GMTマスター, IWC, WEBマガジン, オーデマピゲ, オメガ, シャネル, ゼニス, タグホイヤー, チューダー, デイトナ, パテックフィリップ, フランクミュラー, ブレゲ, レディースウォッチ, ロレックス, ロンジン, 新作モデル, 腕時計選びのためのお勧め記事
時計業界のプロ50人が選んだ、2020年の傑作腕時計ランキング
2020年、国内外は未曾有の事態に見舞われました。
新型コロナウイルスの蔓延により各国・各都市で緊急事態宣言やロックダウンが行われ、私たちの生活は様変わり。この影響は現在進行形で、近年大きな成長を遂げてきた時計業界は、大打撃を食らいました。
もっとも、暗澹たるニュースばかりではありません。
「新しい生活様式」のもと、高級時計のオンライン販売が活発化したり、比較的新型コロナウイルスの重症者が少ない中国その他アジア諸国が経済を持ち直してきたり…2020年下半期には各社が見送っていた新作を続々とローンチしており、その顔触れたるや、むしろ例年以上に豊穣なのではと思うほど。当店でも非常に多くのお問合せを頂いております。
そんな白熱の時計業界2020年、「最強」の腕時計はいったいどのブランドのどのモデルなのでしょうか。
この記事では、高級時計店で働く時計のプロ50人から、「今年最も傑作だと評価する腕時計」を調査しました! 2020年新作・旧作問わず今日本で購入できる全ての腕時計を対象に、全5カテゴリで徹底調査しております。
完全なる業界人目線!時計にうるさい目利きたちのリアルな意見!! 時計通も初心者も、これを買っとけば間違いなし!!!
※掲載している定価・相場は2020年11月現在のものとなります。
2020年傑作腕時計ランキングと各部門(カテゴリ)の説明
高級時計店で働く方50人を対象に、2020年、お客様に最もお勧めしたいと思える傑作腕時計をアンケート調査いたしました。 集計結果をもとに、5位~グランプリを、ランキング形式で発表しております。
対象
今日本で購入できる全ての時計ブランドの全てのモデル。2020年新作のみならず、2020年に手に入れやすくなったモデル、2020年に注目度が高まったモデル、2020年もお勧めしたいモデルなど。
調査部門
①2020年新作部門:2020年に発表された新作の傑作
②スポーツウォッチ部門:スポーツウォッチの傑作
③コンプリケーション部門:複雑機構を搭載したコンプリケーションウォッチの傑作
④エントリーモデル部門:30万円以下で購入できる腕時計の傑作(2020年新品並行相場に準ずる)
⑤レディース部門:レディースウォッチの傑作
エントリーモデル部門はこちら:時計業界のプロ50人が選んだ、2020年の傑作腕時計ランキング~エントリーモデル部門~
レディース部門はこちら:時計業界のプロ50人が選んだ、2020年の傑作腕時計ランキング~レディース部門~
2020年傑作腕時計ランキング~2020年新作部門~
高級時計店で働く時計のプロ50人が厳選した2020年の傑作腕時計ランキング! まず初めに、今年各ブランドから新作として発表されたモデルのランキングを発表いたします!
第5位 ウブロ ビッグバン e チタニウム
出典:https://www.hublot.com/ja-us/watches/hitsukuhan/big-bang-e-black-ceramic-42-mm
「高級時計専門店の傑作ランキングが、のっけからスマートウォッチ…?」と思うなかれ。まだ国内でも緊急事態宣言の影響が色濃く残っていた2020年6月、突如ウブロから発表された新作がこちらのビッグバン e チタニウム。そう、高級機械式時計ブランドが手掛ける、スマートウォッチ(コネクテッドウォッチ)ということです。
そして、このビッグバン eチタニウム、当店で2020年最も熱かったウブロと言って過言ではない一本なのです。
ウブロは、新しいコンセプト,新しいデザイン。そして伝統的な時計製造技術によってブランディングを成功させてきた高級時計メーカーです。サッカーを始めとしたスポーツ界,あるいはフェラーリやベルルッティといった他の権威的なハイブランドと密接な関係を持っていることもあり、時計にあまり興味がなくとも「ウブロのロゴや名前は知っている」と言った層は少なくありません。
そんなウブロのラインナップのメインは機械式ですが、2018年、ウブロファンも時計業界をも驚かせる試みをやってのけました。ブランド初となるスマートウォッチをローンチしたのです。
※2018年ローンチのビッグバン レフェリー FIFAワールドカップロシア
この同社が手掛ける「新しい試み」を解説する前に言及しなくてはいけないこと。それは、近年のスマートウォッチ市場の隆盛でしょう。
2015年4月、Appleが世に送り出したアップルウォッチによって、スマートウォッチは瞬く間に普及することとなりました。これに無頓着でいられないのが伝統的な時計産業です。2016年にはついに「ロレックスの売上高をアップルウォッチが抜いた」と言われるほどの盛況ぶり!若年層のみならずこれまでの時計ユーザーを機械式時計とスマートウォッチで奪い合うこととなるのでは、と危惧されました。
実際のところはターゲットが異なることなどから顧客を奪い合うと言うフェーズではなく、むしろ市場が両立している状態です。しかしながら既存の時計メーカーの中には「スマートウォッチユーザーの取り込み」を画策し、自社で手掛ける動きがそこここで見られるようになったのです。
高級機械式時計メーカーでその先鋒をきったのはタグホイヤーでした。
次いで、同じLVMHグループのウブロが、スマートウォッチを開発するに至るのですが、ウブロのスマートウォッチはこれまでのどのスマートウォッチともコンセプトが異なるものでした。なんと、60万円の価格設定が行われていたのです。
スマートウォッチは機械式時計と異なりバッテリーで駆動しているため、どうしても数年で寿命がきてしまうもの。そのため高級な個体でも30万円を超えることはそうそうありません。しかしながら60万円の強気な価格…!
出典:https://www.hublot.com/ja-us/watches/hitsukuhan/big-bang-e-black-ceramic-42-mm
では、この強気価格が功を奏したのか?
この問いには、Yesと答えざるをえないでしょう。該当スマートウォッチはワールドカップ2018ロシア大会とタイアップした背景もあり、時計ファン,サッカーファンをも巻き込みます。
そして2年後の今年2020年。
やはり同価格帯となる定価605,000円(税込)~のスマートウォッチ「ビッグバン e」が、この度はスペシャルエディションではなく、レギュラーモデルとして仲間入りを果たしました。
外装はレフェリー時代を踏襲し、定番のビッグバンが採用。ビッグバンの多層構造によって形成された、とにかくかっこよく独創的なデザインは、チタンまたはオールブラックセラミック×ラバーベルトでラインナップされることとなりました。
出典:https://www.facebook.com/pg/Hublot/photos/
ケースサイズは42mm。ビッグバンは45mmサイズも人気がありますが、小径ケースのブームもあり、多くの人にとって扱いやすい42mmサイズが採用されたのでしょう。ちなみにFIFAモデルは49mmとかなりビッグサイズでしたので、より実用に即した新作になったと言えます。
搭載するWear OS by Googleは、iPhoneでもAndroidでも対応可能となっております。ムーブメントにはクアルコム社のスナップドラゴン「Wear 3100」が搭載され、スマートウォッチに今や必須のメール送受信や電話通知、Google PlayでのアプリのダウンロードやGoogle Payでの支払いをお楽しみ頂けます。
こういったスマートウォッチとしての利便性に加えて、30m防水なのも嬉しいところ。
なお、文字盤のバリエーションの豊富さ新ジャンルが大好きなウブロらしい遊び心です。
文字盤バリエーションにはデジタル,2針+クロノグラフ,GMT,ムーンフェイズ付パーペチュアルカレンダーが用意されており、ビッグバンのダイナミックなデザインとお好きな液晶をマッチングさせることができるでしょう。
当店では既に何度か該当2020年新作ビッグバン eの、チタニウム製Ref.440.NX.1100.RXを入荷しております。
ウブロ ビッグバン e チタニウム 440.NX.1100.RX



