外装のデザインや設計・製造・・・こういった工程を自社で一貫して行うメーカーを指しています。

実際にはグループ企業内で共通エボーシュ(半完成品ムーブメント)を用いたり、一部分を外部サプライヤーに依頼したりすることは珍しくありませんが、パテックフィリップでは完全なニュファクチュール体制を整え、シンプルな3針モデルから超複雑機構に至るまでを自社一貫生産している、大変稀有なブランドです。

パテックフィリップ ワールドタイム

なお前述の通り、パテックフィリップはスウォッチグループやLVMHなどといったコングロマリットには属さない独立企業です。

上記のような大規模な生産体制を自社で一手に担っているということは、こういったコングロマリットに劣らぬ資本力、そして随一の時計製造技術を有していることの証左と言えるでしょう。

ちなみに、完全マニュファクチュールメーカーとしては、パテックフィリップ以外ではロレックスやグランドセイコーが挙げられます。

 

高度なマニュファクチュールのもと、パテックフィリップが手掛けるムーブメントは、まさに超高級機。

高級時計に求める価値は人それぞれだと思いますが、やはりパテックフィリップクラスの雲上ブランドともなると、高級ムーブメントが求められることは言わずもがなです。

ではどういった点が高級ムーブメントなのかと言うと、それは見た目の美しさです。

ある一定クラスのブランドのムーブメントになると、美観が非常に磨かれていきます。

それは、ブランドが高度な仕上げや面取り、装飾を施すため。ちなみに、こういった仕上げ・装飾に機能的な意味合いはありません。機械加工後の跡を取り除いて美しく仕上げる。すなわち「観賞して楽しむ」という、なんとも贅沢な味わいのために、ブランドは少なくない時間と手間をかけて仕上げ・装飾を行っていきます。

 

例えば上記はパテックフィリップを代表するムーブメントですが、ブリッジやローターにはジュネーブ仕上げという縞模様が施されています。また、丁寧に面取り(エッジ部分を磨き、いっそうの見栄えを意識した技法のこと)が見て取れること。さらにいかにも精密なテンプであるおとは、一目で美しいとわかりますね。

近年では工作技術が発展し、こういった仕上げをある程度オートメーション化する動きもあります。しかしながら名うての職人らが、伝統的な手仕上げによって施す出来栄えは、圧巻。神がかっているとすら言って良いでしょう。

そしてパテックフィリップは、そんな「手作業」を今なお大切にしているがゆえ、製造に時間と手間がかかった結果、高級品になっていくというわけです。

ちなみに、近年ではシースルーバックが主流となってきたため、裏蓋から美しいムーブメントをオーナーが鑑賞できる機会も増えてきました。いっそう、パテックフィリップのような超高級機を楽しめる風潮と言えますよね。

もっともパテックフィリップは、見えない部分にもしっかりと仕上げを施します。

 

さらにパテックフィリップのムーブメントは、ただ美しいだけに留まりません。性能面についても、老舗らしく一家言持っております。

そのエピソードを象徴する一つが、パテックフィリップ・シールではないでしょうか。PPシールなどと表記されることもあります。

パテックフィリップ・シールというのは、同社独自の品質規格です。

パテックフィリップでは創業170周年を迎えた2009年、パテックフィリップ・シール宣言を行いました。

パテックフィリップ・シールは同社の厳格な基準のもと、精度、ムーブメントおよび外装(ケースや針、プッシャー、ブレスにバックル等々)の品質、仕上げ方法、検査方法、アフターサービスなどといった時計にまつわる全ての水準を最高レベルに仕上げたことの証明です。

もともとジュネーブ・シールと呼ばれる、伝統的な品質規格に準拠してきたパテックフィリップですが、2009年以降、同社が「最高水準」と自負する独自規格へとシフトを行い、現在では全製品にパテックフィリップ・シールを準拠させています。

よくムーブメントの精度での品質規格として「クロノメーター」が挙げられますが、こちらの平均日差の許容範囲が4秒~+6秒以内(サイズによる)であることに対し、パテックフィリップは日差−3~+2秒。厳格さが垣間見えるのではないでしょうか。

