「手持ちの腕時計に刻まれている刻印の意味が知りたい」
「ホールマークがなぜ刻まれるかその理由が知りたい」
金やプラチナ製品には「刻印」(ホールマーク)が打たれていることをご存知でしょうか?
腕時計のパーツとしては、ケースやブレスなどに使用され、主に裏蓋やバックルに刻印が打たれています。
また、金・プラチナにはそれぞれ”複数の種類”が存在していることも是非知っておきたいところです。
今回は腕時計に打刻されている「刻印」(ホールマーク)についてご説明いたします
目次
ホールマークとは、主に貴金属で作られた腕時計に刻まれる「純度保証のマーク」であり、その時計の品質や真贋の見極めに役立ちます。
高級腕時計の購入を検討しているなら、「ホールマーク」という刻印の意味を知っておくことが重要です。
中古では、素材の信頼性や資産価値に関わるため、見落とせない判断材料のひとつといえるでしょう。
購入前に刻印の意味を理解しておけば、価値ある時計選びの助けになります。
ホールマークとは、金やプラチナ、銀などの貴金属素材に対し、公的機関や検査機関が品質を保証するために刻印するマークです。
数字や記号で純度を表し、国や地域によって制度やデザインは異なります。
この刻印されたマークが素材の偽装を防ぎ、購入者に安心感を与える役割を果たしています。
また、時計ブランドにとっても品質管理の証として機能し、信頼性の維持につながるものです。
つまり、重要な情報が詰まった証明書といえるでしょう。
ホールマークは、造幣局が貴金属製品に含まれる貴金属の純度検査を行い、認められたものだけにつけられます。
また、ホールマークは純分認証極印とも呼ばれ、権威ある機関が定めた貴金属の品位を証明するマークです。
ホールマークは一般的に4~5個のマークで構成されており、その製品がいつ頃、どこで作られ、どんな品質のものかが分かるようになっています。
そのため、アンティークウォッチの生まれを推測する手がかりとしても非常に有効です。
ちなみにホールマークが初めて採用されたのは1300年頃のことで、ロンドンの金銀細工業者が”偽造や模倣”を防ぐために貴金属製品に刻印したのが始まりといわれています。
ホールマークが時計に刻まれるのは、主に素材の信頼性を保証するためです。
とくに金やプラチナなどの高価な素材を使う時計では、素材の純度や品質を証明する必要があります。
ホールマークがあることで、使用されている金属の価値が客観的に確認でき、消費者が安心して購入できる根拠となります。
中古市場でもこの刻印の有無が信頼性に直結するため、価値ある1本を見極めるうえで欠かせない要素といえるでしょう。
ホールマークには、使用素材の純度や種類を示す数字や記号が刻まれています。
例えば「750」は18金、「Pt950」はプラチナ95%であることを意味します。
ホールマークはメーカーが勝手に刻印するものではなく、第三者機関や国家によって検査・証明された証拠です。
このような証明があることで、素材偽装を防ぎ、長期的な価値の維持にもつながります。
とくに高級腕時計においては、素材の信頼性が時計全体の価値に大きく影響します。
購入者にとってホールマークは重要な情報源といえるでしょう。
ホールマークは、すべての腕時計に付いているわけではありません。
その多くは、金・プラチナ・銀などの貴金属を使用した高級モデルに見られます。
とくにロレックス、オメガ、カルティエなどの一流ブランドでは、素材に対する信頼性を高めるために、ホールマークを刻印しています。
一般的なステンレスモデルでは見られませんが、素材に価値があるモデルには刻印が施されていることが多いです。
これは、時計の資産価値を示す判断材料ともなります。
ホールマークが見られるのは、主に18金やプラチナ製などの高級素材を使用した時計です。
これらのモデルでは、ケースやブレスレット、裏蓋に刻印されていることが一般的です。
ブランドによっては、ジュネーブシールやメーカー独自の品質証明と合わせて刻印が施されることもあります。
中古市場では、ホールマークの有無によって貴金属の価値が確認され、より高い評価を受ける傾向にあります。
ホールマークには、素材の種類や純度を示す情報が刻まれています。
これはその時計に使われている金属が「何でできているのか」「どれほど純度が高いか」を客観的に示す重要な手がかりです。
素材ごとに定められた数字や記号があり、各国で共通する表記も多く、グローバルな価値判断が可能となります。
中古時計を選ぶ際に真贋や資産性の見極めに直結するため、ホールマークの種類を知っておくことをお勧めします。
