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アンティーク時計, その他, ロレックス

ラジウム・トリチウム・ルミノバなど夜光塗料の種類とダイヤルの表記について

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腕時計には暗闇で針やインデックスが光るように「夜光塗料」が使われたモデルが数多く存在します。しかしながら、夜光塗料に幾つかの種類があることをご存知の方は非常に少ないです。

夜光塗料は大きく分けるとラジウム・トリチウム・ルミノバ・クロマライトの4種類があり、それぞれ使用されてきた年代や色味が異なります。現行モデルはルミノバかクロマライトが使われていますが、古いモデルやアンティークウォッチを手に取ると、それ以前の夜光塗料を見かけることがあるでしょう。

そこで今回は夜光塗料の種類とダイヤルの表記について解説します。レアポイントとしても人気がありますので、この機会に是非ご一読して頂けたら幸いです。

高級腕時計 夜光塗料

出典:http://www.ballwatch.com/global/en/home.html

①ラジウム

まだ街灯が今ほど整ってない時代。
新月の夜ともなると辺りは真っ暗で、時計の時刻を知ることができませんでした。
そんな不便を解消すべく、長短針とインデックスを光らせることによって、暗闇でも時刻が分かるようにしようと時計にも夜光が採用されました。

そしてそれを実現させたのがラジウムと呼ばれる放射性物質です。

ラジウム

 

ラジウムはα波を放出します。ラジウムの粉末に自発光する蛍光物質を混ぜれば、その放射線を受けて半永久的に蛍光物質が発光を続けるため、暗闇でも時間が確認できるというものでした。
時計以外にも飛行機の計器などにも使われていたようです。

このラジウム夜光が主に採用されていたのは1960年頃までです。

ラジウムの半減期は約1600年と長く、時計の寿命を考えたら半永久的に使える物質です。
しかし実際には、今やその頃の時計が自発光することは、ほぼありません。
なぜならラジウムそのものではなく、蛍光物質の方が劣化してきて光らなくなったり、光が鈍くなったりするからです。
それでもなんとか蛍光物質が生きていて、紫外線ライトや強い光を当てれば今でも光るものもあります。

ラジウムが放出する放射線は紙一枚で防げるα線なので、実際の使用者に影響はありませんが、当時ダイヤル製造工場で働いていた作業員達は、ラジウムを塗るための筆の穂先を舌で舐めて整えていたため、ラジウムを直接体内に取り込む形になり、骨や顎などに腫瘍ができたり多大な人体被害が発生した事例がありました。

こういった健康被害から、1960年頃からラジウムの使用を辞めるメーカーが増えていきました。
1967年にはIAEAが懐中時計へのラジウム使用を禁止し、腕時計への使用量も厳しく規制をしました。

なおロレックスでは1961年頃に、次の塗料であるトリチウムへの切り替えが行われたと言われています。

ラジウム夜光の頃のダイヤルの表記は

「 SWISS 」 または 「 SWISS MADE 」です。

主に1960年頃以前の時計の特徴です。

 

②トリチウム

上記したようにラジウムによる健康被害報告を受けて、多くのメーカーはラジウム夜光の使用を止めていきました。

しかしこの頃はまだ蓄光性夜光塗料の持続時間が短かったため実用には至らず、自発光式の夜光塗料を採用し続ける必要がありました。
そこで白羽の矢が立ったのが、トリチウムという放射性物資です。

夜光インデックス エクスプローラー

トリチウムが使われたロレックス サブマリーナ

トリチウムは半減期が約12年と短い上に放射エネルギーも弱く、放射性物質の中では最も危険の少ない種類の一つであり、そのエネルギーは紙一枚で防げる程度のものだそうです。
トリチウムはβ線を放出するので、本来はアルミ箔などの薄い金属やアクリル板で防ぐべきものですが、上記したように紙一枚で防げるといった危険性の少なさから広く普及したと思われます。

