「ジャガールクルトのアトモスって何がすごいの?」
「ジャガールクルト アトモスについて知りたい」
高い技術と洗練されたデザインに定評のある時計ブランド「ジャガールクルト」。
1833年に創業されてから現在まで自社一貫製造を行うジャガールクルトには「アトモス」と呼ばれる非常に高い技術で製造された精密時計が存在し、その特殊な構造は時計界に衝撃を与えました。
そんなアトモスについて知りたいという人は多いのではないでしょうか。
アトモスは90年前から存在している半永久的に動く機械式置時計です。
この記事ではアトモスについて、GINZA RASINスタッフ監修のもと解説します。
ジャガールクルトのブランドについても紹介しますので、機械式時計に興味がある方はぜひ参考にしてください。
出典:https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/customer-services/maintenance-advices/atmos-clocks.html
目次
ジャガールクルトとは?
ジャガールクルトは1833年に『アントワーヌ・ルクルト』によって創立された老舗時計ブランドです。「時計界の発明家」と呼ばれた創業者ルクルト氏を中心に、”初の竜頭巻き時計”やミクロン単位を測定できる革命的計器”ミリオノメーター”といった革新的発明を行ってきました。
また、ジャガールクルトは1900年までに約350種類以上のムーブメントを作り上げ、20世紀には、世界3大時計ブランドである「パテックフィリップ・オーデマピゲ・ヴァシュロンコンスタンタン」にムーブメントを供給するなど、世界トップの技術力を誇るムーブメントメーカーとしても名を馳せました。
そして1928年。ジャガールクルトは究極の置時計「アトモス」を発表し、時計界に大きな衝撃を与えます。
出典:https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/watches/story-of/story-of-atmos.html?JLCclick=CollectionHeader
半永久的に動く機械式時計「アトモス」
ジャガールクルトが世にはなった置時計「アトモス」。この時計は電池を動力とせず、ただ置いておくだけで半永久的に動く置時計として世界に発表されました。
そして、この時計はなんと「空気」を動力としているのです。
出典:https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/watches/atmos/atmos-classique-phases-de-lune/5112202.html
アトモスは日本語で「空気・大気」という意味をもちますが、その意味通りアトモスは空気を使って動く仕組みとなっています。
アトモスを横から見ると、内部にカプセルのような箱が見えるのが分かるはずです。この箱には密封されたガスが入っており、ガスは”気温差”によって膨張と収縮を起こすような設計がなされています。
そして、その力を利用することで「ゼンマイ」が巻かれ、アトモスは動くのです。
ちなみに密封されたガスは室内の気温が1度変わるだけで、スプリングに約2日分のエネルギーが蓄えられます。常に気温が変わらないことなどあり得ないため、アトモスは半永久的に動きを止めません。
加えてアトモスは「最高の美」を誇る置時計として大統領やローマ教皇といった名立たる偉人達に愛されてきた歴史も持ち合わせています。
モダンでクラシカルなアトモスの魅力は、発売当時から現在に至るまで世界的に語り継がれているのです。
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アトモスが長く使える理由
アトモスは半永久的に動く置き時計として人気を博しましたが、長く使えることには理由があります。それはアトモスが一般的な時計に比べ240倍もゆっくりとした速度で振動するという特徴を持つことです。
腕時計も置時計も早く振動する時計は高い精度を誇る反面、パーツやムーブメントに負担がかかります。逆にゆっくり振動する時計はムーブメントかかる負荷が少なく、寿命が伸びるという特徴があるのです。
そのため、非常にゆっくり振動するアトモスの耐久性は腕時計の約300倍。時計として非常に長い製品寿命を持ちます。
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非常にゆっくり動く為、丈夫ではあるけど精度が悪いのでは?と思われる方もいますが、そこはご安心ください。
ジャガールクルトは世界随一のムーブメントメーカーです。耐久性を持ちながらも高い精度を実現しています。
アトモスを適切に扱うために知っておくべき3つのこと
アトモスは非常に高い耐久性と精度を誇りますが、正しい扱い方をしなければ真の力を発揮することはできません。そして、この取り扱いこそが難しいのです。
ここではアトモスを扱う上で注意しなければいけないポイントをご説明致します。
アトモスの注意点① 高温に弱い
アトモスは密封されたガス(塩化エチレンガス)の膨張と収縮によってうまれる力をエネルギーとして動く時計です。ただ、このガスは高温に弱いという欠点があり、気温30度を超える場所に置いておくとガスの圧力が高くなりすぎてガス漏れをおこす可能性があります。
アトモスが生まれたスイスは年間を通じて気温30度を越す日がほとんどないため、アトモスを快適に使うことが可能です。しかし、高温多湿の日本ではそうはいかず、夏はクーラーが常にかかっている部屋に置くなど、涼しい場所に置いておかなければなりません。
ちなみにアトモスの一番の修理原因はガス漏れやガスの変質といったガス関連です。
アトモスの注意点② 衝撃を与えない
アトモスは非常に繊細な設計が成されているため、振動や衝撃のない安定した平らな場所に置いてください。そして、一度設置場所を決めたら「その場所から動かさない」ことが推奨されています。
時計の基盤を掃除する際、時間の設定をする際もアトモスは動かさず、強い振動を与えないように心掛けてください。
出典:https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/watches/atmos/atmos-classique-phases-de-lune/5117201.html
ちなみにアトモスの時間設定は指で針を直接回すことで調整ができます。ただ、その際に「分針を時計回りに回して時間を合わせる」ということを絶対に守ってください。分針を反時計周りに回したり、時針を回したりすると故障につながります。
アトモスの注意点③ 運搬にも注意が必要
“動かさない”という注意点にもつながるのが「振り子」の存在です。アトモスに搭載されている振り子は非常に細いワイヤーで吊るされている為、持ち運ぶ時は振り子を必ずロックしてから持ち運ばなければなりません。
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部屋から部屋までの移動、隣の机までの移動でさえもこの操作は必要になります。
また、引越等で輸送をする際は、アトモスを購入した際に付属していた梱包材を利用することが必要不可欠。必ず箱は保管しておきましょう。そのため、アトモスを中古で購入しようとしている方は、箱が付属していることを確認した方が良いでしょう。
アトモスのメンテナンス・修理について
アトモスは空気を動力とする構造上”オイル”を使っていないためオーバーホールは基本的に必要はありません。加えて出荷時に約4週間にも及ぶ調整や検査を施すため、初期不良や故障が少ない時計でもあります。
ただ、何十年も使用していたり、前項で挙げた注意点を怠ってしまった場合はオーバーホールが必要になります。その際は基本的にスイス本国での修理となるため、修理費が10万円以上にも及ぶことが多いです。
また、メーカーでは7 ~10年を目安にメンテナンスや点検の依頼をオススメしています。
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ちなみに何十年も経過したアトモスでさえ、ジャガールクルトの工房へ送ることで丁寧に修復されます。大切に使うことを心がければアトモスは一生のパートナーとして末永く動いてくれることでしょう。
まとめ
アトモスは90年前から存在している半永久的に動く機械式置時計です。その非常に美しい佇まいは、時計ファンのみならず多くの人を魅了し続けてきました。
ただ、アトモスは非常に繊細な設計で作られている為、取扱には非常に注意が必要。特に高温多湿で地震が多い日本では、細心の注意が必要な時計といえます。
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