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カシオ 腕時計大全。なぜG-SHOCKやオシアナスは世界で売れているのか

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「創造 貢献」の経営モットーのもと、これまでにはない斬新な機構を開発し続けることで、ユーザビリティの高い製品を世に輩出し続けてきたカシオ(CASIO)。

長年多角経営を行ってきた企業でもありますが、とりわけ腕時計製造に関しては世界に名だたる評価を獲得しており、国内外でそのファンは少なくありません。初めてG-SHOCKを買ってから時計の楽しさに目覚めたと言った愛好家もいらっしゃるでしょう。

とは言え「G-SHOCK」や「オシアナス」は有名ですが、カシオ―正式名称はカシオ計算機―がいったいどのようなメーカーで、その時計製造技術の実力がどういったものなのかは意外と知られていないもの(もっとも、その完成された製品を手にすれば実力は言わずもがなではありますが)。

カシオについて知ると、よりお使いのカシオウォッチの愛が深まります。

この記事では、カシオ計算機の歴史や培われてきた時計製造技術,そしてなぜカシオが並み居る時計ブランドの中でも世界中で愛され、近年ではどのような戦略で成功を収めているのかを徹底解説致します!

カシオ 腕時計

出典:https://www.facebook.com/CasioJapan/photos/

 

カシオってどんなメーカーなの?

カシオの前身は1946年に東京 三鷹市で創業した樫尾製作所です。

創業者は樫尾忠雄氏で、草創期のメンバーとしては他に忠雄氏の三兄弟が挙げられます。もともと優れた技術者として名を馳せていた忠雄氏を筆頭に、精密機器のパーツや歯車を加工・製作する下請け工場を展開していきました。ちなみにカシオは現在でも経営の手を創業家一族が担っています。

カシオ 創業者

出典:https://www.casio.co.jp/company/brothers/

樫尾製作所は下請け工場であった傍ら(かたわら)で、製品開発にも意欲的に取り組みました。

とりわけ、タバコを根元ぎりぎりまで吸うことのできる「指輪パイプ」の開発がヒット。物資不足の中において重宝されていたのでしょう。樫尾製作所であった当時から、「創造 貢献」の意志が根付いていたことを示唆しますね。

その後1950年代に入ると、世界は一気に電子デバイス開発へ舵を切ることとなります。1947年に半導体(トランジスタ)がアメリカで開発されたことで、各社が電動計算機やトランジスタラジオを手掛けるようになったのです。

これに目をつけた樫尾製作所では「指輪パイプ」での資金を元手に、世界初の小型純電気計算機「14-A」の商品化を1957年に成功させました。

世界初の小型純電気式計算機「14-A」

出典:https://www.casio.co.jp/company/history/

この「純電気」とは機械的な歯車を一切持たず、リレー(継電器のこと)等の電子回路を使用した当時としては画期的な計算機です。機械式計算機やモーター駆動の電動式計算機は既に存在していたものの、機械式をはるかに凌ぐ高速演算や多機能,そしてモーター駆動では実現しえなかった静音を誇った「14-A」は、世界中にカシオの名を轟かせるに至りました。

なお、「14-A」とは、文字通り14桁までの四則演算を行うことにちなみます。また、テンキーや一つの表示窓と言った、今日の計算機の原型を作り上げたことから、電子機器の歴史に残るような発明とも称されます。

 

樫尾製作所はこの「14-A」商品化の同年に、現在のカシオ計算機株式会社へと社名変更。

1972年に世界初のパーソナル電卓「カシオミニ」や、誰もが簡単に演奏を楽しめるというコンセプトのもと1980年に開発された電子楽器「カシオトーン」等、画期的な製品開発を意欲的に行っていき、わが国屈指の電機メーカーへと成長していきました。

 

現在では電卓や電子楽器,電子辞書に時計と多岐に渡った事業を展開しており、そのいずれもトップクラスのシェアを誇ります。

なお、カシオのロゴは「CASIO」で、創業家一族の苗字にちなみます。KASHIO表記ではない理由は、世界で親しまれるグローバル企業を目指しているためと言われています。