パテックフィリップ・シール認定機には、ムーブメントにPPシールの刻印が施されます。

※PPシール

なお、これ以前のムーブメントにはジュネーブシールの証として上記の刻印が施されております。当然ながら、ジュネーブシールも厳格かつ伝統を体現した業界最高レベルの品質規格となり、パテックフィリップの時計の完成度の高さを象徴する刻印と言えるでしょう。

※ジュネーブシール

ちなみにパテックフィリップ以外でジュネーブシールを獲得しているのは、ヴァシュロンコンスタンタン、ショパール等のごく一部の名門です。

このように、美技ともに熟達した職人らが、高度に作り込んだムーブメントであるがゆえ大量生産とは無縁で、高額品になる、ということです(職人らの育成にも、当然お金がかかりますね)。

 

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理由②他の追随を許さない革新性と開発力

パテックフィリップ ノーチラス

「良いモノを作る」ことは、高級時計ブランドを高級時計ブランドたらしめる一つのアイデンティティです。

パテックフィリップは、さらに一歩進んで精密・精緻かつ革新的な機構を開発し、いっそうの高みを目指す点で、最高峰の名を欲しいままにしていると言えます。

 

先ほどパテックフィリップは「ムーブメントから自社製造」するマニュファクチュールである、とお話しました。

パテックフィリップの驚くべきは、シンプルな機構のみならず、クロノグラフやパーペチュアルカレンダー、ワールドタイムなどといった複雑機構搭載ムーブメントに至るまでを、自社製造していることにあります。

とりわけクロノグラフ製造の際、各ブランドは優秀なサプライヤーのムーブメントを採用することが多いです。パテックフィリップも、かつてはヌーベル・レマニアなどといった名門サプライヤーからベース供給を受けていましたが、2005年に完全自社開発・製造のクロノグラフをリリースして以降、この機構ですらも自社で手掛けることとなりました。

※クロノグラフ・・・簡単に言うと、ストップウォッチ機構を搭載したモデルのこと。非常に人気が高い一方でクロノグラフ針の制御機構などパーツが煩雑になり、自社製造を行っているブランドは多くありません。

 

さらに「良いモノを作る」に留まらず、パテックフィリップは年々革新的な新機構を発表しているということも特筆すべき点です。

例えば2022年には、36,000振動/時のハイビート・1/10秒 モノプッシャー・クロノグラフをリリース。

パテックフィリップ 2022年新作

出典:https://www.patek.com/en/home

 

ハイビートというのはテンプの振動数のことで、ここが速ければ速い分高精度を出しやすい一方で、パーツの摩耗やエネルギー消費が避けられないといったデメリットを有します。しかしながらパテックフィリップではハイテクシリコン素材を用いた新しい調速機構を開発・搭載することで、このデメリットを解消。

さらに通常1分間に一周するクロノグラフ針が12秒で一周し、かつプッシャーを一つしか持たない(1/10秒 モノプッシャー)、鮮烈な新作を世に送り出してきたのです。

「超高級時計」と言うと伝統と格式のイメージがあるかもしれません。パテックフィリップは、むしろ老舗でありながら他社が気軽にはできないことを、年々といったハイペースでやってのけるのだから、革新と言わずして何と称すれば良いのかわかりません。

 

もちろんクロノグラフのみならず、パーペチュアルカレンダーやアニュアルカレンダー、トゥールビヨンにミニッツリピーターといった、超複雑機構も開発・製造しているのがパテックフィリップというブランドです。

こういった複雑機構を限定モデル等でリリースするブランドは結構ありますが、パテックフィリップは何とコレクション展開しているということも特筆すべき点です。コレクションとして、製造難易度の高い複雑機構を量産するというのは、それだけ高い技術力を有してなくてはできないためです。

パテックフィリップ コンプリケーション

余談ですが、パーペチュアルカレンダーは大の月・小の月、閏年などといったカレンダー機構を記憶し、丸1世紀ほども手作業での日付調整いらずの超複雑機構です。さらに文字盤上には時分針・秒針の他、年月日や月齢などもレイアウトされていることが特徴です(当然、機械式となります)。