ケースサイズ:直径42mm×厚さ約13mm
素材:チタン
文字盤:液晶
駆動方式:リチウムイオン誘導充電
ムーブメント:Wear 3100
防水性:30m
定価:605,000円(税込)
冒頭で、「なぜ高級時計専門店のランキングでスマートウォッチを?」という疑問を投げかけました。なぜか。それは、当店で該当モデルの入荷を何度かしておりますが、そのいずれもが僅か数日で完売しているためです。
毎回出品すると1週間以内に売れており、その商品回転率はウブロやロレックスの既存の人気モデルと並ぶほど。
「並行輸入店で安くなってるから売れるんじゃないの?」そう思っていた時期が私にもありました。
しかしながら2020年にローンチされたばかりであること。加えて流通スタートから半年が経ったとは言え高すぎる人気に供給が追い付いていない状況であることから、並行未使用品と定価はほぼ同程度。にもかかわらず「飛ぶように」売れているところに、2020年新作の中でも屈指の実力を感じさせられたため、第5位にランクインする運びとなったのでしょう。
事実、今回当ランキング調査を行った際、昔ながらのバイヤーからもビッグバンeを評価する声は少なくありませんでした。
「60万円のスマートウォッチは高すぎるのか?」
ユーザーにとっても、時計業界にとっても、このお値段以上の魅力がウブロ ビッグバン eにあることをお伝えしておきたく思います。
◆プロからのコメント
「2020年の売上データを見ていて、一番気になった一本。なぜならどの個体も出品後、必ず1週間以内に売れている。再入荷のお問合せも依然として多く、当店でも積極的に仕入れをしたいが、新作ゆえ・そして人気モデルゆえに難しいところも。特に新型コロナウイルスの影響で海外輸入が激減しているため、今後、業者間で争奪戦が起こっていくモデルでもあるだろう」
「スマートウォッチ市場は、今やレディースウォッチ市場と同程度と言われるほど。この市場の中で、カジュアルな価格帯・ラグジュアリーな価格帯の住み分けが行われている。ウブロはラグジュアリー・スマートウォッチの牽引役を、今後も担っていくことだろう」
「60万円、確かにスマートウォッチとしては高いが、ビッグバンと考えればむしろお得感が強いのでは?」
※ビッグバンの平均中古価格は150万円前後。入門機と言われるクラシックフュージョンでも、97万円程度
第4位 オメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデル
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/
例年、当コンテンツは基本的に入荷したモデルのみを取り上げさせて頂いております。
一方こちらのスピードマスターは、まだ国内市場に出回っておらず、「幻」の存在。にもかかわらず第4位にランクインしたのは、それだけ当店のプロたちの、こちらの新作を推す声があまりに大きかったためです。
時計業界のプロを唸らせるこちら、オメガの伝説的なスピードマスターのスペシャルエディションとなります。もっとも、スペシャルの中でも超ド級と言って良いでしょう。なぜなら市場でプレミアムを付けているスヌーピーモデルの、最新作であるためです(時計好き界隈では、スヌーピー×スピードマスターをかけてスヌピマス等と呼ばれることもあるようです)。
スピードマスターのスヌーピーモデルの初出は2003年です。
※第一作目のスピードマスター スヌーピーモデル Ref.3578-51。5441本限定で生産された
なぜ、スヌーピーがスピードマスターに関わってくるのか。
それは、NASAの「安心・安全の象徴」「成功の象徴」がピーナッツの『スヌーピー』であるためです。
NASA(アメリカ航空宇宙局)はご存知、アメリカにおける宇宙開発のための連邦機関です。スピードマスターがこの公式装備品として、アポロ計画に携行されたこと。そして月面着陸を果たしていることから、ムーンウォッチの呼び声を持つことは有名ですね。
この歴史的なアポロ計画は、いつも事故と隣り合わせでした。
そのためNASAでは親和的なスヌーピーをシンボライズし、加え「シルバー・スヌーピー・アワード」を設置。ミッションの成功や安全に貢献した人物に、同賞を贈ることとなりました。
ちなみにこの賞では感謝状の他、宇宙服を着用した純銀製スヌーピーバッヂがともに授与されます。
出典:https://www.omegawatches.jp/ja/
このシルバー・スヌーピー・アワード、実は1970年10月5日にスピードマスターも獲得しているのです。
映画化もされているアポロ13号計画における、酸素タンク爆発・電気系統の損傷という危機的状況で、命運の「14秒」をスピードマスターのクロノグラフで計測できた、というエピソードが受賞の理由です。
前述した2003年登場のスピードマスター スヌーピーモデルはこの背景を受けてローンチされることとなりました。
その後2015年にもスヌーピーモデルが二種ラインナップされましたが、このいずれも限定生産であったことから、今ではきわめて稀少な時計として位置付けられています。市場ではめったに見かけず、たまに出品されるとプレミア価格…スピードマスター愛好家からは愛着と憧れのまなざしで以て「スヌピマス」と呼ばれ続けてきたのでしょう。
そして2020年の今年は、そんなシルバー・スヌーピー・アワード受賞から50周年の節目でした。そのためスピードマスターからスヌーピーモデルが出るであろうことは、かなり早い段階で予想されていたものです。
そして実際にオメガから公表されたスピードマスター“シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデルは、その予想をはるかに上回るような、畢生の出来栄えであったことを記しておきます。しかも、今回は数量限定ではありません。
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スペック
外装
型番: | 310.32.42.50.02.001 |
ケースサイズ: | 直径42mm |
素材: | ステンレススティール |
文字盤: | ホワイト×ブルー |
ムーブメント
ムーブメント: | Cal.3861 |
駆動方式: | 手巻き |
パワーリザーブ: | 約50時間 |
機能
防水: | 5気圧 |
定価: | 1,133,000円(税込) |
まず目に飛び込むのが、ベゼル,インデックス,インダイアル,そしてナイロンストラップにあしらわれた深みのあるブルーではないでしょうか。ケース直径42mmに横目のインダイアルは伝統的なスピードマスター プロフェッショナル、通称「ムーンウォッチ」を踏襲しています。
また、宇宙服を着たチャーミングなスヌーピーが9時位置インダイアルに配されました。「50TH ANNIVERSARY」の文言とともに、とても印象的ですね。
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ちなみに前述した2003年登場のRef.3578-51や45周年のRef.311.32.42.30.04.003にも同じように9時位置インダイアルがスヌーピーの位置として採用されていますが、当新作ではブルーのエンボス加工の下地をバックにメダリオンとして置かれることで、高級感漂う意匠となりました。
なお、このメダリオンは実際のシルバー・スヌーピー・アワードとともに授与される純銀製バッヂと同じモチーフとなります。
さらに時計業界のプロを唸らせる―実際に、複数人が熱く語る―のが、ケースバックの意匠です。一目見て、壮大な宇宙が広がっている。そんな風に思いませんか?
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サファイアクリスタルガラスの上には月・地球・そして宇宙船に搭乗したスヌーピーの姿を確認することができます。
シースルーではないためムーブメントは見えませんが、クロノグラフ起動時にはこの宇宙船が回遊し、地球も自転するギミックに!遊び心が溢れますね。
ともに印字された「Eyes on the stars」(星を見てごらん)は、セオドア・ルースベルト第26代アメリカ合衆国大統領の言葉。2003年登場のスピードマスタースヌーピーモデルの第一作目にも印字されていました。
なお、このケースバックはナイアードロックシステムが採用されています。ねじ込み式としており、わずかな回転できっちりと閉めることができ、さらに高い気密性を獲得しています。裏蓋の向きを任意の位置にすることができるため、製造個体によって図柄が反転してしまった…ということがないのも嬉しいところですね。
搭載するムーブメントは2019年、アポロ11号計画50周年を記念してリリースされたCal.3861が搭載。マスタークロノメーター&コーアクシャル機構が付随しており、高度な実用性を誇ります。
◆プロからのコメント
「定価1,133,000円(税込)のなかなか強気な価格帯だが、さらにプレミアが付くことを予想する。既に幻の存在になっており、国内入荷は2020年10月末とのことだったが、予約殺到&ファーストデリバリーの話も聞かない。
付属品も豪華で特別感があるし、限定生産ではないとは言え、人気や相場感が気になる一本だ」
「シルバー・スヌーピー・アワードモデルというバックグラウンドや意匠の素晴らしさもさることながら、メンテナンススタッフとしてはCal.3861に特筆すべきものを感じて今回票を入れた。
これまで自動巻きムーブメントが主流であったマスタークロノメーター・コーアクシャルを搭載した手巻きモデルであること。この二つの機構が伝説的なレマニアの系譜を引くキャリバーに搭載されたことは、スピードマスターの歴史的にも意義深いことだし、オメガの時計製造技術が進化していることを感じる。
まだ新型Cal.3861は量産というほど製造できないのかもしれないが、今後レギュラースピードマスターにも搭載されれば、よりオメガの実用性は増していくこととなるだろう」
第3位 IWC ポルトギーゼ オートマチック40
出典:https://monochrome-watches.com/iwc-portugieser-automatic-40-iw3583-hands-on-price/
第3位に挙がったのは、IWCのフラグシップ・ポルトギーゼに新たに加わった新ラインです!
ポルトギーゼと言えば、クロノグラフモデルの方がメジャーかもしれませんね。IWCが1939年、ポルトガル商人から依頼されて製造した航海用の大型時計に端を発するコレクションです。
2019年末、このクロノグラフモデルがIWCの自社製ムーブメントCal.69355に搭載され、リファレンスチェンジを果たしました。クロノグラフモデルはシースルーバックが初めて採用される以外は外観に大きな変更はなかったのですが、翌2020年、ポルトギーゼ オートマチックに大胆なテコ入れが行われます。
そうして誕生したのが今回ご紹介したいポルトギーゼ オートマチック40です。
詳細はこちらです。
IWC ポルトギーゼ オートマチック40



