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WEBマガジン, フランクミュラー, ブランド時計豆知識, ミドルクラスのモデル特集

フランクミュラーはなぜこんなに人気があるのか?高級時計メーカーのブランド戦略考察

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30代・40代の男女を中心に、高い人気を誇るフランクミュラー。著名人にも愛用者が多く、アイドル,タレント,俳優にスポーツ選手と、本当に幅広い層から厚い支持を集めています。

フランクミュラーは、なぜこんなに人気があるのでしょうか。

正直、価格帯は安くはありません。
かと言って、パテックフィリップのような長い歴史があるわけでもなければ、オメガ・ブレゲ属するスウォッチグループのような巨大コングロマリットが後ろ盾にあるわけでもありません。
にもかかわらず、居並ぶ名門時計メーカーと遜色のない人気を博しており、当店でもメンズ・レディースともにフランクミュラーはいつも売れ筋です。

そこでこの記事では、「フランクミュラーはなぜこんなに人気があるのか?」その秘密を、私なりに考察してみました。

フランクミュラー ロングアイランド

 

フランクミュラーの人気の秘密①他社には見られない戦略的ターゲティング

フランクミュラーのラインナップを見てまず驚かされるのは、他社と比べて、非常に顧客ターゲットが広いということです。むしろ、「あらゆる層をターゲットに加えているのではないか?」といった、普通なら無謀とも思える戦略を打ち出しているようにも見えます。

どういうことかと言うと、普通、メーカー(時計にかかわらず)が製品開発を行う時、

「この製品は誰に提供するのか?」

ということをまず考えます。どういった顧客が使うことを前提とするのか?ということです。

年齢・性別・職業・住んでいる地域・・・こういった区分けのことを「セグメント」と呼び、そのセグメントの中で特定のターゲットを想定します。
そうして、彼・彼女らが求める製品を適切に提供およびプロモーションしていくことが一般的なマーケティングの手法です。

フランクミュラー ブランド戦略 イメージ

例えばパネライやIWCは、ターゲットを「男性」に絞っています。
さらにその中でセグメントを細分化し、それぞれのモデルごとに対象とする顧客を決定しています。例えばパネライのラジオミールやIWCのポルトギーゼは落ち着いた大人の男性に。パネライのルミノール ロゴやIWCのポルトギーゼは、初めてそのブランドの時計を買う方に、といった具合です。
逆にカルティエやショパールなどは「女性」にターゲットを絞り、「どういうキャリアステージにいるのか」「その女性の嗜好はジュエリーのような製品なのか、機能的な製品なのか」ということを想定したモデル展開をしてきました。

ちなみにこういったセグメント・ターゲットから作り上げた「顧客の人物モデル」をペルソナと呼びます。もともとは心理学者ユングが提唱した「人格」という概念に由来するものですが現代の製品開発・販売にペルソナのニーズを具現化することは欠かせません。

フランクミュラー ロングアイランド

これに対しフランクミュラーは、どうもこのマーケティング手法が、他社と全く違うように私には思えるのです。
と言うのも、同社は一つの製品に対し一つのターゲット、と的を絞らず、一つの製品に対し複数のターゲットを想定しているのではないか、と思えてしまいます。

例えばロングアイランドやカサブランカといったフランクミュラーを代表するシリーズ。ケースサイズ、装飾、素材など数百のバリエーションを設け、どんな性別・年齢・キャリアステージ・嗜好の方―どんなセグメントにいる方―でも、自身が欲しい一本が見つかるような製品開発をしています。
高級時計は個人の趣味嗜好が強く表れる商材であることをよく理解し、「このターゲットにはこのモデル」といった開発ではなく、どんな顧客でもロングアイランドやカサブランカが似合うように、一つのモデルを複数のターゲットが好むような製品開発を行っている。このように捉えられるのではないでしょうか。

フランクミュラー トノーカーベックス

※こちらの着用時計はいずれもトノーカーベックス。男女問わず人気が高い。

 

つまり、ターゲットが幅広く、興味を持つ消費者の数が多いため、他社のように一つのセグメントに対して開発された製品よりも、幅広いファンを抱えることとなり、販売しやすい、と。

でも実はこのマーケティング手法、結構もろ刃の剣です。ターゲットを広く取りすぎてしまうと、製品コンセプトがぼんやりしたり、プロモーションが場違いになってしまったりするためです。
高級時計のような嗜好品は特にこの幅広いターゲティングの難しさがあります。「自分の好みドンピシャ」なものが欲しい、というニーズが非常に強いためです。

しかしながらフランクミュラーでは、ターゲットを広く取った製品展開に成功しています。それは、「万人受けするシリーズ」を実現し、さらにその中でそれぞれのペルソナを想定した多彩なモデル展開(前述のサイズや素材、装飾など)を行ってきたためでしょう。

 

コンキスタドール / ハートトゥハート

左:コンキスタドール エルガ / 右:ハートトゥハート

ちなみにどちらもデザインアイコンはトノーカーベックスから来ている

 

