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時計業界のプロ50人が選んだ、2022年の傑作腕時計ランキング
新型コロナウイルスは今なお社会問題となっているものの、各国での行き来がじょじょに始まり、日本でも入国制限が大幅緩和された2022年。時計業界でもまた、新作見本市や展示会がリアル開催され、各社が渾身の新作モデルを活発に発表しました。
さらにスイス時計協会(FH)によると、コロナまん延当時に大きく落ち込んだスイス時計輸出額が、2021年に史上最高となる223億スイスフランを記録したと発表。引き続き2022年も時計市場は力強く成長し、スイス時計輸出額は、2021年を大きく超えて最高値に付けると思われます。
そんな白熱の時計業界2022年、「最強」の腕時計はいったいどのブランドのどのモデルなのでしょうか。
この記事では、高級時計店で働く時計のプロ50人から、「今年最も傑作だと評価する腕時計」を調査しました! 2022年新作・旧作問わず今現在の日本で購入できる全ての腕時計を対象に、全5カテゴリで徹底調査しております。
完全なる業界人目線!時計にうるさい目利きたちのリアルな意見!! 時計通も初心者も、これを買っとけば間違いなし!!!
※掲載している定価・相場は2022年11月現在のものとなります。
目次
2022年傑作腕時計ランキングと各部門(カテゴリ)の説明
高級時計店で働くスタッフ50人を対象に、2022年、お客様に最もお勧めしたいと思える傑作腕時計をアンケート調査いたしました。 集計結果をもとに、5位~グランプリを、ランキング形式で発表しております。
また、各モデルごとに、アンケート調査で挙がったスタッフからのコメントや総評もご紹介いたします。
対象
今日本で購入できる全ての時計ブランドの全てのモデル。2022年新作のみならず、2022年に注目度が高まったモデル、2022年もお勧めしたいモデルなど。
調査部門
①2022年新作部門:2022年に発表された新作の傑作
②スポーツウォッチ部門:スポーツウォッチの傑作
③コンプリケーションウォッチ部門:複雑機構を搭載したコンプリケーションウォッチの傑作
④オールドウォッチ部門:ヴィンテージやポストヴィンテージと呼ばれる年代の傑作
⑤エントリーモデル部門:30万円台以下で購入できる腕時計の傑作(2022年新品並行相場に準ずる)
2022年傑作腕時計ランキング~2022年新作部門~
高級時計店で働く時計のプロ50人が厳選した2022年の傑作腕時計ランキング! まず初めに、今年各ブランドから新作として発表されたモデルのランキングを発表いたします!
第5位 タグホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
最初にご紹介するのは、タグホイヤーのハイスペックダイバーズウォッチ「アクアレーサー」の、2022年新作です!
既存のアクアレーサーも優れたスペックと信頼性、そしてタグホイヤーらしい高いデザイン性を有してきましたが、2022年に打ち出された「アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー」では、モデル名の通り1,000mもの防水性を引っ提げてやってきました。
なお、2022年は素晴らしきダイバーズウォッチが多数リリースされた年でもあります(ダイバーズウォッチは大変人気の高いジャンルですので、例年ハイスペックであったり、デザイン性に優れた新作が各社から打ち出されるものですが)。
例えばデザインが一新された、ブライトリングのスーパーオーシャン。チューダーを代表するツールウォッチを、よりデイリーユースに特化させたペラゴス39。あるいはオメガの6,000m防水を誇るシーマスタープラネットオーシャン ウルトラディープ。はたまたチタン製×11,000m防水×ケースサイズ50mmという絶大なインパクトで時計業界を湧かせたロレックスのディープシー チャレンジ等々・・・挙げだすと、キリがありません。
しかしながら当店GINZA RASINでのアンケート集計の結果、数ある新作ダイバーズウォッチ、および新作モデルを抑えて第5位にランクインしたのが、タグホイヤーの最新アクアレーサーでした。
アクアレーサーについて説明を加えると、2004年にタグホイヤーのコレクションに追加されたダイバーズウォッチラインです。
フラグシップの「カレラ」や「モナコ」などと比べると新しいコレクションとも思われますが、アクアレーサーの前身は1980年代初期に発売された「2000シリーズ」に遡ります。
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
この2000シリーズは、ダイビングウォッチの6大要素―タグホイヤー曰く、6つのユニークな機構―を備えていたと言います。
すなわち、堅牢な外装やねじ込み式リューズ、200m防水。そして逆回転防止ベゼルにダブルセーフティバックル付きスティール製ブレスレット・・・さらにサファイアクリスタルガラスから覗く視認性の高い文字盤は、針・インデックスにたっぷりと夜光が塗布されており、太陽光の指さない海中においてもダイバーに時刻を告げる信頼性を担いました。
その後、2000シリーズを発展させた3000シリーズやS/el、アクアグラフを経て、2004年のアクアレーサーへと至ることとなりました。
※「前身は2000シリーズ」と表記しましたが、アクアレーサーの始祖は1978年発表のRef.844とも言えます(1984年に1000シリーズへと改名)。
堅牢な外装とねじ込み式リューズを備えたRef.844は、1970年代当時から既に200m防水を誇るダイバーズウォッチでした。
アクアレーサーもまた、濃密な系譜と進化を描き続けます。
発売当時は300m防水であった同コレクションですが、2009年に次世代機で500m防水モデルをリリース。
さらにおなじみキャリバー5搭載機からクォーツモデル、クロノグラフやGMT機能搭載の多機能機。そしてレディースラインなど幅広い商品展開を行い、多数のファンを獲得していきました。2021年には薄型化やデザインの変更によって、より現代風にリファインされた最新シリーズ「アクアレーサー プロフェッショナル300」がローンチされたことを、記憶に新しい方も少なくないでしょう。
そして2022年。
本稿でご紹介している「アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバー」が、堂々リリースされます。
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
前置きが長くなったのは、この新しいアクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバーが、アクアレーサーの歴史の集大成的なモデルであるためです。長年高い防水腕時計を開発し続けてきたタグホイヤーが、同社らしい高いデザイン性と実用性を備えつつも、1000m防水というオーバースペックなアクアレーサーを製品化するに至ったのですから。
そう、ただオーバースペックというだけではないのが、タグホイヤー。
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
高い防水性を維持するには堅牢な外装が必要となり、結果としてどうしてもケースがボリューミーかつ肉厚になりがちです。
確かにアクアレーサー スーパーダイバー1000も、ケース直径45mmと既存のアクアレーサーに比べるとダイナミックです(従来のレギュラーモデルはメンズで36mm・40mm・41mm・43mm)。しかしながら腕時計としては、常識的なサイズ感と言えます。
さらにケース厚が15.75mmに抑えられていること。軽量なチタンを素材に用いていることから、デイリーユースにも配慮されたオーバースペック・ダイバーズウォッチとなっているのです(ちなみに、防水性1000m超えのダイバーズウォッチだとケース厚18mm前後はザラ)。
タグホイヤーはアクアレーサーの原型となった2000シリーズを始め、長い歴史の中で画期的なモデルを多数開発し続けてきましたが、いつも実用性を犠牲にしていないというのは特筆すべき点ですね。
さらに、どんな時も防水性を維持できる仕掛けが施されております。それは「リューズのねじ込み忘れ防止システム」です!
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
ねじ込みリューズというのは、そうではないリューズが何もせずに引き出し可能なことに対し、ねじを締めたり緩めたりすることで時計内部の気密性を確保する技術のことです。ちなみにロレックスが1926年にオイスターケースを発明しましたが、その際にねじ込み式リューズで特許取得しており、他社に先鞭をつけました。
このねじ込みリューズの「ねじ込み忘れ」は、非常によくある腕時計のトラブルです。
本来リューズの気密性を確保するためのねじ込み式リューズですが、これを忘れることで内部に浸水したり塵やホコリが入ってしまい、故障の原因となってしまうのです。いわんや、海中でのねじ込み忘れをや。
そこでアクアレーサー スーパーダイバー1000mはリューズをブラックDLCコーティングし、さらにクラウンチューブ回りにオレンジのシールを張り付けることで、ねじ込みがきちんと行われているかどうかを、目視できる仕様としたのです。
今回アンケートを集計するにあたり、選択の理由に対するコメントも募ったのですが、このねじ込み忘れ防止システムは実用面のみならず、リューズのブラックカラーによってデザインに統一感が出た、といった声も非常に多かったものです。
確かに同じくブラックDLCコーティングされた9時位置のヘリウムエスケープバルブと併せて、オレンジ×ブラック基調の統一感あるデザインに仕上がりました。
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
なお、当新作アクアレーサー スーパーダイバー1000は、そのスペックやデザイン以外でも大きな注目を浴びました。その理由は、新しい自動巻きムーブメントTH30-00を搭載していることです!
このTH30-00は、タグホイヤー初となるケニッシ製のムーブメントなのです。
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
ケニッシについて簡単にご紹介すると、2016年にスイス ジュネーブで設立された高級腕時計の部品メーカーです。自動巻きムーブメントを主に製造しており、開発にかかわるチューダーを始め、ブライトリングやシャネルなどといった名門時計ブランドへムーブメント供給を行っています。
このケニッシのムーブメントは、COSC(クロノメーター規格)認定の高い精度、約70時間のパワーリザーブ。さらにシリコン製ヒゲゼンマイを採用したことによる耐磁性や耐久性への配慮等、性能・信頼性ともに優れたムーブメントです。ケニッシの実力の高さは、前述した名門ブランド(しかも、性能や実用性に配慮してきたブランド)の数々が採用していることからも明らかですね。
タグホイヤーでもこのケニッシムーブメントが採用される運びとなった、というわけです。
すなわち、きわめて高い防水性に信頼性。ダイナミックな外装ながら、スタイリッシュな厚み・軽やかさによって快適な装着感の実現。そして高い精度を備えるという、内外ともに完成されたダイバーズウォッチこそが、アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバーとなっております。
これだけ完成されているにもかかわらず、国内定価786,500円!オーバースペックの時計は100万円超が当たり前といった昨今ですが、チタン製でこの価格を実現してきました。
良心的な価格設定も、タグホイヤーが人気の理由の一つです。
スペックはこちら。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径45mm |
素材: | チタン |
文字盤: | ブラック |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.TH30-00 |
パワーリザーブ: | 約70時間 |
機能
防水: | 1000m |
定価: | 786,500円 |
プロからのコメントはこちら
「デザインの素晴らしさはさすがタグホイヤー。ただカッコイイだけでなく、写真から見ても作りこみの高さや、厚すぎないケースに起因するスタイリッシュな雰囲気を感じる。チタン製も◎」
「国内だと円安の影響。それでなくとも高性能化によってメーカー正規定価が上昇する中、1000m防水で786,500円というのは驚き。タグホイヤーはもともと価格・デザイン・性能のバランスがとてもよく取れているブランドだが、このタグホイヤーの企業努力がよく出た一本だと思う」
「タグホイヤーの一般モデルは通常、共通のボックスに入れられるが、アクアレーサー プロフェッショナル1000 スーパーダイバーは特別ボックスとのこと!オンラインブティックでも購入できるのに、この特別感は顧客にとっては堪らないのでは?」
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
第4位 グランドセイコー Evolution 9 Collection 白樺 SLGA009
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
2022年の傑作腕時計ランキング・新作部門、第4位となったのは、グランドセイコー 白樺 SLGA009です!
2022年1月に発表されたSLGA009は、多くの「新しい」をまとって登場した、グランドセイコー渾身の新作です。
と言うのも、新しいコレクションEvolution 9(エボリューション9)。そして新しい次世代スプリングドライブ自動巻きCal.9RA2を伴っているのです。
2022年は44GSの誕生55周年記念モデルや、同社初のハイコンプリケーション搭載腕時計「Kodo」にも多くの注目が集まりました
一方当店での傑作ランキングでは、高級機としてのベーシックと独創性を両立させた新作「白樺」を、多くのスタッフが選出した形となります。
もっとも、「白樺」と称されるユニークな文字盤パターンに、見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。
北海道および中部以北の本州に分布する落葉樹「白樺」から着想を得た文字盤を、グランドセイコーでは2021年に発表しておりました。ヘリテージコレクション SLGH005です。
ちなみに昨年にも同様の傑作腕時計ランキングを行った際、このSLGH005がやはり新作部門でランクインしました。業界内でもグランドセイコーは高い支持と評価を得ている事実を垣間見る思いです。
昨年の「白樺」SLGH005は、メカニカル(自動巻き)の最新世代Cal.9SA5を搭載したモデルでした。
2022年の「白樺」SLGA009では、冒頭でもご紹介しているようにスプリングドライブの「最新世代」Cal.9RA2を搭載していることが最大の特徴です。
「最新世代」とは言え、2022年がCal.9RA2の初出年ではありません。ローンチは2020年です。
2020年はグランドセイコー60周年でしたが、この節目の年に二つの最新世代ムーブメント9SA5と9RA5(本稿で取り上げている9RA2は、パワーリザーブインジケーターが裏蓋側にきている仕様)が同社から発表されました。
この時はまだ限定モデルに留まっておりましたが、メカニカルの方は2021年、次いでスプリングドライブが2022年に「白樺」で量産化を果たしたということを意味しています。
スプリングドライブは、1999年から製造されている、グランドセイコーの独自機構です。
ゼンマイを駆動力に、そしてクォーツ(水晶振動子)を精度維持に用いることで、機械式時計とクォーツ式時計の良いとこどりを果たした機構となります。
「グランドセイコーを買うなら、スプリングドライブ!」といった方は少なくなく、当店GINZA RASINでもグランドセイコー人気ランキングなどを集計すると、だいたい上位の大きい部分をスプリングドライブが占めるものです。
このスプリングドライブ、構想自体は1977年から存在していたようなのですが、実用化に至るまでに22年かかっていることがわかります。この要因の一つに、スプリングドライブのパワーリザーブ(ゼンマイの持続時間)が長らく理想よりも足りておらず、ようやく72時間の持続時間を実現することで製品化に至った、というものがあるようです。
しかしながら2020年に打ち出された最新世代のスプリングドライブCal.9RA5(および9RA2)は、最大巻き上げ時で約120時間―約5日間―の、超ロングパワーリザーブの獲得に成功しました。
ゼンマイ持続時間の延長にはいくつかの手法がありますが、グランドセイコーが最新世代ムーブメントで採用したのはデュアルサイズバレル(ゼンマイを格納する香箱のことをバレルと呼び、大小二つのバレルを設けて容量を上げつつも省スペース化・高効率な駆動を実現しています)。さらにセイコーの自動巻きの巻き上げ機構マジックレバーを中心からオフセットに配置するなどで、性能やパワーリザーブをアップデートしつつも、従来ムーブメントより薄型化が図られました(ケース厚も11.8mmと、薄型エレガント!)。
「最新世代」としてグランドセイコーが堂々打ち出すのにふさわしく、高級腕時計らしい見事な仕上げ・ムーブメントが施されているのも素晴らしいですね。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
裏蓋はシースルーバックとなっているため、高性能でありつつも美しき意匠をユーザーは楽しめます。
なお、最新世代ムーブメントCal.9RA2を「最大の特徴」とご紹介しましたが、この最大の特徴はあと二つあります。
その一つが、「白樺」文字盤です。なぜモデル名に「白樺」を冠しているのかと言うと、これは文字盤装飾に由来しています。
前述の通り白樺は、日本で見られる落葉樹。
SLGA009では、スプリングドライブが製造されている長野県「信州 時の匠工房」周辺の白樺林をモチーフに、文字盤デザインとして落とし込まれたとのことです。ちなみに昨年発表のSLGH005の方は、グランドセイコーの高級機械式時計が製造されている、岩手県 雫石市「グランドセイコースタジオ」の周辺に群生する白樺林がモチーフになっておりました。
スプリングドライブのSLGA009の方がシルバーが柔和な輝きとなっており、煌めきを保ちながらも、落ち着いた印象を醸し出しております。
また、高度なプレス技術と丁寧なメッキ技術によって、ムラのない美しい・それでいて独特なテクスチャー装飾は、グランドセイコーならではの出来栄えです。仕上げで分厚くクリアラッカーを吹き付けているため、経年劣化に著しく強いといったメリットも抱えます。
グランドセイコーは長らくムーブメントや性能面で魅力を語られることが多い傾向にありました。しかしながら近年、業界内外で高い人気と評価を誇るのは「意匠やデザイン」に起因しているように思われます。
とりわけ他社にはあまり見られない文字盤装飾は、グランドセイコー人気に大きく寄与するところでしょう。
2022年も様々な文字盤がリリースされており、その様は百花繚乱。
とは言え、シンプルかつベーシックな中に美と職人技を感じさせる、「白樺」の特別な魅力はひとしおと言えるのではないでしょうか。
さらに付け加えると、新作「白樺」SLGA009のもう一つの特徴が「エボリューション9」としての外装です。
エボリューション9はグランドセイコーに新たに加わった新コレクションです(2021年発表の「白樺」SLGH005はヘリテージコレクションの中でも特別に「シリーズ9」と称されておりましたが、現在はエボリューション9に統合されています)。
どういったコレクションかと言うと、「セイコースタイル」をもとに、日本の美式を取り入れた新しいデザイン文法とのこと!