金素材の時計には「750(18金)」「585(14金)」などが刻まれます。
プラチナでは「Pt950」「Pt900」などがあり、銀素材では「925」といった表記が一般的です。
これらの数字は金属中の純度を示しており、たとえば「750」は金が75%含まれていることを意味します。
また、数値の横に、動物やシンボルなどの図案が添えられている場合もあります。
その図案は製造国や検査機関を示し、素材の正当性を裏付ける証明としての役割を果たします。
刻印 | 素材 |
---|---|
K24/1000 | 24金(金100%、純金) |
K20/835 | 20金(金83.5%) |
K18/750 | 18金(金75.0%) |
K14/585 | 14金(金58.5%) |
金は柔らかく、そのままの状態だと加工品には不向きといえる素材です。そのため、金以外の金属を混ぜて加工品に適した固さに調整してから加工します。
金と一緒に配合される金属には、銅や銀・パラジウムなどが一般的に使用され、この割合によって「24金・18金・14金」などと呼ばれることが特徴です。例えば、金を75%使用した場合は18金と呼ばれ、一般的に「K18」「750」という刻印が使われます。
そして、配合される他金属の種類によって”金の色合い”が変わることも金の魅力です。18Kの場合は金75%をベースに、残り25%がどのような金属を混ぜるかによって色味が決まります。例えば25%の内、8割程度を銅とした場合、金の色はピンク味をおびたゴールド(ピンクゴールド)となるのです。
出来上がる色合いには様々な呼び名がありますが、腕時計に使われる金としてはイエローゴールド(YG)、ホワイトゴールド(WG)、ピンクゴールド(PG)、ローズゴールド(RG)が一般的でしょう。
ちなみに「K18」ではなく、「18K」などとKの記号が後ろにきているものが中にはありますが、これは海外製品に見られるもので、この場合は18金相当の金は含んでいないことが多いです。 よく似ていますが、「18K」は昔に東南アジアあたりで作られた製品に多く見られ、特徴として10金~14金相当の金しか含んでいないことがあるので、注意が必要です。
また、「18KT」というものもありますが、KTはカラットという単位で、K18と同等の意味です。
刻印 | 素材 |
---|---|
Pt1000 | プラチナ100% |
Pt950 | プラチナ(95.0%) |
Pt900 | プラチナ(90.0%) |
Pt850/Pt | プラチナ(85.0%) |
金と同じように、プラチナの場合も強度を保つために銀やパラジウムなどの金属を混ぜて使用します。
腕時計にはプラチナの含有率が85%以上のものを使用することが一般的です。
現在は「Pt950」のようにプラチナ=「Pt」と表していますが、昔はプラチナ=「Pm」と表記していました。
「Pm」のみの表記の場合は、プラチナ純度は「Pt850」相当となりますが、「Pt850」相当に満たない場合も比較的見受けられます。
ホールマーク制度は国によって運用基準や刻印内容が異なります。
スイスやイギリスでは法律に基づく厳格な制度が整備されており、信頼性が非常に高いとされています。
一方、日本では制度が任意であり、統一的な刻印基準は存在していません。
そのため、中古時計の購入時には「どの国のホールマークか」を確認することが、信頼性と価値を見極めるポイントになります。
国によってその意味合いが異なる点に注意しましょう。
国名 | 制度の特徴 | 検査機関 | 刻印の例 | 時計での刻印位置 |
---|---|---|---|---|
スイス | 時計のケースにも検査が義務化されており、純度を公的に保証する制度が整備されている | 貴金属管理中央局や※アッセイオフィス(ジュネーブなど)※金属検査所 | セントバーナードの頭、750、メーカー記号など | 裏蓋内側、ケース内部、ラグ裏など |
イギリス | 歴史ある制度で、純度・都市・年号などが一連の記号で刻まれる | アッセイオフィス(ロンドン、バーミンガムなど) | 王冠、ヒョウの頭、750、年号記号など | – |
日本 | 検査は任意で行われており、素材表示(K18など)のみが多く、公的マークは少数 | 造幣局(大阪・東京・広島) | K18、750、造幣局マーク(任意)など | – |
フランス | 宝飾品向けに国家検定制度があり、職人ごとの責任マーク+素材マークの2重刻印が主流 | ※ビュロー・ド・ギャランティ(パリ、リヨンなど)※政府認可の検定所 | ワシの頭(18金)など | – |
