「カラトラバの歴代モデルにはどんなものがあるの?」
「カラトラバの系譜について知りたい」
パテックフィリップの銘品・カラトラバ。
ノーチラスやアクアノートといったスポーツモデル人気の影に隠れがちですが、実は同社の現レギュラーラインの中で一番のロングセラーであり、数々のブランドのドレスウォッチのお手本的存在です。
長い歴史の中で数多くの派生モデルが誕生し、現行品だけで19種にも及ぶことに驚かされる方もいるでしょう。
そんなカラトラバには連綿と続けられてきた系譜があります。
この系譜がまた見事と言う他なく、時計マニアなら感銘必至。
一方で旧型や派生型などモデルが複数あり、しかも違いが分かりづらいという声もあります。
そんなカラトラバの系譜について知りたいという人は多いのではないでしょうか。
カラトラバは同型番の中にバリエーションがあったり、アニバーサリーモデルが限定で生産されていたり、思っているより種類があります。
この記事ではカラトラバの歴代26モデルを、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
カラトラバの魅力や特長についても解説しますので、パテックフィリップの時計に興味がある方はぜひ参考にしてください。
※カラトラバがその名前で市販されたのは1980年代以降です。そのため系譜には諸説あります。
目次
パテックフィリップ カラトラバとは?
カラトラバは1932年に誕生したパテックフィリップのドレスウォッチラインです。
「機能がフォルムを決定する」という20世紀初頭のドイツ・バウハウス哲学に強く影響を受けて製造されました。
優美なラウンドフォルム、そこから続くやはり優美なラグ。無駄の一切を省いたシンプルな文字盤デザインながら、インデックスの立体感や上品なドフィーヌ針(針の真ん中が山折りになったフォルム)など、全てが完璧なバランスで造形された至極の一本。誕生以来、「世界の丸形時計の規範」「名門ドレスウォッチの本質」などと語られてきました。
とはいえカラトラバの誕生経緯を知るとちょっとビックリするかもしれません。実は、当時のパテックフィリップは経営不振に陥っていました。今では考えられないことですね。
そこで起死回生の一手として「ブランドの伝統と卓越性を維持しつつ、ファン層を広げる」ために誕生したのがカラトラバだった、というわけです。この試みが大ヒットしたことは言うまでもありません。1930年代初頭というのは鉄道や軍用など、正確な時間を知るための時計へのニーズがかつてないほど高まっていた、という時代の要請もあったのでしょう。
ちなみに初代カラトラバはRef.96―通称クンロク―で、以降リファレンスに96がつくモデルはこのクンロク家系です。ノーチラスがジェラルド・ジェンタ氏によってデザインされたことは有名ですが、初代カラトラバはイギリス人時計学者デビッド・ペニー氏が手掛けたものです。
出典:https://monochrome-watches.com/history-of-the-patek-philippe-calatrava-part-1-reference-96/
そうして生まれたカラトラバのすごいところは、発売が開始されてから90年近く経つ現在も決して色褪せることのない定番モデルとして君臨しているところ。剣と十字架(4つの百合の花)を組み合わせた「カラトラバ十字」はパテックフィリップの伝統的エンブレムですが、その名前がコレクションネームとなっている「カラトラバ」はまさにパテックフィリップの歴史の象徴。「パテックフィリップと言えばカラトラバ」と定義づける方も少なくありません。なお、この紋章はリューズで確認することができます。
歴史が古いモデルのため、1960~70年頃に製造された個体が現在も市場に出回っています。そしてその多くが当時の価格を大きく上回る価格で取引されています。同時に、現行モデルも系譜が踏襲され、派生型がいくつかに分かれますがいずれも評価されてています。
ただ、確かにモデルの違いが分かりづらい面があります。どの世代もモデルが似通っており、かと思えば同じ型番の中で非常に多彩なデザインバリエーションを作っていたり・・・
しかしながら、以下の系譜を見ていただければ、きちんとDNAが宿っていることをおわかりいただけるでしょう。
パテックフィリップ カラトラバの系譜
それではカラトラバの系譜をご紹介いたします。
初代カラトラバ Ref.96
