「ロレックスのランダムシリアルって何?」
「ロレックスのシリアルナンバーの読み方は?シリアルナンバーは重要なの?」
ロレックスの腕時計をお得に購入したい方は、シリアルナンバーについて知りたいのではないでしょうか。
シリアルナンバーは、ロレックスの個体が本物である証になるとともに、製造年や腕時計の価値を知るための大切な認識番号です。
アンティークなど、現行品ではないロレックスの購入を考えている方は、特にシリアルナンバーについてきちんと知っておく必要があります。
この記事では、ロレックスのシリアルナンバーとランダムシリアルに関して、読み方や意味を解説します。
シリアルナンバーから読み解く本物と偽物の違いについても解説していますので、中古品を購入するにあたって不安を感じている方はぜひ参考にしてください。
目次
ロレックスの愛好家や中古市場では、「ロレックスのランダムシリアル」という言葉がよく登場します。
ロレックスでは製品の個体一つ一つにシリアルナンバーを刻印しており、法則性があることが解明されてきました。
しかし、2010年を境にロレックスではランダムな組み合わせのアルファベットと数字をシリアルナンバーに使用するようになり、従来の法則性で読み解けなくなりました。
2010年以降に製造されたロレックスや、それらの個体に刻印されているナンバーを、俗に「ロレックスのランダムシリアル」と呼称しています。
2010年以降に製造されたロレックスに刻印されている「ランダムシリアル」と、従来のロレックスシリアルナンバーとの違いを解説します。
従来のシリアルナンバー |
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1927年~1941年は5桁の数字 |
1941年 ~1987年前半は6桁の数字 |
1955年に100万個製造を超えてリセット |
1965年~1987年前半は7桁の数字 |
1987年後半~2010年は頭にアルファベットと6桁数字の組み合わせ |
2004年頃までは6時側のケース側面に刻印 |
ランダムシリアル(2010年以降) |
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8桁のランダムな英数字 |
2004年〜2006年頃にかけて、風防ガラスの内側にあるインナーリングにシリアルナンバーを刻印する「ルーレットシリアル」と呼ばれる方法が採用されるようになり、定着します。
まるでルーレットの数字のようにシリアルナンバーが刻印されており、以下の2つの大きなメリットがあります。
ロレックスの本体には2種類の番号がふられており、一方がシリアルナンバー、もう一方はリファレンスナンバーと呼ばれています。
シリアルナンバーとリファレンスナンバーの違いについても、わかりやすく解説します。
シリアルナンバー |
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製品一つ一つに付与される個体としての識別番号 |
ケースの6時位置に刻印(~2004年頃) |
腕時計内部にルーレット状に刻印(2004年頃~) |
リファレンスナンバー |
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ロレックスのモデルとその系統を識別できる番号 |
Ref.で始まる数字とアルファベットがリファレンスナンバー |
数字の組み合わせでモデルやベゼル・ケースの素材を表す |
数字は古いものから4桁・5桁・6桁が存在する |
数字のあとに装飾やカラーを表すアルファベットが並ぶ |
ケースの12時位置に刻印されブレスレットを外さなければ見えない |
シリアルナンバーは、個体そのものに付随する製造番号で、同じ英数字の並びを刻印された個体は存在しません。
リファレンスナンバーは個体のモデルや素材、装飾などを表すもので、同じ英数字の並びが刻印されていれば、全く同じモデルであるとわかります。
ロレックスのシリアルナンバーの法則性は、ロレックスが公式に発表しているものではありません。
ロレックスを扱う時計商や愛好家などが研究を重ねて、膨大な量の個体とシリアルナンバーやリファレンスナンバーの組み合わせをチェックし、見出したものです。
そのため、一部シリアルナンバーの法則性に合わない個体や、ケースの交換や摩耗によって読み解けない個体も存在します。
秘密主義で製品管理も厳しいロレックスの中古良品を見分けるためには、プロの経験値と確かな目が必要です。
ロレックスのランダムシリアルには、一見すると単なる変更に思えますが、実は購入者にとってメリットもデメリットも存在します。顧客の立場から見てメリットとデメリットがあります。
このランダムシリアルのメリットとデメリットを理解することで、購入する際に気を付けるべきポイントもはっきりします。
特に大きなデメリットである、保証書の有無が価値に大きな影響を与えるというものに関しては、必ず知っておいた方が良い内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
メリットから順番に解説していきます。
シリアルナンバーがランダムになり、風防ガラス内部に彫りこまれるようになったため、複製が困難になったというメリットがあります。
シリアルナンバーによる年代やモデルの特定が難しくなったことや技術の向上により、偽物が作りづらくなり、市場にも偽物が流れにくくなりました。
偽物が出回りにくくなると、腕時計市場で安心感が広がり、相対的に腕時計の資産価値も安定します。
ランダムシリアルには、中古市場で年式による価値低下の影響をほとんど受けないというメリットがあります。