トリチウムを使用したラジウム同様、実際に光るのは蛍光塗料なので、トリチウムはあくまでもそれを光らせるための電池のようなものに過ぎません。
年代によって紫外線ライトを当てた時の光り方に違いがありますが、蛍光塗料の材料の違いによるものだと思われます。
弱いエネルギーのトリチウムでいかに効率よく発光させるかを研究しており、年代によって少しずつ配合や材料を変えていたのかもしれませんね。

夜光インデックス エクスプローラー

 

一般的にトリチウム夜光は1990年代後半~2000年頃まで採用されていましたが、1993年に根本特殊化学株式会社から「N夜光 ルミノ―バ」という蓄光性塗料が開発されたため、現在はほとんどのメーカーはルミノバ塗料に切り替えています。
ちなみにロレックスではトリチウムは1997年頃まで採用されていました。

 

時計の表記

夜光インデックス エクスプローラー

ダイヤル(6時位置)にはトリチウムを意味する「T」という表記が入ります。
年代やモデルによって表記に違いがあります。

「 SWISS-T<25 」
「 T SWISS-T<25 」
「 T SWISS T 」
「 T SWISS MADE T 」

 

③ルミノバ

放射性物質を使わず安全性が高い反面、長時間発光が不可能だった蓄光性蛍光塗料。
その常識を覆し、放射性物質を含まずに長時間発光を実現したのが、根本特殊化学株式会社が開発した「N夜光 スーパールミノ―バ」です。
今やほぼ全てのメーカーが採用しているルミノバ塗料はジャパン発だったんですね。

スーパールミノバ

出典:https://www.omegawatches.jp/ja/watches/seamaster/planet-ocean-600m/the-collection/product/

これにより、ダイヤルからトリチウムを意味する「T」の表記がなくなります。
ロレックスの場合、U番シリアル(1997年)の頃にルミノバへの移行が始まります。
したがってU番には、「T 表記有り」と「T 表記なし」のダイヤルが混在します。

ちょっとした小ネタですが、この移行期のU番には、
ダイヤルは「T」表記なのに実際に使われてる夜光はルミノバ、という個体が存在します。

「T」表記なしのダイヤルの製造を待たずして、ルミノバの使用を開始したのか。
あるいは「T」表記のダイヤルの在庫償却のために、「T」表記のダイヤルだがルミノバを入れて販売したのか。
真意は定かではありませんが、そういう個体をいくつか見てきました。

数は多くありませんので、ひょっとしたら将来的にレアアイテムとして扱われるようになっていくかもしれませんね。
マニアックなファンはトリチウム+ルミノバで、「トリチノバ」なんて呼んでいるそうです。

 

ルミノバダイヤルの表記

「 SWISS 」
U番(1997年)~A番(1998-1999年)

「 SWISS MADE 」
U番(1997年)~A番(1998-1999年)~P番(2000年)以降

 

例外
「 SWISS-T<25 」でルミノバ夜光

→トリチノバダイヤル

 

④クロマライト

ロレックスが独自に開発・特許を取得した夜光塗料クロマライト。ルミノバの倍の発光時間(8時間)を持ち、2007年頃から採用され始めた夜光です。
ルミノバが緑色の光を放つのに対して、青い光を放つのが特徴となっています。

クロマライト 夜光塗料

出典:https://www.rolex.com/ja/watches/sea-dweller/m116660-0003/magazine/spirit-of-the-rolex-deepsea.html

2007年に発売されたミルガウスオイスターパーペチュアルのカラーインデックスからクロマライトは採用されていますが、2008年に登場したディープシーによってクロマライトの知名度は大きく広まりました。

そして、現在ではロレックスの現行モデルの殆どはクロマライトが使用されています。

尚、ダイヤルの表記は「 SWISS MADE 」です。

 

最後に

ラジウム・トリチウム・ルミノバ・クロマライト。どの夜光塗料もそれぞれ異なる特徴をもちます。

現在はルミノバとクロマライトが主流ですが、近年はラジウム・トリチウムが使われた古いモデルを敢えて選ばれる方も多いです。

時計の楽しみ方は千差万別。夜光塗料の種類で時計を選ぶことだった勿論アリだと思います。

 


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