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時計修理技能士って何?向いてる人は?一級取得者に聞いてみた!

高級時計

時計修理技能士 時計技師 ウォッチメーカー

国家資格「技能検定制度」の合格者が名乗ることができる「技能士」。

各種施工や塗装、装飾等の様々な職種に存在するスペシャリストの証明の一つですが、時計業界では「時計修理技能士」がよく知られています。時計のお仕事について調べていて、行きついた方も多いかもしれません。

 

いったいこの時計修理技能士とは、どのような資格なのでしょうか。

どのように取得することができ、どういったキャリアプランがあるのでしょうか。

 

この記事では、東京 銀座の高級時計専門店GINZA RASINでウォッチリペアや品質管理を担当する、一級時計修理技能士にインタビューしてみました!

これから時計修理技能士を目指す方はもちろん、時計業界で働くことをご検討中の方にもぜひ目を通して頂きたい記事となっております。

ロレックス オーバーホール

 

時計修理技能士とは?資格の詳細や取得方法

冒頭でも述べている通り、技能士とは職業能力開発促進法に基づいて実施される「技能検定制度」に合格し、厚生労働大臣名または都道府県知事の合格証書が交付されることで名乗ることのできる名称独占資格です。ちなみに国家資格です。そして時計修理技能士は、様々な実施職種の中の一つの職種名となります。

最初にお伝えすると、「時計修理技能士にならないと時計修理の仕事はできない」というわけではありません。事実、これから時計修理技能士の資格取得を目指す、優秀なウォッチリペアスタッフは当店にも在籍しています(後述しますが、そもそも取得には実務経験が必要となります)。

しかしながら技能検定制度は、中央職業能力開発協会(JAVADA)曰く、「技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図ることを目的」に実施されているとのこと。すなわち時計修理技能士とは、定量評価しづらい「時計修理の技術力や知識、ノウハウ」が検定され、国によって証明されたスペシャリストと言うことができるでしょう。

※中央職業能力開発協会
・・・「職業能力評価試験」「ものづくり基盤の強化」「キャリア形成支援」などといった事業を基盤に、一人ひとりの職業能力開発を促進し、社会の活性化や国の職業能力開発施策の発展に寄与する専門機関。1979年設立。

そんな時計修理技能士の詳細について、本項で解説いたします。

 

資格の詳細

技能検定自体には特級、1級、2級そして3級。あるいは等級を区分しない単一等級が存在しますが、時計修理技能士は1級、2級、3級が実施されています。中央職業能力開発協会では、1級(および単一等級)を「上級技能者が通常有すべき技能の程度」、2級を「中級技能者が通常有すべき技能の程度」、3級を「初級技能者が通常有すべき技能の程度」と区分しています。

原則として、それぞれの級には受験資格が設けられています。受験資格とは、1級が7年以上、2級が2年以上の実務経験です。なお、3級は従来6か月以上の実務経験が求められましたが、2013年より緩和され、これに満たない場合でも受験可能となりました。

試験内容は、学科と実技がそれぞれ行われます。

学科は3級のみ真偽法、1級と2級は真偽法及び四肢択一の形式で出題され、100点満点中65点以上が合格基準です。

実技試験はあらかじめ公表されていた課題(おもに時計の修理作業)に対して、設けられた試験時間内に作業を行い、100点満点中60点以上で合格基準を満たすこととなります。

学科試験の内容は中央職業能力開発協会が問題集を出版しているとのこと。また、当協会のホームページで正解表とともに公開されているので、どんな問題が出題されているか気になる方は、目を通してみて下さいね。

ちなみに合格証書において、1級は厚生労働大臣名で、2級と3級は都道府県知事名で交付されます。もっとも、いずれの級も「時計修理技能士」と名乗れることとなります。

 

時計修理技能士の取得までと取得後

時計修理技能士を取得しようと思った時、既にその時点で時計の修理を生業にしている方もいらっしゃいます。一方で専門学校や職業訓練校で知識・修理ノウハウを学び、その後に実務経験を積んでから取得するといった道のりも一般的です。