ケースサイズ:直径40.4mm×厚さ約12.3mm
素材:ステンレススティールまたはローズゴールド
文字盤:シルバー他
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.82200
防水性:30m
定価:797,500円(税込)
オートマチックは2000年にラインナップに追加されたモデルですが、ケース直径42mmの1サイズ展開となっていました。ポルトギーゼは航海用の大型時計という出自から、比較的大きめサイズが特徴です。さらにベゼルが引き絞られることで文字盤面積が大きくなり、より高い視認性と存在感を獲得しています。
しかしながら2020年に入り、40mm(厳密には40.4mm)にダウンサイジングされたモデルが登場したのです!これに歓喜したファンは多かったのではないでしょうか。
と言うのも、確かに大きいケースは見やすく堅牢性にも優れますが、現在時計業界には「小径ブーム」がきています。また、小さめサイズの方が好きというニーズはもともと少なくありませんでした。
そこで40mmモデルをリリースするに至るのですが、従来の42mmサイズ(厳密には42.3mm)は文字盤レイアウトが9時にスモールセコンド、3時位置にパワーリザーブインジケーター、6時位置にデイト窓を宿していたことに対し、新作でスッキリとした6時位置のスモールセコンド+2針へと変更されています。
ちなににこのレイアウトは、1939年当時、ポルトガル商人に贈られたポルトギーゼの原型を踏襲したものとなります。
出典:https://www.iwc.com/ja/company/history.html
さらにクロノグラフ同様、オートマチック40でもIWC社製ムーブメントCal.82200が搭載されることとなりました。これに伴い、シースルーバックが採用されています。
なお、もともとポルトギーゼ オートマチック42では2015年から自社製ムーブメントCal.52010が搭載されていました。ただしこちらは約7日間のロングパワーリザーブを誇っており、かつ価格もやや高め。一方のオートマチック40では約60時間にパワーリザーブが短縮されてはいるものの定価は約半分ほどに抑えられました。
高級時計市場が拡大するに伴い、価格も上昇傾向にあった昨今ですが、この定価付けは消費者にとっては大変嬉しい一幕なのではないでしょうか。
◆プロからのコメント
「人気ラインのポルトギーゼにダウンサイジングモデル、かつ初代復刻モデルを入れるという、大変わかりやすい魅力が好感を持てる」
「近年、多くのブランドが価格改定と言って大幅値上げを行っている中、IWCクラスで定価税込80万円を切る値付けは良心的。しかしながらリシュモン系の新品は並行相場に流れづらくなっているので、相場は高値が続くのではないか」
「単純にデザインが良い。往年のポルトギーゼ オートマチックのクラシカルな装いを思わせる。2020年新作の中では価格も大幅に高騰しておらず、良心的で消費者にとっても業界人にとってもとても魅力的です」
※ポルトギーゼ オートマチックは初代,そして1993年の記念モデルが2針+スモールセコンドのレイアウトだったため、2020年新作はリバイバルとして傑作といった声も少なくない
■速報!2020年IWC 新作モデルを発表!by Watches & Wonders Geneve
第2位 ロレックス オイスターパーペチュアル41,36
出典:https://www.facebook.com/rolex/photos
2020年、新型コロナウイルスの影響やバーゼルワールドの中止により、新作発表が9月にずれ込んだロレックス。しかしながら世界のコロナ禍がやや落ち着きを取り戻していたこと。加えてロレックスの堅調な人気から、例年通りの熱狂のもと、新作が待ち望まれていました。
現在、ロレックスの人気というとスポーツモデル(プロフェッショナルモデル)に集中しているかと思います。
しかしながら今回、とりわけバイヤーから2020年新作モデルの中の傑作として挙がる声が多かったのが、こちらのオイスターパーペチュアルです。一見すると、なんだかロレックスではないようなビビッドな色合いに、驚かされる方もいらっしゃるでしょう。
出典:https://www.rolex.com/ja
オイスターパーペチュアルは、デイトジャストからデイトを取り払った、廉価版です。
廉価版とは言え1933年という非常に早い時期から歴史を持つこと(デイトジャストは1945年誕生)。デイトがないのみで堅牢なオイスターケース,きわめて信頼性かつ実用性の高い自動巻きムーブメント(パーペチュアル)をデイトジャスト同様に有することから、老若男女問わず愛され続けてきた一大コレクションです。
また、定価が比較的安めであることに加えてスポーツモデルほど近年のロレックス相場高騰の煽りを受けておらず、モデルによっては50万円以下で入手できる個体もあるという、狙い目なコレクションでもあります。
そんなオイスターパーペチュアル、シンプルゆえに文字盤のカラーが多少変わる程度のマイナーチェンジに留まってきました。
しかしながら2020年、これまでのどのロレックスにもなかったようなカラーリングを携えて登場したのです。
詳細スペックはこちら。
ロレックス オイスターパーペチュアル41,36



ケースサイズ:直径41mmまたは36mm
素材:ステンレススティール
文字盤:シルバー,ブルー,キャンディピンク,イエロー等
駆動方式:自動巻き
ムーブメント: Cal.3230
防水性:100m
定価:621,500円(41mm)/588,500円(36mm):いずれも税込
定番のシルバーやブラック,ブルーの他、グリーン,イエロー,キャンディピンク,ターコイズ,コーラルレッドがカラーバリエーションとして追加されています。なお、これまで39mm、36mm、34mm。レディースで26mm、ボーイズ(男女兼用モデル)で31mmのラインナップだったコレクションに、新たに41mmサイズが追加されたのも特筆すべき点ですね。もっとも、39mmサイズは生産終了となりましたが…
ロレックスはもともと実用時計の王者として名を馳せてきた歴史があります。そのため定番コレクションで変わり種なデザインを採用することはそう多くはありませんでしたが、この文字盤の遊び心ときたら!
リリースから間もないこともあり当店入荷個体はまだ36mmモデルのシルバー文字盤のみですが、正規店や他店で実機を見た当店のプロたちは、口を揃えて「傑作」だと語ります。
出典:https://monochrome-watches.com/2020-rolex-oyster-perpetual-41-reference-124300-specs-price/
なぜかと問うてみれば、これまでのロレックスにないカラーリングであるにもかかわらず、オイスターパーペチュアルの完成度の高い外装と合わせて、かなりシックな出来栄えになっていると言うのです。
確かにオイスターパーペチュアルはスポーツモデルではありませんが汎用性の高いシンプルさを持っているため、万人受けする外観です。加えて大きすぎないケースはビジネススーツの袖口に収まり、ともすれば派手な文字盤カラーであってもどこか落ち着きを持つのです。
出典:https://www.rolex.com/ja/watches/oyster-perpetual.html
なお、特筆すべきはカラーリングだけに留まりません。
最大の進化と言えば、搭載ムーブメントが「新世代」のCal.3230へと載せ替えられたことでしょう。これは、同時に発表されたサブマリーナ ノンデイト 124060にも採用されている名機です。
この新世代ムーブメントは2015年よりリリースされている新型で、32〇〇という番号が振られています。1980年代から使われてきた従来の31系ムーブメントも非常に傑出したものがありますが、32系はさらに改良が加えられています。
この改良の具体的な中身を簡単に申し上げると、新しいクロナジーエスケープメント(脱進機)を用いたことによる高精度&高効率。ニッケル・リン合金を使用したことによる高耐磁性。そしてパワーリザーブ約70時間の大幅延長―カレンダーをどの時間帯でも日付変更可能にしたことも特筆すべき特徴ですね。
出典:https://www.rolex.com/ja
このようにさらにロレックスの実用性が担保されることとなった新世代ムーブメントですが、長らく3針+デイトモデルのみの搭載に留まりました。前述した2015年のデイトジャストに始まり、2017年のシードゥエラー,2018年のGMTマスターII,2019年のヨットマスター等です。
しかしながら新型サブマリーナとともにノンデイトにもメスが入れられ、同機能となるオイスターパーペチュアルも刷新されることとなりました。なお、これに伴いリファレンスも114300から124300へ(41mmモデル)、116000から126000へと移行しております。
◆プロからのコメント
「ロレックスから50~60万円台定価の、シンプル時計が出ました。iPhone5Cが登場した時を彷彿とさせるカラフルなバリエーション。コロナで沈んだ時代に心地よい風を吹かすラインナップです」
「ロレックスのダイアルカラーは比較的高級感を全面に出しているものが多かったし、それが当然だと思ていた。しかしながら当新作はダイアルはカジュアル要素×ケースの高級感という、両立の難しい要素を見事融合させているように思う」
「今年の傑作と聞いて、まずこのモデルが思い浮かんだ。『新しいカラーリング』『新しいムーブメント』、ロレックスファンがまた増えそう」
「ターコイズやコーラルレッドといった華やかな色合いを文字盤に採用したことに、ROLEXのまじめさだけでない遊び心を感じる」
第1位 ロレックス サブマリーナ デイト 126610LN/126610LV
2020年新作モデルの中でも、特に傑出した逸品。それは、第2位と同じくロレックスより、みんな大好きサブマリーナです!
ちなみに今回のアンケートで、実に9割の人間がサブマリーナを挙げています。昨年、一昨年も1位はロレックスの新作モデルでしたが、これだけ声が揃ったのは2020年が初となります。
前述の通り、ロレックスは9月に今年の新作発表を行いました。
その一週間ほど前からティザームービー(一部をシークレットにしたプロモーション動画のこと)がSNS上で流れており、新作はサブマリーナであろうと、あらかたのファンが予想していたものです。
そしてこの予想は、新世代ムーブメントの搭載にも、当然ながら言及されていました。
しかしながら、誰も予想だにしなかったこと。それは、伝統的に継承されてきたケースサイズ40mmが、41mmへとアップサイジングされたことです。
サブマリーナは初期こそ直径37mm時代があったものの、1963年に発表された第四世代Ref.5513(あるいは1959年発表のRef.5512)よりケース直径40mmへ。以降、40年にも渡りこのサイズ感を保ち続けてきました。
ロレックスはモデルチェンジの際はスペックアップが中心となります。過去の外装面の刷新としては、ベゼル素材やカラーリングの変化が見出せますが、決して派手なものではなく、基本的には初代意匠を踏襲してきました。
こういった背景もあり「たった1mm」のサイズ変更は、ドラスティックとは言えないかもしれません。しかしながら1mm異なると、かなり着用感が異なるもの。また、新作サブマリーナではサイズ変更に合わせてケースそのものの設計を変更することとなりました。
詳細スペックはこちらです。
ロレックス サブマリーナ 126610LN