セイコースタイルは、1967年に誕生した44GSからスタートした同社のデザイン文法です。
1960年にグランドセイコーが発足して以降、スイスに追いつけ・追い越せの気概のもと、高精度ムーブメント開発が同社で行われておりました。
一方で、同時に国産高級時計としての「高級感あるデザイン」も訴求されました。そんな中で完成した44GSは、9つのデザイン要素を有します。この要素こそが、セイコースタイルとなります。
※ちなみに44GSとは、1967年にグランドセイコーから発表された手巻きモデル。44GS自体は製造期間が約2年ほどとなりますが、現在グランドセイコーのデザイン文法として受け継がれる「セイコースタイル」を築き上げたモデルと言われています。なお、44GSの「44」は、搭載するムーブメントCal.4420系に由来します。
この要素を簡単にまとめると、「燦然と輝く時計」。
インデックスや針のカッティング、あるいは外装の仕上げにこだわり抜くことで「光と陰」のメリハリを効かせ、高級機らしい輝きを備えるといった考え方です。ちなみにグランドセイコーの外装は本当に見事な仕上げが施されており、とりわけザラツ研磨による歪みのない鏡面仕上げには定評がありますが、これもまたセイコースタイルから端を発する職人魂です。
2022年、セイコースタイルの発足から55年を経て、ここに「光と陰が織りなす美」「光を美しく流す造形」といった、日本の美意識を採り入れられ、現代的な美しさをまとった、至高の高級腕時計が完成されています。これこそが、エボリューション9です。
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
エボリューション9の、仕上げの美しさは言わずもがな。ベゼルやケースサイドを下に向けて絞るような意匠とすることで、逆斜面状のフォルムを実現しており、シャープな印象を演出しています。また「面」が増えたことで複雑な造形を実現しており、いっそう立体感を感じさせていると言えるでしょう。
実際、今回のアンケートでは「実機を見た際、これまでのグランドセイコーへのイメージを大きく変えた」と言ったコメントが見受けられました。
ちなみにブレスレットも幅広となっており、Cal.9RA2(およびCal.9RA5)が低重心に設計(ケースバック寄りに設置。リューズが裏蓋側に近くなる)されていることや薄型化が図られていること併せて、エボリューション9でさらに快適な装着感が実現されていることも特筆すべき点です。
このように完成された「白樺」SLGA009、国内定価1,045,000円。
グランドセイコーとしては高価格帯のハイエンドとなりますが、実機で出来栄えを見れば、納得の国内定価です。
グランドセイコー Evolution 9 Collection 白樺 SLGA009
ケースサイズ:直径40mm×厚さ11.8mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:スプリングドライブ自動巻き
ムーブメント:Cal.9RA2
パワーリザーブ:最大120時間(約5日間)
防水性:10気圧
定価:1,045,000円(税込)
プロからのコメントはこちら
「大人気・白樺の第二弾!かなり期待していたが、実機を見たら期待以上の出来栄えだったのはさすがグランドセイコー。発売から一年ということもあり、まだ出回りが少ないが、流通量が増えれば当店グランドセイコーの売り上げの中でもトップクラスの人気モデルになるのでは?」
「発売当初、定価100万円超は強気の価格設定だと思ったが、実機を見て納得」
「(グランドセイコーの全てのモデルに言えることだが)一見すると非常にベーシックなデザイン。しかし研ぎ澄まされた仕上げや作り込まれたラグ,幅広のブレスレットは、プロダクトの頂点にあると言って良い」
「グランドセイコーの新世代ムーブメント、9SA5(メカニカル)と同様に、期待せざるをえない。グランドセイコーは高精度・高性能がブランディングの要であったように思うが、基幹ムーブメントには長らく変化がなかった。60周年の節目に新世代機がリリースされ、ほどなくして待望の量産化。今後の耐久性や信頼性、メンテナンス性などを注目していきたい」
第3位 パテックフィリップ ノーチラス 5811/1G
出典:https://www.patek.com/en/home
2022年の傑作腕時計ランキング、新作部門の第3位はパテックフィリップからゲリラ的に打ち出された、新型ノーチラス Ref.5811/1Gです!
なお、新型ノーチラス Ref.5811/1Gに対する当店内で総評・コメントでは、「ようやく後継機が出てくれた」ことに対するファンとしての安堵感と、「今後のパテックフィリップの動向」への期待感が、半々を占めておりました(そして、なかなか買えないであろうことに対する諦観も)。
パテックフィリップはロレックスなどとともに、3月下旬に開催されたWatches & Wonders Geneveで新作発表を行いました。
その時、新型ノーチラスのリリースがなかったことに対して話題になるのは、さすがパテックフィリップと言うべきでしょうか。
ノーチラスは、言わずと知れたパテックフィリップのスポーツウォッチです。
初出は1976年。この4年前の1972年に誕生しているオーデマピゲ ロイヤルオークとともに、現在腕時計業界のトレンドとなるラグジュアリー・スポーツウォッチ(ラグスポ)を牽引する存在とも言えますね。
※ラグジュアリー・スポーツウォッチとは、特に決まった定義はありませんが、ラグジュアリー・メゾンが製造していること。薄型でケースとブレスレットがシームレスになっていることなどを特徴とするスポーツウォッチです。
代表的なモデルは前述したオーデマピゲ ロイヤルオークにパテックフィリップ ノーチラスの他、ヴァシュロンコンスタンタンのオーヴァーシーズ、ランゲ&ゾーネのオデュッセウスやジラールペルゴのロレアート等が挙げられます。
潜水艦「ノーチラス号」に名前を由来する当ラグジュアリー・スポーツウォッチは、その名の通り潜水艦の舷窓(船体にある小窓)をモチーフにデザインされております。
デザイナーは、ロイヤルオークも手掛けた天才ジェラルド・ジェンタ氏。
ケース両サイドに備わった「耳」や八角形のベゼルは一見するとダイナミックにも思えます。しかしながら雲上ブランドであるパテックフィリップらしい、上品な薄型ケース・ブレスレットはシームレスとなっており、美しく丁寧な仕上げと併せて唯一無二の高級感を示します。
1970年代、パテックフィリップやオーデマピゲのようなハイメゾンが、ステンレススティール製のスポーツウォッチ(しかもケースサイズは42mmと「ジャンボ」!当時はメンズでも31mm~35mm程度のケースサイズが主流でした)を手掛けるなどといったことは前代未聞でした。
しかしながら後年、対抗機が多くのブランドから続々と打ち出されたことから、いかにオーデマピゲやパテックフィリップのラグジュアリー・スポーツウォッチが成功したかが、垣間見えるのではないでしょうか。
ノーチラスは初代から今に至るまで、時計業界を代表する名作として語り継がれています。
このノーチラス、時計としての傑出した仕上がりもさることながら、近年では実勢相場(市場価格)で何かと話題になりがちです。
何故なら、定価を大きく―遥かに―上回る実勢相場での売買が、さも当たり前のようになっているためです。
2021年まで、最新のステンレススティール製ノーチラスはRef.5711/1Aでした。
2006年にカタログに登場したRef.5711/1A(2010年にブレスレットがマイナーチェンジ)。ノーチラスを象徴するブラックブルー文字盤と2014年にラインナップに追加されたホワイト文字盤を二本柱に、パテックフィリップの人気モデルとして、時計愛好家を中心に一大市場を形成してきました。
しかしながら昨今では、この人気が加速し、流通量を大きく凌ぐ世界的需要が顕在化。結果として、実勢相場が2000万円にも及ぶなどといった事態を巻き起こしているのです。
パテックフィリップはもともと大量生産とは無縁なことに加えて、2020年にホワイト文字盤が。次いで2021年にブラックブルー文字盤が生産終了となったことも、この相場高騰に多大な影響を与えました。
なお、生産終了時の国内定価は3,872,000円。いかに狂騒的な相場感であるかが、おわかり頂けるのではないでしょうか。
こうなってくると、気になるのはRef.5711/1Aの後継機の存在。
初代ノーチラスから系譜を引く3針モデルが姿を消していたため(レディースはあり)、いずれ後継が出るだろうとは言われていました。
しかしながら、世界最大規模の時計業界新作見本市Watches & Wondersでは、パテックフィリップはノーチラスの新型機を発表せず。
そして2022年10月になり、ついにホワイトゴールド製のRef.5811/1Gをリリースするに至ったというわけです。
出典:https://www.patek.com/en/home
この新しいノーチラス Ref.5811/1G、先代とデザインコードは大きく変えておりません。これは歴代ノーチラスに言えることであり、初代「ジャンボ」の伝統を踏襲するのが、同コレクションの常でした。
とは言え、要所要所でアップデートを加えるのが、世界最高峰と名高いパテックフィリップの成せる業。
先代Ref.5711/1Aまではケース直径40mmであったサイズを41mmへとアップサイジングし、一方で初期ノーチラスに見られた2ピース構造の採用によって、さらなる薄型化をも図っていることが、新作ノーチラスの大きな特徴です。
出典:https://www.patek.com/en/home
現在ではベゼル+ケース+裏蓋で構成される3ピース構造が主流となっております。3ピース構造は裏蓋をねじ込み式のスクリューバックとすることで、高い防水性を獲得しています。また、ムーブメンを取り出す際は専用工具によって裏蓋を開閉するため、メンテナンス性にも優れる傾向にあります。
一方の2ピース構造は、ケースと裏蓋が一体化した構造となっており、そこにベゼルが取り付けられます。
初代ノーチラスは薄さを堅持するために2ピース構造を採用しつつも、ケース両サイドの「耳」によって120mの防水性を獲得するに至りました。
2022年新作でも、初代構造に回帰し2ピース構造が採用されていますが、代わらずに12気圧防水を堅持しております。
併せてリューズに、新システムが採用されていることもミソ。
これまでの2ピース構造では、ムーブメントを取り出すには時計の文字盤側からベゼルとガラスを外して行う必要があり、そのためジョイント式リューズ(リューズに取り付けられる巻き芯をセパレート式にすることで、簡単にリューズの取り外しが行える構造)になっていることがほとんどでした。
ジョイント式リューズは、ユーズが抜けてしまったなどといったお声を頂くこともあります。
しかしながらノーチラス Ref.5811/1Gでは新たな特許取得システムによって、分割した巻き芯を持たずして、文字盤側からこれを引き抜ける仕様にした、と!
ただ薄く美しくするのみならず、実用面にも配慮するのが、繰り返しになりますがパテックフィリップならではですね。
出典:https://www.patek.com/en/home
さらに言うと、バックルにも新しい特許取得システムが見受けられます。新しい折り畳み式バックルでは、2mm~4mmの微調整が可能になりました。
バックルの微調整は、近年ではスポーツウォッチの標準装備となりつつあります。
スポーツウォッチは堅牢性を備えるゆえ、外装に厚みや重量が出ることが多いものです。もちろんデカ厚などに代表されるボリューミーなスポーツウォッチはかっこいいのですが、薄型ドレスウォッチと比べると装着感の面では後塵を拝します。しかしながら、腕のサイズにピッタリと合わせることで、装着感は格段に向上します。そのため近年のスポーツウォッチには、微調整可能なバックルが搭載されていることが往々にしてあるのです。
ノーチラスはもともと薄く重量も120g前後であったため(新型ノーチラスはホワイトゴールド製ですので、もう少し重くなるでしょうが)、非常に優れた装着感が評価されてきました。「腕にまとわりつくような」などと称されることも少なくありません。
にもかかわらず、さらに微調整可能なバックルを用いることで、いっそう快適な着け心地を実現しているのです。
なお、パテックフィリップについて語る時、搭載ムーブメントの話題は欠かせません。
出典:https://www.patek.com/en/home
パテックフィリップのような雲上時計は、価格も超高級。この超高級の価値の一つに、美しく作りこまれたムーブメントがあると言えるのではないでしょうか。近年ではシースルーバックによってオーナーが鑑賞できるため、ムーブメントの美観はいっそうの価値を持つに至っています。
そしてパテックフィリップは、そんな美しきムーブメントの担い手の代表者です。
新型ノーチラス Ref.5811/1Gでも、雲上ブランドにふさわしい仕上げや装飾が施された自動巻きCal.26-330 S Cを確認をご確認頂けます。
Cal.26-330 S Cは先代ノーチラスでも採用されていたムーブメントで、2020年頃から従来のCal.324 S Cに代わって載せ替えが行われました。
パワーリザーブ最大45時間、近年のスタンダードからすると決して長くはありませんが、デイリーユースとしては十二分の性能です。
ローターのカラトラバ十字や受けのパテックフィリップシールの認証が、いっそうの所有欲を満たしますね。
※パテックフィリップシール・・・創業170周年に当たる2009年に、パテックフィリップが制定した自社の品質規格。ムーブメントやケース,文字盤にといった時計の細部からアフターサービスに至るまでを対象に徹底した条件を課して認定機としており、業界の「最高水準」規格と言って過言ではありません。
新しいパテックフィリップ ノーチラス Ref.5811/1Gの国内定価は9,383,000円。オールホワイトゴールド製ということもあり、雲上ブランドらしい値付けになっております。
もっとも繰り返しになりますが、パテックフィリップの新作は買おうと思ってもなかなか買えないもの。もともとパテックフィリップが大量生産を行っていないということに加えて、近年では「転売対策」として、いっそう顧客の選別が厳格になっていると聞きます。
とは言え、宣材からも見事な出来栄えが伝わってくる新型ノーチラス。時計愛好家としては、早くパテックフィリップ渾身の最新作を実機で手に取ってみたいところです。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径41mm×厚さ約8.2mm |
素材: | ホワイトゴールド |
文字盤: | ブルー |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.26-330 SC |
パワーリザーブ: | 最大45時間 |
機能
防水: | 12気圧 |
定価: | 9,383,000円(税込) |
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「待望の次世代ノーチラス!どうせ買えないなどと思わず、新作の出来栄えを楽しみたいところ。とは言え、手に取れるのはいつの日か・・・」
「(メンテナンススタッフより)2ピースケースと普遍的な構造に戻しつつも、新しい巻き真システムで革新性も備えるのはさすがパテックフィリップ!」
「美しい外装に雲上ブランドらしい美しいムーブメント。やはりラグスポと言えばノーチラスが代表的ではないでしょうか。とは言え初代モデルを鑑みれば、ステンレススティール製こそノーチラスのアイデンティティとも思えます。SSモデルの登場・・・期待したいです!」
「ステンレススティール製モデルがラインナップされなかったのは残念だが、パテックフィリップの近年の傾向を見るとやむなしか。とは言え素材にかかわらず、ノーチラス Ref.5711系の後継機の登場によって、パテックフィリップ全体の相場に大きな影響を与えることが予測される」
なお、ノーチラス Ref.5811/1Gへの当店スタッフからのコメントは、その多くが「ようやく後継機が出てくれた」ことに対するファンとしての安堵感と、「今後のパテックフィリップの動向」への予測がほとんどを占めておりました。
第2位 ヴァシュロンコンスタンタン ヒストリーク 222
出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/home.html
2022年に発表された新作モデルのうち、当店GINZA RASINが「傑作」と選ぶ腕時計。第2位はヴァシュロンコンスタンタンのレガシーを現代に蘇らせた、ヒストリークコレクション Ref.222です!
近年、各ブランドがリリースする「復刻モデル(かつて製造していた歴史的モデルのデザインやコンセプトを踏襲しつつ、現代的な技術で以て再リリースする手法)」には名作が居並びますが、その中でも新作Ref.222は、傑出した一本と言えます。
そんなRef.222を手掛けるヴァシュロンコンスタンタンは、パテックフィリップ・オーデマピゲと並んで、世界三大時計ブランドの一角を成す名門です。さらに創業1755年と、数あるハイメゾンの中でも老舗中の老舗であり、「一度も時計製造の手を止めず、連綿と経営を続けてきた」といった意味では、現存する時計ブランド最古の存在となります。
ヴァシュロンコンスタンタンのコレクションは、現代では珍しく、ドレスウォッチやクラシカルウォッチが中心的です。パトリモニーやトラディショナル、マルタ等々、名作を挙げるとキリがありません。
しかしながら、雲上ブランドらしい高貴さとスポーティーなデザイン・性能をバランスよく備えたラグジュアリー・スポーツウォッチラインも展開しております。それが、オーヴァーシーズです。
オーヴァーシーズ自体は1996年初出。前述したパテックフィリップ ノーチラス,オーデマピゲ ロイヤルオークなどのラグジュアリー・スポーツウォッチと比べると、新しいコレクションと言えます。
しかしながら、その出自は1977年に遡ることができます。
この年、創業222周年を迎えたヴァシュロンコンスタンタンは、アニバーサリーイヤーを型番としたモデルを発表しました。限定生産された、Ref.222がこれに当たります。
※オリジナルのRef.222
同年代のラグジュアリー・スポーツウォッチのパイオニアらと同じく、ステンレススティールを素材に(実際は上の画像のように、ゴールドモデルもリリースされましたが)、ケース・ブレスレットが一体型となった意匠。当時の雲上ブランドとしては珍しく大きい37mmサイズ。一方で雲上ブランドの高級機らしい薄く上品な外装(なんと、厚さ7mm!ドレスウォッチと見紛う薄さです)、そしてこれまでのステンレススティール製モデルではありえないような極上の仕上げが施されることで、高級スポーツウォッチとして完成していたことが、画像からもおわかり頂けるのではないでしょうか。
なおオリジナルのRef.222は、発表当時では珍しい無反射コーティング サファイアクリスタルガラスの採用や、ダイバーズウォッチの回転ベゼルを彷彿とさせるデザインのねじ止めベゼル―まるで舷窓を彷彿とさせる―の搭載。さらには薄型でありながらも120m防水を堅持する様は、最先端スポーツウォッチであったことも特筆すべき点です。
※余談ですが、ロイヤルオークもノーチラスも「舷窓」が一つのデザインコンセプトとなっておりました。
天才デザインーとして名高いジェラルド・ジェンタ氏がロイヤルオーク、ノーチラスともにデザインしたことは有名ですが、前者が戦艦ロイヤルオーク号の、後者が潜水艦ノーチラス号を名前の由来としており、それぞれ戦艦・潜水艦の舷窓がデザインモチーフとなっております。
Ref.222のデザイナーはジェラルド・ジェンタ氏ではなく、ブレゲのマリーンやタグホイヤーのキリウムを手掛けたヨルグ・イゼック氏に依ります。
Ref.222は舷窓をモチーフにしたかどうかは定かではありませんが、1970年代に花開いたラグジュアリー・スポーツウォッチとデザインコードを共通していると言えます。
このRef.222が、2022年、現代に蘇りました。本項でご紹介している2022年新作ヒストリーク Ref.222です。
出典:https://www.vacheron-constantin.com/jp/ja/home.html
前述の通り、Ref.222は現行オーヴァーシーズの始祖と言われています。
しかしながらRef.222は1984年にRef.333へ、そして1989年にフィディアスへとアップデートを果たしており、オーヴァーシーズはRef.222のみならず、とりわけフィディアスの影響を強く受けていると言われています。
一方でこの度の復刻は、純然たるRef.222の復刻です。
そう、「純然たる」と称するのは、このヒストリーク Ref.222がオリジナルのデザインや薄型エレガンスを、忠実に復刻しているためです。
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薄型ケースと一体型になった薄いブレスレット。シンプルで高い視認性を誇りながらも、美しいシャンパンカラーが風格漂う文字盤。独特のベゼル、そして文字盤12時位置とラグ5時位置のマルタ十字・・・実機はまだ見ることができておりませんが、まさしく正統派ラグジュアリー・スポーツウォッチを、当時の鮮烈なまでの印象とともに、現代に蘇らせたという表現がふさわしいでしょう。
また、ツヤ消し仕上げをメインに随所にポリッシュ仕上げを加えたコンビネーション式とすることで、薄型ながらも立体的な造形を実現しています。とりわけエッジ部分に施されるポリッシュは、雲上ブランドならではの丁寧な仕事を感じさせますね。
なお、1970年代のラグジュアリー・スポーツウォッチを語るトピックに「ステンレススティール製」が挙げられますが、新作ではイエローゴールド製モデルとしてリリースされました。
現在、市場を熱狂させている―異常とも言える相場急騰を伴って―ステンレススティールではなく、イエローゴールドで復刻させたヴァシュロンコンスタンタン。その思惑はさておき、流行に流されない、ヴァシュロンコンスタンタンの大御所としての風格をも感じさせます(とは言え、復刻Ref.222の成功を受けて、今後のステンレススティール製モデルのバリエーション追加も気になるところです)。
もっとも、デザインはオリジナルを踏襲しているとは言え、異なる点もあります。
まず、ケース直径は変わらず37mmですが、厚さがわずかに増して7.95mmとなりました。
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バックルは現代スポーツウォッチらしく、堅牢なトリプル・ブレード・フォールディング・クラスプに改良される等、スペックアップも果たしております。なお、防水性は50mです。
さらにヒストリーク Ref.222の新しい点は、ムーブメントです。
オリジナルと異なりシースルーバックを採用しているため、如実にわかる変更点と言えるでしょう。
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オリジナルRef.222のムーブメントは、ジャガールクルト製Cal.920をベースとしたCal.1120(または1121)が搭載されてきました。
ちなみにオーデマピゲ ロイヤルオークおよびパテックフィリップ ノーチラスでもこの名機Cal.920を採用してきた歴史を持ちます。
ヴァシュロンコンスタンタンは今なお薄型自動巻きモデルにCal.1120を搭載させ続けていますが、新生Ref.222では自動巻きCal.2455/2を用いています。
このCal.2455/2はヴァシュロンコンスタンタンが手掛ける薄型自動巻きムーブメントとなり、28,800振動/時のハイビート設計であり、かつパワーリザーブ約40時間を備えます。オリジナルよりも厚みが増したとは言え、堅牢性やメンテナンス性が向上している点は現代スポーツウォッチらしい必要なアップデートと言えますね。
ヴァシュロンコンスタンタンの多くの名機で認定されているジュネーブ・シールをCal.2455/2もまた備えていることからも、いかに作りこまれた機械であるかがおわかり頂けるのではないでしょうか。
※ジュネーブシール・・・スイス ジュネーブ州で組み立てられたムーブメントであることを前提に、精度やパーツの仕上げ,素材等を多岐に渡って厳格に審査する時計の品質規格。パテックフィリップも、PPシール以前はジュネーブシールの準拠を基本としておりました。
ラグジュアリー・スポーツウォッチ熱は2023年も続くと見られ、当店のアンケート結果からも、多くのラグスポモデルの名前が挙がりました。
そんな中でもヒストリーク Ref.222は、「時計愛好家の所有欲を満たす」ラグスポとして、特別な存在感を放っております(ノーチラス同様に、惜しむらくはなかなか実機にお目にかかれないことですが・・・)。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径37mm×厚さ7.95mm |
素材: | イエローゴールド |
文字盤: | ゴールド |
ムーブメント
駆動方式: | 自動巻き |
ムーブメント: | Cal.2455/2 |
パワーリザーブ: | 約40時間 |
機能
防水: | 50m |
定価: | 7,436,000円 |
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「これは、ヴァシュロンコンスタンタンならではの作品!長らく『ラグスポ』というジャンルではパテックフィリップやオーデマピゲに知名度で後塵を拝していたが、Ref.222の登場はこの勢力図を大いに脅かしていくだろうと予想!とは言え、他の雲上ブランド同様に大量生産とは無縁のブランド。オリジナルと違って限定商品ではないとは言え、市場に出回るまでに時間を要し、一般的な知名度が上がるのはもう少し先なようにも思う」
「写真からでもわかる、この薄さ!作りこみの高さ!5気圧防水とのことなので、ラグジュアリー・スポーツウォッチというよりも純粋なヒストリカルコレクションであろうところが、ヴァシュロンコンスタンタンらしい」
「ステンレススティールモデルの登場に期待!」
「私は時計業界での経験年数が浅く、Ref.222という時計を知りませんでした。しかし、新作Ref.222を一目見た瞬間、その美しさと独創的なフォルムに魅了されました。ヴァシュロンコンスタンタンは好事家が愛するといったイメージがある、と聞いたことがありますが、時計を知っていても知らなくても惹かれる時計だと思います」
第1位 ロレックス GMTマスターII 126720VTNR
時計業界のプロ50人が選ぶ2022年傑作腕時計ランキング、新作部門で第1位となったのはロレックス GMTマスターII Ref.126720VTNRです!