■製造年:1932年~1973年頃
■ケース直径:31mm
■ムーブメント:手巻きCal.12-120
伝説のクンロク・初代カラトラバです。直径31mm、厚みはわずか9mmという上品さで、発売当初から話題となりました。クンロク系譜の特徴としては、フラットなポリッシュベゼル、優美なラグ、シンプルながら洗練された文字盤デザインが挙げられますが、これは初代からのDNAです。今見ても古臭さなどを全く感じさせない傑作ですね。実際、初代の時点からラグなどをただハンダづけするのではなく(当時のラグはただケースにラグを溶接し、懐中時計に革ベルトをお仕着せしたようなものだった)、3部構成によるケース構造でしかも微妙に湾曲しているので、モダン・ラグジュアリーといった装いです。このレイアウトは今なお受け継がれており、初代クンロクを味わいたい方は型番に「96」がついたモデルをお選びください。
カラトラバ Ref.565
■製造年:1938年~1968年頃
■ケース直径:35.5mm
■ムーブメント:手巻きCal.12-120(後期はCal.12-400)
画像出典:https://www.hodinkee.com/articles/patek-philippe-565-breguet-dial-phillips
「31mmはちょっと小さい」そんな声を受けて同時発売されたのがRef.565および570です。まず、565からご紹介いたします。
改めてラインナップされた35.5mmは、当時としてはかなり大型。しかしながら初代カラトラバを踏襲したミニマムな文字盤デザインや優美なケースが上品さを醸し出し、一躍人気モデルとなりました。
ちなみに諸説ありますが、Ref.565はステンレススティールとゴールド製と二つのラインが存在し、SSに至っては「パテックフィリップ初のSSモデル」とも語られています。
カラトラバ Ref.570
■製造年:1938年~1968年頃
■ケース直径:35.5mm
■ムーブメント:手巻きCal.27-SC
Ref.565と一緒にラインナップされたRef.570。若干モダンテイストに拠っている565と比べて初代カラトラバを踏襲したデザインです。とは言えその後のカラトラバと同じように、565および570は多彩な文字盤バリエーションを展開していきます。
ムーブメントもアップデートしていくため何を以て「カラトラバの系譜」と言うのか論が分かれるところですが、それだけ一つひとつの型番にすら長い歴史を持つということです。
カラトラバ Ref.2526
■製造年:1953年~生産終了年不明
■ケース直径:36mm
■ムーブメント:自動巻きCal.12-600
画像出典:https://monochrome-watches.com/
カラトラバ初となる自動巻きモデルがこちらのRef.2526です。同社での自動巻き自体がまだ黎明期であったため、歴史的に意義深いモデルでもあります。エナメル仕上げの文字盤を包む外装はイエローゴールドの他、ローズゴールド、ホワイトゴールド、プラチナと多彩で、そのバリエーションの豊かさから人気が出ましたが、2,750台ほどしか生産されなかったため、オールドパテックの中でもレアな一本です。
なお、搭載する自動巻きムーブメントCal.12-600は18Kゴールド製ローターに美しい装飾が施されていましたが、これは時計史上において初となる偉業です。もっと付け加えると、同社の初ジャイロマックスてんぷ搭載ムーブメントでもあります。
カラトラバ Ref.2545
■製造年:1950年代~生産終了年不明
■ケース直径:32mm
■ムーブメント:手巻きCal.12-400
画像出典:https://www.officechronograph.com/manufactures/patek-philippe-calatrava-gold/
初代カラトラバに防水ケースを採用した画期的な一本です。また、時代のニーズに合わせてケースを初代96からわずかにアップサイジングし、かつこれまで3ピース構造であったものを2ピース構造にしました。
防水性があるとは言え手巻きのため薄型。カラトラバらしいクラシカルなフォルムを有します。
カラトラバ Ref.2572
■製造年:1950年代~生産終了年不明
■ケース直径:35mm
■ムーブメント:手巻きCal.10-200