その一方で一つのターゲットに特化して作っているモデルもラインナップされています。例えば「かっこよく力強い時計」を求めている男性にはコンキスタドール、「華奢でかわいらしい時計」を求めている女性にはハートトゥハート、といった具合です。
「万人受けするシリーズ」では対応できないようなハッキリしたニーズに対しては、そのニーズのど真ん中にある製品を作っています。

つまり、幅広いターゲティングに拘泥することなく、ペルソナを分類しながら、それぞれのニーズに適切な商品を開発しているのです。

こういった、他社にはできない巧みな戦略的ターゲティングを行っているというのが、フランクミュラーの大きな強みに、そして大きな人気の秘訣になっているのではないでしょうか。

 

フランクミュラーの人気の秘密②他ブランドには無い強い「個」

フランクミュラー トノーカーベックス

 

フランクミュラーのラインナップを再び眺めていて気づくことがあります。それは、「王道デザイン」がない、ということ。
例えばパテックフィリップのカラトラバのような。ロレックスのエクスプローラーのような。前者はドレスウォッチの規範です。後者もまた、「スポーツウォッチと言えばエクスプローラー」というイメージが定着しています。
そのブランド、というより、「腕時計の原点・王道」―つまり普通の時計―といったデザインの製品が見られないのです。そもそも、普通の腕時計の代表であるラウンドウォッチですら、ラインナップに非常に少ないですね。

フランクミュラーは例年「世界初の腕時計」を生み出し続けてきました。ブレゲの再来としばしば称される、時計界の風雲児にような存在として君臨しています。
他のブランドが絶対に思いつかないような、同社独自のユニークな発想を製品に落とし込む。そんな強い―ともすれば強すぎる―個を、フランクミュラーは創業以来、同社のアドバンテージとして振るってきました。

 

フランクミュラー クロノマスターバンカー

※マスターバンカー GMT機構にクロノグラフを融合したモデル

 

トノー(樽)型,ビザン数字(アラビア数字のレタリングの一つ)といったブランド独自のフォルム。エルガなどに代表される、普通はF1マシンや航空機といった交通運輸産業などで扱われる新素材を、時計に落とし込むというアヴァンギャルドな発想。ヴェガス,クレイジーアワーズ,シークレットアワーズ,マスターバンカーなどの奇想天外な機構を市販化してしまうなどなど・・・
こういった、他社とは違ったものを創り続けていく、ということに、フランクミュラー独自のこだわりを感じます。

フランクミュラーは1990年代に創設された、比較的新しいブランドです。こういった新進気鋭のブランドが、創業当時に他社との差別化でユニークな製品を続々ラインナップするという戦略は珍しいことではありません。また、小規模ブランドが、受注生産のような形で奇抜なモデルを世に送り出す、という事例もあるでしょう。
しかしながらフランクミュラーのブランド規模感というのは、今では世界的なものです。ここまで大きくなると多くの企業は守りに入って前述の「普通の時計」にフォーカスするようになるものですが、今なお創造力や独創性といったスピリッツが健在というところに、驚きを隠しきれません。

フランクミュラー マスターバンカー

さらに言うと、冒頭でも少し述べましたが、フランクミュラーは巨大コングロマリットに属しません。
現在時計業界の企業グループは、スウォッチグループ(オメガ,ブレゲ,ハリーウィンストンなど)・リシュモングループ(カルティエ,IWC,ジャガールクルトなど)・LVMH(ルイヴィトン,ウブロ,ゼニスなど)が代表として挙げられ、多くの有名ブランドがこのいずれかに属しています。

しかしながらフランクミュラーは、「WPHH」―World Presentation of Haute Horlogerie―という独自グループを創設しています。
これは、自分の「個」を守るためでしょう。
巨大企業グループに属することは安定した基盤や資本提供が受けられる一方で、製品コンセプトやラインナップが母体グループの意向に沿わざるをえない、という側面もあります。
そのため、フランクミュラーは独自路線を走り続けるために、「安定した基盤を持つためには、いっそグループを作ってしまおう」という発想に出たのでしょう。
ちなみにWPHHには、ピエールクンツやクストスといった、やはり独自性の高いブランドが所属しています。

もちろんパテックフィリップやロレックス、オーデマピゲなどのように独立を守るブランドも少なくありません。とは言えグループを作ってしまうという発想は、同社の「個」という強みを象徴する一つのエピソードですね。

幅広いターゲットを設定し、そんな万人受けシリーズの中にも、アイデンティティを貫く。こういったところに、強烈なまでのフランクミュラー人気の秘訣が垣間見えるように思います。

 

 

フランクミュラーの人気の秘密③「良いものを高く売る」徹底した高付加価値戦略

フランクミュラー カラードリームス

 

高級品のコモディティ化という言葉を聞いたことがありませんか?汎用品化などとも呼ばれます。
これは、一般的に高付加価値がある製品の「プレミア感」が薄れ、低価格競争にさらされる現象を言います。高付加価値品はブランド力や機能などで選ばれますが、コモディティ化されると「価格」「量」などに購買基準が寄ってしまい、食料品とか日用品のような立ち位置になってしまいます。
このコモディティ化と戦ってきたのが、1970年代~1980年代のスイス機械式時計産業です。セイコーがクォーツ時計「アストロン」の市販化に成功し、時計は誰でもが手に入りやすい、大量生産された安価なものとして扱われるようになってきました。そのため、ライバルが同価格帯のブランドではなく、こういった安価な時計となってしまったのです。