ケースサイズ:直径41mm×厚さ13mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント: Cal.3235
防水性:300m
定価:965,800円(税込)
なお、通称グリーンサブと呼ばれてきたモデルも、126610LVとして同時リリースしています。
こちらは文字盤がグリーンからブラックに変更され、「カーミット」と呼ばれていた頃のRef.16610LVに印象が近づきました。定価は1,009,800円(税込)です。
※カーミットとはセサミストリートのキャラクター。外装デザインが似ていることから、海外ではこの愛称が用いられる。ちなみに116610LVはアメコミのヒーロー・ハルク。
先ほど、「ケースそのものの設計を変えた」と申し上げました。
これによってケースは大型化したにもかかわらず、むしろ往年のヴィンテージサブを彷彿とさせるようなスリムな骨格を有します。具体的にはラグが細くシャープに。これに伴いラグ幅が広がったため、コマ幅も広くフラッシュフィットとともにバランスが調整されました。
なお、コマの変更に伴い、116610と126610の間に互換性はないこととなります。
出典:https://www.rolex.com/ja
搭載するムーブメントは、新作オイスターパーペチュアルでもご紹介した「新世代」ムーブメントCal.3235。これは、2015年に初めてローンチされた新型キャリバーで、デイトジャストやシードゥエラー,ディープシー,ヨットマスター等にも搭載されています。
この新型の登場に伴い、サブマリーナ全体が大きく相場を上げています。
今回は新作発表が9月にズレ込んだ関係でほぼ同時に発売スタートし、既に市場に流通しています。しかしながら今なお高相場を記録しており、126610LNは160万円台~、126610LVは220万円台~と、定価を上回るプレミアム価格です。
なお、同時にローンチされたサブマリーナ ノンデイト 124060の方もきわめて高い需要を誇っており、相場は150万円台~。これまで「ノンデイトサブは手ごろにハイスペックダイバーズウォッチが楽しめる」と言われてきましたが、そうも言ってはいられなくなりました。
2020年、そして続く2021年。相場にも、人気情勢にも、全く目を離すことができない傑作モデルです。
◆プロからのコメント
「出た当初は値段が高かったが、徐々に下がっている。しかし、年末に向けて相場が回復する可能性がある為、底値を見極めて買いたい。ちなみにロレックスでよく取り沙汰されている『資産価値』についてはグリーンサブ 126610LVがおすすめ」
「店頭でお客様からお話を伺うと、116610LVより印象が落ち着いていて使いやすいのでは、といったお声を頂く。確かにブラック文字盤はスタンダードなため、幅広い年齢層におすすめできる逸品だろう」
「何かと話題のロレックス。世界が注目するブランドでありユーザーからの信頼も厚い。買って間違いのない時計だと思います」
「ロレックスの新作は周囲の喧騒が新作そのもの以上に凄まじいが、時計自体に派手さはなく、むしろ質実剛健。時計本来の価値を研ぎ澄ますことを一義としている、昔ながらのロレックスを感じさせる。
他社と違って派手な新作にしなくとも、顧客がついてくる。やりたいことをやって売上がついてくる。そんな独立ブランドならではの強みの象徴ではないか」
「意外と流通し始めているところも好感度高し!例年は発表から2~3か月のスパンがありましたから…」
2020年傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門~
各ブランドがこぞって力を入れるスポーツウォッチ。それゆえ甲乙つけがたい、と思う方もいらっしゃるでしょう。 そんな2020年最強のスポーツウォッチとは?
第5位 ブライトリング クロノマット エボリューション
2020年、傑作スポーツウォッチ第5位としてまずご紹介させて頂くのは、ブライトリングのクロノマット エボリューションです。実は、当店で仕入れを担当するバイヤーの多くがこの時計に票を入れていました。
なぜかと問えば、「スポーツウォッチが軒並み相場高騰している中で落ち着いていて、かつスペック・価格・ネームバリューが一致している」と。
また、ブライトリングは2020年にクロノマットを大きく刷新し、当該コレクションへの注目度が集まっていることも、今回第5位にランクインした理由でしょう。
しかしながら「エボリューション」自体は、生産終了しています。
そもそもクロノマット エボリューションは、2004年、クロノマット誕生20周年を記念してリニューアルされたモデルです。
※クロノマットの名前自体は第二次世界大戦下ですが、これは後のナビタイマーへと発展していきました。現在の堅牢で男らしいマッシブなクロノマットが初めて登場したのは1984年、イタリア空軍のアクロバット飛行チーム「フレッチェトリコローリ」の公式航空クロノグラフへの応募がきっかけです。
クロノマットは幾度となくマイナーチェンジが加えられてきましたが、エボリューションによって完成されたと言っていいでしょう。
最大の特徴は、従来39mmだったケースサイズが43.7mmへと大型化されていること。今でこそクロノマット44などが存在するため珍しくありませんが、2000年代初期はまだパネライやウブロがデカ厚を流行らせた黎明期です。
その大胆なまでのケースサイズに加えてガッシリとしたベゼル,大ぶりながらしなやかなブレスレット,特徴的なリューズフォルム…
ベゼルの立体感や鏡面仕上げが施された外装等、ブライトリングらしい高級感を持ち合わせることも魅力として挙げられます。
さらに従来の100m防水から300m防水へと「強さ」が高められたことで、最強のスポーツウォッチの一つに名を連ねたと言っていいかもしれません。
前述したクロノマット44が2009年に登場したことで惜しくも生産終了となりましたが、中古市場で豊富に出回っており、人気も健在です。
ちなみに一番売れているモデルはこちらです。
クロノマット エボリューション A156F17PA(A13356)



ケースサイズ:直径43.7mm×厚さ17mm
素材:ステンレススティール
文字盤:グレー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント: ブライトリング13
防水性:300m
定価:-
堅牢ゆえに経年変化に強く、中古市場でも状態の良い個体が多く出回っていること。加えて近年多くの高級時計ブランドのスポーツウォッチの価格が上がってしまっており、中には「値段相応なのか?」といった声もありますが、クロノマット エボリューションは落ち着いていることが人気の理由でしょう。クロノマット エボリューションなら、多くの個体で30万円台~であることがほとんどです(もっとも、現行ブライトリングの多くが自社製ムーブメントB01が搭載されていることに対し、クロノマット エボリューションはETAベースのブライトリング13を搭載することで製造コストを抑えていたことも価格が上がりすぎない大きな要因です)。
とは言え2020年、クロノマットの刷新が図られたことで、エボリューションより前の時代のデザインが踏襲されることとなりました。これに伴い外装フォルムもスタイリッシュな印象が強くなっています。
そのため新旧クロノマットで好みが分かれるところであり、「旧型の方が欲しい!」といったニーズから生産終了したクロノマット エボリューションにも買いが流れ始めているところ。
また、生産終了から10年以上が経つことでどんどん市場から良い個体が少なくなっていっているので、2020年傑作スポーツウォッチであるとともに、2020年早めに買っておきたい時計とも言えるでしょう。
◆プロからのコメント
「まずは基本から!ブライトリングの基本であり、デカ厚の基本であり、スポーツウォッチの基本だと思う。ETAベースのブライトリング13も、使いやすさ&メンテナンスしやすさという観点から基本」
「ブライトリングの定価は高額だが、並行店&中古だとかなり予算を抑えられる」
「他ブランドで類似モデルが少ない。唯一無二のかっこよさ」
「(カメラマンより)実は撮影時において、非常に撮っていて楽しい存在がクロノマット エボリューション。ベゼル・ケースの陰影やラグの流線など細部までディティールが美しく立体感があるから。」
第4位 ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ 4500V
パテックフィリップ,オーデマピゲと並んで世界三大時計に名前を連ねるヴァシュロンコンスタンタン。さらに、1755年の創業以来、一度も途切れずに経営を続けてきた非常に稀有な存在でもあります。
ドレスウォッチのパトリモニーや、265年の歴史の中で培ってきた時計製造技術を遺憾なく発揮した超絶複雑機構シリーズ「レ・キャビノティエ」など見事な銘品は枚挙にいとまがありませんが、今最も時計市場を賑わせているのがオーヴァーシーズではないでしょうか。
オーヴァーシーズは1996年に誕生した、ヴァシュロンコンスタンタンのスポーツラインです。
ブライトリングの項でも述べましたが、近年のスポーツウォッチ人気、そして価格高騰は凄まじいものがあります。この牽引役を務めているのが、「ラグジュアリー・スポーツ(通称ラグスポ)」です。
ラグスポの定義は様々ですが、一般的にはラグジュアリーブランドが手掛けるスポーツラインを指します。1972年にオーデマピゲがロイヤルオークを発表したことに端を発し、1976年にはパテックフィリップがノーチラスを発表しました。
この二社とはやや遅れる形でオーヴァーシーズを発表したヴァシュロンコンスタンタンですが、その出来栄えはまさに畢生。流線型のケース,ヴァシュロンコンスタンタンのロゴにあたるマルタ十字をインスパイアしたベゼルにブレスレットと、「This is the ヴァシュロンコンスタンタン」な風格をまといます。
シースルーバックによってヴァシュロンコンスタンタンの見事なムーブメントが見えるのも嬉しいところ。
また、多くのラグジュアリーブランドが「スポーツ」と言いつつも実用性はそこまで高くないことに対し、オーヴァーシーズは150m防水×高耐磁性能ということもあり、死角のないラグスポと言っていいでしょう。
2016年に大幅な刷新が加えられ、さらにスタイリッシュな意匠をまとうこととなりました。
そんなオーヴァーシーズの基幹モデルであり、今回非常に多くのプロから推しの声を頂いたのがSS製のシンプル3針機です。
オーヴァーシーズ 4500V/110A