ランダムシリアルは英数字の並び方に法則性がなく、プロであっても製造年の特定が難しいという特徴があります。
そのため、刻印された英数字からは「2010年以降に製造された」という情報しか読み取れず、年式による価値の高下が個体・市場ともに起こりにくいのです。
ロレックスのランダムシリアルが顧客に及ぼすデメリットは、保証書(ギャランティカード)の有無で所有しているロレックスの資産価値が大きく変動する点です。
2010年以前のシリアルナンバーからは年代が推測できますが、ランダムシリアルからはプロでも推測できません。
いつ頃生産された個体かが保証書からしかわからないため、保証書がないケースでは腕時計の資産価値が大幅に下がる恐れがあります。
ロレックスのランダムシリアルが、中古市場や個体の資産価値に与えるプラス・マイナスをトータルして考えると、「市場や価値は安定しやすく、転売行為による暴騰が起きにくくなる」と予測されます。
過去の法則性があるシリアルナンバーを持つ個体とランダムシリアルの個体を比較すると、ランダムシリアル個体はヴィンテージ年製モデルや希少モデルが判別しにくくなります。
はっきりとした希少性やヴィンテージとしての価値が見出せなくなるため、特定のモデルや個体の価値暴騰や偽物の流出が抑えられると予測され、市場や価値は安定すると考えられるでしょう。
ロレックスはなぜ長年使用してきた「英字+数字」のシリアルナンバリングをやめて、ランダムシリアルに切り替えたのか、不思議に感じる方は多いと思います。
ロレックスが抱える「偽造」業者とのいたちごっこや、中古のヴィンテージモデルの価格高騰などの問題が、ランダムシリアル開始の背景にあるとされています。
さらに、転売目的での購入が増えることで、本当にロレックスを愛用したい純粋なファンへの供給が不足しているという問題点も垣間見えます。
ロレックスがランダムシリアルを導入した理由は「製造年特定を困難にする」ためです。
ロレックスは世界中で大変知名度が高く、ステータス性と資産価値があり、スーパーコピーと呼ばれる本物そっくりの偽造品が出回ることも知られています。
また、シリアルナンバーで年式がわかると、同じモデルであってもヴィンテージ年式の品は価格が跳ね上がり、市場価値の高騰が続き、転売行為も増えました。
しかし、ランダムシリアルを導入してからは製造年の特定が難しくなり、ロレックスにとって以下に挙げるような様々なメリットが生じています。
ロレックスのシリアル番号は、ランダムシリアルになる以前のかなり古い時代から個体に刻印されてきました。
識別番号として消えたり故意に打ちかえられたりしないように、刻印される場所もブレスレットで隠れる場所や風防ガラスの内側など工夫が凝らされ、刻印自体も深くしっかりとしています。
プロでも年式が読み解けなくなったランダムシリアルに変更される前は、どのようなシリアルナンバーだったのか、その変遷について解説します。
年代別にシリアルナンバーの体系がどう変化していったのか、お手持ちのアンティークロレックスがいつ頃製造されたものなのかある程度知ることができる表を紹介します。
年代 | シリアルナンバー |
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1927年 | 21691~ |
1928年 | 23969~ |
1928年 | 24747~ |
1930年 | 28290~ |
1932年 | 29312~ |
1933年 | 29933~ |
1934年 | 30823~ |
1935年 | 35365~ |
1936年 | 37596~ |
1937年 | 40920~ |
1938年 | 43739~ |
1939年 | 71224~ |
1940年 | 99775~ |
年代 | シリアルナンバー |
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1941年 | 106047~ |
1942年 | 143509~ |
1943年 | 230873~ |
1944年 | 269561~ |
1945年 | 302459~ |
1946年 | 387216~ |
1947年 | 529163~ |
1948年 | 628840~ |
1951年 | 710776~ |
1952年 | 840396~ |
1953年 | 929426~ |
1954年 | 937170~ |
1953年 | 941699~ |
1954年 | 952892~ |
1953年 | 955466~ |
1955年 | 282632~(100万個製造でリセット) |
1956年 | 139400~ |
1957年 | 321884~ |
1958年 | 360171~ |
1960年 | 693808~ |
1962年 | 763663~ |
1964年 | 985015~ |
年代 | シリアルナンバー |
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1965年 | 1259699~ |
1966年 | 1871000~ |
1967年 | 2163900~ |
1968年 | 2426800~ |
1969年 | 2689700~ |
1970年 | 2952600~ |
1971年 | 3215500~ |
1972年 | 3478400~ |
1973年 | 3741300~ |
1974年 | 4004200~ |
1975年 | 4267100~ |
1976年 | 4538000~ |
1977年 | 5008000~ |
