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ラグスポ、あるいはラグジュアリー・スポーツウォッチが、最近の時計業界の一つのトレンドです。

とは言え、ラグスポってどんな時計なのでしょうか?

どんなブランドの、どのモデルがラグスポ時計なのでしょうか?

 

そこでこの記事では、ラグスポについて徹底解説いたします!

併せて人気ブランドの代表的なラグスポモデルをまとめるとともに、「価格」「知名度」「リセールバリュー」「機能性」などの指標から人気の「ラグスポ」を徹底解剖してみました!

オーデマピゲ ロイヤルオーク 15400ST 買取相場

 

ラグスポとはどのような時計か?

ラグスポはラグジュアリー・スポーツウォッチの略称です。豪華なスポーツウォッチという意味合いですが、実は決まった定義はありません。

しかしながら「ラグスポ」と言った際の、共通認識は存在するように思います。

ラグスポの共通認識をまとめたうえで、どのような時計なのかを解説いたします。

 

POINT①「ラグスポ」は1970年代にルーツを持つ

ラグスポの歴史を紐解くと、1972年に遡ることができます。この年、オーデマピゲから「ロイヤルオーク」が発表されました。

オーデマピゲ 初代ロイヤルオーク 5402ST

※1972年、1000本限定でファーストデリバリーされたうちの一つ・5402ST

オーデマピゲは1875年にスイス ル・ブラッシュで創業した老舗の時計ブランドです。以降、一度も歴史を途切れさせることなく、連綿と時計製造を続けてきました。ちなみに、現在は時計業界にコングロマリットが存在しており、各メーカーはその傘下に加わることが少なくありません。しかしながらオーデマピゲは発祥から現在に至るまで、創業家一族によって経営されている点でも、稀有なブランドと言えます。

長年培ってきた高度な時計製造ノウハウを注いだオーデマピゲの製品は、時計愛好家にとっては特別感がひとしおです。一方でオーデマピゲは老舗の名門でありながらも、革新的な製品を続々と生み出し、時計業界を常にリードし続けてきました。

その革新的な製品の一つが、ロイヤルオークです。

ロイヤルオークは今なおオーデマピゲのフラグシップですが、1972年の創業当時は、時計業界に大きな衝撃で以てもたらされることとなりました。

なぜなら「ハイメゾンによる」「ステンレススティール製」の「ジャンボ」な「スポーツウォッチ」であったためです。

 

1970年代当時の高級時計は、貴金属を用いたドレスウォッチが主流でした。

パテックフィリップ カラトラバ

しかしながらオーデマピゲほどのラグジュアリーなハイメゾンが、ステンレススティール製のスポーツウォッチをリリースするとは・・・!

併せて、当時のケースサイズと言うと31mm~35mm程度が主流です。にもかかわらずロイヤルオークは39mm直径のケースとなっており、この大きさから「ジャンボ」の愛称でも親しまれることとなりました。

その他の点を見てもラウンドケースではなくオクタゴンが主流となったフォルム、随所に効いたエッジ、そしてケースとシームレスになったブレスレット・・・これまで高級時計ブランドが製造してきた時計とは大きく趣を異にするロイヤルオークが時計業界に与えた衝撃は計り知れませんが、しかしながらロイヤルオーク以降、1975年のジラールぺルゴ「ロレアート」や1976年のパテックフィリップ「ノーチラス」、1977年ヴァシュロンコンスタンタンの「222」などといった対抗機がハイメゾンから続々リリースされたことを鑑みれば、ロイヤルオークが衝撃とともにトレンドを巻き起こし、一大ジャンルを築き上げたと言うべきでしょう。

ちなみに、ロイヤルオークのデザインをジェラルド・ジェンタ氏という天才時計デザイナーが手掛けたことはラグスポを語るうえでは知っておきたいですね。ジェラルド・ジェンタ氏は「ノーチラス」やIWC「インヂュニアSL」など、今なお残る名作の数々をデザインしたことで高名な人物です。

 

加えて知っておきたいのが、ラグスポが誕生した1970年代というのは、多くの高級時計メーカーにとって受難の時であった、ということです。

安価で高性能なクォーツ式時計の普及によって機械式時計のシェアが大きく脅かされたこと。量産体制の確立に後れを取ったこと。スイスフラン高騰などといった社会情勢で打撃を受けたことなどが背景としてあります。そのため各ブランドは生き残りをかけて様々な試みに挑戦した軌跡が見て取れますが、ロイヤルオークもそんな試行錯誤の一つだったのでしょう。