ケースサイズ:直径41mm×厚さ11mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー,ブラック,シルバー等
駆動方式:自動巻き
ムーブメント: Cal.5100
防水性:150m
定価:2,420,000円(税込)
ちなみに一番人気はブルーですが、ブラックやシルバーも引けを取りません。
とは言え、なぜ2020年にあえてのオーヴァーシーズなのか?それは、ラグスポの中では、非常にお買い得感が強い逸品であるためです。
もちろんヴァシュロンコンスタンタンは世界に誇る名門高級時計ブランド。そのため定価も高く、また世界中で需要があることから実勢価格も高くなりがち。
とは言え、パテックフィリップのノーチラスの実勢価格が900万円近く(一時期は1000万円超え!)、オーデマピゲのロイヤルオークが文字盤カラーにもよりますが350万円~450万円と、軒並み高騰。なかなか一般ユーザーが気軽に買えるものではありませんね。
しかしながらオーヴァーシーズであれば、実勢相場200万円~250万円。まだお得感が強いと言えますね。
とは言えブルー文字盤に至っては既に350万円に手が届こうかという勢いで急騰していること。またヴァシュロンコンスタンタンは丁寧なものづくりを行っているゆえ大量生産はしておらず、流通量もそう多くないことから、これまた早めに買っておきたい2020年傑作スポーツウォッチとなっております。
◆プロからのコメント
「流行りのラグジュアリースポーツモデルの中でも完成度が高く、また独創性が楽しめる」
「人気のモデルの定価越えが続く中、中古であれば定価より安く変え、全体的(ブランド、機能、値段など)なバランスが良い」
「デザイン・スペック・中古相場…コストパフォーマンスが非常に良い。新品だと、ブルー文字盤なんかはロイヤルオーク並に上がってきているが、逆に言えば今後の資産価値に大いに期待できるだろう」
「もうスポーツモデルは食傷気味といったユーザーからも、気になる存在として挙がるのがオーヴァーシーズ。個人的にはクロノグラフモデルが好きかな」
第3位 グランドセイコー メカニカルハイビート36000 GMT SBGJ237
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgj237
「実用時計の最高峰」「最高の普通」をコンセプトに、1960年の創業からひた走ってきたグランドセイコー。「国産高級時計」の礎を築いた、日本時計業界にとって大変意義深い存在でもあります。2017年には母体のセイコーから独立することで、高級路線と海外展開に意欲的に取り組むようになりました。
とは言え、古くからのグランドセイコーファンは、同ブランドのスポーツモデルはそう多くないと思うかもしれませんね。もちろんスプリングドライブ機構のクロノグラフ×GMTを搭載したSBGC203(現SBGC203)や2002年、グランドせこー初のGMTモデルとして誕生したSBGM001(後のSBGM027)等の銘品は多々ありますが、グランドセイコーのコンセプトはあくまで「最高の普通」。オーバースペックになりがちなスポーツラインには、あまり力が入れられてきませんでした。
しかしながら2017年の路線変更により、シリーズを「ヘリテージ」「エレガンス」「スポーツ」の三つに区分。スポーツウォッチを一大ジャンルとしてラインナップに加え、力を入れていくこととなったのです。
もっとも、これは近年時計業界でスポーツウォッチの流行が凄まじかったという背景が大きいかもしれません。とは言えグランドセイコーが手掛けるスポーツウォッチ、ファンは待ち望んでいた方も多いでしょう。
実際、従来のスタンダードな意匠をまとったヘリテージラインと並んで当店でもよく売れる一大コレクションへと進化しています。
そんなグランドセイコーのスポーツウォッチ、実は今回のプロたちへの調査で、非常に票が分かれました。名作が多いこと、一方でこれといった代表モデルがスポーツラインにはないことが理由でしょう。
しかしながら2020年新作であり、かつグランドセイコーには珍しくユニークな色合いをしていることから、今回の傑作選の第4位としてご紹介させて頂きます。
グランドセイコー スポーツコレクション GMT SBGJ237



ケースサイズ:直径44.2mm×厚さ14.4mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き(メカニカル)
ムーブメント:Cal.9S86(ハイビート36000)
防水性:20気圧
定価:792,000円(税込)
まず飛び込んでくるのは、ブルー×ホワイトのバイカラーベゼルではないでしょうか。シルバーやブラックといったスタンダードな色使いが多かったグランドセイコーの、新しい風を感じさせる最新作です。
ちなみに画像ではわかりづらいですが、実機の高級感溢れる仕様は丁寧なザラツ研磨が施された外装もさることながら、サファイアガラスを採用した回転ベゼルにあるでしょう。
傷や衝撃に強い硬度のみならず、美しい透明感,そして光沢を実現します。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja/about/movement/mechanical/9s86
また、ムーブメントにはグランドセイコーが誇るメカニカル ハイビート36000 Cal.9S86が採用されました。
ハイビートとは、テンプの振動数のことです。この振動が多ければ多いほど(ハイビート)高精度を叩き出すことに繋がりますが、一方でパーツが摩耗しやすく、早く劣化しがち。しかしながらグランドセイコーでは摩耗に強い新素材を用いること。加えて半導体技術などにも使われるMEMS(Micro Electro Mechanical System)製法によってパーツ一つ一つを研ぎ澄まし、この摩耗問題を解決しています。
まだリリースされたばかりゆえに市場に流通しきっていません。さらにはグランドセイコー市場が国内外で非常に広まっていることもあり、定価792,000円、実勢相場は67万円前後と、グランドセイコーの中では高価格帯に位置づけられるでしょう。
しかしながらお値段以上の高級感,使い心地,グランドセイコーらしい生真面目な品質を味わえる逸品となっております。
◆プロからのコメント
「実機を見た時、その完成度の高さに驚きを禁じ得なかった。従来、グランドセイコーのイメージでまといがちだった『地味』さは一層され、エレガントで華やかなデザインになった」
「あまり認知されていないが間違いなく隠れた名作。そのネイビーカラーが今年初登場。もう絶対かっこいいに決まってる。着けたら分かる。いや、着けなくても分かる」
「ロレックスやウブロに匹敵するような人気機種になると予想!」
第2位 ロレックス エクスプローラーI 214270
2020年傑作スポーツウォッチ、第2位として挙がったのは、ロレックス エクスプローラーIの現行モデルRef.214270です!2010年にリリースされました。
本稿のランキングのみならず、例年ロレックスの人気売上ランキングを集計すると、必ず上位にくる当モデル(もっとも、近年ではデイトナ 116500LNに後塵を拝している形となりますが、デイトナを白・黒で分ければ214270が売上本数では2020年第一位となります)。
「探検家」の名前を持つ通り、人類未踏の地へチャレンジする男たちへ向けて開発されました。
ちなみにエクスプローラーIがロレックス史に登場した1953年、同モデルのプロトタイプが英国ヒマラヤ遠征隊の世界初エベレスト登頂へ携行されたエピソードはあまりに有名かもしれません。後年、実はこの傾向された時計はオイスターパーペチュアルだったのでは、と囁かれることとなりますが、今から約70年も前に過酷な状況下での使用を想定した堅牢かつ強固な時計を製造していたことに驚きを禁じえません。
そんなエクスプローラーIの詳細スペックはこちら。
ロレックス エクスプローラーI 214270



ケースサイズ:直径39mm×厚さ11.3mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3132
防水性:100m
定価:687,500円(税込)
「エベレスト登頂への携行」という華やかな―そしてやや戦略的な―エピソードに加えて、エクスプローラーIのさらなる魅力は、その研ぎ澄まされたシンプルさにあるでしょう。事実、エクスプローラーIは20代・30代で初めて高級時計を購入する方、既に何本も時計を所有されている方、あるいは時計業界人など、非常に多くのユーザーから愛されています。
それはデイト表示すら持たないシンプルな3針,スーツにもジャケパンにもマッチする洗練された外装フォルム,そして時計本来の価値である「高精度」「高性能」が忠実に守られているからに他なりません。
この汎用性の高さは普遍かつ不変の魅力を有し続けることにも繋がります。2020年のみならず、今後何年も「傑作スポーツウォッチ」として名を馳せていくこととなるでしょう。
さらに言うと定価が税込687,500円と、ロレックスの中ではお安めなのも、万人から愛される秘訣でしょう。
とは言えスポーツロレックスは現在、定価があってないようなもの。なぜなら先ほどから言及している「スポーツウォッチの価格高騰」の極みがロレックスであり、高すぎる需要から定価を大きく超えるプレミア価格で売買されているためです。正規店ではほとんど買えないと言って過言ではなく、むしろ並行輸入市場でも品薄。業者間で状態の良い個体の奪い合いが起こっており、それがまた相場を釣り上げる一因となっています。
エクスプローラーIは現行の中では高値とは言えそこまでプレミア価格でもなかったのですが、2020年に入りにわかに急騰。これまで定価は超えているとは言え実勢相場は80万円台で落ち着いていたのですが、今では100万円に手が届こうかという勢いです。
これは、新型コロナウイルスの影響でロレックス工場が一時休止・供給ストップしたために品薄になったことが考えられます。しかしながらもう一つ、エクスプローラーIを高騰させているもの。それは、「生産終了」の噂です。
前項で2020年新作サブマリーナおよびオイスターパーペチュアルをご紹介いたしましたが、ロレックスは定期的に各モデルをリファレンスチェンジさせます。これは、時代に合わせてスペックアップしたり、従来の機能・性能を向上させるため。どのブランドもやっていることですが、他社との違いとして、ロレックスは生産終了したモデルの相場が上昇するという大変稀有な方程式が昔から確認されています。
もちろん全てのモデルではないのですが、エクスプローラーIの生産終了の噂によって、にわかに買いが集中していると考察できます。
ちなみに214270は、2016年に一度マイナーチェンジが施されました。
上:新型文字盤 / 下:旧型文字盤
インデックスの3・6・9に夜光が塗布され、時分針が太く長く。文字盤バランスが調和されました。
※時分針はケースサイズ36mm時代であった114270と同様の長さであったため、ファンの中にはバランスを指摘する声もあった
2016年より前の個体は「ブラックアウト」と呼ばれ、3・6・9が黒っぽくなっていることが特徴です。
ちなみに「バランスを指摘する声」とは言え、昔ながらのブラックアウトも決して需要は少なくありません。むしろだんだんと流通個体が減少していることから、相場はジワジワ上昇傾向に…
2021年のロレックス新作発表は4月が予定されています。内容次第では、2020年傑作スポーツウォッチのエクスプローラーIが、「稀少スポーツウォッチ」に…!?ロレックスからの発表を待ちましょう!!
◆プロからのコメント
「デザインがオーソドックスで万人受けする。シンプルでかっこいいし、スーツにもカジュアルにもOK。よって、絶対に失敗しない時計」
「発売開始から毎年安定して人気がある。現行エクスプローラーIが発売されたこの10年間、時計業界や市場は様々な変容を遂げてきたが、一度も人気が落ちたことがない(歴代エクスプローラーIに言えることですが…)」
「価格の安定性,万人受けという手堅い人気,堅牢で経年劣化にも耐えうる仕様…したがって、リセールバリューはきわめて高いと言える。ついでにシンプルゆえにメンテナンスコストが抑えられるのもまた良い」
「高い,品薄とは言え、決して製造本数は少なくない。そのため市場の流通量が安定しており、現行スポーツロレックスの中では入手しやすいだろう」
「(2020年のロレックス売上データを見て)現行214270の人気が凄まじいことは言わずもがな。私はむしろ、先代の114270が売上本数8位であることに驚かされた。生産終了から既に10年が経っているにもかかわらず、未だに8位とは。もちろん、価格が上がりきっていないこと,流通量が多いことなども関係しているとは思いますが、例え2021年に214270が廃盤になっても、114270人気はこのまま続くと思われる」
■ロレックス エクスプローラーを持っているなら知っておかなければいけない事
■ロレックス エクスプローラー214270を愛用して思った良い点・悪い点
第1位 ロレックス デイトナ 116500LN
2020年傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門~、圧倒的に票を集めたのは、泣く子も黙るロレックスのデイトナです!
ちなみに2018年版・2019年版の当企画でも、傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門~で、ナンバーワンに輝きました。むしろ、誕生以来ずっとナンバーワン。今回の調査対象としたプロの中には、「今後10年以上、腕時計界のトップとして君臨する」と考察する人も・・・!
デイトナは、もはや説明不要かもしれませんが、1960年代にデイトナインターナショナルスピードウェイというサーキットの完成を契機に誕生しました。ロレックス唯一のクロノグラフであり、現代のスポーツウォッチ人気の立役者でもあります。
スポーツロレックスには珍しく様々な素材・デザインバリエーションを豊富に有しますが、そのいずれもが人気で、屈指の高値。 とりわけここ数年では、過去なかったほどの爆上げを記録。 常に品薄で、どのロレックスをも凌いで正規店で購入することはほとんど不可能なのでは、と囁かれるほど。一部ファンの間では、ロレックス正規店でデイトナの在庫を探すことを、デイトナマラソンと呼んでいるようです。
定番の現行モデルはステンレススティール製の116500LNです。
詳細はこちら。
ロレックス デイトナ 116500LN