 

カシオの時計産業への進出とその沿革

カシオ 時計

出典:https://www.casio.co.jp/company/

「時計大国」と言うと、まずスイスが思い浮かぶかもしれません。

しかしながら世界的に見ると日本もまた、まごうことなき時計大国。しかも、海外勢とは全く異なるアプローチによって独自進化を遂げてきたことが大きな特徴であり魅力ですが、この進化の牽引役の一つがカシオと言えるでしょう。

小型計算機で名を馳せたカシオが、なぜ時計製造に着手したのか。また、G-SHOCKやオシアナスといった空前のヒット作を生み出したカシオの時計製造技術の実力とは?

本項でご紹介致します。

 

①1974年「カシオトロン」を発表

カシオミニ

出典:https://www.casio.co.jp/company/history/chapter01/

カシオは前述した1972年発売の「カシオミニ」が大成功を収めたことで、時計事業への進出を決定します。

1970年前後は、国産時計メーカーの世界的な競争力が飛躍的に高まっていた時代です。

わが国は明治維新後、時計産業では海外製品の輸入に依存することが多いものでした。しかしながら1892年(明治25年)、現在のセイコーに当たる精工舎が設立されたことを皮切りに、じょじょに国産時計が内製化されていくこととなります。

第二次世界大戦後、海外製ウォッチが市場に不足する一方で需要は健在であったこと。加えて1964年開催の東京オリンピックに向けて、各時計メーカーが計時技術を研鑽していたことから自ずと生産力・技術力が高まり、1969年にはセイコーが「アストロン」を開発するに至ります。

※初代セイコークォーツ アストロン

この「アストロン」とは、世界で初めて量産型となり、市販化に至ったクォーツ式腕時計です。

今でこそお求めやすい価格で、かつ正確なクォーツ式腕時計はポピュラーです。しかしながら伝統的な機構は「機械式」であり、水晶振動子を用いて電子制御を行うクォーツ式は後発です。前述の通り電気デバイスに世界が湧いていた時代背景もあり、スイスでも日本でもクォーツ式時計の開発は行われましたが、日本が先鞭をつけたことになります。

さらにセイコー アストロンの開発は後にクォーツショックと呼ばれるほど、機械式時計のシェアを奪い、時計産業に大きな衝撃を与える契機となりました。以降、わが国の時計産業は「電子化」を武器に、高精度で機能性豊かな製品開発でその市場を拡大していきます。

 

そんな中、電卓事業で培ったLSI(大規模集積回路)ノウハウを有したカシオが、時計事業に目を向けたのは当然かもしれません。とは言え既にセイコーやシチズン,オリエントと言った競合ひしめく市場に打って出るのは、勝てる戦略がないとなかなか難易度が高いもの。

そこでカシオは1974年、これまでとは全く異なる仕組みを持った「カシオトロン」の開発で、時計産業デビューを飾ることとなりました。

カシオ トロン

出典:https://www.casio.co.jp/company/history/chapter01/

こちらが1974年当時のカシオトロンです。

伝統的なアナログ式ではなくデジタル式であることが特徴ですが、デジタル式腕時計自体は1972年にハミルトンが、そして1973年にセイコーが世界初デジタルクォーツ(秒表示付き)を開発しています。

一方のカシオトロンは、世界初のオートカレンダー機能搭載デジタルウォッチとなります。

カシオトロンはベーシックな時分秒の他、プッシャー操作によって月・日付・曜日も表示することが可能なデジタルウォッチですが、大の月・小の月・閏年を自動的に計算することで手動操作を不要とした、当時としては最新鋭かつ最先端のウォッチでした。

普通、30日までしかない月(小の月)は月末にカレンダーを「1日」に修正しなくてはいけませんが、カシオトロンでは閏年の2月含めた全ての月を自動計算させることを実現。膨大なデータを腕時計サイズに収めるLSI技術を持つカシオだからリリースできた逸品と言えるでしょう。

