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WEBマガジン, その他, 時計の雑学

2020年 腕時計ブランド業界相関図を作ってみました

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時計業界相関図

時計の世界には誰もが知る有名ブランドから知る人ぞ知る玄人好みのブランドまで、様々なブランドが存在します。ただ、競争が激化している近代社会においては、どのブランドも巨大資本グループの傘下に入らなければ経営を続けることができないのが現状です。

例えばオメガ、パネライ、カルティエ、IWC

多くの時計ファンに愛されるこれらのブランドであっても単独経営することは難しく、大手資本グループに入ることで時計の製造を続けています。

そこで今回は腕時計ブランド業界相関図を作成してみました。2020年の最新版となっており、気になるパテックフィリップやLVMH×ティファニーの動向なども掲載しております。

どのブランドがどのグループに属しているのか。この機会に是非把握してみてください。

※掲載する情報は2020年1月現在のものとなります。

 

時計業界の相関図

時計業界相関図

2020年1月現在においての時計ブランド相関図は上の図の通りです。

大きく分けると、傘下ブランドに時計メーカーが目立つ大手スウォッチグループ、宝飾品・時計・筆記具・服飾の4部門で構成されるリシュモングループ、世界最大のファッション業界企業体LVMH(ルイヴィトン・モネヘネシー)グループの3グループが時計界を席巻していることがわかります。

他にもフランクミュラーウォッチランド、ケリンググループといったグループも力をもっていますが、時計界における影響力は大手3グループと比較すると弱めです。

また、ロレックスやパテックフィリップのようにどこのグループにも所属せずに独自路線を貫いているブランドもあれば、個人として時計を製作する独立時計師も存在します。

 

時計界の3大グループ 「スウォッチ・リシュモン・LVMH 」

スウォッチグループ

出典:https://www.swatchgroup.jp/

現在の時計界における3大グループはスウォッチグループ・リシュモングループ・LVMHグループの3つです。

スウォッチグループは3つの時計グループにおいて一番最初に業界のグループ化に乗り出した巨大資本企業であり、クォーツショックによって縮小傾向にあったスイス時計業界を買収することで再編しました。

買収というとあまり聞こえはよくありませんが、各時計ブランドは海外巨大資本の傘下に入ることで、安定した基盤の中で時計製造を行うことが可能となるメリットがあります。

現代社会で高級腕時計を製造していくには、時計の原価だけでなく、広告費や開発費にも莫大なコストが掛かるため巨大資本によるグループ化は避けられないことだったのです。

 

スウォッチグループ オメガ

最初にスウォッチグループの一員として傘下に加わったのは「オメガ」「ブレゲ」「プランバン」といった高い知名度を誇るブランド。そしてムーブメント製造メーカーの「ETA」でした。

スウォッチグループはグループ内のブランド毎に明確なターゲットを設定し、ブランディングを実施。ETAからのムーブメント供給によるコストカットも相まって時計業界の新たなるビジネスモデルを作りました。

 

それから数年後。スウォッチグループの成功に伴い、リシュモングループ・LVMHも時計業界に参入。

リシュモングループはカルティエやピアジェといった宝飾ブランドを中心にIWC・パネライ・ランゲ&ゾーネといった人気ブランドを傘下に収め、スウォッチグループの対抗馬として頭角を現します。

また、ファッション業界大手のLVMHもタグホイヤー・ウブロ・ブルガリといった流行の最先端を走るブランドを取り込み、2社に負けじと勢力を強めました。

これにより、時計業界は3つのグループによる三つ巴とも呼べる状況へと再編がなされたわけです。

現在においても2013年にスウォッチグループがハリーウィンストンを約895億円で買収したり、2017年にCVCキャピタルパートナーズがブライトリングを買収するなど、勢力図は日々その姿を変えています。

 

勢いがあるのはリシュモン・LVMH

いち早くグループとして勢力を強めたのはスウォッチグループですが、2000年以降に勢いを増したのはリシュモン・LVMHでした。

リシュモングループ

出典:https://www.richemont.com/

 

グループ別 売上順位 2015年度 売上高(億ドル)
LVMH 224.3
リシュモングループ 122.3
ケリング 87.3
スウォッチグループ 85.0
ロレックス 57.2
シチズン 30.1
セイコー 26.9
パテックフィリップ 15.1