 

なお、現在もオーデマピゲは初代ロイヤルオークから大きくデザインを変えずに、連綿とコレクションのアップデートを行っています。

後述しますが「ラグスポ」時計は、このロイヤルオークから範を取ったデザインを指すことがほとんどです。すなわちオーデマピゲ ロイヤルオークの革新的なデザインは1970年代の時計愛好家に受け入れられたことはもちろん、現在でも時代を超えて、不変にして普遍の魅力を備えていることを示唆しています。

こういった経緯から、ラグスポとは「高級時計メーカーが作った奇抜なスポーツウォッチ」というわけではなく、1970年代という時計業界にとって一種特異な時代において、パラダイムシフトを起こした「高級スポーツウォッチ」にルーツを持つ用語と言えます(もちろんこの時代にまだラグスポを製造していなかったブランドもあるため、あくまで用語として、ですが)。

 

POINT②ドレッシーさを持ち合わせたスポーツウォッチ

ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ

1970年代とは打って変わって、現在はスポーツウォッチは紛れもなく時計業界の人気ジャンルとなっております。

この時代に、敢えて「ラグジュアリーなスポーツウォッチ」と言った時、いったいどのような時計を指すのかが定まっていないのですが、ドレッシーさを持ち合わせたデザインが共通しています。

「ドレッシー」には様々な意味合いがあるかとは思いますが、その一つが「薄さ」です。基本的にラグスポは、スポーツウォッチでありながらもきわめて薄く、上品であることがほとんどです。

 

例えばロレックスのデイトナ。

きわめて優れたスポーツ・クロノグラフであり、高級時計を代表する存在であることは紛れもありませんが、ケース直径40mm×ケース厚は12.5mmです(116500LN)。

ロレックス デイトナ 116500LN

一方で先程から何度も言及しているオーデマピゲ ロイヤルオーク。こちらケース直径は41mmですがケース厚は10.4mmです(15500ST)。パテックフィリップ ノーチラスは、ケース直径43mmのところ、厚さは8.3mmです。

ラグスポ 時計

ロレックスのデイトナも100m防水のスポーツウォッチとしては決して厚くはないのですが、ラグスポと称される時計は概ね10mm前後の厚みに収まっていることがほとんどです。

 

これに加えて「高級機らしい作り込みの高さ」も挙げられます。

ラグスポは、薄いにもかかわらずのっぺり感がなく、どこか立体的な造形をしています。これは、高級時計らしい作り込みの高さが活きているためです。

例えばサテン仕上げとポリッシュ仕上げのコンビネーション。細かな面取り。随所に効いたエッジと歪みのないフォルム。

 

近年では加工技術の発達によって低価格帯の時計でも仕上げを楽しめる個体が増えてきましたが、ハイメゾンはやはり別物と言って良いでしょう。とりわけオーデマピゲやパテックフィリップなどは名うての熟練工らによって丁寧な仕上げ・装飾が施されており、これぞ高級時計といった様相です。こういった高度な仕上げあってこそ、ただのスポーツウォッチならぬラグスポへと昇華されるのではないでしょうか。

個人的には、美しく仕上げられたムーブメントを楽しめるのも(裏蓋から見えるにせよ、見えないにせよ)ラグスポの一つのだいご味だと思っております。

ブルガリ オクト フィニッシモ

さらにロイヤルオークのようにケースとブレスレットがシームレスとなっていることも、ラグスポを象徴する一つのデザインです。こういった時計は、ケースが薄ければ例外なくブレスレットも薄くなっており、さながらドレスウォッチのような快適な装着感を醸し出します。

ドレッシーに軸を置いたデザインコードこそ、ラグスポと言うことができるでしょう。

なお、初代ロイヤルオークの衝撃を語る時に「ステンレススティール製」であることが取沙汰されるものですが、現在では貴金属やチタン等、様々な素材のラグスポが各社から打ち出されており、特段素材による制限のようなものは見受けられません。事実、初期ロイヤルオーク等にもゴールド製モデルはラインナップされていました。

 