また、資格取得のための受験勉強も求められます。

過去の問題を解いたり、実技のレベルを高めたりといった自己研鑽が必要になってきます。

資格取得後の道は様々ですが、民間の時計修理会社、あるいはメーカーや時計専門店の技術者として、OJTでいっそう技術を磨いていくといった職人の話をよく聞きます。

なお、時計販売員になったり、技術者の育成に携わったりする方々もいるようです。

収入や待遇は勤務先によってまちまちですが、時計修理技能士の資格によって転職が有利になったり、名刺に「時計修理技能士」と明記できるため「話のきっかけになりやすい」「時計のことを色々聞いてもらえる」などといった側面があると当店の技術者は語っておりました。

 

時計修理技能士って何?向いてる人は?一級取得者に聞いてみた!

当店で実際に働く一級時計修理技能士2名に、適正や取得後のキャリアプラン、修理を仕事にしていくうえで大切なことなどをインタビューしてみました!

 

質問内容は以下の通りです。

①時計修理技能士を目指したきっかけを教えて下さい

②一級資格取得までに、どのように勉強しましたか?また、どれくらいの勉強時間を費やしましたか?

③時計修理技能士に向いてる人はどんな人ですか(適正)?

④時計修理技能士としての「やりがい」はありますか?

⑤反対に、「辛いこと」「大変なこと」はなんですか?

⑥時計修理技能士として、これからどのような仕事をやりたいですか?

⑦一級時計修理技能士のキャリアプランを教えて下さい

⑧これから時計の修理の道を目指す人に、一言お願いします!

 

それでは次項より、それぞれの一級時計修理技能士に聞いたことをまとめてご紹介いたします。

 

一級時計修理技能士にインタビュー①メンテナンス課 主任

高級腕時計 メンテナンス

最初にインタビューしたのは、当店GINZA RASINのメンテナンス課で主任を務める廣島さんです。当サイトの監修者も務めています。

メンテナンス課は当店に入荷してきた中古時計のコンディションチェックやタイミング調整に電池交換、外装研磨などを行い、お客様にお届けできる状態にすることが主な業務です。近年は業績向上につき採用も進めており、そんなメンテナンス課の主任として人材育成やマネジメントを行います。

 

時計修理技能士を目指したきっかけを教えて下さい

20歳の頃から、地方のデパートで時計販売員として働いていました。そのデパートの時計技術者のおじいちゃんと仲が良くて。時計について話したり、実際に作業をしている様子を見て、「時計修理」という仕事をしてみたいと思ったことがきっかけです。

25歳でヒコ・みづのジュエリーカレッジ(ジュエリー、ウォッチ、バッグ等の認可専門学校)のウォッチコースに入学しました。一年生の時の担任の先生が一級時計修理技能士であったので、この資格を知った形ですね。また、学校に通って技術を習得するのみならず、「自分で磨いた技術をカタチにしたい」と強く思ったことから、明確に一級を目指すこととなります。

 

一級資格取得までに、どのように勉強しましたか?また、どれくらいの勉強時間を費やしましたか?

2級と3級は、ヒコ・みづのを卒業するまでに取得していました。この時も結構受験勉強をしていましたが、基本的には授業で学びながらといったことが多かったです。

ヒコ・みづの卒業後、民間の時計修理会社に入社しました。かなり激務の会社でしたね(笑)。

激務だったけど、1級時計修理技能士を受験する時は、仕事と両立しながら猛勉強しました。試験に出る時計を自腹で買って、深夜までオーバーホールしたこともあったなぁ。

 

時計修理技能士に向いてる人はどんな人ですか(適正)?

未だにわからない(笑)。

でも「時計修理技能士を仕事として活かせる人」といた視点で考えた時に一つ言えることは、どんな仕事もそうですが、コミュニケーション能力は本当に大切だと思います。

手先が器用とか、細かい作業が好きとか、そういった方面から時計修理技能士の道に入っていくのも良いけど、一人で技術を磨いていくだけでなくコミュニケーションをとりながら横との繋がりを作っていく意識を持てる人が強いのではないかな、と。

教えてもらって習得できる技術もありますしね。

 

時計修理技能士としての「やりがい」はありますか?