画像出典:https://www.reebonz.com/kw/patek-philippe/watches/calatrava-2572-vintage-yellow-gold-leather-11079226
かなり小ぶりなラグが特徴的で、ここまでの系譜とはドラスティックに変わっている2572系カラトラバ。実際「変わり種」といったイメージが強かったのか、当時は定番化しませんでした。
しかしながら実は1950年代までの腕時計には、こういったラグ形状は結構多かったとのこと。加えて独創性を感じるとあって、カラトラバ80周年にあたる2012年にRef.5123としてリバイバルされました。
カラトラバ Ref.3445
■製造年:1960年代~生産終了年不明
■ケース直径:35mm
■ムーブメント:自動巻きCal.27-460M
これより、新たな系譜の登場です。直線ラグ、そして細身のインデックスがシンプルさに輪をかけるこちらのRef.3445。実は当時の流行を上手に取り入れたとあって、アンティーク市場では評価の高い逸品です。
なお、この直線ラグはこれまでのカラトラバにはないデザインコードでしたが、今後受け継がれていくこととなります。同時期発表のRef.3520がその大きな契機となっています。
カラトラバ Ref.3520
■製造年:1960年代~1970年代頃
■ケース直径:32.5mm
■ムーブメント:手巻きCal.177/2
「もう一つのカラトラバ」と称されるデザインコードがあります。カラトラバは前述のように文字盤にバリエーションを持ちますが、実はケースやラグ形状、そして「シンプル」というデザインコンセプトを大きく変えてはいません。しかしながら「ケースとラグ形状」に実は別の系譜があるのです。
その初代がこちらのRef.3520系(および前述のRef.3445)です。
これまでフラットなスムースベゼルがほとんどでしたが、クル・ド・パリと呼ばれるギョーシェ(ホブネイル)、そして直線のラグを採用しました。バウハウスのミニマリストにとっては「これはカラトラバではない」と思われるかもしれませんが、ギョーシェが活きて非常にラグジュアリーな仕上がりとなっています。
なお、このデザインコードは、後述するRef.3919、5116、5119などに受け継がれていき、定番となります。
カラトラバ Ref.3796
■製造年:1982年~2000年
■ケース直径:30.5mm
■ムーブメント:手巻きCal.215
このモデルから、現代版クンロク系譜がスタートを切りました。
DNAを受け継いでいるため、当然ながら大きくデザインは変わりません。
しかしながらスペックは全く異なります。従来よりも振動数を上げ精度を、そしてパワーリザーブや耐衝撃性、メンテナンス性などをアップデートしたCal.215を搭載。現行カラトラバでも使われている名機です。
3796も従来のクンロク同様にバリエーションがありますが、基本はシンプル一辺倒。なお、日本限定モデルも何度か出ております。
2000年に惜しまれつつも生産終了となりましたが、今なお人気。当店でもカラトラバの中で最も売れ筋のモデルです。
カラトラバ Ref.3820
■製造年:1983年~生産終了年不明
■ケース直径:32mm
■ムーブメント:手巻きCal.177
ブレゲ針×ブレゲ数字のインデックスがアンティーク調なこちらのモデル。「系譜」というほど定番化はしていませんが、ブレゲ数字は二世代目にあたるRef.570やその後の1997年に出たRef.5026にも受け継がれており、カラトラバとの相性の良さは証明済です。丸みがかったラグと相まって、カラトラバの中でも良い意味で異彩を放つ名作ですね。32mmという小径ケースが、さらにクラシカルな雰囲気を装います。
カラトラバ Ref.3919
■製造年:1986年~2006年頃
■ケース直径:33mm
■ムーブメント:手巻きCal.215
先ほどご紹介したRef.3520のデザインコードを受け継ぎ、新生として誕生したのが3919の系譜です。もちろん前世代を踏襲したものとはなりますが、このデザインを一躍有名にし、「もう一つのカラトラバ」と言わしめるに至ったのはこのモデルが契機です。発売以来、約10数年にわたってパテックフィリップの広告などに起用されたので、一度は目にしたことがある、という方もいらっしゃるでしょう。
2006年に生産終了しても、今なお超人気作。先ほどのRef.3796と並んでカラトラバの二大巨頭です。
カラトラバ Ref.3802/200