ドイツ | 強制制度はなく任意検査が基本。多くは素材表示とメーカー独自の刻印が中心 | 民間またはメーカー独自(任意制) | 585、750、メーカー刻印など | – |
スイスは貴金属管理において厳格な制度を持ち、輸出用製品にも信頼性を担保しています。
イギリスでは都市や年代を表す複雑なマークが存在し、骨董品的な価値も評価されます。
日本は自主基準に基づく表示であるため、素材は確認できても検査機関の保証はありません。
フランスでは、ワシの頭(18K)やミネルヴァ(ローマ神話の女神)の頭(950Pt)など動物の頭部で金属の種類と純度を示すのが特徴です。
ドイツはスイスやフランスのような公的刻印義務はなく、メーカーの良心に任されていることが多いため、ホールマークよりもブランドの信頼性が重視される傾向です。
画像引用:独立行政法人 造幣局 公式サイト
ホールマーク付きの時計は、素材が保証されているという安心感があり、資産性も高く評価されます。
とくに中古市場では、真贋の判別や素材の価値を確認する手段としてホールマークが重宝されます。
そのため、購入時や将来の売却時にも高く評価される可能性があります。
本物であることの証明となり、所有者にとっても信頼できるステータスシンボルとなるのが特徴です。
長期保有やコレクションを目的とする人にとって、大きなメリットといえるでしょう。
ホールマークがある時計は、素材の純度が明確で再販時にも高い信頼を得られます。
とくに金相場が上昇する局面では、素材自体の価格も価値に直結します。
また、鑑定時にも評価がスムーズに進み、査定額が安定しやすいという利点があります。
本物であることが刻印という形で確認できるため、オーナーにとっても安心材料となるでしょう。
高級時計を資産として考えるなら、ホールマークは必須の要素といえます。
時計を投資対象として捉えるなら、ホールマークの存在は価格安定に貢献する重要な指標です。
まず、金・プラチナなど素材そのものの市場価値があり、それを保証する刻印があることで信頼性が高まります。
さらに、国や検査機関による公式認証であれば、世界的な流通市場でも評価されやすくなります。
素材の価値と証明が揃って初めて、長期的に価値が落ちにくい投資対象になるといえるでしょう。
中古時計の価値を判断する際に重要なのは「ホールマークの有無」だけではありません。
加えて「どのブランドの時計か」「状態がどの程度保たれているか」という2つの要素も不可欠です。
信頼できるブランドであれば、ホールマークとの相乗効果で査定が高くなる傾向があります。
さらにキズや修復歴の有無といった状態面も重視され、3つのバランスが整った個体は高い資産性を保ちます。
ホールマークがあるからといって、必ずしも本物とは限りません。
近年では、見た目だけ模倣された偽刻印が施された時計も流通しており、知識のないまま購入すると大きな損失になるリスクがあります。
こうしたリスクを避けるためには、信頼できる中古時計店や公的な鑑定書付きの個体を選ぶことが基本です。
とくに価格が相場より安い場合には、注意が必要です。
正しい知識と目利きが、後悔のない時計選びを支えてくれるでしょう。
ホールマークの有無だけでなく、その真贋を見抜くには購入先の安心度が重要です。
実店舗を構える中古時計専門店や、査定・鑑定士が常駐する業者での購入が安心です。
また、販売実績やユーザーレビューも確認しておくと信頼度の判断材料になります。
とくにネット通販で購入する場合は、鑑定書や保証書の有無が重要ですが一般の方が購入するにはハードルが高いと言わざるを得ません。
疑わしい場合は第三者による真贋鑑定を受けるなど、自分の身を守る工夫が求められます。
ホールマークとは、腕時計に使われている貴金属素材の純度や正当性を証明する刻印です。
とくに中古市場では、価値や信頼性を判断するうえで重要な手がかりになります。
ブランドや状態と合わせてチェックすることで、真贋を見極めやすくなり、長く愛用できる時計に出会えるでしょう。
信頼できる販売店で、ホールマークの意味を理解したうえで選ぶことが、後悔のない購入につながります。
当記事の監修者
南 幸太朗(みなみ こうたろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ
学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴14年。