時計業界に名門ブランドは数多く存在し、また例年傑出した新作が続々市場へと投下されていきます。
そんな中でもデザイン・性能・人気・話題性において、頭一つ飛びぬけている存在がロレックス。2022年も新作発表前夜は愛好家らの間で様々な予想が飛び交い、これに伴い市場価格も大いなる変動を見せておりました。
実際に発表された新型エアキングやイエローゴールド製ヨットマスター42も畢生の出来栄えでしたが、今年のトピックはGMTマスターIIの「レフティ」ではなかったでしょうか。
そう、ロレックスから、左リューズの新しいGMTマスターIIが登場したのです。
出典:https://www.rolex.com/ja
もっとも、GMTマスターIIが、近年のロレックスのトピックの一つでもありました。
GMTマスターIIは、1954年に誕生した同名シリーズの進化版です。パン・アメリカン航空(パンナム航空)の要請によって、ロレックスが製造したパイロットウォッチがその祖となります。発売当初は回転ベゼルを用いて第二時間帯を表示させるパイロットウォッチでしたが、1983年に時針の単独稼働機能が付加され、第三時間帯表示までを実現。コレクション名もGMTマスターIIと改められました。
このGMTマスターII、デイトナやサブマリーナーなどと比べると、長らく定番モデルではありませんでした。
しかしながら、近年ではGMTマスターII人気が大沸騰!
2018年にGMTマスターIIの最新世代として登場したRef.126710BLROによってこの人気は後押しされ、現在ではデイトナに次ぐ人気―あるいは価格高騰モデル―としても知られています。
時勢を的確に、そして巧みに読むのは、ロレックスの常か。
2022年に、ロレックスでは珍しい左リューズのGMTマスターII Ref.126720VTNRをカタログに投入し、いっそう同コレクションへの注目度を高めたと言えるでしょう。
「ロレックスでは珍しい」と称したのは、レフティモデルは他社からは結構リリースされているためです。
例えばロレックスの兄弟ブランドであるチューダーではペラゴス。またパネライやタグホイヤー モナコなども左リューズ搭載モデルが有名ですね。
しかしながらロレックスは、長い歴史の中でメインどころはベーシックな右リューズでした。
1959年に初期初期GMTマスターとして製造されたRef.6542の左リューズモデルが存在していたようですが、稀有な存在であることに変わりはありません(ちなみにこのRef.6542の左リューズは、2018年のフィリップスオークションで当時の日本円で3000万円近い落札価格を記録!)。
さらにRef.126720VTNRでは、既存のGMTマスターIIに搭載されてきたCal.3285を反転させていることがミソ。
出典:https://www.rolex.com/ja
Cal.3285は、2018年に登場したRef.126710BLROを始めとした現行GMTマスターII、そして現行エクスプローラーIIに搭載されている最新世代ムーブメントです。パワーリザーブ70時間・優れた耐衝撃性と耐磁性能、そして高い信頼性を誇ることに加えて、ロレックスの高精度クロノメーター(Superlative Chronometer)に準拠した名機となっております。
高精度クロノメーターは、2015年以来、ロレックスが採用している精度規格です。
時計の精度規格というと、スイス公認クロノメーター検査協会、通称COSC:The Controle Official Suisse des Chronometresが最も有名ですね。ロレックスも、2015年より前はクロノメーター規格を自社製品の基準としていました。
しかしながら、検査内容や平均日差(一日にどれくらい時間がズレるか)で、既存のクロノメーター規格を上回る厳格さを示すのがロレックスの高精度クロノメーターです。
とりわけ「日差」は特筆すべき点です。COSCの日差が-4~+6秒であることに対し、高精度クロノメーターは-2~+2秒と、ほぼ二倍の高精度!業界内でもトップレベルの「正確な機械式時計」と言えるでしょう。ちなみに高精度クロノメーターの証として、ロレックスはグリーンタグを付属させており、かつメーカー5年保証の対象としております。
※あくまで検査上での数値となりますが、ロレックス製品は携帯精度にも優れていると言えます。
新作GMTマスターII Ref.126720VTNRの驚くべき点は、このCal.3285を反転させてなお性能を損なわず、高精度クロノメーター認定となっていることです!一般的に、ムーブメントは向きを変えると精度も変わります(姿勢差)。しかしながらロレックス曰く「様々な調整」によって、これを実現している、と。
なお、反転させているため、デイト窓が9時位置に来ているのも鮮烈な印象を強めていますね。
出典:https://www.rolex.com/ja
さらに特筆すべきは、グリーン×ブラックのツートンカラーベゼル!これまた新しい配色となり、注目度を高める大きな要因となりました。
現行GMTマスターIIは、基本的にベゼルがツートンカラーとなっております。
GMTマスターおよびGMTマスターIIはその機能性ゆえか、歴史的に昼夜表示が視覚しやすいツートンカラーベゼルを用いてきました。
もっとも、長らく赤×青ベゼルや赤×黒ベゼルといったツートンの配色よりも、ベーシックな黒ベゼルが選ばれやすかったことが、これまでの人気の傾向です。しかしながら近年では、この傾向が逆転。シックな黒ベゼルも良いですが、人気といった面ではツートンカラーベゼルに軍配が上がっている現状です。
そして現行では、セラクロムベゼルによって、ツートンのカラフルな楽しさを湛えつつも、上品な色合いを醸し出していることも人気の秘訣でしょう(アルミベゼルのヴィンテージ感も素晴らしいところですが)。
赤×青のRef.126710BLROは「ペプシ」、青×黒のRef.126710BLNRは「バットマン」などの愛称で親しまれていますね。
この配色に、新たにグリーン×ブラックが投入され、GMTマスターIIはまた違った顔立ちを見せることとなりました。
ちなみに海外では既に「スプライト」の呼び名なども広まっているようです。
ロレックスのコーポレートカラーであるグリーンとブラックの色合いが、「グリーンサブ(サブマリーナー Ref.126610LV)」を彷彿とさせるオシャレさですね。
もっともGMT針のグリーンカラーは、現行にはなくなってしまった黒基調のGMTマスターII Ref.116610LNでも見られた意匠で、こちらが復刻しているのは嬉しいところです。
こちらの新作ロレックス GMTマスターII Ref.126720VTNR、国内定価はジュビリーブレスレットモデルで1,334,300円、オイスターブレスレットモデルで1,309,000円。
しかしながら「定価」で購入するのがきわめて難しいロレックス。
本稿で傑作腕時計をご紹介するにあたって何度か「実勢相場」について言及してきましたが、近年の狂騒的な相場の中心にいつもいるのはロレックスでした。世界的な需要が流通量を遥かに凌駕した結果、人気モデルに買いが集中し、正規店はおろか二次流通市場ですら品薄を加速。業者間でのロレックスモデル争奪戦は激化の一途をたどり、未曾有の価格高騰を記録し続けることとなっております。
この新型GMTマスターII Ref.126720VTNRも、初出当時は600万円超の値付けに!ステンレススティールモデルということを鑑みれば、デイトナもビックリの価格帯ですよね。
最近は少し落ち着いてきたとは言え、今なお400万円前後~といった相場感が続いております。
やはり、話題性も抜群なのがロレックスということを強く感じられる2022年の傑作腕時計ではないでしょうか。
GMTマスターII 126720VTNR
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3285
防水性:100m
定価:1,309,000円(オイスターブレス)/1,334,300円(ジュビリーブレス)
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「実際に着けてみて、着用感が素晴らしいのもさすがロレックス!右に着けても左に着けても違和感なし」
「見た目の華やかさとはうらはらに、ロレックスの質実剛健さが垣間見える2022年新作ウォッチ。特にムーブメントを反転しながら高精度クロノメーター認定というのは、やられた!こういった時計製造技術にこそ、ロレックスの魅力の真髄がある」
「近年のロレックスは相場や知名度ばかり取り沙汰されているが、製品を見てこそ凄みがわかる。特にグリーン×ブラックのツートンカラーのベゼルのデザイン性の高さは、他の追随を許さない。初めてRef.116710BLNRを見た時の衝撃を思い出した」
※Ref.116710BLNRは2013年~2019年まで製造されたGMTマスターIIで、初めてセラクロムベゼルでツートンカラーを採用したモデルです。これ以前は、技術的にセラクロムベゼルでツートンの配色ができないとされていました。Ref.116710BLNRのカラーリングは「バットマン」と親しみを込めて呼ばれ、GMTマスターII人気を一気に押し上げたと言われています。
「価格が高いと言われるが、ようやく落ち着いてきたか。とは言え流通量は依然として少なく、一方で近年のGMTマスターII人気を鑑みれば、今後の価格高騰にも期待できる一本」
2022年傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門~
各ブランドがこぞって力を入れるスポーツウォッチ。それゆえ甲乙つけがたい、と思う方もいらっしゃるでしょう。 今年はラグジュアリースポーツウォッチが業界内でも一つのトレンドのようになりましたが、そんな世相をも反映しつつ、2022年最強のスポーツウォッチとは?
第5位 チューダー(チュードル) ブラックベイ プロ Ref.79470
出典:https://www.tudorwatch.com/ja
2022年傑作腕時計ランキング、スポーツウォッチ部門の第5位としてご紹介するのはチューダー ブラックベイに新しく出たプロ 79470です!
2022年新作部門でも非常に多くの票数を集めており、新作部門でのランクインは果たさなかったものの、スポーツウォッチ部門でご紹介できるに至りました。
「ロレックスとの絆を感じさせつつも、チューダーお得意の独自路線とハイコストパフォーマンスを感じさせる」といったコメントが当店スタッフよりありましたが、新作ブラックベイ プロはまさに、そんな時計です。
1920年代に誕生したチューダーは、ロレックスのディフュージョンブランドとしての歴史を有します。当時、イギリス市場での普及を目的に、ロレックス創業者のハンス・ウィルスドルフ氏が立ち上げました。
そのためかつては、ロレックスの外装パーツやコンセプトを用いつつも、汎用ムーブメントを利用することで、ロレックスよりも安価に高性能ウォッチを購入できるブランドとして語られることもありました。
しかしながら近年ではマニュファクチュールムーブメント開発を筆頭に、デザイン面でもコンセプト面でも独自性を発揮。今ではロレックスとは異なる、大人気ブランドへと成長を遂げていっています。
そんなチューダーがフラグシップコレクションとして掲げるブラックベイ。
これは、かつて1954年にチューダーがリリースし、かつチューダーの黄金時代を築き上げた、同社初のダイバーズウォッチ「オイスタープリンス サブマリーナー Ref.7922」の系譜を引くコレクションです。2012年に復刻して以降、代表コレクションとしてチューダー人気を牽引しています。
ブラックベイには様々な派生モデルが存在しますが、2022年に新たに「ブラックベイ プロ」がラインナップされました。
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一見すると、ロレックスの初代エクスプローラーII Ref.1655を彷彿とさせる意匠が目に飛び込んできます。
この前年にあたる2021年、ロレックスはエクスプローラーI・エクスプローラーIIのモデルチェンジを敢行しました。
チューダーでは、ロレックスの発表との関連性を感じさせるモデルが、しばしばリリースされます。
ロレックスとは違った独自路線を歩むとは言え、Wネームを感じさせるモデルを打ち出すことをお家芸とするチューダー。
ロレックスはなかなか他社とコラボのようなことはせず、兄弟ブランドであるチューダーならではのブランディングと言えますね。
とは言え、ロレックスとの関係性抜きにしても、新しいブラックベイ プロはカッコイイ!
出典:https://www.tudorwatch.com/ja
ブラックベイの基幹モデルはダイビングベゼルが搭載されているのが常ですが、ブラックベイ プロでは24時間スケールが印字されたメタル製ベゼルとなっており、これが精悍でヴィンテージな雰囲気です。ちなみに回転式ではなく、固定式となっております。
チューダーのアイコニックなイカ針の意匠が時針のみならず24時間針にもあしらわれていること。ドーム型のサファイアクリスタルベゼルやブラックダイアル,そして良い風合いを演出する夜光が塗布されていることが、独創性とレトロ・テイストを両立しますね。
さらに当新作が心憎いのは、ケースサイズ39mmとなっていること!
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メンズのケースサイズと言うと、直径40mm超えがメインどころとなります。実際、ブラックベイの基幹モデルRef.79230系も、ケースサイズ41mmです。しかしながら近年、小径ケースがトレンドとなっております。ドレッシーな着けこなしを可能とする、アンダー40mmサイズの流行が来ているのです。
チューダーでも、2018年にリリースした「ブラックベイ58」で直系39mmサイズの大成功を受け、新作にも踏襲されることとなりました。
ちなみに同年発表されたレンジャーや新型ペラゴスも、39mmケースであることは特筆すべき点です。
搭載するムーブメントはマニュファクチュールCal.MT5652です。2018年に登場したブラックベイ GMTにも搭載されていた自動巻きムーブメントです。
チューダーにとってはブライトリングと共同開発したクロノグラフCal.MT5813に次ぐ複雑機構の自社製ムーブメントとなりますが、COSC認定の高精度、シリコン製ヒゲゼンマイを用いたことによる耐磁性、そして約70時間のパワーリザーブと、実用性は十二分です。
このように完成されたデザイン、マニュファクチュールムーブメント搭載、ついでに言うと200m防水を堅持しつつも、メタルブレスレット製モデルの定価は486,200円に。レザー×ラバーライニングによるハイブリッドストラップまたはイエローラインの入ったファブリックストラップのモデルは定価447,700円に抑えられているのが、さすが私たちのチューダー!
しかしながら、ロレックスの血筋と言うべきか。
まだ出回り始めということもあり、高すぎる人気に流通が追い付かず、メタルブレスモデルで70万円台~、ストラップモデルでも60万円台~の実勢相場となっております。定価超えの、いわゆるプレミア価格ですね。
ブラックベイ58やGMTを筆頭に、最近のチューダーもまた実勢相場を上昇させる傾向にあり、なかなか正規店で欲しいモデルを買えないといったお声も耳にしますね。
じょじょに市場に流通を始めていますが、近年の円安によってインバウンドの購入も増えておりますので、欲しい方は早めに手にしておきたいモデルの一つです。
ブラックベイプロ 79470
ケースサイズ:直径39mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.MT5652
防水性:200m
定価:486,200円(メタルブレス)/447,700円(ストラップ)
プロからのコメントはこちら
「チューダーはお値段以上の品質・デザインが本当に魅力だが、新作ブラックベイ プロもまさにこの魅力を体現している。高精度なマニュファクチュールムーブメントに堅牢でしっかりと装着感も考慮された外装、そしてとにかくかっこいいデザイン揃って50万円切る価格帯は、企業努力と言う他ない。ただし、発売から8か月以上経つ今なおプレミアム価格なのはさすがロレックスの兄弟ブランドか。特にブレスモデルは品薄続きで、業者間の仕入れ競争が本当に熾烈になってきた。出回ってきたという話も聞かないので、今後も高値が続くのではと思われる」
「39mmケースというサイズ感が憎い!自社のファンのニーズを強く理解し、製品に反映する姿勢が素晴らしい」
「一目見て、新たなる定番が現れたと思った。ロレックス エクスプローラーIIとの関係性を感じつつも、チューダーならではの魅力に溢れるスポーツウォッチ。ツールとしても、デイリーユースとしても◎」
第4位 ウブロ ビッグバン ウニコ
傑作腕時計ランキング・スポーツウォッチ部門、第4位としてご紹介するのはウブロ ビッグバン ウニコです!