一級時計修理技能士は「自分自身の技術を突き詰めていく」ということに、やりがいを感じる職人肌な人物も多いです。自分含めて。

しかし同時に、「お客様に喜んでもらえる」というのが、なんだかんだ一番の「やりがい」なんだと感じました。

GINZA RASINではお客様に販売できるよう、中古時計をメンテナンス・研磨してクオリティを高めたり、販売後の時計のメンテナンスを行ったりしています。自分自身は直接お客様とお話する機会はありませんが、店舗スタッフや通販事業部スタッフを通して「中古とは思えないクオリティだった」「研磨の仕上がりが良い」などといったお褒めの言葉を頂戴できた時は、非常に嬉しく思います。

 

反対に、「辛いこと」「大変なこと」はなんですか?

毎日大変です(笑)。細かい仕事をしているので、やはりどうしても神経は使いますね。

あとは、シェル文字盤とか、取り扱いに慎重にならなくてはいけない時計をメンテナンスする時はいつも以上に気を使います。とは言え、自分自身で仕事に対してプレッシャーを与えないようには気を付けています。ガチガチに緊張すると、イップス起こしますもんね。

 

時計修理技能士として、これからどのような仕事をやりたいですか?

技術面でやりたいことというのは、十分やってきた、8~9割はやりつくしましたね。自分はポリッシャーとしてスキルを磨いてきたのですが、研磨が難しい外装の時計等も、挑んできました。

「時計修理技能士として」、と言って良いのかわかりませんが、今後は人材育成や技術継承に力を入れていきたいと考えています。これはメンテナンス課のみならず、会社全体で。

その第一歩として、販売に関わるスタッフに時計の内部構造についての勉強会の開催を目指しています。

当店は機械式時計の取り扱いも多いです。機械式時計がお好きな方は、内部の構造にもご興味をお持ちの方が結構いらっしゃいますよね。私がこれまで培った、内部構造の仕組みや各パーツの役割についての解説、また実際に時計を分解してみて各パーツのリアルな大きさやデリケートさをスタッフに共有することで、より販売力が向上すると確信しています。

 

一級時計修理技能士のキャリアプランを教えて下さい

勤務先や、自分がどんなビジョンを持っているかにもよりますが、色々なキャリアプランがあると思います!技術を突き詰めてエキスパートになっても良いし、自分のように勤務先で人材育成に力を入れるやり方もあるでしょう。一級時計修理技能士を掲げて独立した知人もいます。

あくまで時計修理技能士は資格の一つです。絶対にこうしなきゃいけないという道もなければ、やりたいこと・なりたいものが仕事をしていく中で変わっていく方もいると思います。

日々の勉強や業務に追われて気づきづらいことも多いですが、「将来どんな自分になりたいか」を考えながら仕事をすると、明確なキャリアプランを描きやすくなるのではないでしょうか。

 

これから時計の修理の道を目指す人に、一言お願いします!

一生懸命頑張ろう!ということでしょうか。

修理技術は一朝一夕で習得できるといったものではなく、日々の積み重ねが非常に大切になってきます。

一生懸命、覚悟を持って取り組めば、きっと自分自身の生き方が見えてきますよ!

 

 

一級時計修理技能士にインタビュー②商品管理課 主任

高級腕時計 精度

商品管理課はその名の通り、当店で取り扱う全ての時計を管理する部署です。言わば、物流の要です。

時計を仕入れてから店頭に並ぶまでの間に係る業務全てを請け負っており、例えば検品後にメンテナンスが必要であれば修理工房やメーカーを手配する。修理から戻ってきた個体を再チェックする。付属品の状態も併せてチェックする。ECサイトでも販売するために商品撮影に出す、あるいはサイトに個体のコンディションを明記するなどと、その業務内容は多岐に渡ります。

今回インタビューしたOさんは、一級時計修理技能士だったこともあり、もともとはメンテナンス課でウォッチリペアを行っていました。しかしながら今春より、商品管理課の主任に。お客様にハイクオリティな商品をお届けできるよう、いっそう尽力しているとのことでした。

 

時計修理技能士を目指したきっかけを教えて下さい

時計の販売員をしていましたが、自分自身がメカが好きなこともあり、20代半ば頃から修理に携わる仕事がしたいと考え、ヒコ・みづのに入学しました。

ここで基礎知識を学んでいく中で、時計修理技能士について知ったことがきっかけです。時計修理技能士は国家資格なので、将来独立する時に必要と思い、受験を決意しました。

 

一級資格取得までに、どのように勉強しましたか?また、どれくらいの勉強時間を費やしましたか?