■製造年:1986年~生産終了年不明
■ケース直径:33mm
■ムーブメント:自動巻きCal.315SC(またはCal.310SC)
今でこそカラトラバの自動巻きラインはデイト機能付きですが、その系譜の初登場は1980年代と結構最近。正統派のドレスウォッチはデイト機能がないこと。ただでさえローターの分の厚みがある自動巻きにデイト機能を搭載してしまうと、ドレスウォッチならではの上品な薄さが損なわれてしまうことから、なかなか製品化しなかったのでしょう。
しかしながらそこはパテックフィリップ。搭載するCa.315SC(またはCal.310SC)はデイト付き自動巻きとは思えない薄さ。そのためこちらのモデルも厚さはわずか7.5mmに抑えられており、同社の実力を感じられる一本です。
カラトラバ Ref.3960
■製造年:1989年
■ケース直径:33mm
■ムーブメント:手巻きCa.215
パテックフィリップ創立150周年の、アニバーサリーモデルの一つとしてラインナップされたのがこちらのRef.3960です。カラトラバ初オフィサー系譜として話題になりました。オフィサーとは、第一次世界大戦下の将校(オフィサー)へ贈った時計を原型としたモデルです。ラグのねじ留めが印象的で、ブレゲ針・ブレゲ数字、そして太めのラグと併せて、ヴィクトリア朝時代を思わせる逸品です。ターバンシェイプのラグが独創性をも演出していますね。なお、オフィサースタイルのもう一つの特徴として、裏蓋は開閉ハンター式となっており、開くと「Patek Philippe geneve 150 Anniversaire 1839-1989」の秘密の刻印が現れます。
カラトラバ Ref.3998
■製造年:1990年代
■ケース直径:33mm
■ムーブメント:自動巻きCa.310SC
メンズカラトラバのリファレンスは、3000番台が終わって5000番台に突入していきます。Ref.3998はそんな3000番台の最終世代ということもあり、時計愛好家から絶大な支持を集めてきました。生産終了してかなり年月が経っているにもかかわらず、相変わらずの需要の高さには驚かされるばかりです。
クンロクモデルとも、現行ラインともどこか違ったテイストです。とは言え洗練されたシンプルさは受け継がれており、カラトラバを代表するような逸品と言えるでしょう。
カラトラバ Ref.5000
■製造年:1994年~生産終了年不明
■ケース直径:33mm
■ムーブメント:自動巻きCa.240PS
いよいよリファレンス5000番台に突入したカラトラバ。初出から60年以上が経過しています。もちろんオリジナルデザインは変えない、という姿勢を貫きます。しかしながら、そこかしこに「新しいカラトラバ」を感じさせますね。Ref.5000は黒文字盤とピンク文字盤と言う、カラトラバにはあまりないカラーを採用しているのですが、ドレスウォッチはこういった変わり種は毛嫌いされます。でも、このカラトラバではむしろその変わりっぷりが大ヒットを遂げました。4時位置のスモールセコンドという斬新さもヒットの要因のようです。加えて、シースルーバックを採用していることも特筆すべき点。22kのゴールド製ローターや、パテックフィリップ渾身のムーブメントを楽しめる通好みのモデルとなりました。
カラトラバ Ref.5032
■製造年:1995年~生産終了年不明
■ケース直径:36mm
■ムーブメント:自動巻きCa.240PS
画像出典:https://www.daviddugganwatches.co.uk/patek-philippe/calatrava-5032-pp1661/
2針というドレスウォッチの黄金律を踏襲しながら、一目でこれまでのカラトラバと全く異なることがわかります。なぜなら36mmという、当時のカラトラバでは考えられないようなケースサイズでラインナップされているためです。
この当時のカラトラバは33mm。今でこそ40mmなどは珍しくありませんが、デカ厚がメインストリームになるのは2000年代以降です。そんな中で36mmサイズのカラトラバが出たということが、いかに話題になったかがわかるでしょう。とは言えこのモデルは決して「厚」の部分はありません。なんと、厚さはわずか7.5mmなのです。
やはりデザインコンセプトは変えない。それがカラトラバの醍醐味でしょう。