ウブロもまた、当店GINZA RASINでは売れ筋モデル。
とりわけビッグバン ウニコは高価格帯であるにもかかわらず非常に回転の速いモデルとなっており、絶対に在庫を切らせません。
例年行っている「傑作腕時計ランキング」でご紹介するのは初となりますが、毎年まいとし必ずと言って良いほどビッグバン ウニコの名前は挙がっており、「定番中の定番」「不朽の名作」といった表現もコメントに見受けられました。
そんなビッグバン ウニコがどういったモデルかと言うと、ウブロのフラグシップコレクション・ビッグバンに、同社の自社開発ムーブメントを搭載させた逸品です。この自社開発ムーブメントが、ウニコと名付けられています。
ビッグバンは2005年の誕生以来、時計業界で快進撃を続けてきました。
舷窓をデザインコードとしたベゼルのビスやケース両サイドの「耳」。あるいはケースからストラップにかけてのシームレスなフォルムはラグジュアリー・スポーツウォッチに範を取っていると思わせながらも、一方でパーツを細かく分割したうえで重ねる多層構造ケースを採用しており、高級機として重要な立体感を確立するのみならず、絶大なインパクトをも実現しております。
一目見てウブロ ビッグバンは独創的な高級機であることが伺えますが、これは、多層構造ケースに拠るところが大きいでしょう。
ちなみにビッグバンは誕生と同年に、時計業界のアカデミー賞と名高いジュネーブ・ウォッチ・グランプリのベストデザイン賞を獲得しています。
ビッグバンはその歴史の中で、多彩なバリエーション展開を行っていることも、魅力的ですね。
例えば初代から不動の人気を誇るビッグバン スティール。2006年に登場してビッグバン人気を大いに盛り上げることとなったオールブラック。さらにはスクエア型のスピリット・オブ・ビッグバンや、ラグスポを彷彿とさせるビッグバン インテグラル等、名作を挙げるとキリがありません。
そんな中でウブロが2010年に、自社開発ムーブメント「ウニコ」を発表します。
「ウニコ」はスペイン語で唯一やユニークを意味する用語で、ウブロの自社開発クロノグラフ・ムーブメントとなります。ウブロ曰く、研究開発部門で4年もの歳月をかけて開発に至ったのだとか。
300超ものパーツによって構成されるウニコですが、さらにウブロはビッグバンの文字盤・裏蓋をスケルトナイズすることで、ムーブメントをもデザインコードとして完成されることとなりました。
そのため、ウニコは「魅せるためのムーブメント」となっております。
デザインと一体感を出すため、ムーブメントのパーツをマットに仕上げていることはもちろん、文字盤側にクロノグラフ機構を集中させることで、精密・精緻なメカの意匠と実際の動作をユーザーが楽しめるような造りとしているのです。
クロノグラフは簡単に言うとストップウォッチ機能で、日常生活で実用される方はそう多くはないかもしれません。
しかしながらクロノグラフが時計の機構として絶大な人気を誇るのは、そのレーシーなデザインや精密・精緻な構造に惹かれているからというのが、理由として大きいのではないでしょうか。
ウニコでは、クロノグラフのクラッチに水平式を採用(制御はコラムホイール式)しているため、耐久性に優れ、かつ見た目がクラシカルで「見ていて楽しいクロノグラフ」を実現しています。水平クラッチも文字盤側に搭載されているので、クロノグラフを操作する際に制御の様を観察できるのです(自動巻き時計で主流となっている垂直クラッチは、制御の様子が見えづらいと言われています)。
ウブロは市場のニーズを汲み取ることに非常に長けており、「顧客の欲しいデザイン」を理解したうえでこのような構造を採っているのでしょう。
なお、現行ビッグバン ウニコには、「ウニコ2」が搭載されています。
2018年に小型となる42mmサイズのビッグバン ウニコに搭載されるようになったムーブメントで、従来のウニコよりもパーツ数が増えているにもかかわらず1.3mmほど薄型化されたことで話題になりました。
現行は44mm・42mmサイズがメインにラインナップされていますが、やや大きい45mmサイズも豊富に出回っております。
当店で特に人気が高いのは下記の三本です。ウブロは素材やカラー等でバリエーションが豊富なため、人気が分散しやすい傾向にありますが、この三本は2022年、本当によく売れました。
ビッグバン ウニコ チタニウム セラミック 441.NM.1170.RX
【材質】チタン×セラミック
【ケースサイズ】直径42mm×厚さ14.5mm×重さ99g
【文字盤】スケルトン
【ムーブメント】自動巻きムーブメントCal.HUB1280、パワーリザーブ約72時間
【防水性】10気圧
【参考定価】2,160,000円
ビッグバン ウニコ チタニウム 441.NX.1170
【材質】チタン
【ケースサイズ】直径42mm×厚さ14.5mm×重さ104g
【文字盤】スケルトン
【ムーブメント】自動巻きムーブメントCal.HUB1280、パワーリザーブ約702時間
【防水性】10気圧
【参考定価】2,079,000円
ビッグバン ウニコ チタニウム セラミック 411.NM.1170.RX
【材質】チタン
【ケースサイズ】直径45mm×厚さ15mm×重さ133g
【文字盤】スケルトン
【ムーブメント】自動巻きムーブメントCal.HUB1242、パワーリザーブ約70時間
【防水性】10気圧
【参考定価】2,684,000円
2020年に登場した、インテグレーテッドもよく売れています。ウブロはラバー(またはグミアリゲーター)ストラップのイメージが強かったものですが、ブレスレットもカッコイイですよね。
ビッグバン インテグレーテッド 451.EX.5123.EX
【材質】セラミック
【ケースサイズ】直径42mm×厚さ14.5mm×重さ138g
【文字盤】スケルトン
【ムーブメント】自動巻きムーブメントCal.HUB1280、パワーリザーブ約702時間
【防水性】10気圧
【参考定価】3,091,000円
ウブロは自分好みの一本を選択する楽しさもありますね。
ムーブメントを進化させたり、例年意欲的にバリエーションを展開するところも、「傑作」と呼ぶにふさわしい一端ではないでしょうか。
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「例年、このアンケート(傑作腕時計ランキング)で答えているのがウブロのビッグバン ウニコ。ビッグバンらしいマルチレイヤ―構造に文字盤をスケルトナイズし、ムーブメントをもデザインとして昇華するという手法は、卓越している。しかも、このシリーズが2010年に既に出ていたというのも驚かされる。ウブロは、時代の最先端をいく高級時計ブランドで間違いなし!」
「高級時計を選ぶ時、どのような付加価値に対してお金を払いたいかが一つのポイントになると考えていますが、ウブロを選ぶ方はデザインやコンセプト、ウブロというブランドに惹かれているように思います。私自身がそうだから。とは言え、ムーブメントに丁寧な仕上げを施したり、新開発機構を巧みに投入したり、全く新しいデザインやフォルムのコレクション展開を行ったりと、マーケティングのみならず時計製造技術にも一家言あるのが、ウブロというブランドではないでしょうか」
「ロレックスやラグスポの相場が落ち着きつつある今、次にくるのはウブロ ビッグバン。実際、ウブロの業者間の取引価格が上昇を続けている。特にビッグバン ウニコのような人気モデルは年間を通して売れるので、今後の相場動向に注目したい」
第3位ショパール アルパイン イーグル ラージ 298600
出典:https://www.facebook.com/ChopardJP/photos/
第3位としてご紹介するのは、新時代のラグスポ!ショパールのアルパイン イーグルです!
これまでショパールは、ロレックスやオメガと比べるとそうたくさん取り扱いのあるブランドではありませんでした。時計業界では名門中の名門ですが、どこか「知る人ぞ知る」といった立ち位置であったことは事実です。
しかしながらアルパイン イーグルは、現在では昔ながらの有名人気ブランドを凌ぐ勢いで売れに売れています。本稿の傑作腕時計ランキング、2021年版に引き続き2022年も、第3位としてご紹介できる運びとなりました。
何度か言及しているラグスポことラグジュアリー・スポーツウォッチですが、ひとくちにラグスポと言っても、各社各様の魅力があります。
そんな中において、後発ながら美しいデザインと名門ゆえの作りこみの高さで、競合がしのぎを削る当ジャンルにおいて、特別な存在感を放つのがアルパイン イーグルと言えます。
アルパイン イーグルは、ショパールが2019年に打ち出しました。
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そもそもショパールがどのようなブランドかと言うと、1860年に創業した老舗の中の老舗です。
ルイ=ユリス・ショパール氏がスイス ジュラ地方でスタートさせた時計工房がその原点ですが、後継者が途絶えたことから、1963年にドイツのショイフレ家に経営権が委譲されます。ショイフレ家はジュエリーと時計製造を手掛けてきたやはり名門であったことから、ダイヤモンドをデザインコードとして用いたラグジュアリーな時計製造によって名を馳せていくこととなります。ちなみに1976年から続く「ハッピーダイヤモンド」コレクションは、カルティエやシャネルなどと並び、レディース高級時計の定番ですね。
しかしながら、ただの宝飾時計屋ではないのがショパールのショパールたる所以。
1990年代という早い段階から自社製ムーブメント開発に着手し、1996年には初となるL.U.C.をローンチ。ちなみにこの名前は創業者ルイ=ユリス・ショパール氏に由来します。
このL.U.Cはきわめて優れた自動巻きムーブメントで、ジュネーブシールを獲得。ショパールの高度な時計製造技術を十二分に示唆する名機となっております。これを皮切りに本格マニュファクチュールとしての道を歩みながら、現在ではメンズ・レディースともに質の高い製品を世に輩出しています。
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そんなショパールが手掛けるラグスポ、これがまた本当に美しいの一言です。
なお、アルパイン イーグルは1980年代に同社が手掛けたショパール初のラグジュアリースポーツウォッチ「サンモリッツ」から着想が得られています。
薄型ケースとブレスレットはシームレスになっており、いずれも丁寧かつ高度な仕上げがこれでもかと施されています。ちなみにアルパイン イーグルのステンレススティールは、従来品よりも高度の高い「ルーセント スチールA223」を使用しているのだとか。硬度や摩耗耐性に優れることに加えて強い輝きを放ち、かつ従来のステンレススティールよりも金属アレルギーを誘発しづらいことも特筆すべき点です。
この特別なスティールの、陰影の付いたフォルムやポリッシュ・サテン仕上げのコンビネーションが、立体感と高級感に拍車をかけます。
ちなみに文字盤にも高度な装飾が施されます。
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これは、アルプス(アルパイン)を優雅に、そして力強く飛行する鷲(イーグル)の、瞳の虹彩がモチーフになっていると。
サイズ展開はラージ41mm、スモール36mm、そして2020年に新たにラインナップに加わったクロノグラフXL 44mmとなっておりますが、今回プロから圧倒的に票を集めたのがこちらのラージサイズでした。
それぞれのサイズに合ったムーブメントが搭載されていることも、名門ショパールならではですね。ちなみにラージサイズに搭載される「Cal.01.01-C」は、クロノメーター認定の高精度に加えて60時間のロングパワーリザーブを誇っており、実用面でも死角のない一本となっております。
現行モデルにはベーシックな3針+デイト窓の41mmサイズと36mmサイズの他、XLサイズのクロノグラフ(44mm)にゴールドモデル。あるいはレディース向けの33mmモデル等、幅広くラインナップされており、その販路を拡大し続けていることがわかります。
この勢いは2023年も間違いなく続くと見られており、パテックフィリップ ノーチラスやオーデマピゲロイヤルオークなどといった定番モデルの価格が上がりすぎてしまった現在、新時代のラグスポとしての地位を切り開いていくことでしょう。
ショパール アルパイン イーグル ラージ 298600
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径41mm×厚さ9.7mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.01.01-C
パワーリザーブ:約60時間
防水性:100m
定価:1,848,000円
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「2021年~2022年の売上データを見ていて、一番気になった一本。なぜならどの個体も出品後すぐに売れてしまっている。商品回転率を調べると、タグホイヤーやオメガなどの人気ブランドの人気モデルと同等程度。100万円超えも珍しくない価格帯のラグスポで、この回転率は驚異的とも言える。再入荷のお問合せも依然として多く、当店でも積極的に仕入れをしたいが、人気モデルゆえに品薄で難しいところも。とは言え在庫を切らしたくないので、高値買取をせざるをえず、結果として市場価格も上昇傾向にある」
「とにかく仕上げが美しい。写真以上に実機を見て頂きたい逸品」
「ラグジュアリースポーツウォッチの最前線。ノーチラスやロイヤルオークがかなり高騰してしまった今、中古なら150万円台~で購入できるという点も魅力」
「かっこよさ・ショパールが手掛けた最上級の高級感もさることながら、これで200万円を切る価格は良心的」
第2位 パテックフィリップ アクアノート 5167/1A-001
2022年傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門の第2位に君臨するのは、パテックフィリップ アクアノートです!例年上位を獲得してきたノーチラスに代わって、ランクインすることとなりました。
ちなみに前項のショパール アルパイン イーグルの項でも言及しておりますが、近年、パテックフィリップ ノーチラスの品不足と価格急騰は凄まじいものがあります。ステンレススティール製モデルであるにもかかわらず1000万、2000万円の値付けがなされており、またレディースや年式の古いモデルであっても、700万円超が当たり前といった相場感になってまいりました。
そんな中においても、比較的まだアクアノートは出回りが安定しており、相場も高くなったとは言えノーチラスほどではありません。こういった経緯から、近年ではアクアノートに人気が集中する傾向が出てきました(もちろん時勢のみならず、アクアノート自体の完成度の高さが大きく影響しているのですが)。
では、アクアノートとはどのような時計なのか。
アクアノートは1997年に誕生しました。ノーチラスよりもスポーツテイストが強く、また、スペックもアクティブ寄りであることが特徴です。
もっともパテックフィリップの人気シリーズと言えば、ノーチラスやカラトラバがまず思いつきますよね?
実際、カラトラバは初出1932年、ノーチラスは1976年ですので、同社の長い歴史の中ではアクアノートは新興な印象が強いかもしれません。
しかしながらアクアノートの完成度の高さはノーチラスと決して遜色のないものです。むしろ、クラシカルなカラトラバとスポーティーなノーチラスの良いとこどりをした外観から、きわめて高い人気を誇ってきました。前項でご紹介した「ラグスポ」の上品さと、さらなるスポーティーさを兼ね備えます。
多角形ながら丸みを帯びたケース。暗闇でも視認性を確保する夜光アラビアインデックスと優美な時分秒針。そしてアクアノートをアクアノートたらしめる格子模様のブラック文字盤は、スポーツウォッチなのに見ていると引き込まれるような気品や美しさを感じさせます。
さらにアクアノートは120m防水なのも特筆すべき点です(ノーチラス一部モデルもですが)。ラグスポの中にはあまり堅牢性が高くないものも少なくありません。こういった堅牢性は、日常での使用をサポートしてくれますね。
なお、アクアノートはこれまで幾度かのアップデートを重ねてきましたが、現行567/1Aは2007年より製造されています。ちなみにアクアノートとしては第三世代です。
Ref.5167/1Aの大きな特徴は、40mmのケースサイズを有していること!これまで小径で上品なイメージであったアクアノートですが、このアップサイジングによってスポーティーな側面を強めることとなりました。ちなみに初代は34mmであったためミディアム、第二世代は38mmであったためラージ、当モデルはエクストララージなどと称されることがあります。
前述の通り、ノーチラスが品薄続きの現在、当店のパテックフィリップの中で最も売れているモデルとなります。
一方で人気ゆえに、ノーチラスに匹敵するような価格高騰を描き続けています。。
下記は2018年以降のアクアノート エクストララージ Ref.5167/1Aの中古価格の推移グラフです。
とりわけ今年の上昇率はすさまじく、2018年起点で考えればその上昇率は270%!
「さすがにアクアノートはもうこれ以上価格高騰しない」と言われていますが、本当にそうでしょうか?急速な円安進行でメーカー定価も上昇を続ける今、ノーチラスやロレックスのデイトナ同様に、「あの時買っておけばよかった」時計の第一候補なのではないでしょうか?
本当に欲しい方は、早めに買っておくのが吉。
こういった緊迫の展開も踏まえて、スポーツウォッチ部門第2位として君臨するに至りました。
パテックフィリップ アクアノート エクストララージ 5167/1A
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径40.8mm×厚さ8.1mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.324 S C
パワーリザーブ:約45時間
防水性:12気圧
定価:3,586,000円(ブレスレットモデル)
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「高騰が続く複雑機構。それだけでも珍しいが、アクアノートは独創性高いフォルムであるにもかかわらず万人受けしている。薄型設計であることも関係しているだろう。ノーチラスはしばしば『タキシードにもウェットスーツにも似合う』と表現されるが、アクアノートもまた同様の印象を持つ」
「少しカジュアルさも残しつつ上品」
「今後さらに価格が上がる可能性があり、資産性が見込める」
「(商品管理スタッフより)11/28現在で平均相場700万円超。驚くべき相場感ですが、2014年に250万円で販売したお客様から修理を預かりました。7年ご使用で初めての修理のお預かりで、メーカーで15万円程度のオーバーホールで対応いただけること。修理保証2年つくことから考えて長く愛用するにはメンテナンスもコスパが良い様に感じます」
第1位 ロレックス デイトナ 116500LN
2021年傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門~、第1位は、やはりロレックスのデイトナです!
ちなみに2018年版~2020年版の当企画でも、傑作腕時計ランキング~スポーツウォッチ部門~で、だいたいランクインしておりました。むしろ、誕生以来ずっとナンバーワン。今回の調査対象としたプロの中には、「今後10年以上、腕時計界のトップとして君臨する」と考察する人も・・・!