 

※時計事業の取り扱いが豊富なグループ・メーカーのみ記載

※ただしLVMHおよびリシュモン、ケリングなどは時計以外の事業も手広く展開

 

こちらは2015年度(2015年~2016年6月末まで)の売上高を米ドルで表したものです。LVMH・リシュモングループ・ケリンググループは宝飾事業やファッション事業も盛んなため一概に「時計」だけではくくれませんが、業界内でのそれぞれの勢いをご覧いただけるかと存じます。

 

まず、ぶっちぎりのトップはLVMH。時計ブランドとしてはゼニス、ウブロ、タグホイヤー、ブルガリなどが挙げられますが、ルイヴィトン、大手アルコールメーカーのモエ・ヘネシー、ディオール、フェンディ、マーク・ジェイコブスなど有名ブランドばかりをM&Aで取り込んできた甲斐あってか、他の追随を許さない勢いを博します。ちなみに最近ではスマートウォッチ事業にも意欲的で、ウブロやタグホイヤーを筆頭にウェアラブルデバイス事業にも参画しています。この勢いが続けば、数年後にはApple・・・とまではいかなくとも、主力商品になることは想像に難くありません。

次いでリシュモン傘下のブランドは「ヴァシュロンコンスタンタン」「ランゲ&ゾーネ」「カルティエ」「パネライ」「IWC」「ピアジェ」「ジャガールクルト」など、現在の時計界において高い人気を誇るブランドばかりです。

スウォッチグループは主力商品がカジュアルウォッチ「スウォッチ」であるためか近年やや後退ぎみ。他グループへのETAムーブメント供給を止めることを宣言したのも、LVMH・リシュモンの猛威に対抗してのことでしょう。

 

速報!ティファニーがLVMHに1兆7600億円で身売り合意!?

ティファニー LVMH 買収

出典:https://www.tiffany.co.jp/world-of-tiffany/

上記でLVMHの飛ぶ鳥落とす勢いをご覧いただけたかと思います。

しかしながら同グループの目下の悩みは、宝飾品事業が弱いところでした。

確かにリシュモングループはカルティエ、ヴァンクリーフ&アーペル、ピアジェを後ろに控えます。スウォッチグループには、泣く子も黙るハリーウィンストンが・・・

LVMHもフレッドやショーメ、ダイヤモンドの大家デビアスなどを傘下に加えていましたが、インドや中国、東南アジアなどで高まり続ける宝飾品需要を満たすには、まだまだ供給を増やす必要があると考えていたのでしょう。

そして2019年11月、時計・宝飾品業界を驚かすあるニュースが入ってきました。

これまでどの企業グループにも属さず、独立を守り抜いてきたティファニーに対し、LVMHが買収を提案したと言うのです!!

ティファニーは、アメリカのジュエリー産業に大きな影響を与えたブランドです。1837年、ニューヨークに出店するやいなや、これまでヨーロッパに出遅れていたアメリカのジュエリー技術を飛躍させるのに一役買いました。

ティファニーはスターリングシルバーを確立したり、それまで価値が低かったイエローダイヤモンド(当時は透明が至高だった)をジュエリーとして昇華させたりと、新たなジュエリーの価値を提供してくれたブランドでもあります。

ティファニー

出典:https://www.instagram.com/tiffanyandco/

時計業界にとってもティファニーは特別な存在です。と言うのも、ティファニーはジュエラーでありながら、時計の歴史においてもとても大きな存在感を示すメーカーであるためです。

その歴史は19世紀まで遡ります。ティファニーは実は1849年からパテックフィリップに製品供給を受けており、パテックフィリップとティファニーのWネームモデルがいくつか存在するという事実があります。ちなみにロレックスとのWネームも存在します。その後、ティファニーが持っていた時計工房は、パテックフィリップが買収することになりました。

 

こういった経緯を持つティファニーが、LVMHに買収されるという事実に、なんとも言いようのない気持ちを抱えた業界人も少なくないでしょう。

しかしながら2019年11月25日、約1兆7600億円(約162億ドル)で買収合意に至ったようです。

ちなみに為替や時代による貨幣価値の違いはあれど、スウォッチグループがハリーウィンストンを買収した時は約895億円、LVMHがブルガリを買収した時は約4200億円でした。いかに高額での買収かがおわかりいただけるかと思います。