ちなみにこのカシオトロンは2モデル発売され、それぞれ5万8000円と6万5000円の定価が付けられました。これは、当時の高卒公務員の初任給に匹敵する程度の価格となります。

 

②G-SHOCKの開発と近年の動向

初代G-SHOCK

出典:https://gshock.casio.com/jp/identity/

1980年代以降のカシオは多機能機を手に入れやすい価格帯で展開していくことでもユーザーの心を掴んでいきます。それは、斬新な発想力と高度な時計製造およびエレクトロニクス技術が同社の強みであったからに他なりません。

その最たるものが、1983年開発のG-SHOCKでしょう。「エディフィス」や「オシアナス」を知らなくとも、G-SHOCKを知らないと言う方を私は知りません。

タフネスのコンセプト通り、G-SHOCKは高所からの落下や強い振動にも耐えうる「耐衝撃構造(ショックレジスト)」が大きな特徴であり、アイデンティティです。G-SHOCKには必ずカシオ独自の耐衝撃構造が採用されています。

この耐衝撃構造の基本原理は、時計のモジュール(ムーブメント)をケース内で中空構造とし、モジュール・ケース間に緩衝パーツを組み込むことで大きな衝撃を分散させる、というもの。G-SHOCK開発で高名な伊部菊雄氏は、この構造を公園で子どもが興じていたゴムボールから着想を得たとか。

G-SHOCK

出典:https://www.facebook.com/CasioJapan/photos/

ちなみにG-SHOCKはすぐに売れたわけではありません。

1984年、アメリカでアイスホッケー選手がG-SHOCKをスティックで打ち、「壊れない」ことをアピールした同社のCMが一つのきっかけとなりました。これはアメリカ国内で「誇大広告だ」と議論になり、その後検証番組が全米で放映され、やはり壊れなかったことから一躍大ヒット商品に。1990年代になると逆輸入するような形で日本でもG-SHOCK人気に火が付くこととなったのです。

 

そうして約半世紀に渡りカシオは、創業以来の「創造 貢献」精神のもと、時代のニーズに即した製品群―時計も、その他機器も―を世に送り出し続けてきました。とりわけ最先端エレクトロニクス技術を最大限に投入した機能性に関して、カシオの右に出る時計メーカーは国内外でそうそう見受けられません。

詳細は後述しますが、例えば世界6局の電波受信を可能にしたマルチバンド6や、スマートフォンと連動させられるモバイルリンク機能がその典型でしょう。

 

一方で近年では自社の腕時計製品の高級化を図っており、MR-GやMT-GといったハイエンドなG-SHOCK、そしてオシアナス生産に力を入れています。

この高価格帯製品に関しては2018年に「高級モデル専用工場」として竣工した山形カシオ(山形県東根市)を生産拠点とし、モジュールのみならずケースやブレスレットをも内製化するように。

1990年代にG-SHOCKに夢中になった世代が、現在ワンランク上のカシオ製品を愛用する・・・そんな構図も実現しており、カシオは今やユーザビリティ高い計器に加えて、ビジネスシーンでも活躍する装飾品の側面も兼ね備えることとなりました。

 

なお、2020年から続く新型コロナ禍では時計メーカーもまた大打撃をくらうこととなりますが、カシオはG-SHOCK事業を中心に、いち早く立て直しを行いました。

長年培ってきた時計製造技術とエレクトロニクス技術を強みに、国内のみならず海外でも今なおファンを獲得し続けており、そのエポックメイキングな傑作機の数々は、今後も愛され続けてくことでしょう。

 

カシオの時計製造の実力

カシオ 時計製造

出典:https://www.casio.co.jp/development/

優れた発想力と高度なエレクトロニクス技術を強みに、独創性溢れる時計をリリースし続けるカシオ。当然ながら、その時計製造技術もまた、世界的に群を抜きます。

 

余談ですが、時計メーカーの生産体制を表す用語で「マニュファクチュール」というものがあります。日本語では自社一貫製造と訳すことができ、ムーブメントを始めとした時計パーツを内製化する、といった意味合いです。