2022年のランキングでは第4位としてご紹介いたしましたが、価格が少し落ち着いてきたことも相まってか、2022年に第1位として返り咲いた次第です。
デイトナは、もはや説明不要かもしれませんが、1960年代にデイトナインターナショナルスピードウェイというサーキットの完成を契機に誕生しました。ロレックス唯一のクロノグラフであり、現代のスポーツウォッチ人気の立役者でもあります。
スポーツロレックスには珍しく様々な素材・デザインバリエーションを豊富に有しますが、そのいずれもが人気で、屈指の高値。 とりわけここ数年では、過去なかったほどの爆上げを記録。 常に品薄で、どのロレックスをも凌いで正規店で購入することはほとんど不可能なのでは、と囁かれるほど。一部ファンの間では、ロレックス正規店でデイトナの在庫を探すことを、デイトナマラソンと呼んでいるようです。
定番の現行モデルはステンレススティール製の116500LNです。
116500LNは、2016年に誕生しました。
一世代前の116520やもう一つ前の16520も人気ですが、116500LNの格別さ。それはベゼルにセラクロム(セラミック)を採用し、かなり精悍な印象となったこと!デイトナというと資産価値の高さがまず取沙汰されますが、この仕様変更によって、さらにかっこいいスポーツウォッチへと昇華されたことが大人気の秘訣ではないでしょうか。
そんな116500LNは本当に高値が続いており、「もう下がるだろう」と言われ続けてはや数年…
2022年の5月以降、少し落ち着いてきたとは言われるものの、右肩上がりの上昇傾向は止む気配がありません。
現在中古であっても、白文字盤の方の実勢相場は480万円前後~、黒文字盤で430万円前後~…とてもステンレススティール製モデルとは思えない相場ですよね。ちなみに昨年、同様のアンケートを行った際の実勢相場よりも、どちらも数十万円万円ほどの値上がりを記録しています。年末に集計しているため、どうしてもロレックスの全体的な相場が上がるというのはあります。しかしながらことデイトナ―そしてスポーツロレックス―に関して言えば、ほぼ一年を通してコンスタントに値上がりを続けたと言って差し支えないでしょう。
なお、前述の通り、日本は未曾有の円安を記録しております。
これに伴い海外製品は国内市場で値上がり傾向にあり、また近年の社会情勢による原価高騰がメーカーの値上げに繋がっていることも相まって、実勢相場にも大きな影響を与えています。
一方で現在の円安は外国人にとっては非常に魅力的。入国制限が緩和され、かつてのようにインバウンド需要が高まりつつある今、人気モデルの品薄が加速するであろうことは想像に難くありません。
こういった外的要因とデイトナそのものの人気が相まって、いっこうに相場は下落せず。にもかかわらず止まない需要…買い控えは見られず、むしろ高騰が高騰に拍車をかけるといった勢いです。
もっとも、デイトナ 116500LN自体、非常に完成された時計です。
確かに高価格帯とはなりますが、実物を手に取ってみると、「それでも欲しい」という方が後を絶たない理由が垣間見えるでしょう。 2022年のみならず、しばらくは「最強傑作」の座を明け渡しそうにもありません。
ロレックス デイトナ 116500LN
素材:ステンレススティール
ケースサイズ:直径40mm×厚さ12.5mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.4130
パワーリザーブ:約72時間
防水性:100m
定価:1,720,400円
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「一番よく売れる。例年、ダントツで売上ナンバーワン。全ての高級時計の中で一番売れている。旧型の116520は2000年~2016年まで17年間販売されたが価値を落とさず、生産終了後もその相場を上げ続けるという圧倒的な資産価値を記録した。116500LNも発表から6年経つが先代の流れを踏襲しており、やはり今後ずっとナンバーワンとなるのは想像に難くない。とは言え生産終了も気になるところか」
「性能・デザイン・ステータス・資産価値全てトップ」
「2022年(だけに限らないが)、多くの実用時計の中で最も高騰したモデル。工芸品ではなく、工業製品でこれだけの値打ちを持つという現象はやはりデイトナだからと言えるのでは?」
「買って良し、売って良し。いつでもオススメ。落ち着いてきたとは言え、相場を落とす気配がない」
「かっこよさもさることながら、不具合の少なさにロレックスの高い時計製造技術を感じる」
なお、先代の116520およびさらにその前の16520を推す声も相当数上がりました。
「116520は116500LNの高騰と比べ、落ち着いている。年代次第ではまだ350万以下で手に入るものも結構ある」
「デイトナ16520 P番。現行ではない為これ以上はデザイン的に被らず、人気もあり資産価値としても安定している」
■ロレックス デイトナ 116500LNを買うなら知っておきたいこと
■デイトナ 116520のマイナーチェンジを制する者がロレックス相場を制す
2022年傑作腕時計ランキング~コンプリケーションウォッチ部門~
長く時計業界にいると、様々な複雑機構―コンプリケーション―を目にします。 1300を超えるパーツで形成されたもの、天文周期を組み込んだもの、一本で家一軒買えるような価格のもの・・・
数々の見事なコンプリケーションを手にとり、時には操作してきたプロたちが選んだ2022年の傑作ランキングはこちらです!
第5位 パテックフィリップ カラトラバ トラベルタイム
出典:https://www.patek.com/en/home
数あるコンプリケーションを目にしてきたプロたち。 そんな中にあっても、パテックフィリップのそれというのは時計業界人にとってかなり特別なようです。コンプリケーションウォッチ部門では、圧倒的にパテックフィリップに票が入ることとなりました。
もっとも、ひとくちにパテックフィリップのコンプリケーションと言っても、実はかなり種類が多いのが現状です。オーデマピゲ同様、パテックフィリップもまたコンプリケーションに一家言持っているため。しかも、パテックフィリップに至ってはこれを「ノーチラス」「アクアノート」などと同様、一大コレクションとして展開してしまっているのです。
そのため今回の調査でもパテックフィリップの様々な機構―ワールドタイム,パーペチュアルカレンダー,トラベルタイムなど―が挙がりましたが、第5位としてご紹介するのは、カラトラバ パイロット トラベルタイムです!
カラトラバは、1932年に誕生したパテックフィリップのドレスウォッチです。「世界の丸形時計の規範」「名門ドレスウォッチの本質」などとも称されてきた名作で、シンプルながら美しく、それでいて洗練された外観で、時代を超えて愛され続けてきました。
ノーチラスやアクアノートの影に隠れがちですが、長い歴史の中で様々なバリエーションを有するカラトラバは、まさしくパテックフィリップを代表するコレクションとなっております。
もっとも、このカラトラバはドレスウォッチラインゆえ、ドレッシーでクラシカルなデザインが基本でした。
しかしながら2015年に新作発表されたカラトラバ パイロット トラベルタイムは、非常にミリタリー!
出典:https://www.patek.com/en/home
過去、トラベルタイムが搭載されたカラトラバは何度かリリースされておりました。しかしながらここまでパイロットウォッチに寄ったデザインは珍しく、発売からしばらくは話題が絶えず、プレミア価格が続いたものでした。
もっともゴールド製ですので純然たるミリタリーウォッチというわけではありませんが、アラビア数字や夜光による優れた視認性、サテン仕上げが基調となったヴィンテージテイスト溢れる外装は、男心をくすぐりますね。
なお、トラベルタイムはGMT機能のことです。パテックフィリップはアニュアルカレンダーを1996年に初ローンチしましたが、実はトラベルタイムも同級生でした。
出典:https://www.patek.com/en/home
GMTはGMT針や回転ベゼルを用いて、ホームタイムとは別のローカルタイムを表示させる機能です。この操作は、一つのリューズを使って行うことがほとんどです。しかしながらパテックフィリップのトラベルタイムではケース9時サイドに別途プッシャーを設置。このプッシャーによって針を単独稼働させることで、より視覚的にも操作的にもわかりやすいコンプリケーションとして完成されていることが特徴です。
なお、8時位置のプッシャーによって時針を進め、10時位置のプッシャーで時針を戻します。スケルトン時針は9時側プッシャーではそのまま残るため、ホームタイムを指示していることになります(時刻合わせの際は3時位置のリューズを操作)。
さらに特筆すべきは、新たにロック機能が加えられたこと!このロック機能によって、時針の不用意な誤作動を防ぎます。
6時位置にはポインターデイト(デイトは6時側のラグ部分のプッシュボタンで操作)が、文字盤中央部にはLOCALとHOMEのそれぞれの昼夜表示が(白がお昼で青が夜)小窓で視認できるようになっております。
このように多機能ミリタリーテイストとはなりますが、カラトラバとしての丸形フォルムや上品さを崩していないのはさすがパテックフィリップですね。
出典:https://www.patek.com/en/home
2015年当時は42mmサイズがリリースされておりましたが、のちに扱いやすい37.5mmサイズが追加。
ホワイトゴールド・ローズゴールドモデルが出回っており、いずれもパテックフィリップらしい丁寧な造形と仕上げをご堪能頂けます。
「出回っている」とは言え、作りこまれたコンプリケーションウォッチというだけあり、そうそう生産数が大量というわけにはいきません。
そのため二次流通市場でもなお高値が続いており、近年のパテックフィリップ人気と合わせて、さらなる高騰も予測されている今、早く買っておきたい一本ではないでしょうか。
カラトラバ パイロット トラベルタイム 5524R-001
素材:ローズゴールド
ケースサイズ:直径42mm×厚さ10.78mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.26-330 S C FUS(現行)
パワーリザーブ:最大45時間
防水性:6気圧
定価:7,469,000円
カラトラバ パイロット トラベルタイム 7234G-001
素材:ホワイトゴールド
ケースサイズ:直径37.5mm×厚さ10.78mm
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.26-330 S C FUS(現行)
パワーリザーブ:最大45時間
防水性:6気圧
定価:6,677,000円
プロからのコメントはこちら
「近年のパテックフィリップのトピックにヴィンテージ・テイストがあるように思う。視認性を優先した大きいアラビアインデックスや力強い針、そして精悍なケースは無骨さすら感じつつも、雲上ブランドらしい仕上げやフォルムは忘れていない。ラグジュアリー・ヴィンテージとも言うべきか、こういった雰囲気を作れるのは高度な時計製造技術や職人魂を有するパテックフィリップならではのように思う」
「2022年だけの話ではないが、パテックフィリップの売上データを見ていると、カラトラバの人気モデルが大きい部分を占めている。もちろん出回りの問題もあるが(近年、ノーチラスなどの人気コレクションは並行市場ですら品薄となっているため)、それだけカラトラバは安定した人気を誇っており、さらにそのトラベルタイムともあれば、2022年、最も傑出していたコンプリケーションウォッチと言えるだろう」
「誕生から7年経過するも、なかなか買えないパテックフィリップの代表格。もともと生産数も限られているが、近年の円安や市場拡大も相まって、今後さらに品薄が加速するであろうモデル」
第4位 ロレックス スカイドゥエラー 326934
出典:https://www.rolex.com/ja
ロレックスのコンプリケーションモデルはそう多くありません。
現代におけるコンプリケーションは利便性と言うよりかは、デザインとしての美しさや、至高の時計製造技術を腕元で楽しめるといった、付加価値の側面が大きくなります。また、内部構造が複雑ゆえに衝撃に弱かったり、高額になったりする特性もあります。
こういった事柄から、ロレックスはこれまであまりコンプリケーションに手は出してこなかった印象でした。しかしながら近年その様相が一変。高級時計市場が成熟し、コレクターのみならず一般ユーザーからのコンプリケーションの要請が高まったこと。加えてロレックスの優れた生産ラインと高度の時計製造技術によって、実用的なコンプリケーション製造を可能にしてきたことが大きな要因でしょう。
そんなロレックスのコンプリケーションラインは、ヨットマスターIIのレガッタクロノグラフやチェリーニのムーンフェイズなどが挙げられますが、「2022年傑作コンプリケーション」として業界人から非常に多くの票を集めたのが、スカイドゥエラーでした!ちなみに、2019年・2020年・2021年版でもランクインを果たしています。
スカイドゥエラーは2012年にロレックスのスポーツラインに加わった、比較的新しいシリーズです。当時はスポーツウォッチなのにフルーテッドベゼルを使用していることや、ロレックスには非常に珍しいコンプリケーションを搭載していることで大きく騒がれることとなりました。
スカイドゥエラーのコンプリケーション機能は、「サロス」と名付けられたアニュアルカレンダーです。アニュアルカレンダーというのはパーペチュアルカレンダーの派生機構のようなもので、一年に一度(アニュアル:年次)、2月の末日のみカレンダー調整を行えば、他の月は30日であろうと31日であろうと手動での調整は不要、という機構です。パテックフィリップやランゲ&ゾーネなどが有名ですね。
出典:https://www.rolex.com/ja
さらにGMT機構をも搭載しています。ただ、GMTマスターのようにGMT針とベゼルで別地域の時間帯を表示するものではありません。文字盤中央に設けられた24時間ディスクがメインの時針と連動して回転する仕様になっており、王冠マークのすぐ下にある逆三角マーカーで第二時間帯を読み取れるようになりました。
↑この画像だと、メインの時間は10時8分(または22時)、第二時間帯は10時、ということになります。
アワーマーカーのさらに外に設けられた小窓は「月」表示です。該当月の窓が赤く彩られます。上の画像だと、12月を指します。
このように、見た目にも機構としても非常にユニークに仕上がった当コンプリケーション。すごいのが、実用面もしっかりしている、ということ!さすが実用主義者・ロレックス。
スカイドゥエラーのために開発されたCal.9001は、パワーリザーブ約72時間。さらに耐磁性や耐衝撃性も存分に高められ、コンプリケーションにありがちな「壊れやすい」を大きく改善するに至りました。
発表当初はハイエンドラインの位置づけで金無垢モデルのみのラインナップでしたが、2017年よりベゼルにのみホワイトゴールドを使用した扱いやすいRef.326934が登場。さらに2021年にはジュビリーブレスレット搭載モデルがリリースされるなど、他のスポーツウォッチに引けを取らない勢いを増しており、コンプリケーションウォッチとしてはもちろん、ロレックスウォッチとしても2022年ますますの存在感を増していくことでしょう。
スカイドゥエラー 326934
ケースサイズ:直径42mm×厚さ約14mm
素材:ステンレススティール×ベゼルホワイトゴールド
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.9001/パワーリザーブ約72時間
防水性:100m
定価:1,808,400円(3列オイスターブレス)/1,832,600円(ジュビリーブレス)
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「アニュアルカレンダーを搭載しているにもかかわらず、ステンレス製。しかも定価は200万円以下って、最近定価更新しているとは言え、安すぎると思う。ただ、最近他のスポーツロレックスにつられて相場が上がり気味。もともと人気の高かった青文字盤が中古相場350万円台~と、定価から大きなプレミア価格をつけている。そこまでではなかった黒・白も、欲しかったら250万円出すのが当たり前になってしまった・・・
最近ロレックス相場がまた上昇しており、スカイドゥエラーはそれに比例してどんどん上がっている。さらに気軽に文字盤交換ができなくなったことから、高騰が止まらないモデルでもある。本当に欲しい方は今買っておくべき」
※ロレックスは基本的にカタログに掲載している同一リファレンスの範囲内であれば別のカラー・タイプへの文字盤交換が可能でした。しかしながら一部人気高騰しているカラー・モデルに関してはこれを取りやめたことに加えて、さらに保証期間(5年)中の文字盤交換も不可となりました
「アニュアルカレンダー搭載のコンプリケーションモデルなのに防水が効いている」
「金無垢スカイドゥエラーもイイですよ!デイトナやサブマリーナの金無垢とはまた違う、大人の男性って感じ」
■人気急上昇!ロレックス「スカイドゥエラー」の魅力と相場動向【2022】
■ロレックス スカイドゥエラーの使い方を画像付でわかりやすく解説
第3位 パテックフィリップ ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001
第3位として票を集めたのはノーチラスのプチコンプリケーション。通称プチコンの5712シリーズです。
こちらも例年、ランクインを果たす常連。名作はいつの時代も変わらぬ魅力を湛えますね。
本稿で何度かノーチラスはご紹介しましたが、シンプルな3針のみならず、様々な機能が搭載された派生モデルが存在します。プチコンは、そんな派生のうちの一つ。さらに言うと、2006年に誕生して以来、3針と並んで長らくノーチラス人気を牽引してきた、重要な役割を持つモデルでもあります。
文字盤を見ると、その多機能さがよくおわかりいただけるでしょう。
搭載されるムーブメントはCal.240PS IRM.C.LU。ポインターデイト、ムーンフェイズ、パワーリザーブと様々な機能を付加しております。
この多機能具合、にもかかわらず文字盤の端正さも驚嘆に値するのですが、さらに目を見張るのが薄さ!ブルガリ同様、コンプリケーションを搭載しているとは思えないくらい薄いのです。
コンプリケーションというのはムーブメントにモジュール的に搭載していくことが一般的なのですが、腕時計という小さな箱の中で組み込みが必要となるため、高い設計力と技術力を要します。つまり、薄いどころか、普通の時計にすることすら難しいのです。
なぜパテックフィリップが世界最高峰の時計ブランドと呼ばれるか。その理由がよくわかる名シリーズだと思います。
ただし現在価格が爆上がりしており、定価5,170,000円のところ当店での2022年平均販売価格は1300万円前後・・・(もっとも品薄から流通量が少なすぎて、そう入荷数も多くはありませんでしたが)。ちなみに2018年末に当企画を開催した時は、まだ650万円程度でした。
とは言えイニシャルコストは高くとも、パテックフィリップのコンプリケーションは値崩れしづらいというメリットもあるため、手に入れておいて損のない銘品と言えます。
なお、今回は定番のステンレススティール製5712/1Aにフォーカスしてご紹介しましたが、5712シリーズはゴールド製も大変人気が高く、その評価はステンレス製と二分するところ。
ノーチラス プチコン ロースゴールド製5712R / ホワイトゴールド製5712G
ちなみにタレントのローランド様はこちらの5712Rの方を愛用しているとか。
当店のバイヤーからのコメントで「よくわかってる。ローランドさんは通だと思う」といったものが寄せられました。確かにこの時計は、万人から受けるというよりも、通好み、玄人好みの逸品と言えるでしょう。
なお、ノーチラスの基幹モデルがホワイトゴールドとなった今、扱いやすいステンレススティールモデルが残っているのもRef.5712/1Aの嬉しいところですね。
ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001
ケースサイズ:直径43mm×厚さ約8.52mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.240PS IRM C LU/パワーリザーブ約48時間
防水性:6気圧
定価:5,170,000円
プロからのコメントはこちら
「コンプリケーションと言えばまずこれが思い浮かぶほど、頭に刷り込まれている時計。コンプリケーションの最高峰」
「いつも業者向けオークションで取り合いになる。最近ではなかなか見かけなくなったが、あれば必ず買う。この傾向から個人買取に力を入れる業者がますます増えており、まさに売り手市場を2022年、最も謳歌したモデルだと思う」
「最近の高級時計市場の流れもあってか、5712もとても高くなった。でも、高くても欲しいという強烈な需要が、さらにこの時計の価格高騰を押し上げるというスパイラルを描いている。2000万円近いのに、購入層が絶えないのは本当にすごい。
ちなみに5712Rや5712Gは革ベルトのため、金無垢なのにステンレススティール製の5712/1Aと比べて価格が抑えられる。さらに言うとパテックフィリップは値崩れもしづらいので、買っても後悔とか損とか、そういった感覚は薄いと思う」
「コンプリケーションウォッチにもかかわらず文字盤の端正さも素晴らしいが、薄さもさすがパテックフィリップ!コンプリケーションウォッチは薄いどころか腕時計サイズに収めるのも難しいと言われる。パテックフィリップの真髄を垣間見れる逸品だと思う」
第2位 オメガ スピードマスター クロノチャイム 522.50.45.52.03.001
出典:https://www.omegawatches.jp/
2022年の傑作腕時計ランキング、コンプリケーションウォッチ部門で第2位となったのは、オメガの2022年新作スピードマスター クロノチャイムです!