この機構を最初に腕時計に落とし込むことに成功したのは、パテックフィリップと言われています。

またパーペチュアルカレンダーよりもシンプルで実用性に富んだアニュアルカレンダーという複雑機構もあります。これは一年に一度、2月末日に日付調整を行えば、あとは自動でデイト切り替えを行ってくれる機構です。1996年、アニュアルカレンダーの特許を取得し、業界に先鞭をつけたのも何を隠そうパテックフィリップです。

パテックフィリップ パーペチュアルカレンダー

「良いモノを作る」ことに加えて、「新しいモノを開発する」能力ゆえに、パテックフィリップは世界最高峰の名を欲しいままにしているのでしょう。

なお、パテックフィリップの革新性や開発力が活きるのは、何も「あっと驚く超複雑機構」に留まりません。

例えば、現在では業界のスタンダードとなりつつある「シリコンヒゲゼンマイ」。

ヒゲゼンマイは機械式ムーブメントの「テンプ」と呼ばれる部分の一パーツで、時計の脳幹と言って過言ではありません。ヒゲゼンマイは非常に微細なパーツながら、外乱の影響を受けやすく、ここにダメージが加わると時計の正常な動きが妨げられます。

この正常な動きの妨げの一つに磁気があります。

磁気はスマートフォンのスピーカー部分やマグネット等々、私たちの身近なプロダクトから、常に発せられています。金属パーツの多い腕時計はこの磁気に近づけると、パーツが磁化してしまいます。とりわけヒゲゼンマイが磁化することで、時計の精度に大きな影響を及ぼすばかりか、あまりにひどいとオーバーホールが必要になる場合も。「時計の不具合を見たら、まず磁気帯びを疑え」などとのたまう専門家もおり、現代社会において、なかなかどうして油断ならない相手です。

一方で近年では、磁気の影響を受けづらい非磁性素材をヒゲゼンマイに用いる向きが各ブランドで盛んです。そしてこの風潮は、パテックフィリップがシリコンヒゲゼンマイによって先鞭をつけました。

 

多くの製品がそうであるように、腕時計のこういった革新機構の開発もまた、莫大なコストがかかるものです。また、レギュラーモデルよりもいっそう、大量生産とは無縁であることは、言わずもがな。

一方で例年、時計愛好家の耳目はいつもパテックフィリップの新作・新機構に集まっています。すなわちパテックフィリップは、こういった革新性・開発力をブランディングに活用し、また愛好家らもパテックフィリップの企業価値に一目置くことで、開発費や製造への手間暇が上乗せされたプライスレンジが、「適正価格」として受け入れられているのです。

 

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理由③高い作り込みによって実現された美しい外装

パテックフィリップ ノーチラス プチコン

もちろん外装も世界最高峰なのが、パテックフィリップ。

ムーブメントや機構の精密性もロマンを感じますが、やはり高級時計を買うなら、満足のいく外装を求めますよね。その点、パテックフィリップは外装の美も大満足。最高峰の出来栄えを堅持しております。

 

前述の通り、マニュファクチュールによって自社一貫製造を行うパテックフィリップ。そのためケースや文字盤製造にも一家言持っており、職人らの丁寧で確実な工程を経て、製品化されています。

その一例が、ムーブメントの項でも言及した「仕上げ」です。

ラグジュアリー・スポーツウォッチのノーチラスが、仕上げから見出せる「美」の点で、好例となるでしょう(もちろん、全てのパテックフィリップ製品に言えることですが)。

パテックフィリップ ノーチラス クロノグラフ

ノーチラスは一般的なスポーツウォッチと異なり、きわめて薄く上品なケース・外装を有します。

こういった薄型モデルは製造が難しいことはもちろん、スーツの袖口に収まるエレガンスから、パテックフィリップのような雲上ブランドは好むサイズです。一方で薄型は「のっぺり」とした印象になりがち。高級機は立体感が一つの指標となるため、のっぺりな腕時計は、どうしても安価な印象をぬぐえません。

しかしながらパテックフィリップは、つや消し仕上げとポリッシュ仕上げを丁寧にコンビネーションすることで、薄型でありながら巧みな立体感を実現しています。また、これら仕上げに歪みはなく、高度な手作業ならではで生み出された質感があります。

 

なお、ただ見た目に美しいだけでなく、「着けて楽しい」のもパテックフィリップの外装の大きな魅力です。

例えばメタルブレスレットや薄いケースはしなやかに腕に絡みつき、決して派手さはないサイズ感にもかかわらず、スーツの袖口で存在感を発揮します。

 

さらにパテックフィリップは、素材使いにかけても超一流!