時計の伝統的な製造国であるスイスでは分業体制が長年敷かれており、このマニュファクチュールはそう多くはありませんでした。しかしながら最近では「マニュファクチュール=優れた時計製造技術と生産ラインを備える」といったブランディングを行うメーカーが少なくありません。

そして日本の時計メーカーは、世界的に非常に珍しくこのマニュファクチュールを伝統的に採用していました。このマニュファクチュールであるがゆえに、日本は独自色の濃い時計製品を作っていくこととなります。

カシオもそんなマニュファクチュールの一つで、独自進化を遂げてきたことは前述の通りです。

マニュファクチュールであるからこそ、自社のアイデアをそのまま製品に投入することができ、差別化もまた容易にできる。その一方でアイデアを実現するための時計製造技術をないがしろにすることはできず、むしろ普通以上のノウハウを要することとなりますが、カシオはその「技術力」に関しても死角はありません。

前置きが長くなりましたが、本項ではそんなカシオの時計製造の実力についてご紹介致します。

 

①豊かな発想と最先端エレクトロニクス技術

G-SHOCK ソーラー電波時計

出典:https://www.facebook.com/CASIOGSHOCKJapan/photos/

繰り返しになりますが、カシオは「落としても壊れない(G-SHOCK)」「エレガンスとエレクトロニクスの融合(オシアナス)」などといった豊かな発想の実現を成功させてきました。これは自社で創業以来、培ってきたエレクトロニクス技術に拠るところが大きい、というのもまた前述の通りです。

その最先端が「タフムーブメント」でしょう。

2008年に発表されたこのムーブメントは、G-SHOCKを始めとしたカシオブランドに現在搭載されています。

タフムーブメントは「マルチバンド6」「タフソーラー」「ハイブリッドマウント構造」「針位置自動補正機能」の四つの機構を有したモジュールを指します。

G-SHOCK ソーラー電波時計

出典:https://gshock.casio.com/jp/technology/

それぞれを簡単に解説すると、マルチバンド6は世界6局(日本の2局に加えてアメリカ,イギリス,ドイツ,中国)の標準電波を受信し、自動で時刻修正を行う、いわゆる「電波時計」としての機能。「タフソーラー」は、電力消費が膨大になりがちな多機能を安定駆動させるため、独自の低消費電力技術によって開発されたソーラー充電システム。

「ハイブリッドマウント構造」はムーブメントに用いられるパーツ一つひとつの素材や強度を緻密に設計することで、さらに衝撃への強度を高めた構造。
そして「針位置自動補正機能」はアナログウォッチの針ズレを自動補正するための機構(もっともカシオの針はほとんどズレることなく精密・精緻に設計されていますが)。

 

言うは易し、と申しますが、これらの機構はカシオの高度な集積技術(LSI技術)があったからこそ実現したアイデアです。

高性能・多機能なモデルを作ろうと思った時、難関として立ちはだかるのが腕時計サイズへの小型軽量化。とりわけソーラー電波時計は「ソーラーセル」「アンテナ」の小型化が至上命題です。カシオでは自社のLSI技術によってこれを実現し、2014年には世界初となる電波受信×GPS受信ウォッチをソニーと共同開発するに至りました。

近年ではBluetoothを搭載することでスマートフォンとのリンク機能も実現しており、まさに時代の要請に貢献していく様がリアルタイムで見て取れるでしょう。

 

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②高級化路線を支える「CMF」

ただ優れた機能を有した「ガジェット」で終わらないのがカシオです。

もちろん樹脂製G-SHOCKの、ガシガシ使えるカジュアルなテイストも魅力の一つとなりますが、ビジネスシーンでも身に着けられる「クラス感」「高級感」もまた、カシオの強みの一つとなりつつあります。オシアナスなんかは、このクラス感を全面に押し出した一大コレクションですね。

 