2022年10月、この年の集大成を飾るかのように発表された、オメガの超新作。
セドナゴールド製のラグジュアリーなスピードマスターに、ミニッツリピーター×スプリットセコンドクロノグラフ(ラトラパンテ)を併載させた、ハイコンプリケーションウォッチがオメガからリリースされたのです。まさに「クロノチャイム」というわけです。
なお、当新作に搭載された新開発の手巻きムーブメントCal.1932は、オメガ自身が「オメガが制作した中で最も複雑」と称しており、かつこの新作ではムーブメント・外装含めて、17もの特許を必要としたということも、特筆すべき点です。
今回のアンケート調査でも「あのオメガのハイコンプリケーションウォッチ、気にならないはずがない」などと驚きの声が多数挙がっており、発表から一か月経つ今なお、その熱が冷めやらぬことを感じさせます。
では、新作スピードマスター クロノチャイムはいったいどのような時計なのか。
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大きな特徴は、ミニッツリピーターとスプリットセコンドクロノグラフがムーブメントと一体化している、ということです。
ミニッツリピーターもスプリットセコンドクロノグラフも製造難易度の高い複雑機構のうちの一つですが、これを一体化することでコンパクトなサイズに収めたのは、さすが実用性に一家言持つオメガと言えますね。ケースは直径45mm×厚さ17.3mmとなっております。
すなわち、このスピードマスター クロノチャイムで搭載された手巻きCal.1932は、既存の基幹ムーブメントをベースに必要な機構を載せた、というわけではなく、全くの新開発であることを示唆しています。同じスウォッチグループのブランパンによる協力と6年に渡る開発期間のもとに、ローンチに至ったということです。
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なお、ミニッツリピーターは「任意の時刻を、チャイミミングによって告げる」機能です。具体的には、ゴング(鐘)とハンマー大小一つずつを搭載させ、回数や音階によって「何時何分何秒」を告げる仕組みとなります。
言うは易し行うは難し、とは言ったもので、ミニッツリピーターを腕時計サイズに収め、かつ音を十分なボリュームで鳴り響かせるのは至難の業です。とりわけ時計の気密性や耐久性と「音」の両立は難しく、狭いスペースで音をクリアに響かせるために、緻密な設計とパーツの加工精度が求められてきました。
「コンプリケーションウォッチの製造難易度は昔と比べると容易になった」と前述しましたが、ことミニッツリピーターに関しては、なかなかどうして簡単に製造できるものでもなく、価格帯も青天井となります。
※ミニッツリピーターの他に「ソヌリ」といった用語を目にしたことがあるかもしれませんが、スイッチのオンオフで時刻を報せるリピーターに対し、ソヌリは自動で毎正時とクォーター(15分おき)に自動的に音を鳴らして時刻を告げます。ちなみにフランス語で時鐘を意味しています。
ソヌリはミニッツリピーターと比べると珍しい機構になりますが、いずれも超絶コンプリケーションであることに間違いありません。
教会などの鐘に代表されるように、時刻を何らかの音で告げる習慣は古くから存在しました。しかしながら小型化に成功したのは、もっと後年。
懐中時計のアラーム機構が実用化されたのは18世紀に入ってから。そして1892年に、初めて腕時計への搭載を成し遂げたのがルイ・ブラン&フィルズ社、すなわち現在のオメガと言われています。
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この発明から130年の時を経て、高級ミニッツリピーターとして打ち出されたクロノチャイム。ちなみに当クロノチャイムは分は低音、10秒の位は二度打ち、1秒の位は高音によって計測時刻を知らせてくれます。
さらにスプリットセコンドクロノグラフと呼ばれる、二本のクロノグラフ針(もう一方はラトラパンテ針)を有することでラップタイム計測をも可能にした複雑機構を併載したうえで一体化しているのだから、素晴らしいと言う他ありません。
加えて、本当に「凄さ」が全部乗せといったようなハイコンプリケーションウォッチなのが、クロノグラフ計測を1/10秒単位へと精密化しているのです。これは、脱進機をハイビート化していることを意味しています。
そもそもオメガの脱進機は特殊です。
コーアクシャル機構と呼ばれるこの脱進機は、「従来品よりもパーツ摩耗が少なく、オーバーホールのスパンを延長」した画期的な機構。発明は1978年のイギリスの時計師ジョージ・ダニエルズ博士に依るものですが、1999年にオメガが製品化・量産化に成功して以来、オメガの実用性への情熱を特徴づける技術の一つとなっております。
コーアクシャル脱進機は、毎時25,200振動(1秒間に7振動)と、いわゆるロービートでした。しかしながら、この度の新開発ムーブメントCal.1932では、銭ぐやグランドセイコーが採用しているようなハイビート毎時36,000振動(1秒間に10振動/5ヘルツ)とし、クロノグラフ計測を1/10秒で可能としたのです。しかも、一般的な脱進機よりもパーツが多く特殊なコーアクシャルかつスプリットセコンドクロノグラフで。
※ビート数(振動数)とは、テンプの振動を指しており、ハイビート設計なほど高精度が出しやすい一方でパーツが摩耗したりエネルギー消費が激しい傾向にあります。
ちなみに、オメガがオリンピックの公式計時を初めて務めた1932年のロサンゼルス大会での、クロノグラフの計測精度と同等なのだとか。
2022年はオメガがミニッツリピーター搭載腕時計を開発してから130周年であり、かつオリンピックの公式計時に携わってから90周年。二つの華やかな歴史の節目だからこその、特別な逸品と言えますね。
もちろん実用時計の雄・オメガらしく、マスタークロノメーター認定機であることも特筆すべき点です。
こういった複雑機構を備えながらも、コンパクトなサイズはもちろん、スピードマスターとしてのフォルムやデザインを崩していないところも、オメガの手腕の巧みさを感じさせます。
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例えばクロノグラフには、通常「スタート・ストップ」「リセット」を制御する二つのプッシャーが搭載されます。しかしながらオメガではモノプッシャーとすることで、フォルムの美しさを維持しているのです。
8時位置のリピーター制御ボタンに音符がエングレービングされているのと合わせて、何とも所有欲を満たしますね。
なお、デザインベースとしてはスピードマスター第二世代であるCK2998が踏襲されているようです。
※CK2998は1959年頃から1963年頃まで製造されたモデルです。まだNASAの公式装備品ではなかったものの、1962年10月3日にウォルター・シラー氏が宇宙飛行に携行していることから、「宇宙とスピードマスターの関係性が始まったモデル」としても知られています。
セドナゴールド製の外装で特別感を出しつつも、往年のスピードマスターらしいアルファ針やドットオーバー90(タキメーターの90のメモリ位置のドットが、90の斜め上に配された、往年のスピードマスターに見られる仕様のこと)がマニアに嬉しいディテールです。
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このように、オメガの伝統と最先端をあますことなく落とし込んだスピードマスター クロノチャイム。
一度手に取って、その美しい外装と音色を楽しみたいところですが、恐らくなかなか一般市場に出回らないであろうことは予測できます。
特に数量限定は謳われていませんが、ハイコンプリケーションウォッチということで大量生産は不可能でしょう。また近年のオメガの注目新作の多くが品薄となり、ウェイティングリストも長蛇の列などといった話も耳にします。
とは言え、オメガファンとしては、気になって仕方がない2022年コンプリケーションウォッチですね!
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径45mm×厚さ約17.3mm |
素材: | セドナゴールド |
文字盤: | アヴェンチュリン・エナメル |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.1932 |
パワーリザーブ: | 約60時間 |
機能
防水: | 3気圧 |
定価: | わかり次第掲載 |
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「ミニッツリピーターとラトラパンテを併載したというのも、もちろん凄まじい。しかしながらこのコンプリケーションウォッチの真髄は『コーアクシャル脱進機のハイビート化』『マスタークロノメーター認定』にあるように思う。新開発ムーブメントならではの新しい試みを備えつつ、従来通りの実用性や機能美も忘れないところに、オメガの一流としての顔を垣間見ることができる」
「美しい外装とムーブメントにふさわしい、美しい音色。これぞ超高級腕時計の世界」
「伝統と革新を備えたハイコンプリケーションウォッチ。ただ技術力があるのみならず、オメガには得難い歴史があるからこその逸品」
第1位 グランドセイコー コンスタントフォース トゥールビヨン Kodo
出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja
2022年の傑作腕時計ランキング、コンプリケーションウォッチ部門のグランプリは、なんと、あのグランドセイコーから!
コンスタントフォース・トゥールビヨンを同軸上に一体化して組み合わせるという、世界初のメカニズムを搭載した逸品「Kodo」です。
グランドセイコーというと、ビジネスシーンにもふさわしい上品なデザイン、高級機として申し分のない美しい外装、そして高い精度と性能といったイメージが強いのではないでしょうか。
一方で、パテックフィリップやオーデマピゲ、あるいはジャガールクルトなどといったスイス名門ブランドと比べると、コンプリケーションウォッチ製造に関してはあまり話を聞きませんでした。時計業界でもトップクラスのマニュファクチュール体制とパーツ加工精度を誇るグランドセイコーですから、コンプリケーションウォッチの製造が不可能だったわけではないと思います。しかしながら、グランドセイコーの実用的な高級時計といったブランディングでは、コンプリケーションウォッチの扱いが難しかったのかもしれません。
とは言え2017年にセイコーから独立して高級路線を突き進んで以降、国内外で「高級時計ブランドとしてのマーケティング」で成功を収めているグランドセイコー。かつての「スーツに合わせる高級時計といったイメージ」から、幅広い世代に憧れられるブランドとしての地位を確立しつつあります。
こういった背景も手伝ってか、グランドセイコーは2020年にコンスタントフォース機構とトゥールビヨン機構を同軸上にした「T0(ティーゼロ)」を発表しました。
「T0(ティーゼロ)」はコンセプトムーブメントに留まっていましたが、2022年、ついに腕時計に搭載し「Kodo」の名前が冠されたハイコンプリケーションウォッチとして昇華されたというわけです。
これに伴い、ムーブメントはブラッシュアップされ、キャリバー9ST1と改められました。
見た目もコンセプトも驚きの連続のKodoですが、その目的は「精度」と、実にグランドセイコーらしい一本でもあります。
というのも、コンスタントフォースもトゥールビヨンも、機械式時計の安定した高精度に寄与するために誕生した経緯があるためです。
コンスタントフォースというのは、この名の通り「一定の力」。すなわちゼンマイのトルクを一定にする機構です。
機械式時計は、巻き上げたゼンマイがほどける力を利用して駆動します。おもちゃのチョロQなんかをイメージするとわかるように、ゼンマイはほどけていくにつれて弱まっていき、均一な力を各歯車に伝達しづらくなりますね。この力をトルク(回転力)と呼びます。
そのため、一般的に機械式時計はゼンマイがフルで巻かれた状態で高い精度を保ち、トルクが弱まるとこれに比例して精度も落ちていく傾向にあります。
そこでゼンマイの駆動時間にかかわらず、一定のトルクを保つ定力装置の開発が、古くから行われてきました。
コンスタントフォースも定力装置の一種となり、仕組みとしては、ゼンマイから伝わるトルクを別途小さい板バネ等に蓄え、このバネ等が元に戻ろうとするエネルギーでテンプを動かすといったものです。ちなみにテンプとは、機械式時計の脳とも心臓とも捉えられる部位で、ここの往復運動によって正しい時刻が刻まれています。すなわち、機械式時計の精度を司る肝です。
主ゼンマイがほどけ続けている限りは、そのパワーリザーブにかかわらずバネ等に力が送り続けられ、結果としてバネ等を介してトルクは一定となり、テンプに供給されるエネルギーも理論上は一定になります。
なお、似た機構でルモントワールがありますが、これよりもコンスタントフォースはテンプに近い(あるいは内臓された)設計となっております。
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さらにトゥールビヨンとは、テンプを構成する脱進機をキャリッジに収めて、キャリッジごと一定周期で回転させることでテンプにかかる姿勢差を解消し、精度誤差を抑えるための機構です。テンプは振り子の往復運動を行って精度を維持しつつも、キャリッジによって回転が加えられている、といった動きを見せることがトゥールビヨンの大きな特徴となります。
トゥールビヨンはかの有名なアブラアン=ルイ・ブレゲ氏が開発したと言われる機構で、1801年6月26日に特許が取得されました。
ブレゲが存命した時代の主流は懐中時計です。
懐中時計は縦方向に重力がかかることで、テンプの外乱(姿勢差)となり、精度に影響を及ぼしていると考えられました。ムーブメントの潤滑油が下方向に溜まりがちといった問題も抱えていたようです。
この姿勢差解消のために生み出されたトゥールビヨン。腕時計が主流の現在では実用的な意味合いは薄れていますが、キャリッジが回転する様はさながら渦のよう。ちなみにトゥールビヨンはフランス語で渦を意味しています。
機械式時計ならではの美しい動きを湛えるトゥールビヨンは趣味性の高い嗜好品として、決して廃れることはありませんでした。むしろ、高い人気を博するに至っているのです。
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とは言え、コンスタントフォースもトゥールビヨンもパーツが多く、高さが出てしまうものです。
しかしながらグランドセイコーのKodoでは、この二つを一体型とすることで小径薄型化に成功し、ケース直径43.8mm×厚さ12.9mmと、非常にコンパクトに収めることとなりました。とりわけ厚み12.9mmというのは凄いですよね。一般的な実用時計とも遜色のない常識的なサイズ感です。
さらにKodoの醍醐味は、まさに「鼓動」。
と言うのも、コンスタントフォースとトゥールビヨンの相乗効果で、得も言われぬ時を刻む音が、響き渡る設計となっているのです。
キャリバー9ST1(およびT0)のベースはグランドセイコーのハイビートムーブメント9S65です。9S65は同社の基幹ムーブメントで、テンプは28,800振動/時(8振動/秒)のビート設計。そのためキャリッジ内に収められたテンプもまた、毎秒8振動を繰り返しており、トゥールビヨンキャリッジが滑らかに回転しています。さらに同軸上のコンスタントフォースキャリッジが追いかけるかのように1秒に1ステップずつ回転することで、テンプのハイビートな振動音とコンスタントフォースの1秒ステップがともに奏でられていると言うのです。
こういったコンスタントフォースやハイビート機はパワーリザーブが短くなる傾向にあります。ロービートやシンプルな機構と比べてエネルギーを使うためです。しかしながらKodoは約72時間、コンスタントフォース作動時であっても約50時間の持続性を獲得しました(文字盤8時位置にパワーリザーブインジケーターがセッティングされています)。
もちろん、通常のグランドセイコーのように、厳格な独自規格が設定。Kodoのキャリバー9ST1には、新たに設定されたグランドセイコー規格検定が適用されています。
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ムーブメントがデザインとしても一役買っているのも、さすが美しさに定評あるグランドセイコーです。
文字盤と裏蓋側をスケルトナイズし、光を透過させているのにお気づきでしょうか。グランドセイコーが大切にしてきたデザイン文法「セイコースタイル」に倣った、燦然と輝く時計を体現しておりますね。
もちろん、プラチナとブリリアントハードチタンを組み合わせてスタイリングされたケース意匠は、丁寧な作りこみによって優美さと輝きを湛えていることが宣材写真からも見て取れます。
ストラップには「姫路 黒桟革(くろざんがわ)」を採用。「なめし」と「漆塗り」を融合させた、日本古来の伝統技法で製造された、きわめて上質なストラップです。さらにクロコダイルストラップも付属しているのだとか。
このKodoは2022年、時計業界のアカデミー賞と名高いGPHG(ジュネーブ・ウォッチグランプリ;Grand Prix d’Horlogerie de Geneve)でクロノメトリー賞を獲得いたしました。
すなわち、世界も認めるグランドセイコーのハイコンプリケーションウォッチ。
同社のこれまでの質実剛健な歴史と、これからの華やかな未来をともに感じさせる至極の2022年傑作腕時計と言えるのではないでしょうか。
スペック
外装
ケースサイズ: | 直径43.8mm×厚さ12.9mm |
素材: | プラチナ |
文字盤: | スケルトン |
ムーブメント
駆動方式: | 手巻き |
ムーブメント: | Cal.9ST1 |
パワーリザーブ: | 約72時間 |
機能
防水: | 10気圧 |
定価: | 44,000,000円 |
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「グランドセイコーが、満を持してハイコンプリケーションウォッチを制作!日本の時計産業は、技術や機能美によって世界と戦ってきたが、これからは一歩進んで美しさや趣味性によってまた一歩抜きんでてほしい」
「初のハイコンプリケーションウォッチが世界にも認められたというのは、日本人として、そしてグランドセイコーファンとして大変誇らしい」
「近年のグランドセイコーの勢いは、まさに破竹。もともと素晴らしい技術力を有していたブランドだが、ブランディングが上手くいっていなかった面もある。こういったハイコンプリケーションウォッチによってメゾンとしての付加価値を高めて、いっそう憧れられるようなブランドに成長してほしい」
2022年傑作腕時計ランキング~オールドウォッチ部門~
2022年のみならず、最近の時計業界の一つのトピックが、中古市場の大いなる成長です。機械式を筆頭に、腕時計はメンテナンスと適切な取り扱いを欠かさなければ、末永く愛用できるプロダクトです。そのため古くから中古市場が確立していましたが、近年では高級時計市場の成長とともに、中古時計へのニーズも飛躍的に高まっています。
そこで本年より、傑作腕時計ランキングに「オールドウォッチ部門」を加えることと致しました!アンティーク、そしてポストヴィンテージと呼ばれる年代(~1990年頃まで)で、当店で取り扱いのあったものを中心に、時計業界のプロが傑作を選出いたしました!
第5位 IWC マーク12
オールドウォッチ部門の傑作腕時計ランキング、まず第5位にご紹介するのは、IWCの不朽の名作マーク12(マークXII)です!