1978年 | 5482000~ |
1979年 | 5958000~ |
1980年 | 6434000~ |
1981年 | 6910000~ |
1982年 | 7386000~ |
1983年 | 7862000~ |
1984年 | 8338000~ |
1985年 | 881400~ |
1986年 | 9290000~ |
1987年 | 9766000~ |
1987年 | 9999999~ |
年代 | シリアルナンバー |
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1987年~1988年 | R000001~ |
1989年~1990年 | L000001~ |
1990年~1991年 | E000001~ |
1991年 | X000001~ |
1991年 | N000001~ |
1992年 | C000001~ |
1993年 | S000001~ |
1994年~1995年 | W000001~ |
1996年 | T000001~ |
1997年 | U000001~ |
1998年~1999年 | A000001~ |
2000年 | P000001~ |
2001年 | K000001~ |
2002年 | Y000001~ |
2003年~2004年 | F000001~ |
2005年 | D000001~ |
2006年 | Z000001~ |
2007年~2008年 | M000001~ |
2009年 | V000001~ |
2010年 | G000001~ |
年代 | シリアルナンバー |
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2010年~ | 8桁のランダムな英数字 |
シリアルナンバーから高値で取引されるケースとしては、生産終了間際のモデルの「最終品番」が挙げられます。
特に人気の高かったモデルの場合、最終品番はレアケースとして高く評価され、注目度もアップします。
ロレックスは公式にシリアルナンバーの詳細を公表しないため、シリアルナンバーの体系や法則性は独自調査によって見極めてきたもので、すべての個体に当てはまるものではないことをご了承ください。
ランダムシリアルは、他の英数字シリアルナンバーとどのように見分ければ良いのかについて解説します。
1987年以前のロレックスに刻印されるシリアルナンバーはアルファベットが入らないため、容易に見分けられます。
2010年までの英数字シリアルナンバーはアルファベットから始まる7桁の英数字で、ランダムシリアルは数字とアルファベットがランダムに並ぶ8桁の英数字です。
ランダムシリアルは2010年頃から使用され始めたことがわかっていますが、実は2012年頃までランダム以前最後のG品番も並行製造されていました。
2010年以降の製品でもランダム品番とは限らないため、次の2つの項目からランダムシリアルかどうかを見極めましょう。
ランダムシリアルの刻印場所は、腕時計の風防ガラス内部6時位置、文字盤の最外周の立ち上がり部分であるインナーリングです。
のぞきこまなければ見えない部分ですが、外気にさらされず触れない部分のため刻印がすれて見えなくなることがありません。
ROLEXの文字列と一緒にランダムシリアルが彫りこまれており、カジノゲームで使用するルーレット盤のように見えることから「ルーレット刻印」と呼ばれています。
ルーレット刻印はランダムシリアルがスタートする2010年より以前、2004年頃にスタートした、偽造防止対策のひとつです。
2004年以前にはケースの外周6時位置に刻印されており、普段はブレスレットで隠れる場所でしたが、年数を経て摩耗したり、ケースの修理交換で裏蓋内部へ移されることがありました。
ランダムシリアルはすべてルーレット刻印ですが、ルーレット刻印されたシリアルナンバーのなかにはランダム前のものも含まれています。
ランダムシリアルに切り替わってから、2025年現在ですでに15年あまりの歳月が経過しましたが、偽物が無くなったわけではありません。
ランダムシリアルが刻印されたロレックスが、本当に正規品かどうかを見極めるポイントについて解説します。
中古の正規品を購入したい場合は、多くのロレックスを扱っていてロレックスに関する知識が豊富なスタッフがいる、銀座や新宿など大きな街の専門店で相談することがおすすめです。
ランダムシリアル刻印があるロレックスを購入する際、正規品であるかどうかを見極めるためにぜひチェックしたいポイントを紹介します。
パッと見ただけではそっくりに感じるスーパーコピーであっても、内部機構まではごまかせません。
特に刻印が深く鮮明で一律であることやフォント、王冠マークの形状、デイト機能や秒針の動きなどは、要注意ポイントです。
ランダムシリアルは、ロレックスが偽造や市場価値の高騰、品質管理などを目的にスタートさせた自衛システムのひとつです。
ランダムシリアルがスタートしたため、2010年以降のロレックスは保証書(ギャランティカード)が非常に重要となりましたが、市場の安定や偽造防止に役立っていると考えられます。
ルーレット刻印がランダムシリアルであっても、正規品を適正な価格で手に入れたい場合は、プロの鑑定士がいる専門店に相談し、ロレックスが多く売れているお店で選びましょう。
当記事の監修者
池田裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン 課長
39歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年