パテックフィリップ ゴンドーロ

出典:https://www.patek.com/en/home

例えばダイヤモンド。

ダイヤモンドには明確な品質基準があり、ブランドによってどのグレードの個体を扱うかはまちまちです。しかしながらパテックフィリップでは、ジュエラーをも凌ぐ自社基準のもと、最高品質のダイヤモンドのみを採用しているのだとか。

 

パテックフィリップの完成されたデザインとプロポーション、そしてそれらを実現する最高品質の素材たち・・・

パテックフィリップの時計を見ると、「そもそもの原価が高い」ということがおわかり頂けるかと思います。

 

理由④最高峰のアフターケア体制

パテックフィリップ アクアノート

機械式時計は、定期的なオーバーホール(ムーブメントの分解洗浄)を欠かさなければ、基本的には末永く愛用できるものです。

しかしながら落としてしまった。あるいはメンテナンスを怠っていたら、内部がサビてしまった。こういった時、「修理」が必要になります。

オーバーホールだけで済めば良いのですが、劣化・破損したパーツは交換してもらわなくてはなりませんね。

ここで知っておきたいのが、一般的に多くのブランドは「パーツ保有期間」を設けている、ということです。

パーツ保有期間は「生産終了後、一定期間はパーツをブランドで保有しておく期間」で、この期間内であれば基本的にブランドで修理が可能です。しかしながら、生産終了した個体のパーツの、工具・金型に至るまでをずっと保管しておくことは、大きなコストがかかるものです。そこで各ブランドは一定期間のみパーツを保有し、あとは破棄する、といった体制を敷いていることがほとんどです。

もっとも、これは「パーツ保有期間を過ぎたから修理・メンテナンスを受け付けない」というわけではないことを、注記しておきます。高級時計ブランドの多くが、パーツ保有期間を過ぎた個体でも修理・メンテナンスしてくれています。

パテックフィリップ ノーチラス

一方のパテックフィリップは、このパーツ保有期間を設けていません。

すなわち、創業以来、自社が製造してきた時計であれば、永久に修理を受け付ける、ということ!

パテックフィリップは長い歴史の中で様々な時計やムーブメントを手掛けてきましたが、その全ての修理に対応するというのは、なかなかどうしてできることではありません。いかにパテックフィリップが自社製品を「一生モノ」かつ「子々孫々、代々伝わる家宝」のように考え、またブランディングにも活かしているかがおわかり頂けるのではないでしょうか。

なお、わが国にもパテックフィリップのサービスセンターが存在し、ここで修理を受け付けてくれます。ただし国内対応が難しい場合は、スイス送りになるケースもあることは知っておきたいですね。

 

ちなみに永久修理を行っている時計ブランドとしては、パテックフィリップの他にオーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタン、ジャガールクルト、IWC等が挙げられます。

 

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まとめ

パテックフィリップは、なぜ高いのか?

パテックフィリップには、どんな価値があるのか?

こちらを本稿でご紹介いたしました。

 

世界最高峰の品質と美しさ、そして時計製造技術のへのこだわりを持つパテックフィリップの製品は、時計業界随一の価値を誇ります。

高いけれど、しかしその価値にふさわしい美技を備えるがゆえ、愛好家らの所有欲を満たすパテックフィリップ。

今後も時計業界を、そして高級時計市場を牽引する存在であることは間違いありません。

文:鶴岡

 

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この記事を監修してくれた時計博士

田中拓郎(たなか たくろう)

高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター

当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年

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