パイロットウォッチは数あれど、デザイン・歴史・機能・知名度いずれをとってもトップクラスの名機と言えるのがマーク12ですね。
マーク12の製造期間は1994年~1999年です。そのため「ヴィンテージ」「ポストヴィンテージ」としては、少し新しいかもしれません。
しかしながら36mmという小径ケース、昔ながらのミリタリーウォッチらしい機能美、そして現代マークシリーズの始まりというアイデンティティなどと、現行ではなかなか味わえない魅力が満載。
2022年は最新世代となるマーク20がIWCから発売されたこともあり、マークシリーズ全体で人気が上昇したこと。このマークシリーズの中でも特別な存在感を放つことから、オールドウォッチ部門で非常に多数のスタッフからの指示を集めるに至ったのがマーク12となっております。
ではこのマーク12は、いったいどのような時計なのでしょうか。
そもそもマークシリーズは、1948年にIWC史に登場したマーク11から端を発しております。
出典:https://www.iwc.com/jp/ja/company/history.html
マーク11はデザイン・機能ともに現行マークシリーズやIWCの現代パイロットウォッチに大きな影響を与えた存在で、英国空軍の飛行監視要員向けの腕時計として制式採用されていたことでも知られています。ちなみに「マーク」とは、英国空軍が自軍の機器に用いてきたナンバリングなのだとか。
マーク11は、初めて軟鉄製インナーケースを採用したモデルとしても知られています。
パイロットはコックピット内で、高い磁場にさらされることが少なくありません。マーク11は軟鉄製インナーケースを用いることで、耐磁性能に配慮されることとなりました。
またパイロットが操縦中でも時刻視認しやすいよう、12時位置のインデックスには三角マークを、そして見やすいアラビア数字を配した文字盤。そしてアンティーク市場で名機と名高い手巻きムーブメントCal.89を搭載していることでも知られています。
もっとも、マーク11は英国空軍御用達のイメージが強く、市販もごく限られた量でした。
このマーク11を復刻し、1994年に一般市場にリリースされたのがマーク12です。
マーク11を踏襲し、優れた耐磁性能と耐圧性能を有する外装はサテン仕上げが基調となってとても精悍な印象です。12時位置の三角マークやアラビア数字、センターセコンドによって見やすい文字盤デザインも健在です。
一方で玄人好みの、ジャガールクルト製Cal.889をベースとして改良した自動巻きCal.884/2を搭載させており、直径36mmのケースはジャガールクルトらしい上品な薄型に仕上げられました。
マーク15(マーク13と14はなし)ではETAのムーブメントが載せられるので、ジャガールクルトムーブメントの味わいと所有欲はマーク12ならでは。
ケースもマーク15以降アップサイジングしていくので、ヴィンテージらしいパイロットウォッチを楽しめるのは、マーク12の醍醐味となっております。
もっともマーク12、この味わいやもともとの魅力、そして近年の中古市場の拡大に伴う需要増加が相まって、価格高騰著しいオールドウォッチの一つと言えます。
もともと稀少性の高いマーク12でしたが、ほんの5年ほど前は30~40万円台で入手できる個体も少なくありませんでした。
しかしながらここ一年ほどは、70万円台が当たり前。状態の良い個体はさらに高値となっており、今後生産終了から年月を経ていっそうグッドコンディションの個体が少なくなることを鑑みれば、今後も高騰の勢いは増すことが予測されます。
マーク12 マークXII IW324101(3241-01)
ケースサイズ:直径36mm×厚さ約9mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.884/2/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
定相場:70万円前後~(状態による)
マーク12 マークXII IW324102(3241-002)
ケースサイズ:直径36mm×厚さ約9mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.884/2/パワーリザーブ約42時間
防水性:6気圧
相場:70万円前後~(状態による)
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「ポストヴィンテージと呼ばれる時計の中には、なかなか普段使いしづらいものもある。しかしながらマーク12は設計自体が堅牢ゆえか、生産終了から年数が経っているにもかかわらず状態の良好な個体が多い。もちろん防水や衝撃などといった故障の要因になりうる扱いには現行以上に注意が必要だが、適切な取り扱いによって、末永くつかっていける一本ではないか」
「パイロットウォッチらしいデザインは今や定番。シンプルでかっこいいし、仕上げはサテン基調なためスポーツモデルなのにスーツにもカジュアルにもOK。よって、失敗しない時計」
「デザイン・スペック・中古相場…確かにかつてと比べると価格高騰はしているものの、コストパフォーマンスは良い。価格が上がっているということは、逆に言えば今後の資産価値に大いに期待できるだろう」
■IWC パイロットウォッチの名作「マーク18」を買うなら知っておかなくてはならないこと
■IWC パイロットウォッチにマーク20(マークXX)が登場!【2022年新作】
第4位 ロレックス サブマリーナ 5513
第4位としてご紹介するのは、ロレックス サブマリーナ 5513です!
アンティークウォッチ,オールドウォッチと言えば、まずロレックスが挙がることも多いですね。当店でも、多くのスタッフからロレックスのオールドウォッチに票が入りました。
そんな大人気ロレックスヴィンテージの中でも、特に支持率が高いのがRef.5513です。もちろんヴィンテージロレックスは名作で溢れていますが、Ref.5513はその流通の豊富さやダイバーズウォッチ由来の堅牢さ(もちろん現行品と比べると防水性や堅牢性は低くなりますが、それでも普段使いできるアンティークというのはロレックスが早い時代から高性能ウォッチを作り上げてきたからに他なりません)、そしてサブマリーナというコレクションの絶大な人気によって、こういったランキングを計上すると、だいたい上位ウォッチとして君臨します。
そう、ロレックスの大いなる強みと魅力は、早い時代から実用性を確立し、他社に先鞭をつけてきた歴史が一つとして挙げられます。
ロレックスは20世紀初頭に創業し、早い段階から実用時計の製造に一家言持っていたブランドです。
とりわけ1950年代以降はエクスプローラーやGMTマスターなど、現行人気シリーズに続く礎が着々と築かれました。2021年新作部門の項でもご紹介したように、当時は宇宙や深海、山岳地帯といった人類未踏の地の開拓に、世間が湧いていた時代です。そのためプロフェッショナルが過酷な環境下で用いるに値する時計開発も、盛んに行われたのでしょう。
そんな時代の中で、サブマリーナは1953年に誕生しました。100m防水かつ潜水時間を計測するための回転ベゼルを搭載しており、現行とデザインは大きく変わりません。こういった不変にして普遍のかっこよさも、ロレックスのアンティーク市場が盛況している大きな理由の一つとも言えますね。
そしてRef.5513は、そんなサブマリーナの第四世代に分類されるモデルで、1962年~1990年頃までと非常に長きに渡って製造されていたことが大きな特徴です(ちなみに1959年頃に既に第四世代Ref.5512が誕生していましたが、5513はそのデュフュージョンモデルのような立ち位置でした)。
数あるロレックスの中でもとてもロングセラーで、そのため流通量は豊富。アンティークロレックスと言えばまずサブマリーナ Ref.5513をイメージする方も少なくないでしょう。
第四世代からはリューズガードが搭載され、防水性も200mにアップ。トリプロック仕様や両方向回転ベゼルも備えております。もちろん現在はこの防水性を保っている個体はそう多くはありませんが、堅牢な造りのために経年に強い個体が多いことは事実です。
ちなみに映画『007』で、ジェームズ・ボンドを演じたロジャー・ムーア氏が5513を着用したことは有名ですね。
ロングセラーゆえに仕様変更が多い一方で、価格の開きが多く、ご自身の予算や好みに合わせて選べるのも5513の魅力。例えばインデックスのメタル枠(フチ)の有無で金額が大きく変わるのですが、価格を抑えたいのであればフチあり個体を選ぶのも手。
こちらもメンテナンスノウハウが非常によく出回っているので、さらに相場が上昇しておく前に手に入れておくのが吉、といったコメントが非常に多いオールドウォッチでした。
ロレックス サブマリーナ 5513
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.1520/1530
相場:180万円台~(仕様や状態による)
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「製造年が長く色々な仕様があり、さらに相場の開きが大きい。選択肢が豊富なのはさすがロレックス。予算や好みに合わせて選べるし、出回りも多いため初めてのオールドウォッチとしてはかなりお勧め。ただし、近年の相場上昇は痛しかゆしか」
「現行モデルにはないモダンな雰囲気かつ使いやすいデザイン。バースデーウォッチとして探されている方も多く、長年時計業界に身を置いているが、不変の根強い人気をいつも感じている」
「堅牢な造りゆえか、実は美品も少なくない。アンティークのスペックや扱いに不安を覚えている方は、高年式の5513を狙うのも手ですよ!」
「アンティークの定番。まだまだこれから相場も上がりそうだし、オールドウォッチでありながらも現在最も目が離せない一本です」
第3位 チューダー クロノタイム
2022年の傑作腕時計ランキング、第3位は今をときめくチューダーの、往年のクロノタイムです!
ちなみに、クロノタイムと並んで古くからチューダー人気を支えてきたサブマリーナも今回の多くの票を集めましたが、クロノタイムが4位以下と差をつけて圧倒的な得票率であったことをお伝え致します。
このクロノタイムは、1976年にチューダーから発表された、自動巻きクロノグラフコレクションです。
何度か言及しているように、チューダーはロレックスのディフュージョンブランドとしての歴史を有します。
そのためロレックスとの関係性を感じさせるコレクションを多数抱えておりますが、中でもクロノタイムは「デイトナ」をリスペクトしたレーシーかつアイコニックな顔立ちが魅惑の時計です。
デイトナを彷彿とさせるデザイン、そしてロレックスとの共有パーツを用いつつ、汎用ムーブメント(バルジューCal.7750)を搭載させることで、手の届きやすいプライスレンジを実現しているクロノタイム。
さらにチューダーらしく、バリエーション豊かなこともクロノタイムを楽しくさせる一面です。
定番のブラック・ホワイトのみならず、ブルーやグリーン、あるいはグレーなどといった多彩な顔立ちを抱えており、当時のチューダーの独創性をも感じさせますね。
ちなみに、クロノタイムは大きく分けて第三世代に分かれます。この世代によっても、アイデンティティが異なってくるのがまた面白いところ!
とりわけ初期モデルのRef.94系・セカンドモデルのRef.791系はカマボコと呼ばれる、分厚くまっすぐに切り立った無骨なラインを有したケースが採用されており、こういったディテールこそロレックスにはないチューダー クロノタイムならではの特徴となっております。
カマボコケース
とは言え、最もよく流通しており、かつ初めてオールドウォッチを手にする方でも扱いやすいのが1995年以降に製造された第三世代Ref.792系ではないでしょうか。
ガラスはプラスティックからサファイアクリスタルへと変更され、またモデルによってジュビリーブレスレットが採用されていたり、1998年にチューダーのアンバサダーとなったタイガーウッズモデルを抱えていたりと、何かと面白いコレクションでもあります。
クロノタイムは2006年頃に生産終了となりますが、近年のチューダー人気も手伝って、絶賛価格高騰中。稀少性の高い世代や仕様だと、100万円を超える個体も多々見受けられます。
一方でロレックスのデイトナほどの急騰ではなく(上昇率はクロノタイムも凄まじいですが)、サードモデル等は50万円前後~入手できる個体がまだあるのも嬉しいところ。
現行ブラックベイ クロノもカッコイイですが、現行にはないデザインや風合いを楽しめるクロノタイムの魅力はひとしおです。
クロノタイム 79260
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:バルジューCal.7750
相場:50万円前後~(仕様によっては90万円台~)
プロからのコメントはこちら
「チューダーが2018年に日本上陸して以降、年々人気の高まりを感じます。この勢いとともにコレクションも拡充しており、基幹コレクションのブラックベイだけでなく、ペラゴスやレンジャー、ロイヤルといった幅広い層をターゲットにしたブランディングも垣間見えるようになってきました。でも、私の中で最もチューダーらしいコレクションと言えば、クロノタイムです。特にカマボコケースはこれぞチューダー(あるいは、チュードルと呼ばれていた時代)。。ロレックスとも、どのブランドとも違った魅力がここにはあります」
「バルジュー搭載モデルなので、メンテナンスも受けやすく、扱いやすさもあるためオールドウォッチの定番。一方で中古市場が拡大してユーザーが増えていることから、今後さらに相場が上がる可能性もあり。迷っている方は早めに買っておきましょう!」
「一つひとつのモデルに個性があるところがいかにもポストヴィンテージといった魅力」
第2位 オメガ スピードマスター 下がりr
次にご紹介するのは、オメガの定番スピードマスターの中でも、ポストヴィンテージ時代ならではの仕様です。
オールドオメガの中で、「下がりr」という個体があることをご存知でしょうか。スピードマスター第五世代で確認できる仕様となり、下記画像がこれに当たります。
上:下がりr/下:現行モデルのロゴ
文字盤12時位置のspeedmasterロゴの、最後部スペル「r」の書体が下に伸びていますね。Sも縦に伸びていて、どこかレトロな雰囲気を感じさせます。
スピードマスター第五世代というのは、1968年から1990年代まで続いたロングセラー。外装は従来通りですが、この世代にムーブメントがCal.321からCal.861へと変更されました。リファレンスで言うとST145.022にあたり、1970年頃~1990年頃の製造個体に見られるのが下がりrです。
先代までのスピードマスターが軒並み高騰している中、第五世代は結構長生きだったこともあり、手ごろなお値段で楽しめるオールドウォッチです。下がりrも製造期間は短くありません。もっとも当時は機械式時計のシェアが低減していた時代であったこともあり、流通量が大変豊富・・・というわけでもありません。
とは言え相場は50万円台~。数年前に比べると高くはなっているものの、スピードマスターとしてはお値打ちと言えます。
一方ロゴのレトロ感だけでなく、トリチウム夜光が焼けていたりベゼルが褪色していたりと、ヴィンテージならではのテイストを味わうことができるため、ちょっと年式の古いモデルに手を出してみよう!といった方にとりわけおすすめできるのが「下がりr」なのです。
オールドウォッチ人気が高まる今、ぜひ下がりrをお手にとってみてはいかがでしょうか?
ちなみに同じ第五世代の「下がりr」でも、初期型にあたるシーホースマークの裏蓋を持つタイプはかなり高額なので注意が必要です。
オメガ スピードマスター 下がりr
ケースサイズ:直径42mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.861
相場:50万円台~(状態による)
プロからのコメントはこちら
「一見すると、通常個体と大きな違いはない。でもよく見ると特別な仕様・・・オールドウォッチやスピードマスター プロフェッショナルをご購入になるお客様は、こういった『知る人ぞ知る』なディテールに惹かれる方が多いように思います。オメガ自身もそれを知ってか知らずか、2021年に発表した新型スピードマスターでは「ステップダイアル(段付き文字盤)」「ドット・オーバー90」「ドット・ダイアゴナル・トゥ70」などのディテールを盛り込んでいる。こういったディテールに魅力を覚える方に、ぜひ下がりrをご検討頂きたい」
※新型スピードマスター プロフェッショナルはムーブメントの載せ替えのみならず、外装にも多くの変更点が加えられました。とりわけ第四世代スピードマスターで見られた仕様を復刻させており、往年のファンにはたまりません。詳細は「オメガ スピードマスター プロフェッショナル 新型は旧型とどう違う?【310.30.42.50.01.002】」にてご確認ください。
「第三世代より前のスピードマスター プロフェッショナルな、正直一般ユーザーが気軽に手を出せる金額ではないと思う。しかしながら第四世代であれば、この下がりr含め、まだ相場は上がり切っていない。クォーツショック下にあったとは言え量産されていたこともあり、修理ノウハウも豊富に出回っているため、扱いやすいオールドウォッチの一つではないか」
「現行にはない雰囲気や仕様・・・なかなか人と被りません!(所有者より)」
「普遍的なデザインながら、下がりr等年代よってデザインが異なり、拘ることができる。それでいてロレックスよりも安価に買える点が◎」
第1位 ロレックス GMTマスターII 16710
2022年の傑作腕時計、オールドウォッチ部門第1位はGMTマスターII第二世代の、Ref.16710です!
新作部門でRef.126720VTNRが第1位に輝いたことからも見てわかる通り、新旧ともに、2022年もGMTマスターIIが熱かったですね!
Ref.126720VTNRの項でもご紹介したように、GMTマスターIIは1983年に誕生した、GMTマスターの進化版です。時針の単独稼働によって第三時間帯までの表示が可能となり、いっそうの多機能機へとアップデートを果たしたコレクションとなっております。
第二世代のRef.16710は、1990年~2007年まで製造されました。
第三世代以降はなじみ深いRef.116710LNとなり、ベゼルはセラクロム化。
すなわちRef.16710は、GMTマスターIIの中で比較的高年式ながらもアルミベゼルの風合いを楽しめる世代ともなっております。さらに、ベゼルバリエーションが「黒」「赤青―通称ペプシ―」「赤黒」の三つ巴なところも、ミソ。
今でこそツートン配色はGMTマスターIIのデザインコードですが、セラクロムベゼルとはまた違った発色が楽しめるのは、Ref.16710の大いなる魅力ですよね。
さらに、この度のアンケートでRef.16710の強みとして挙がったのが、流通量の豊富さです。
アルミベゼルのGMTマスターIIの中では製造期間が長く、また高年式であるため、ご希望の状態やカラーの個体を入手しやすい傾向にあるのです。
また、年代的にはポストヴィンテージと近年のモデルとの狭間に位置するモデルですが、個体によってはオールトリチウムやシングルバックルといったヴィンテージらしい仕様が残っており、アルミの退色などと併せて、経年変化やこの時代ならではの味わいを楽しめるというのも、付け加えておかなければなりません。
通常、ポストヴィンテージの年代は高年式ほど価格が高くなる傾向にありますが、夜光やバックルがオリジナルのままであったり、あるいは良い風合いにエイジングされた個体が高い価値を持つというのが、楽しいですよね。
ただし他のロレックス同様、価格高騰の波真っただ中にいるのは、人気やモデルとしての魅力を鑑みればやむなしか。
前述したオールトリチウム・シングルバックル個体でなくとも、160万円を切ることはなかなかなく、ここ数年で右肩上がりの相場を続けているロレックスです。
GMTマスターII 16710
ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブラック
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.3185(生産終了間際にCal.3186へ)
防水性:100m
相場:160万円台~
プロからのコメントはこちら
「Ref.126720VTNRの発表で再注目。今年は一年、GMTマスターIIの年だった」
「以前は低年式の個体などは手に入りやすかったが、目を見張るほどの高騰を見せている。しかしながら製造期間の長さゆえかまだ安定的に流通しているし、多機能機ながらメンテナンスも受けやすいので、まずお勧めしたいオールドウォッチだと思う」
「セラクロムベゼルは高級機らしい光沢もあるし、経年劣化もしづらいといった長所に溢れている。しかしながら、アルミベゼルもしかり。アルミベゼルの小傷や退色は決して劣化などではなくエイジングと称されるもので、ヴィンテージらしい一幕ではないか」
「Ref.16710を見るにつけ、赤×黒のコークベゼルの復刻に期待してしまいます!」
2022年傑作腕時計ランキング~エントリーモデル部門~
最後にご紹介するのは、2022年傑作腕時計ランキングの中でも、30万円台以下で購入できる傑作選!
高価格帯よりもブランド数が多く、競争が熾烈を極めるエントリーモデル部門の中で、2022年に傑出した5本とは?