カシオはG-SHOCKを中心に、1996年からメタルを第二のマテリアル(第一は樹脂)として採用するに至りました。ステンレススティールやチタンといったメタル素材は、高級機に欠かせない素材の一つです。しかしながら重量があり緩衝効果の薄いメタルは、G-SHOCKでは実現不可と言われてきました。

とは言え、そこは「優れたアイデアを実現」し続けてきたカシオ。1996年にMR-Gとして発表したメタル製G-SHOCKを堂々リリースした際には新たな耐衝撃構造を開発し、以降、同社にとって主要素材として用いられることとなりました。

なお、2019年からは第三のマテリアルとして単価の高いカーボン素材を取り入れ、新たな「カーボンコア構造」のもと、堅牢性と軽やかさ,そしてカーボン特有の質感を活かしたデザイン性豊かなシリーズ開も意欲的に行っています。

高級G-SHOCK MR-G

出典:https://g-shock.jp/products/mr-g/mrg-g1000b-1a4/

もっとも、ただメタルやカーボンを使った製品が「高級感ある時計」なのかと言うと、そうではありません。加工技術が発達した昨今では、1万円以下でステンレスモデルを楽しめるものですよね。

そこでカシオでは「CMF」を強化することで、自社製品の高級化を確かなものとしました。

CMFとは、時計のみならず電子機器や家具,衣類といったあらゆるプロダクトにおける表面の三大構成要素となり、「Color(色)」「Material(素材)」「Finishe(仕上げ)」の頭文字を取った用語です。

CMFの在り方によって、プロダクトはその印象やデザイン,価格を大きく変えることとなります。そしてこだわればこだわるほど、高級感はひとしおに。

カシオでは前述した山形カシオおよびカシオ全体のプロダクト開発を行う羽村技術センター(東京都羽村市)を中心に、このCMFを熟練した職人が手掛けることで、ビジネスシーンでの相棒たりうる腕時計として昇華されることとなりました。

高級G-SHOCK MR-G

出典:https://www.facebook.com/CASIOGSHOCKJapan/

その最高峰がMR-Gと言えるでしょう。

仕事柄、雲上ブランド含む高価格帯ウォッチを触る機会に恵まれていますが、カシオのMR-GやMT-G,オシアナスといったハイエンドラインのCMFは、海外時計ブランドのそれと遜色ありません(もちろん、価格帯が上がるほどCMFは研ぎ澄まされており、数百万円クラスのモデルと比べることはできませんが)。

一方でPVD加工を用いてステンレススティールでありながらピンクゴールドやブラックカラー,果てはレインボーカラーを表現したり、無機ガラスによってオールスケルトンモデルを実現したりと、CMFを豊かなデザインへ昇華させる試みも始まっており、多彩なコレクション展開にも繋がっています。

 

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Column;山形カシオとは?

山形カシオ

出典:https://www.yamagata-casio.co.jp/ourbusiness/

何度か言及している山形カシオは、山形県中央部に位置する東根市にあります。竣工は2018年4月。

現在同社のマザー工場的な立ち位置にあり、その生産ラインはPPL:プレミアム・プロダクション・ラインと呼ばれます。すなわち、MR-Gやオシアナス マンタといったハイエンド時計の専用工場として存在しているのです。

 

では、山形カシオは他の工場とどのような違いがあるのか。

それは、高級品を製造するにふさわしい生産ラインを敷き、オートメーション化によって効率を実現するのみならず、熟練工を常駐させている、というもの。カシオでは機械生産によって精度の高い製品を製造するだけでなく、「針の位置」「丁寧な仕上げ」といったヒトにしか成しえない仕事を熟練工に属人化させることで、工業製品を「高級時計」へと昇華させているのです。

山形カシオ

出典:https://www.yamagata-casio.co.jp/ourbusiness/

なお、山形カシオではこの熟練工に対し、独自のメダリスト制度(技術者認定制度)を設けています。ゴールド・プラチナ・マイスターの三つのランクが存在し、それぞれの熟練工たちは携わる仕事が異なるのだとか。

 

PPLでの組み立ては「G」をモチーフとした組立作業台から始まる、というのもなんだか特別感溢れる生産体制ですよね。

長年のエレクトロニクス技術とオートメーション化による高効率な生産ライン,そしてここに「ヒトのものづくりの精神」を融合させることで、カシオは唯一無二の付加価値をも生産していることが垣間見えます。

 

 

カシオが製造する時計シリーズ一挙紹介!