あの強気経営のLVMHが2兆円近く払ってまで買収とは・・・!喉から手が出るほど欲しかったのでしょう。

LVMHの勢いが止まりそうにありません。

詳報が入り次第、またお伝えいたします。

 

2010年 ETA問題について

ETA7750 ムーブメント

出典:https://www.eta.ch

LVMH・リシュモンに後塵を拝しているスウォッチグループも負けてはいません。

前項でも言及しましたが、2010年ETA問題は2002年にスウォッチグループが、グループ外へのエボーシュ(機械式時計の未完成ムーブメント)提供を段階的に停止していくと発表し、時計界の在り方を大きく変化させる切っ掛けとなった事件です。

この発言はスウォッチグループが「競合他社にわざわざムーブメントパーツを提供したくない」と思ったことが発端であり、背景にはスウオッチグループの勢いが以前と比べ衰えていたこと、リシュモングループの追い上げが驚異的であったことが挙げられます。

尚、ETAのムーブメント供給問題はグループ間だけでなく、スイスの時計産業にも密接に関係する重要事項だったため、結局部品供給の削減が認められたのは2012年のことでした。

 

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独立企業について

相関図をご覧いただくと、巨大資本に属さない独立企業が存在していることがわかります。ロレックス・パテックフィリップ・オーデマピゲといった人気ブランドに関しては単独でグループ企業にも匹敵する売上を記録しています。

特にロレックスに関しては独立企業でありながらも、売上高でスウォッチグループなどに肉薄しているのですから驚きです。

ロレックス 独立企業

こういった独立起業は経営責任を自社で負う一方で、親会社などの意向を気にせず、独自のブランド戦略のもと、好きな時計を製造できる、といったメリットがあります。ちなみにそのメリットを大きく享受しているのがオーデマピゲなんて言われており、本当に好きな時計を作っている、といった印象です。

一方で世界最高峰のメーカー・パテックフィリップが、買収される噂がバーゼルワールド2019前に流れました。その噂はバーゼルワールド後、CEOティエリー・スターン氏が明確に否定したことで立ち消えとなりましたが、一時期は「ロレックスが買収する」なんてあることないことが囁かれたものです。

尚、独立企業はグループ内からのパーツ供給を受けることが出来ないため、大半のブランドが「マニュファクチュール」です。日本のブランドであるセイコー・シチズンも独立企業になります。

 

独立時計師アカデミーについて

世の中にはたくさんの時計ブランドがありますが、こういった企業に属さず「個人」として時計製造を行う独立時計師という存在がいます。

そして、独立時計師の中でもずば抜けた時計製造技術を持つ者だけが独立時計師アカデミーに入会することが許されるのです。

日本人独立時計師 菊野昌宏

出典:https://www.masahirokikuno.jp/press/

独立時計師は自分の名前をブランドとして掲げ、世界最高品質の時計を日々製造しています。

このアカデミーには現在数十名の独立時計師が在籍しており、世界的に有名なフィリップ・デュフォー、フランソワ・ポール・ジュルヌ、日本からは浅岡筆、菊野昌弘が在籍中です。

勿論パーツの一つ一つを自作できるような時計師でなければ独立時計師と名乗ることは出来ないので、独立時計師アカデミーに所属しているブランドは全てマニュファクチュールとなります。

 

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まとめ

現在の時計界はスウォッチグループとリシュモングループが中心となり、そこにLVHM・フランクミュラーウォッチランド・ケリングといった他のグループやロレックス、パテックフィリップといった独立企業が加わることで構成されています。

また最近はモンブラン・タグホイヤー・ブライトリング・ルイヴィトン・ブルガリといったブランドがスマートウォッチの開発に力を注いでいます。現時点ではスマートウォッチユーザーと機械式時計ユーザーは完全に住み分けがなされており、シェアを奪い合ってはいません。しかしITの進化により数年後にはこの業界図が大幅に変わっている可能性もあります。

今後時計界がどう変化していくのか。目が離せませんね。

 

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この記事を監修してくれた時計博士

田中 拓郎(たなか たくろう)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN シニアマネージャー

当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴11年

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