第5位 ロンジン マスターコレクション L2.673.4.78.3
前述の通り、高級スポーツウォッチやコンプリケーションよりも、このエントリーモデル部門で優劣を付ける方が結構大変です。なぜなら、高価格帯に比べて、30万円以下が平均定価のエントリーブランドの方が圧倒的に数が多いため。さらにこのプライスレンジだと「少量生産」というより十分な製造本数を採り、必然的にシリーズ数・モデル数も多くなってきます。選択肢が豊富なため、一つのブランド・モデルに絞りづらいのです。
「選びづらさ」は、このプライスレンジは競争が激しいという理由も大きいですね。
しかしながらそんな中でも、ずっと定番として愛され続けるブランドもあります。むしろ、永世定番として、今後10年・20年・あるいは100年・・・時計好きを楽しませてくれる。そんなブランドの代表格がロンジンです。2020年および2021年版の傑作エントリーモデルでも、ランクインを果たしました。
ロンジンもまた他社同様にいくつかのシリーズを持ちますが、フラグシップはマスターコレクションです。
文字盤を見てすぐお気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、「クロノグラフ」「ムーンフェイズ」「ポインターデイト」を有した、紛れもないコンプリケーションです。コンプリケーションであるにもかかわらず、30万円以下!定価は40万円台ですが、実売価格は新品で28万円程度です。かなりお値打ちですよね。
このロンジンというブランドは、ロレックスやオメガほどの知名度は持っていないでしょう。「知る人ぞ知る」といった立ち位置かもしれません。
しかしながらほとんどのシリーズでラウンドフォルムを採用している真の正統派。下手に奇をてらわない、いつの時代も通用する魅力を備えています。
それは、ロンジンが1832年創業とスイス時計界の中でもとりわけ老舗なことに由来するでしょう。 歴史や伝統にまつわるエピソードには事欠きません。
現在はオメガやブレゲ、ブランパンなどを傘下に加えるスウォッチグループに属しており、巨大コングロマリットの資本力を背景に、高品質&リーズナブル路線を突き進んでいる、時計界にとっては稀有な存在となります。なんせ、「伝統」「正統」が申し分ないのに、リーズナブルなのですから。コストパフォーマンス最強と言っていいでしょう。
↑ブレスレット版のL2.673.4.78.6
そんなロンジンの中でもマスターコレクションは、機能美を全面に打ち出したシリーズとなります。
12時位置に月と曜日、ダイアル外周にポインターデイトを備えたトリプルカレンダーで、6時位置にはムーンフェイズを備えます。縦目のクロノグラフで、12時位置が30分計、6時位置が12時間計に。そして9時のインダイアルはスモールセコンドと24時間表示針と、機能満載!ちなみに当店のロンジンの中で、長年ナンバーワンの売上を誇ってきました。
ラウンドフォルムのためどこか雲上ブランドの雰囲気すら感じさせ、これが30万円以下で購入できるとは驚きです。
ロンジン マスターコレクション L2.673.4.78.3
ケースサイズ:直径40mm×厚さ約15mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.L687/パワーリザーブ約54時間
防水性:3気圧
定価:462,000円(税込)
■プロからのコメント
「ハイスペックなのに安い。コスパ最高」
「さりげないムーンフェイズ、上品な青針、エレガントなケースフォルム・・・ビジネススーツにも合わせやすいし、20代・30代で初めて高級時計をご購入される方は、迷ったらロンジンを選んで損はないだろう。ロンジンきっての良作」
「30万以内だとブランドが限られてくるが、例年このモデルを選んでいる。それだけ定番であり、今後も長く人気が続いていくであろうモデル」
「ロンジンは俳優の藤木直人さんとか香川照之さんとか。一流芸能人の愛用者も多いですよ!」
第4位 タグホイヤー アクアレーサー GMT WAY201T.BA0927
出典:https://www.tagheuer.com/jp/ja/
第4位としてご紹介するのは、タグホイヤー アクアレーサーのGMTモデルです!
GMTが搭載された機械式時計で30万円を切る価格帯…これだけで驚きに値すると回答したプロは少なくありませんでした。
さらにこちらは2020年にリリースされたばかりの新作であるにもかかわらず、値段が上がりすぎていないことも特筆すべき点です。
タグホイヤーは1860年にスイスで創業された時計ブランドです。2020年で160周年を迎えた屈指の老舗ですが、良質な生産ラインを確立することできわめて高性能な製品を良心的な価格帯で提供していることに定評があります。
その一例として挙げられるのが、「100万円台で購入できるトゥールビヨン」です。トゥールビヨンとは世界三大複雑時計に数え上げられる機構で、その製造過程たるや「至難」の一言。パーツ数もどうしても多くなってしまうため、トゥールビヨン搭載モデルは一本1000万円を超えることもあるほどです。
しかしながらタグホイヤーは2016年に「100万円台」のトゥールビヨンモデルをローンチ。いかに同社が「手の届くラグジュアリー」に力を入れているかを垣間見ることのできる出来事ですね。
さらに、レーシングスピリットにインスパイアされた、とにかくかっこいいデザインもタグホイヤーの特徴の一つとなります。
このように「コスパよし」「デザインよし」「もちろん性能もよし」の魅力から、初めて高級時計を購入される方がまず候補に挙げるブランドではないでしょうか。
アクアレーサーは、そんなタグホイヤーが手掛けるダイバーズウォッチです。実際のプロダイバー監修のもと、2000年代に誕生しました。
アクアレーサーは人気商品だけあり、例年多彩なバリエーションがリリースされています。我々消費者を飽きさせない一大コレクションと言えるでしょう。
そして、2020年の新しいバリエーションが、こちらのGMT搭載モデルです!
青黒のバイカラーに同系色の文字盤・GMT針が、とにかく爽やかさを感じさせるこちら!傷つきづらく、金属とはまた違った質感を持つセラミックベゼルが実用性のみならず高いデザイン性を感じさせますね。2017年に赤青ベゼルで同機構のモデルが誕生していますが、よりファッショナブルになったと言えるでしょう。
さらに特徴的な横縞ギョーシェの文字盤もブルーに彩られ、さらにサンレイ仕上げが施されることで光の当たり加減で表情を美しく変える、という面白みも。
なお、搭載するムーブメントはフォーミュラ1などでも使用されている、キャリバー7。コストを抑えた汎用ムーブメントを用いることで、30万円以下の機械式GMTを実現することとなりました。
普通、GMT搭載モデルと言えば50万円はくだらないもの…タグホイヤーの優れたコスパを感じられる逸品ですね。
しかもダイバーズウォッチらしく300m防水を堅持しているため、水仕事の多い方でも安心してお使い頂けます。新品並行相場は20万円台後半~。
前述の通り新作とは言え比較的よく流通しているので、気になる方はぜひチェックしておきましょう!
タグホイヤー アクアレーサー GMT WAY201T.BA0927
ケースサイズ:直径43mm×厚さ約13mm
素材:ステンレススティール
文字盤:ブルー
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:キャリバー7
防水性:300m
定価:429,000円(税込)
◆プロからのコメント
「GMT、機械式、300m防水、しかもかっこいい…それでこの価格と言うのに、驚きを禁じ得ない。
もう10年以上の長きに渡って時計業界に身を置いているが、タグホイヤーほどコスパに優れたブランドを私は知らない」
「アクアレーサーはモデルチェンジによっていっそう注目度を浴びることとなったが、新作に負けず劣らず人気があるのが、このGMT搭載モデル。さわやかな色使いがタグホイヤーらしい高いデザイン性を感じさせる」
「GMT機能が付いていて30万をきる価格は魅力。アクアレーサーは2021年にモデルチェンジを果たして薄型スタイリッシュになった。しかしながらこちらのケース厚がしっかりとした、存在感ある一本も珠玉と言わざるをえない」
「タグホイヤーは新作であっても比較的よく流通し、値段が上がりすぎないのが嬉しいところ」
第3位 グランドセイコー 9Fクォーツ SBGN005
出典:https://www.facebook.com/grandseikojapan/
「クォーツを超えたクォーツ」これが、グランドセイコーの9Fムーブメントを最も象徴する言葉です。
本稿ではどうしても機械式時計が主流になってしまいます。なぜなら機械式という機構は時計の伝統であり、高級時計の多くに採用されているためです。
しかしながら近年では「高級クォーツ」と呼ばれる市場が急速に拡大しています。そして、その先鋒を担うのが、グランドセイコーなのです。
そもそもクォーツとは、機械式のようなゼンマイではなく、電池を駆動力とする機構です。また、水晶振動子(クォーツ)を内蔵しており、これが電圧印加されることでブルブルと震え、この振動を電子回路でパルス変換し、時分針あるいは秒針を動かします。電子デバイスを持つため機構がシンプルで、衝撃にも強く価格が安いことがクォーツの何よりの特徴です。このクォーツを世界で初めて市販化に成功させたのが、セイコーでした。
出典:https://www.grand-seiko.jp/about/movement/quartz/
この市販化から2022年で53年を迎えます。
この長い歴史の中で様々な形態のクォーツがリリースされるのですが、その一つが前述した高級クォーツというわけです。高級クォーツの登場によって、クォーツは安物」「クォーツは使い捨て」といった概念が拭いさられることとなりました。
グランドセイコーの高級クォーツは、まず精度が通常のものと桁違いです。もともとクォーツ自体がその構造上、正確性を保ちやすくなっています。一般的なもので「月」に±15秒ほどの誤差でしょう。しかしながらグランドセイコーの9Fムーブメントは、その誤差なんと「年」に±10秒ほど!また、独自機構によってトルクの力を最大限引き出し、クォーツでは難しいと言われてきたしっかりと太く長い時分針を可能としました。
そんなグランドセイコー クォーツモデルの中でも、そのトルクの強さを活かしてGMT針を搭載させたのがこちらのSBGN005です。。
スポーツコレクションから2019年に打ち出された一本で、ブルーと力強いレッドのGMT針が非常に印象的な一本ですね。
本稿「2022年傑作腕時計ランキング」では数々のグランドセイコーをご紹介しましたが、昔ながらのシンプルさを活かしつつも、どんなスーツにもマッチするエレガンスを持ち合わせる同社ならではのこのデザインコードを好む方も少なくないでしょう。
でも、気になるのがお値段ではありませんか?確かに定価は363,000円と、グランドセイコーのクォーツモデルの中では比較的高価格帯です。しかしながら出回りも増えてきたため、近年新品並行相場なら30万円前後~と、かなりお手頃。
かつてはグランドセイコーと言うと、時計にこなれた40代,50代のビジネスマンが買われていくイメージがありましたが、最近ではお若い方の購入も見受けられます。
価格面でも、クォーツという扱いやすさでも、まさに2022年傑作腕時計・エントリーモデル部門第3位を飾る逸品であると明言させて頂きます。
グランドセイコー スポーツコレクション SBGN005
ケースサイズ:直径39mm×厚さ約12.1mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:クォーツ
ムーブメント:Cal.9F86
防水性:10気圧
定価:363,000円(税込)
◆プロからのコメント
「スポーツコレクションのため力強さを感じる一方で、セイコースタイルも活かされている。まさに原点にして頂点。これを買っておけば間違いない。贈り物にも最適。」
「グランドセイコーはかつて大人しい印象が強かったが、近年のスポーツコレクションは素晴らしい!」
「グランドセイコーの中で、個人的には一番好き!オンオフ使えるので、とりあえず持っておいて損はないのでは?」
第2位 タグホイヤー カレラ キャリバー5
例年、当調査で時計業界のプロたちが、口を揃えて「この価格でこのクォリティは驚き」と評するのがカレラのキャリバー5搭載モデルです。ちなみに販売価格を30万円以下で絞った時、2021年の売上ナンバーワン・ツーをカレラ キャリバー5が名を連ねています。
カレラはタグホイヤーのフラグシップ。 デイトナやオメガのスピードマスターなどと時を同じくする1960年代、やはりモーターレース「カレラ パンアメリカーナ・メキシコ」とF1チャンピオン「ファン・アニュエル・ファンジオ」へのオマージュとして誕生しました。
様々な派生モデルが存在しますが、基本的には「ムーブメント(キャリバー)」で区切られています。自社製キャリバーホイヤー01または02を搭載したハイエンドラインや日本限定モデルなども存在しますが、30万円以下で手に入れられて、最も普遍的な良さがあるカレラと言えばキャリバー5搭載モデルを置いて他はないでしょう。
こちらのカレラが、エントリーモデル部門第2位であり、当店のタグホイヤーの中では常に売上ナンバーワンに輝いている一本です。シンプルながらケースにエッジが効いて、非常にスタイリッシュに仕上がりました。
スタイリッシュなケースにデイトまたはデイデイト表示と3針のみのシンプルな文字盤は、レーシングモデルでありながらエレガントさをもたたえます。
ちなみに一番人気は黒文字盤ですが、他バリエーションも同様によく売れます。
文字盤に新色や装飾などが加えられることはありますが、誕生以来デザインを大きくは変えず、愛され続けてきた正真正銘のロングセラーです。
2021年には新型モデルが登場したため、今後の出回り次第では人気ランキングがまた変わってくるかもしれません。今後の動向に要注目ですね!
カレラ キャリバー5 WAR211A.BA0782
ケースサイズ:直径39mm×厚さ約12mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:自動巻き
ムーブメント:Cal.5/パワーリザーブ約38時間
防水性:100m
定価:-
■プロからのコメント
「時計初級者の方に『どの時計がお勧めですか?』と聞かれたら、まずお勧めするのはこの時計」
「今年だけでなくここ数年ずっとタグホイヤーの年間売上本数1位。生産本数は比較的多いが、需要が多すぎるためなかなか在庫を確保できない」
「ブランド自体のスタイリッシュさも良い。低価格帯の製品はネームバリューやステータスが置き去りにされがちだが、タグホイヤーであればその辺もカバーしてくれるであろう」
「メンテナンスで並行差別があるとは言え、不具合が少なく性能もよい。普段使いに惜しみなく楽しめる逸品」
コメントからも、エントリーモデルとして優秀すぎることがわかるカレラ。 確かに、ここまでのコストパフォーマンスを誇る高級時計ブランドというのは、なかなかないかもしれません。
第1位 ノモス タンジェント TN1A1W2
2022年傑作腕時計ランキング~エントリーモデル部門~、第一位に輝いたのは、ノモス タンジェントです!ちなみに2021年版でも第一位でした。さらに2022年には、2位のカレラに大きく差をつけたことでも驚かされたものです。
ノモスというブランドをご存知でしょうか。 ロレックスやオメガを代表とするスイスメイドではなく、ドイツ生まれのブランドです。
特徴は一切の無駄を削ぎ落としたシンプルさ。端正で上品、そのためビジネススーツやここぞ!と言う時のフォーマルスタイルで真価を発揮してくれるとあって、年々日本国内での知名度を上げていっているブランドです。
ノモスはリーズナブルさも大きな魅力です。 かと言ってただ安いだけではもちろんありません。 ドイツブランドらしく技術力を堅持しつつ、「シンプル・機能・リーズナブル」を一貫して守り抜いてきました。
そんなノモスを2022年最強エントリーモデルとしてプロたちが推した一本はタンジェントです。
タンジェントはノモスのフラグシップです。基本的にタンジェントと呼ばれるシリーズがベースにあり、そこから派生モデルが多数存在する、というのがノモスのシリーズの特徴です(最近では新ラインも続々登場していますが)。
見ておわかりいただけるように、小径薄型という、ドレスウォッチのお手本のような意匠が何よりの特徴。
シンプルな使い勝手の良さが当店でも抜群に人気で、20代・30代のお若い方だけでなくシンプルウォッチをお探しの幅広い年代層からも選択される一本です。
ぱっと見はどこまでもシンプルなのですが、文字盤デザインやフラットなガラス・ケース、そして上品な薄さはなかなか他ブランドにはない独創性が溢れています。
ちなみに厚さはわずか6.2mm。
かっこいいデカ厚時計も魅力ですが、やはり上品な高級時計と言えば薄型でしょう。
さらにノモスは「タンジェント スポーツ」など一部を除く、全てのモデルでシースルーバックを採用していることも特筆すべきポイントです。低価格帯にもかかわらず、ムーブメントにも自負があることがおわかりいただけるでしょう。
新品並行相場は18万円台~と、本当にお求めやすい価格となっております。
タンジェント TN1A1W238(164)
ちなみに35mmサイズのタンジェントが当店一番人気ですが、「ちょっと小さいかも?」という方から、こちらの38mmサイズもご指示いただいております。
相場は大きくは変わりませんので、好みでお選びください。
なお、ノモスは当店ではWEB限定で販売しております。にもかかわらず、今回の調査でノモスに票を入れたプロたちは、どちらかと言えば店頭販売スタッフが目立ちました。
また、本稿を執筆するにあたって売上データを集計していた時にふと気づきました。「30万円以下」の新品時計のうち、なんとナンバー3,5,7と、TOP10の三つをノモスが占めていたのです。
※ちなみに個体としては、上から順にタンジェント TN1A1W2(139),タンジェント TN1A1W238(164),オリオン OR1A3GW2(309)でした
これは、かなり驚くべきことです。
第二位・四位でご紹介しているタグホイヤーと比べると圧倒的に入荷は少ないにもかかわらずここまで売れているということは、ノモスの人気が確かなものであることの証明に他なりません。
タンジェント TN1A1W2(139)
ケースサイズ:直径35mm×厚さ約6.6mm
素材:ステンレススティール
駆動方式:手巻き
ムーブメント:Cal.アルファ(α)/パワーリザーブ約42時間
防水性:3気圧
定価:275,000円
■プロからのコメント
「隠れた名作。エントリーモデルというとオメガやタグホイヤーが挙がるかもしれないが、これらの人気ブランドを抑えていつも売上上位にランクインしている。ノモスは自社工場一貫生産率が80%を超えるブランド。そんなハイレベルな時計を定価30万円以下で販売できるのは、素直にすごいと思う」
「日本ではまだマイナーなブランドだが、業界関係者からの評価は高い。今後人気が上がりそうなブランド」
「もっと派手にプロモーションしても良いのでは?ブランディングが上手く行けば人気ブランドの仲間入りをすると思う」
「(タンジェントに限らず)ノモスを着けている男性がいたら、お!ってなる。個人的に、スイスメイドではなくドイツブランドっていうのがいい。通な感じがする」
「「良い時計を買った」という満足感が得られると思う。」
まとめ
時計業界のプロ50人が選んだ、2022年の傑作腕時計ランキングを発表いたしました。
定番のロレックスから雲上ブランドのパテックフィリップ、時計愛好家からも評価が高いチューダーやノモスなど、様々なブランドが挙がりましたが、今回ランクインしたものは2023年もまだまだ勢いを持ちそうなものばかりです。
新たに2023年を迎える前に、思い切って一本腕時計を購入しようと思ったとき。プロお墨付きの一本はいかがでしょうか。
文:鶴岡
■ロレックスの次に価格高騰する時計ブランド10選~チューダー,オメガ,ウブロなど~
■GINZA RASIN年間売上ランキング BEST20~メンズ編~
この記事を監修してくれた時計博士
新美貴之(にいみ たかゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 店舗営業部 部長
1975年生まれ 愛知県出身。
大学卒業後、時計専門店に入社。ロレックス専門店にて販売、仕入れに携わる。 その後、並行輸入商品の幅広い商品の取り扱いや正規代理店での責任者経験。
時計業界歴24年