ケースサイズ:直径40mm×厚さ約12.5mm
素材:ステンレススティール
文字盤:黒または白
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4130/パワーリザーブ約72時間
防水性:100m
定価:1,387,100円
現行の116500LNは、2016年に誕生しました。
一世代前の116520やもう一つ前の16520も人気ですが、116500LNの格別さ。それはベゼルにセラクロム(セラミック)を採用し、かなり精悍な印象となったこと!デイトナというと資産価値の高さがまず取沙汰されますが、この仕様変更によって、さらにかっこいいスポーツウォッチへと昇華されたことが大人気の秘訣ではないでしょうか。
なお、116500LNは本当に高値が続いており、「もう下がるだろう」と言われ続けてはや3年ほど…むしろその右肩上がりの上昇は止む気配がありません。
現在、白文字盤の方の実勢相場は310万円台~、黒文字盤でも290万円前後~…とてもステンレススティール製モデルとは思えない相場ですよね。
エクスプローラーIの項でも述べたように2020年に入り、コロナ禍によってモノ・ヒトの行き来が大きく制限されています。これに伴い海外製品が国内市場に入荷しづらい状況が続いており、供給量が低減し続けています。
にもかかわらず止まない需要…デイトナ実勢相場が高騰を続けるのも致し方のない現象なのでしょう。
確かに高価格帯とはなりますが、実物を手に取ってみると、「それでも欲しい」という方が後を絶たない理由が垣間見えるでしょう。 2020年のみならず、しばらくは「最強」の座を明け渡しそうにもありません。
◆プロからのコメント
「一番よく売れる。例年、ダントツで売上ナンバーワン。全ての高級時計の中で一番売れている。旧型の116520は2000年~2016年まで17年間販売されたが価値を落とさず、生産終了後もその相場を上げ続けるという圧倒的な資産価値を記録した。116500LNも発表から4年経つが先代の流れを踏襲しており、やはり今後ずっとナンバーワンとなるのは想像に難くない」
「性能・デザイン・ステータス・資産価値全てトップ」
「今、一番カッコイイ時計!!!特に白!理屈じゃない!」(これと同様の内容が5~6人から寄せられた)
「買って良し、売って良し。いつでもオススメ。相場を落とす気配がない」
「かっこよさもさることながら、不具合の少なさにロレックスの高い時計製造技術を感じる」
なお、先代の116520およびさらにその前の16520を推す声も相当数上がりました。
「116520は116500LNの高騰と比べ、落ち着いている。年代次第では200万前後で手に入る」
「デイトナ16520 P番。現行ではない為これ以上はデザイン的に被らず、人気もあり資産価値としても安定している」
■ロレックス デイトナ 116500LNを買うなら知っておきたいこと
■デイトナ 116520のマイナーチェンジを制する者がロレックス相場を制す
2020年傑作腕時計ランキング~コンプリケーション部門~
長く時計業界にいると、様々な複雑機構―コンプリケーション―を目にします。 1300を超えるパーツで形成されたもの、天文周期を組み込んだもの、一本で家一軒買えるような価格のもの・・・
数々の見事なコンプリケーションを手にとり、時には操作してきたプロたちが選んだ2020年の傑作ランキングはこちらです!
第5位 ランゲ&ゾーネ ダトグラフ 403.035
新型コロナウイルスの猛威に巻き込まれながらも、時計業界は成熟を止めませんでした。2020年の世相のうち、特筆すべきは複雑機構(コンプリケーション)の名作が続々と打ち出されたことです。
複雑機構とは3針+デイトよりも多くの機構を携えたモデルを指すことがあり、クロノグラフやGMT,パワーリザーブインジケーターといった比較的馴染みやすい機構から、トゥールビヨンやミニッツリピーター,パーペチュアルカレンダー等「製造できるブランドはそう多くない」ほど高度な機構までと様々です。
2020年は、製造ブランドが限られるような、超絶コンプリケーションが百花繚乱咲き乱れました。
そんな勢いの中にあっても、堂々と「王者の貫禄」を貫き続けるのがランゲ&ゾーネです。
ランゲ&ゾーネはドイツ生まれドイツ育ちのブランドで、その出自は1845年に遡りますが、第二次世界大戦および戦後の東西冷戦に巻き込まれる形で、いったん市場からその姿を消しました。
しかしながら1990年、「ランゲとその息子たち」のブランド名を象徴するかのように、初代アドルフ・ランゲの曾孫(ひまご)にあたる四代目ウォルター・ランゲ氏が復興。
1994年に新生ランゲとして生み出した4モデルを皮切りに、以降数々の名作を世に送り出すこととなりました。
出典:https://www.alange-soehne.com/ja/news-and-more/page-5531/
そんなランゲ&ゾーネは、2020年、その歴史から175年の節目を迎えます。コロナ禍にもかかわらずデジタル表示のミニッツリピーター「ツァイトヴェルク」や2019年、同社初のSSスポーツモデルとなる「オデュッセウス」の新ラインを追加するなど、意欲的に銘品を輩出しました。
こういった動きから注目度が高まったのでしょう。今回、傑作コンプリケーションとして、永遠の名機「ダトグラフ」の名前が挙がりました。
ダトグラフは「デイトを備えたクロノグラフ」という造語です。1999年よりランゲ&ゾーネが手掛ける多機能クロノグラフウォッチであり、発表から20年以上が経過する今なお「高級クロノグラフの最高傑作」の呼び声高いモデルです。
詳細スペックはこちらです。
ランゲ&ゾーネ ダトグラフ 403.035