もちろん受験のための勉強もしましたが、実務経験で培った知識やノウハウは多いです。

2・3級はヒコ・みづの在学中に取得できましたが、一級だと7年以上の実務経験が必要ということもありましたね。実際に一級時計修理技能士になったのは30代に入ってからですが、取得前も後も日々勉強なのは変わりません。

 

時計修理技能士に向いてる人はどんな人ですか(適正)?

「向いてる」とか、「適正」っていうのは正直あまりないと思っています。知識や器用さは、勉強や努力で補っていけます。

ただ、時計修理は少し孤独な時もあります。自分自身で、時計一つひとつに向き合っていかなくてはいけない。その時間や経験を糧にできると強いなと思いますね。

また、どの職業にも言えることですが、お客様や仲間ときちんと話せるコミュニケーション能力は大切です。

 

時計修理技能士としての「やりがい」はありますか?

オーバーホールをしている時かもしれません(自宅にオーバーホールできる環境があるそうです)。

壊れたもの・動かなくなったものが「また動き出した」「再生した」感じが、やりがいを感じる時です。難しければ難しいほどやりがいが生まれるかな。また、誰もやったことがないことをできた時も、達成感が大きいです。

 

反対に、「辛いこと」「大変なこと」はなんですか?

そんない「辛い」「大変」と思うことは多くはないですが、周囲やお客様に「メンテナンスについて」を正確に伝えられない時は、自分自身に歯痒さを感じます。例えば「なぜこれだけ納期がかかるのか」とか、「メンテナンスを実現するためにどんな技術や設備が必要か」とか。

やはりコミュニケーション能力や伝える力は大事だなと、日々痛感しています。

 

時計修理技能士として、これからどのような仕事をやりたいですか?

技術に関して、やりたいことはやりました。パーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーターの修理・・・「複雑機構での有名どころ」を再生させるというのは楽しかったです。

今は「時計の修理」というよりも、ロジスティクスといった広い観点から見た「時計の品質管理」が業務の中心になっているので、いっそうハイクオリティな時計を提供できる体制づくりを頑張っていきたいなという思いがあります。

 

一級時計修理技能士のキャリアプランを教えて下さい

一級時計修理技能士はあくまで「手段」なので、将来どのようになりたいか、それぞれの技能士によって変わってくるかなと思います。一級取得したからと言って、安泰ではありませんよね。修理を生業にできるかどうか、修理の知識・ノウハウを活かしながら他の仕事をできるかどうかは、本人次第でしょう。

もっとも、最近はキャリアパスが柔軟な企業も増えてきているので、色々な業務に携わるのも面白いと思います!実際、自分もウォッチリペアスタッフとして入社したのに、まさか商品管理課で主任をやるとは予想していませんでした(笑)ちなみに「独立しよう」と思って修理技能士を取得しましたが、今のところ独立の予定はありません(笑)

 

これから時計の修理の道を目指す人に、一言お願いします!

時計修理以外に、自分自身の「強み」を作ることは、これからの時代に必要だと思います。技術や資格だけではなく、人間力を磨くことが大切かな、と。

また、「技術が高くても、仕事がもらえなくては意味がない」「仕事を頂けることで成立する職業」というのは、ぜひご理解頂きたいです!周囲やお客様にベネフィットを与えられるような技術者を目指していきましょう!

 

まとめ

時計修理技能士について解説するとともに、当店で働く一級取得者に話を聞いてみました!

「時計修理技能士を目指したい」「なんとなく、時計の修理の仕事に興味がある」「時計業界で働きたい」といった方々の一助となれば幸いです。

なお、時計業界のお仕事はまだまだたくさん。ご興味ある方は、ぜひ一度お問合せ下さい!

当記事の監修者

廣島浩二(ひろしま こうじ)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 課長

1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年


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