ちなみに搭載される240系自動巻きムーブメントは、1990年代、クォーツショックから抜け出す同社のきっかけとなった記念碑的な機械でもあります。カラトラバの系譜の中で、ひときわの魅力を放つ逸品と言えるでしょう。
カラトラバ Ref.5022
■製造年:1997年~2005年
■ケース直径:33mm
■ムーブメント:手巻きCa.215
再び、オフィサー系譜のカラトラバが登場します。1989年、ブランド創設150周年のアニバーサリーとしてカラトラバに採用されて以来の再登場ですが、Ref.5022からはハンターケースは付いていません。由緒正しいオフィサーではありませんが、その分実用性は増したと話題です。
8年間の製造期間の中で、こちらもいくつかの文字盤・素材バリエーションを有します。
カラトラバ Ref.5196
■製造年:2004年~
■ケース直径:37mm
■ムーブメント:手巻きCal.215PS
現行クンロク世代は、いよいよ2004年に登場します。初代カラトラバを彷彿とさせるデザインベースが特徴です。ケースが37mmと現代風にアップサイジングされたこと、そして6時位置のスモールセコンドがやや中央寄りになったことなど異なる点は少なくありません。しかしながらケースの工法や文字盤レイアウトは初代を引用しているためか、往年の名機といった趣です。もちろん内部のムーブメントは当時よりアップデートした手巻きCal.215PS。
Ref.5196は文字盤バリエーションの中に歴代カラトラバ(570など)を交えるなど、カラトラバの系譜の奥深さを味わえることでも定評があります。
カラトラバ Ref.5296
■製造年:2005年~2019年
■ケース直径:38mm
■ムーブメント:自動巻きCal.324SC
デイト付き自動巻きムーブメントを搭載、しかも38mmというカラトラバ史上最大サイズのケースを有します。一方で初代クンロクのリメイクとも称されるほど、忠実にRef.96を再現させたケースフォルム・ミニマリストな文字盤デザインでもあるのです。2007年よりリファレンスを5296-010のヴァージョンに進化させ、4つの素材に2つの文字盤デザインのバリエーションでラインナップされることとなりましたが、実はこの組み合わせもまた初代クンロクに由来します。
もう一つの5296の文字盤デザイン
2019年、これまた生産終了が発表されることとなりました。2019年は多くのカラトラバが廃盤の憂き目にあっており、また新たな系譜が誕生するのでしょうか。カラトラバから目が離せません。
なお、これ以降のカラトラバの多くのケース径は38mmやそれ以上をスタンダードとするようになります。
カラトラバ Ref.6000G
■製造年:2005年~2017年
■ケース直径:37mm
■ムーブメント:自動巻きCal.240PS C
カラトラバ初代5000番台にあたるRef.5000を踏襲させたと思われるこちら。唐突にリファレンスを6000番台にさせており、以降このデザインコードのカラトラバはこの番号で振られることとなります。
ポインターデイトがついたことでカラトラバらしからぬモダンで斬新な雰囲気に。賛否両論ありそうですが、これまでカラトラバを「クラシックな」「でもちょっと古臭い」ドレスウォッチと思っていた層を、新たに魅了することになりました。
ちなみにパテックフィリップ製品で、黒文字盤にシンプル機能は大変珍しい仕様です。そのため普段から気軽に使える黒文字盤が欲しい、という層にお勧めの系譜です。
カラトラバ Ref.5119
■製造年:2006年~2019年
■ケース直径:36mm
■ムーブメント:手巻きCal.215PS
Ref.3919の後継機として誕生したのがこちらのRef.5119です。クル・ド・パリのギョーシェがあしらわれたベゼル、直線ラグ、上品なローマンインデックスなど、3919の良きDNAを受け継いでおり、パテックフィリップファンにとっては歓喜の新作でした。とは言えケース構造は大きく変わっており、シースルーバックが採用されるなど最先端技術が詰まっています。
ちなみにこちらの5119、なんと今年の2019年に生産終了が決定しました・・・現行カラトラバにはこのデザインコードはありません。復活を待つばかりです。
カラトラバ Ref.5123
■製造年:2012年~2016年
■ケース直径:38.2mm
■ムーブメント:手巻きCal.215PS
出典:https://www.littleswitzerland.com/products/calatrava