ケースサイズ:直径39mm×厚さ13mm
素材:プラチナ
文字盤:ブラック
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.L951.1系
防水性:日常生活用防水
定価:-
こちらは、初代ダトグラフです。その後2012年にRef.405系に刷新されました。ちなみにピンクゴールドやイエローゴールドモデル,また生産終了しましたが、ブレスレット仕様なども生産されています。
なぜダトグラフが高級クロノグラフの最高傑作と呼ばれるのか。
その大きな理由は三つです。
一つ目は、時計業界に高級クロノグラフという概念を植え付けたこと。
今でこそ多種多様なクロノグラフが市場に溢れかえっていますが、2000年前後というのはスタンダードなクロノグラフがほとんど。ランゲ&ゾーネのダトグラフより、各社がオリジナリティと機械式時計のロマンティックな難解さを持ったクロノグラフモデルをリリースすることとなりました。
二つ目は、文字盤レイアウトにあります。
通常のクロノグラフはダイアル内にタキメーターやサブダイアルを配さなくてはならないため、視認性が低下してしまう場合もあります。そこにデイト表示まで入れるとなると、雑然とした印象も…
しかしA.ランゲ&ゾーネが手掛けるこの傑作のすごさは、寧ろ端正なまでのダイアルデザイン。最も特徴的でありA.ランゲ&ゾーネの象徴とも言うべきは12時位置のアウトサイズデイトではないでしょうか。
アウトサイズデイトとはA.ランゲ&ゾーネ特許取得のデイト表示機能で、大型窓が12時位置に君臨します。一般的なクロノグラフのサブダイアルは3時と9時位置にあしらわれますが、ダトグラフでは4時8時位置、と若干下げられた配置に。
これにより、アウトサイズデイトの斬新な特徴が活きるだけでなく、デイト、二つのダイアルが三角を成し、調和のとれたシンメトリックを実現したのです。
A.ランゲ&ゾーネらしい気品もあわせて備わり、スポーティーテイストの強いクロノグラフに「高級機」という価値を与えるに至りました。
三つ目は、ダトグラフの真骨頂とも言うべきムーブメントをご覧になればおわかり頂けるでしょう。
ランゲ&ゾーネは「一つのモデルに一つのムーブメント」という信条のもと、新コレクションをリリースする場合は他モデルの一切をベースにしません。さらに完全自社製というこだわりぶり。
これを、1994年の復興当初から実現しており、かつダトグラフに搭載されてきたCal.L951.1系は復興からわずか5年で生み出されたことになります。1999年の発表と同時に、世界中の話題をさらったのは言うまでもありません。
このCal.L951.1系は、世界初のプレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターアウトサイズデイトフライバック機能でもあります。
プレシジョン・ジャンピング・ミニッツカウンターとはクロノグラフにありがちな計測誤認を解消するための機構で、積算分針が60秒経過するごとに正確に目盛りのひとつ先に進む設計となっています。つまり、たまたまクロノグラフ針が0の瞬間にタイム計測を停止した場合にも、積算分針は進むためラグが発生することがありません。
この技術は世界最高難度に分類されるものでありながら、高精度クロノグラフには欠かせません。
A.ランゲ&ゾーネの1815クロノグラフにはこの機構が搭載されていましたが、ダトグラフに至ってはアウトサイズデイト及びフライバック機能(計測中にリセットボタンを押すと、ただちに新しいタイム計測を行う機能)をも付されているというのだから驚きです。
これら全ての機能を制御するL951.1系は、全て熟練した職人たちの手作業により、伝統的なグラスヒュッテ様式に則った組み立てや仕上げが施されています。
さらに現在、このダトグラフはブラッシュアップが施され続けているほか、永久カレンダーやトゥールビヨンなど、様々な超複雑機構が搭載されたモデルが発表されています。
「完璧」でありよもや改良の余地なし、と思われたL951.1はA.ランゲ&ゾーネにとっては通過点でした。これからも進化の手を止めないと思うと、感嘆で呻らずにはいられません。
こういった背景から、発表から経過する今なお「2020年傑作コンプリケーション」として名を連ねるに至りました。
◆プロからのコメント
「オデュッセウスも気になる一本だが、やはりランゲ&ゾーネの真骨頂と言えばコンプリケーションであろう」
「伝統工芸品としたときに どこを見てもただただ美しい」
「外からは見えない複雑さに心が擽られる(くすぐられる)。ステイホームの時代、一本あったらずっと楽しんでいられそう!」
「決して派手さはない。むしろコンプリケーションにもかかわらずレイアウトが計算されつくしているため端正。にもかかわらず存在感は圧倒的」
第4位 ウブロ ビッグバン メカ10 チタニウム 414.NI.1123.RX
出典:https://www.instagram.com/hublot/
ウブロにどんなイメージをお持ちですか?
「かっこいい」
「スポーツ選手(特にサッカー選手)が愛用している」
「デカ厚」
こんな声が多いのではないでしょうか。
このいずれもウブロを象徴するものですが、実は近年、ムーブメントの自社製造,さらにはコンプリケーション開発にも意欲的です。
とりわけ2016年にリリースされたこちらのメカ10は、誰もが心奪われる意匠と機構の奇抜さから、時計業界に大きな衝撃を与えることとなった渾身の一撃。ウブロは時計愛好家からも初心者からも評価の高いブランドですが、またファン層に厚みをもたらすこととなりました。
では、メカ10とはいったいどのような機構なのでしょうか。
まず、詳細スペックはこちらとなります。
ビッグバン メカ10 チタニウム 414.NI.1123.RX



ケースサイズ:直径45mm×厚さ16mm
素材:チタン
文字盤:スケルトン
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.HUB1201(ウニコ)
防水性:10気圧
定価:2,321,000円(税込)
通称メカ10と呼ばれるウブロの自社製手巻きムーブメントCal.HUB1201(ウニコ)は、独自のツインバレル方式(ゼンマイを格納する香箱を二つ持った機構のこと)により、10日間ものロングパワーリザーブを実現していることが特徴です。
さらにこのパワーリザーブに「魅せ方」がさすがウブロと言うべきか。
6時位置のディスクがパワーリザーブ残日数を表示。そして三日を切ると中央ディスクから赤いサインが現れるのです。ちなみにこの機構は、12時位置の「ラック・ピニオン機構」によって実現しています。これは回転力を直線の動きに変換できる歯車で、これによって赤いサインがスライドして視認できることに繋がります。
出典:https://www.hublot.com/ja/
ウブロは多層的な外装が特徴ですが、機械もケース構造も全てが入り組んでおり、ビッグバンの集大成とも言えるでしょう。
手巻きムーブメントはローターを持たないので、シースルーバックからはより機械の奥まで透かすように見えるところが時計好きにはたまりませんね。
嬉しいことに、メカ10はこれだけ高度な時計製造技術が用いられているにもかかわらず、並行輸入店では150万円前後から販売されています。もちろんクロノグラフ搭載のビッグバン ウニコより高額にはなりますが、実際に手に取ってみると納得の出来栄えであることがおわかり頂けるでしょう。
とは言え製造数はそう多くはないので、見つけた時が買い時です!
◆プロからのコメント
「スケルトンで機械式の内部が見えるデザインはさすがウブロ!コンプリケーションを外観から眺められるというのは、時計好きには堪らないのでは?」
「最近、ロングパワーリザーブモデルは決して物珍しいものではない。しかしながら当モデルはパワーリザーブインジケーターに一工夫あり。残数の表示方法もユニークで、こういった斬新さはウブロならではだろう。
残念ながら修理がメーカーのみでの対応となるため(現時点では)、ランニングコストが高くつくのが悩みどころか」
第3位 ロレックス スカイドゥエラー 326934
出典:https://www.rolex.com/ja
ロレックスのコンプリケーションモデルはそう多くありません。なぜならロレックスは実用時計の王者だから。
現代におけるコンプリケーションは利便性と言うよりかは、デザインとしての美しさや、至高の時計製造技術を腕元で楽しめるといった、付加価値の側面が大きくなります。また、内部構造が複雑ゆえに衝撃に弱かったり、高額になったりする特性もあります。
こういった事柄から、ロレックスはこれまであまりコンプリケーションに手は出してこなかった印象でした。しかしながら近年その様相が一変。高級時計市場が成熟し、コレクターのみならず一般ユーザーからのコンプリケーションの要請が高まったこと。加えてロレックスの優れた生産ラインと高度の時計製造技術によって、実用的なコンプリケーション製造を可能にしてきたことが大きな要因でしょう。
そんなロレックスのコンプリケーションラインは、ヨットマスターIIのレガッタクロノグラフやチェリーニのムーンフェイズなどが挙げられますが、今回「2020年傑作コンプリケーション」として業界人から非常に多くの票を集めたのが、スカイドゥエラーでした!ちなみに、2019年版でもランクインを果たしています。
スカイドゥエラー 326934



ケースサイズ:直径42mm×厚さ約14mm
素材:ステンレススティール×ベゼルホワイトゴールド
文字盤:黒・青・白
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.9001/パワーリザーブ約72時間
防水性:100m
定価:1,564,200円
スカイドゥエラーは2012年にロレックスのスポーツラインに加わった、比較的新しいシリーズです。当時はスポーツウォッチなのにフルーテッドベゼルを使用していることや、ロレックスには非常に珍しいコンプリケーションを搭載していることで大きく騒がれることとなりました。
スカイドゥエラーのコンプリケーション機能は、「サロス」と名付けられたアニュアルカレンダーです。アニュアルカレンダーというのはパーペチュアルカレンダーの派生機構のようなもので、一年に一度(アニュアル:年次)、2月の末日のみカレンダー調整を行えば、他の月は30日であろうと31日であろうと手動での調整は不要、という機構です。パテックフィリップやランゲ&ゾーネなどが有名ですね。
出典:https://www.rolex.com/ja
さらにGMT機構をも搭載しています。ただ、GMTマスターのようにGMT針とベゼルで別地域の時間帯を表示するものではありません。文字盤中央に設けられた24時間ディスクがメインの時針と連動して回転する仕様になっており、王冠マークのすぐ下にある逆三角マーカーで第二時間帯を読み取れるようになりました。
↑この画像だと、メインの時間は10時8分(または22時)、第二時間帯は10時、ということになります。
アワーマーカーのさらに外に設けられた小窓は「月」表示です。該当月の窓が赤く彩られます。上の画像だと、12月を指します。
このように、見た目にも機構としても非常にユニークに仕上がった当コンプリケーション。すごいのが、実用面もしっかりしている、ということ!さすが実用主義者・ロレックス。
スカイドゥエラーのために開発されたCal.9001は、パワーリザーブ約72時間。さらに耐磁性や耐衝撃性も存分に高められ、コンプリケーションにありがちな「壊れやすい」を大きく改善するに至りました。
発表当初はハイエンドラインの位置づけで金無垢モデルのみのラインナップでしたが、2017年よりベゼルにのみホワイトゴールドを使用した扱いやすいRef.326934が登場。今回プロから「傑作」と称されたのも、後者となります。
■プロからのコメント
「アニュアルカレンダーを搭載しているにもかかわらず、ステンレス製。しかも定価は100万円台って、安すぎると思う。ただ、最近他のスポーツロレックスにつられて相場が上がり気味。もともと人気の高かった青文字盤が新品並行相場270万円台~、中古でも250万円前後と、定価から大きなプレミア価格をつけている。そこまでではなかった黒・白も、欲しかったら220万円出すのが当たり前になってしまった・・・
最近ロレックス相場がまた上昇しており、スカイドゥエラーはそれに比例してどんどん上がっている。本当に欲しい方は今買っておくべき」
「特にブルーが良い。プレミアがある。加えて文字盤のバランスや、大きなケースに搭載されたフルーテッドベゼルがかっこいいです。リューズとベゼルを使って操作できる点にワクワク感がある。」
「アニュアルカレンダー搭載のコンプリケーションモデルなのに防水が効いている」
「金無垢スカイドゥエラーもイイですよ!デイトナやサブマリーナの金無垢とはまた違う、大人の男性って感じ」
第2位 パテックフィリップ ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001
数あるコンプリケーションを目にしてきたプロたち。 そんな中にあっても、パテックフィリップのそれというのは時計業界人にとってかなり特別なようです。ランキングの2位は圧倒的にパテックフィリップに票が入ることとなりました。
ただ、ひとくちにパテックフィリップのコンプリケーションと言っても、実はかなり種類が多いのが現状です。オーデマピゲ同様、パテックフィリップもまたコンプリケーションに一家言持っているため。しかも、パテックフィリップに至ってはこれを「ノーチラス」「アクアノート」などと同様、一大コレクションとして展開してしまっているのです。
そのため今回の調査でもパテックフィリップの様々な機構―ワールドタイム,パーペチュアルカレンダー,トラベルタイムなど―が挙がりましたが、最も票を集めたのはノーチラスのプチコンプリケーション。通称プチコンの5712シリーズです。
ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001