最後に、カシオが手掛ける代表的な腕時計シリーズについて、ご紹介致します。

 

①G-SHOCK

G-SHOCK GMW-B5000

世界で最も有名な時計の一つがG-SHOCKです。

今でこそ時計の耐久性は各社で様々な試みのもと、訴求されていますが、1983年当時「落としても壊れない時計」は非常に画期的でした。さらにカシオは前述の通り、革新的な「耐衝撃構造(ショックレジスト)」を生み出したことで、時計業界に一大ジャンルを形成するに至りました。

 

現在ではコレクションも多岐に渡っており、カジュアルラインからハイエンドライン,レディース向けのBABY-G等、市場の大きい部分をG-SHOCKが占めていると言って過言ではありません。

 

②オシアナス

カシオ オシアナス

出典:https://oceanus.casio.jp/club/blue/2010/1/

ギリシャ神話の海の神「オケアノス」から名前をちなむオシアナスは、エレクトロニクスとエレガンスが融合して誕生しました。

初出は2004年とG-SHOCKに比べると後発ですが、高級化路線に舵を切っていたカシオの牽引役として、絶大な存在感を示します。

カシオらしくタフムーブメントやモバイルリンク,GPS受信といったハイテク機能も非常に魅力的ですが、やはり高級機としてこだわり抜かれた外装や文字盤意匠はオシアナスでこそ味わえるテイストです。

近年では薄型化にも成功しており、同価格帯(20万円前後~)の競合他社と比べて、全く引けを取らないどころか、大きなアドヴァンテージを有していると言えるでしょう。

 

③プロトレック(PRO TREK)

カシオ プロトレック

出典:https://protrek.jp/

アウトドアで必要な機能に特化させた一大ブランドがプロトレックです。

「マナスル」「マルチフィールドライン」「アングラ―ライン」といった、目的別に機能が深堀された各シリーズが存在しており、それぞれで個性豊かなデザイン性を発揮することも大きな魅力です。

なお、プロトレックのコアテクノロジーが「トリプルセンサー」です。これまたカシオのエレクトロニクス技術が活きる機構で、

磁気・圧力・温度をセンシングすることで位置情報を獲得したり、温度計測を行ったりできる優れもの。

どんな過酷な環境下においてもプロトレックがあると安心ですね。

 

④エディフィス

カシオ エディフィス

出典:https://www.facebook.com/CasioEdificeJapan/?ref=page_internal

アナログ表示でありながら、カシオの最先端テクノロジーを詰め込む。このコンセプトのもと開発されたのがエディフィスです。

2000年に海外市場を中心にラインナップされることとなりましたが、2009年には国内市場でも参戦。

タフムーブメントやスマートフォンリンク機能を有しながらも価格帯は10万円以下に抑えられており、既にファンだという方も少なくないでしょう。

 

まとめ

G-SHOCKやオシアナス,エディフィスといった傑作ウォッチを製造し続けてきた、カシオの時計製造についてご紹介致しました!

カシオの前身は樫尾製作所となり、精密機器類の下請け工場として創業したこと。草創期から優れたアイデアを強みにヒット商品を生み出し、ひいてはカシオトロンやG-SHOCK開発に至ったこと。

現在ではエレクトロニクス技術と時計製造技術,そして熟練工のクラフトマンシップを最大限に活かしたPPLを中心に、高価格帯路線でも順調に舵を取っていることをお伝えできたでしょうか。

私たちにとって身近なカシオ製品ですが、今後も私たちの生活―ビジネスでも、アウトドアでも、タウンユースでも―において欠かせない存在となっていくことでしょう。

文:鶴岡

 

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この記事を監修してくれた時計博士

新美貴之(にいみ たかゆき)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長

1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年

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