6時位置のスモールセコンドすらミニマリストになった、古き良き往年のカラトラバを感じさせるデザインです。とは言え定番のカラトラバと大きく異なるのがラグ。1950年代に一度発売されたRef.2572でも同様のスタイルが採用されていましたが、手巻きのどこまでもスリムなスタイルと併せて、「クラシック」「オーセンティック」、なのに「人と被らない」ことを両立してくれています。
カラトラバ Ref.5227
■製造年:2013年~(一部モデルは2019年に生産終了)
■ケース直径:39mm
■ムーブメント:自動巻きCal.324SC
オフィサー系譜のカラトラバですが、再び開閉ハンター式のケースバックが戻ってきました。とはいえ初代カラトラバのオフィサーと異なり、蝶番が表からは確認できません。
「インビジブル・ヒンジ」と呼ばれる蝶番を使っているためです。
ケースバック
ただ、Ref.3960と異なることは、ケースバックを開くとメタル上にロゴがエングレービングされているものではなく、シースルーで、ムーブメントを鑑賞できる仕様と言うこと。
素材や文字盤カラーのバリエーションが豊富でしたが、2019年に一部が生産終了となっております。
カラトラバ Ref.5524G
■製造年:2015年
■ケース直径:42mm
■ムーブメント:自動巻きCal.324 S C FUS
これがカラトラバなのか?一瞬疑ってしまうほどのデザインのこちら。パイロットウォッチとカラトラバを融合させるという試みです。42mmというカラトラバどころか、ノーチラスやアクアノートと比べてもかなり大型なケースサイズに、トラベルタイム(デュアルタイム)機構を搭載させました。
発売当初はやはり賛否両論ありましたが、製造数が少なかったことなどもあり現在はプレミア化。時計専門店であっても、なかなか見つけることの難しいレアパテックフィリップです。
カラトラバ Ref.6006G
■製造年:2017年~
■ケース直径:39mm
■ムーブメント:自動巻きCal.240PS C
画像出典:https://www.patek.com/en/home
1990年代初頭に誕生したRef.5000の系譜を辿った最新世代でもあり、パテックフィリップが誇る超薄型キャリバー240の誕生40周年を祝して発表された一本です。
これまで様々な系譜のカラトラバをご紹介いたしましたが、そんな中でも最も珍しく、異才を放ったデザインではないでしょうか。
Ref.6000G同様にポインターデイトが採用され、かつ39mmとカラトラバにしては超ビッグサイズということで、時計界のトレンドに沿った一本と言えます。
カラトラバ 2019年新作 Ref.5212A-001
■製造年:2015年
■ケース直径:42mm
■ムーブメント:自動巻きCal.324 S C FUS
画像出典:https://www.patek.com/en/home
カラトラバ系譜の現在最新世代であり、これまた全く新しい系譜となった一本。2019年の今年に誕生しました。デザインコードは5000、6000番台や、2014年にブランド創設175周年を祝して発表されたRef.5975J「マルチスケールクロノ」(カラトラバではない)などを踏襲しているようです。しかしながらウィークリーカレンダー機能を搭載しており、これまでRef.6000Gなどではポインターデイトだったものが新たに週番号を針で指し示す仕様となりました。
さらに言うと、なんとオールステンレススティール製のみのラインナップ!かつて二代目カラトラバRef.565でSSモデルが出たことはありましたが、以来半世紀にわたって金無垢がメインでした。
今後、カラトラバにもSSモデルが増えてくるのでしょうか。現在のSSモデル人気を考えると、ノーチラスのような超プレミア化を果たす可能性も考えられますね。やはり目が離せません。
まとめ
1932年~2019年にわたる、カラトラバの系譜を辿ってみました。今回ご紹介したのは26モデルですが、同型番の中にバリエーションがあったり、アニバーサリーモデルが限定で生産されていたりと実際はもっと多くの名カラトラバが世に送り出されています。
そして近年、パテックフィリップは従来のスタンダードとも言えるモデルを次々生産終了させており、何か新しいものを生み出そうとしている予兆が感じられます。今後、どのようなカラトラバが生まれてくるのでしょうか。今から楽しみでなりません。