ケースサイズ:直径43mm×厚さ約8.52mm
素材:ステンレススティール
文字盤:青
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.240PS IRM C LU/パワーリザーブ約48時間
防水性:6気圧
定価:5,170,000円
本稿で何度かノーチラスはご紹介しましたが、シンプルな3針のみならず、様々な機能が搭載された派生モデルが存在します。プチコンは、そんな派生のうちの一つ。さらに言うと、2006年に誕生して以来、3針と並んで長らくノーチラス人気を牽引してきた、重要な役割を持つモデルでもあります。
文字盤を見ると、その多機能さがよくおわかりいただけるでしょう。
搭載されるムーブメントはCal.240PS IRM.C.LU。ポインターデイト、ムーンフェイズ、パワーリザーブと様々な機能を付加しております。
この多機能具合、にもかかわらず文字盤の端正さも驚嘆に値するのですが、さらに目を見張るのが薄さ!オーデマピゲ同様、コンプリケーションを搭載しているとは思えないくらい薄いのです。
コンプリケーションというのはムーブメントにモジュール的に搭載していくことが一般的なのですが、腕時計という小さな箱の中で組み込みが必要となるため、高い設計力と技術力を要します。つまり、薄いどころか、普通の時計にすることすら難しいのです。
なぜパテックフィリップが世界最高峰の時計ブランドと呼ばれるか。その理由がよくわかる名シリーズだと思います。
ただし、現在価格が爆上げしており、定価5,170,000円のところ新品相場が1000万円前後・・・ちなみに2018年末に当企画を開催した時は、まだ650万円程度でした。
とは言えイニシャルコストは高くとも、パテックフィリップのコンプリケーションは値崩れしづらいというメリットもあるため、手に入れておいて損のない銘品と言えます。
なお、今回は定番のステンレススティール製5712/1Aにフォーカスしてご紹介しましたが、5712シリーズはゴールド製も大変人気が高く、その評価はステンレス製と二分するところ。
ノーチラス プチコン ロースゴールド製5712R / ホワイトゴールド製5712G
ちなみにタレントのローランド様はこちらの5712Rの方を愛用しているとか。
当店のバイヤーからのコメントで「よくわかってる。ローランドさんは通だと思う」といったものが寄せられました。確かにこの時計は、万人から受けるというよりも、通好み、玄人好みの逸品と言えるでしょう。
■プロからのコメント
「コンプリケーションと言えばまずこれが思い浮かぶほど、頭に刷り込まれている時計。コンプリケーションの最高峰」
「いつも業者向けオークションで取り合いになる」
「最近の高級時計市場の流れもあってか、5712もとても高くなった。でも、高くても欲しいという強烈な需要が、さらにこの時計の価格高騰を押し上げるというスパイラルを描いている。1000万円近いのに、購入層が絶えないのは本当にすごい。
ちなみに5712Rや5712Gは革ベルトのため、金無垢なのにステンレススティール製の5712/1Aと比べて価格が抑えられる。もちろんそれでも700-800万円はするが・・・ただ、値崩れしないので、買っても後悔とか損とか、そういった感覚は薄いと思う」
「発売以来ずっと人気が高かった時計だが、今年新作が出てさらに注目を集めている。ステータス性は飛びぬけており、デザインも良く、資産価値も高い」
第1位 パテックフィリップ アクアノート トラベルタイム 5164A-001
2020年傑作腕時計ランキング~コンプリケーション部門~のトップに君臨するのは、我らがパテックフィリップ アクアノートのトラベルタイムです!例年一位を獲得してきたノーチラス プチコンプリケーションを抑えることとなりました。
パテックフィリップのスポーツラインは、ノーチラスの他に「アクアノート」も存在します。
アクアノートは1997年に誕生しました。ノーチラスよりもスポーツテイストが強く、また、スペックもアクティブ寄りであることが特徴です。
でも、パテックフィリップの人気シリーズと言えば、ノーチラスやカラトラバがまず思いつきますよね?
実際、カラトラバは初出1932年、ノーチラスは1976年ですので、同社の長い歴史の中ではアクアノートは新参者な印象が強いかもしれません。
しかしながらアクアノートの完成度の高さはノーチラスと決して遜色のないものです。むしろ、クラシカルなカラトラバとスポーティーなノーチラスの良いとこどりをした外観から、きわめて高い人気を誇ってきました。いわゆる「ラグスポ」の上品さと、さらなるスポーティーさを兼ね備えます。
多角形ながら丸みを帯びたケース。暗闇でも視認性を確保する夜光アラビアインデックスと優美な時分秒針。そしてアクアノートをアクアノートたらしめる格子模様のブラック文字盤は、スポーツウォッチなのに見ていると引き込まれるような気品や美しさを感じさせます。
さらにアクアノートは120m防水なのも特筆すべき点です(ノーチラス一部モデルもですが)。ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズの項でもご紹介したように、ラグスポの中にはあまり堅牢性が高くないものも少なくありません。こういった堅牢性は、日常での使用をサポートしてくれますね。
このアクアノートのコンプリケーションと言えば、トラベルタイム 5164A-001です。
詳細スペックはこちらです。
パテックフィリップ アクアノート トラベルタイム 5164A-001



ケースサイズ:直径41mm×厚さ約10.2mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.324 S C FUS
防水性:12気圧
定価:4,488,000円
「トラベルタイム」とは、ホームと目的地の時刻を表示するデュアルタイムゾーン機構です。世界が遠くなった昨今だから、所持しておきたい一本ではありませんか?
二つの時間帯の昼夜表示、ポインターデイト、センターセコンドを備え、実用的なアクアノートとして40代・50代を中心に支持を集めています。
2011年に生み出されるやいなや、時計業界は言わずもがな、世界各国で高い評価を得続けてきました。
現在、3針のアクアノート及びノーチラスを除くと、当店のパテックフィリップの中で最も売れているモデルがこちらとなります。
一方で人気ゆえに、ノーチラスに匹敵するような品薄を記録しています。ノーチラスが高くなりすぎたため、こちらに需要が流れてきている、というのもあるでしょう。
下記は2014年以降のアクアノートの中古価格を基点とした、上昇率です。
2014年:300万円
2016年:320万円 107%
2018年:420万円 131%
2020年:600万円 143%
とりわけ今年の上昇率はすさまじく、このままいくと、2022年には900万円を超えることが予想されてしまいます。
「さすがにアクアノートはもうこれ以上価格高騰しない」と言われていますが、本当にそうでしょうか?ノーチラスやロレックスのデイトナ同様に、「あの時買っておけばよかった」時計の第一候補なのではないでしょうか?
本当に欲しい方は、早めに買っておくのが吉。
こういった緊迫の展開も踏まえて、コンプリケーション部門第一位として君臨するに至りました。
◆プロからのコメント
「高騰が続く複雑機構。それだけでも珍しいが、アクアノートは独創性高いフォルムであるにもかかわらず万人受けしている。薄型設計であることも関係しているだろう。
ノーチラスはしばしば『タキシードにもウェットスーツにも似合う』と表現されるが、アクアノートもまた同様の印象を持つ」
「少しカジュアルさも残しつつ上品」
「今後さらに価格が上がる可能性があり、資産性が見込める」
「トラベルタイム機構を使うことはほぼないが、これはデザインが素晴らしすぎる!しかもパテックは腕時計で世界初のワールドタイムやロレックスと同時期にGMTを作成しているストーリーがあり、『旅時計』を買うなら最適解では?」
まとめ
時計業界のプロ50人が選んだ、2020年の傑作腕時計ランキングを発表いたしました。定番のロレックスから雲上ブランドのパテックフィリップ、ファッション重視派からも人気が高いシャネルやカルティエなど、様々なブランドが挙がりましたが、今回ランクインしたものは2021年もまだまだ勢いを持ちそうなものばかりです。
新たに2021年を迎える前に、思い切って一本腕時計を購入しようと思ったとき。プロお墨付きの一本はいかがでしょうか。
なお、「エントリーモデル部門」は下記をご覧ください。
時計業界のプロ50人が選んだ、2020年の傑作腕時計ランキング~エントリーモデル部門~
「レディース部門」は下記をご覧ください。
時計業界のプロ50人が選んだ、2020年の傑作腕時計ランキング~レディース部門~
文:鶴岡
この記事を監修してくれた時計博士



新美 貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN リテール(本店、ナイン店)、メンテナンス マネージャー
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年