これは、今でも高級時計ブランドにとっては由々しい問題です。そのため、近年ではコスパ重視の戦略をとるメーカーも出てきました。

しかしながらフランクミュラーは、設立当初から徹底して「良いモノを高く売る」といった、高付加価値戦略を行ってきました。つまり、価格競争はしない、という戦略です。自社の製品は超高価格である、というポジショニングをずっと変えていません。

フランクミュラー ヴァンガード

出典:https://www.instagram.com/franckmuller_japan/

「コスパ重視のメーカーも増えてきた」と申し上げましたが、一般的に高級時計メーカーは高付加価値戦略を行います。
この戦略はスイスを中心としたヨーロッパ諸国では珍しいことではありません。日本では「良いモノを安く売る」ことに価値が見出される傾向がありますが、逆にヨーロッパでは高付加価値戦略が支持されます。良いモノをきちんと適正価格で販売することは、ブランド力や技術を温存し、自社にしかない製品で市場を戦い抜くことに繋がるためです。

実際、クォーツショック後の1970年代~1980年代、パテックフィリップなどの名門は一貫して高価格の機械式時計を作り続け、決して価格競争には加わりませんでした。

でも、私には、フランクミュラーがその中でも飛びぬけてこの戦略を徹底しているように思えるのです。
これも冒頭でご紹介しましたが、フランクミュラーは高級時計メーカーの中でも定価が高めに設定されています。
しかしながら製品を見ていただくと、それが適正価格であることがおわかりいただけるでしょう。
他社にはない特殊機構,優れたデザイン,こだわりぬかれたディテール・・・製品の価値、そしてブランド価値を磨き上げることによって、高価格路線を進み続けることに成功しているのでしょう。

フランクミュラー ヴァンガード

でも、この価格戦略、消費者が納得しなくては始まりません。クォーツショック時代の高付加価値路線は、パテックフィリップのような名門だから成功できた、という見方ができませんか?
フランクミュラーは設立わずか20数年。にもかかわらず、同社はコモディティ化とは無縁の戦略を突き進み、しかも消費者は納得している―むしろ人気を博している。これを実現する秘訣とは一体どのようなものなのでしょうか。

もちろんこれまでご紹介してきたように、他社にはない優れた、しかも万人受けしながらも個性的な製品を開発・製造することができるから、ということも挙げられるでしょう。
加えて、フランクミュラーは、高いプロモーション力を有します。各国でその国に合ったイベントを組む。SNSや動画メディアを駆使し、フランクミュラーの製品がどういったものかを販促していく。特に現代において動画の宣伝効果は計り知れません。クレイジーアワーズやヴェガスといった、「実際に見てみないとどういうものか魅力が伝わりづらい」製品を伝える効果は絶大ですね。

こういったプロモーションによって、世間に「オシャレ、かっこいい、独創的な高級時計=フランクミュラー」といったイメージを定着することに成功させたのではないでしょうか。

ちなみにこの高付加価値戦略を守るために、もう一つ欠かせない施策があります。それは、並行品対策です。
「並行差別」とも呼ばれますが、これは、ブランドのブティックや正規代理店の製品と、それ以外(並行輸入店)で購入された製品に、ブランド独自の差を設けることです。
並行輸入品は、価格の値引きができない正規店よりも、安く同じものを手に入れられる、というメリットを持ちます。それゆえに価格破壊が起こりやすく、ブランド価値を下げる一つの要因となりえます。
そこでフランクミュラーは、正規品以外はメンテナンスを受け付けない、など独自アフターサービスを導入し、しっかりと並行品と差別を行うことで、高付加価値戦略を守り抜くことを常に意識してきました。

このように、一貫した高付加価値戦略の中に自社をポジショニングし、かつそれに見合った製品開発やプロモーションを行ってきたことが功を奏し、「高くてもフランクミュラーを買いたい」といった層からの支持がプレミアを後押しすることとなった、と考えられます。

 

まとめ

フランクミュラーが設立わずか20数年にもかかわらず高級時計として人気を誇る理由を、私なりに考察してみました。

①他社にはないターゲティング戦略
②やはり他社にはない強い「個」を活かした製品展開
③的確な自社のポジショニングによる高付加価値戦略、およびそれに特化したプロモーション

こういった、これまでの高級時計産業にはなかったブランド戦略と、他社では実現できない製品開発力―創造力―が独自の地位を築き、多くの層から人気を得ることとなった、と考えました。

フランクミュラーは2019年も意欲的に新作を発表しており、相変わらずの斬新さ、そこにファッション性を取り入れた、優れた逸品を輩出しています。
高級時計産業の好景気が追い風となり、そのシェアはますます拡大するばかり。これからも、時計界の風雲児の活躍を楽しみにしていきましょう!

 

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