POINT③スポーツウォッチらしい機能性も欲しいところ

ショパール アルパインイーグル

薄く設計され、ドレッシーに腕にまとってくれるラグスポ時計。

しかしながら薄い時計というのは、とかく扱いが難しいもの。防水性や耐磁性能といった、堅牢に関わる部分が少し弱くなりがちです。

とは言えドレスウォッチではなく、ラグジュアリーなスポーツウォッチ。スポーツと言うからには、ある程度の機能性は欲しくなります。

オーデマピゲ ロイヤルオークは50m、パテックフィリップ ノーチラスは12気圧(120m)防水と、日常生活用強化防水は効いているのが嬉しいところですね。

 

また、ラグスポを手掛けるメゾンでは近年ムーブメントに工夫を凝らすことで、耐磁性能や耐久性を獲得しつつあります。

ケースでこれを担保しようとすると、どうしても厚みが出てしまいがちですが、ラグスポでは非磁性素材や剛性に富んだ素材を用いることで、これを解消しているのです。

パテックフィリップ ノーチラス Cal.324SC

「フリースプラングテンプ」の採用も、ラグスポにはよく見られます。

これは精度調整を行う「緩急針」をテンプにつけないシステムです。昔ながらの機械式時計では、テンプに緩急針が取り付けられており、この針によってヒゲゼンマイの有効長を変え、精度調整を行ってきました。一方のフリースプラングではテンワに取り付けられたネジでテンワの慣性を変えることで、精度調整を行う、というもの。

フリースプラングテンプは微調整が行えることに加えて、耐久性をヒゲゼンマイにもたらし、安定的な高精度を維持するなどといったメリットがあります。一方で高いパーツ精度が求められること。また調整の難易度が高いことから、全てのブランドが採用しているというわけではなく、主に高級機が使用のメインとなってきます。

そんなフリースプラングテンプを搭載させることで、ラグスポは薄さやドレッシーな風合いを保ちつつも、現代ウォッチらしい耐久性を獲得するのです。

 

POINT①~③をまとめると、すなわちラグスポとは、1970年代の高級時計の試行錯誤の時代に誕生した一大ジャンルであり、ドレッシーさとスポーツウォッチらしい機能性を兼ね備えた、至高の腕時計と言えるでしょう。

 

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人気ブランドのラグスポをまとめてみました!

それでは人気ブランドのラグスポをまとめてご紹介いたします。

なお、冒頭でもご紹介させて頂きました通り、下記の要素をもとに各ブランドのラグスポを解剖していきます。

・ラグジュアリー度
・スポーティー度
・機能性
・リセールバリュー
・知名度

 

各項目の点数については、東京 銀座に高級時計専門店を構える、当店GINZA RASINのスタッフに行った調査をもとに算出しております。

各ブランドのラグスポについて、上記項目のそれぞれを「とてもそう思う」「そう思う」「どちらでもない」「あまり思わない」「全く思わない」の5段階で評価づけしてもらいました。

その評価をもとに点数づけを行い、各ラグスポがどのような性質や魅力を持っているのかを分析しております。

ご自身が求めるラグスポ探しに、ぜひお役立て下さい!

※定価はステンレススティールモデルを対照としております。生産終了した個体については、最終定価を掲載いたしております。

※2022年7月現在の情報となります。また相場情報は文字盤カラーや商品の状態によって変動する可能性もございます

※各モデルの優劣をつけるものではありません。参考程度にお読みください。

 

①オーデマピゲ ロイヤルオーク

オーデマピゲ ロイヤルオーク 15500ST

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
98点 65点 72点 98点 80点

やはり最初に紹介したいラグスポと言えば、オーデマピゲ ロイヤルオークです!

前述の通り、1972年にジェラルド・ジェンタ氏のデザインによって完成し、当該ジャンルのパイオニアとして語り継がれることとなりました。

薄型ケース・ブレスレット、随所にエッジの効いたオクタゴンベースのフォルム。極上の仕上げ・・・これぞラグジュアリーなスポーツウォッチと言う他ありません。

オーデマピゲにとってもロイヤルオークはフラグシップとなっており、現在ではクロノグラフ搭載機やトゥールビヨン搭載機などといったコンプリケーションモデル、あるいはロイヤルオークの「スポーティー」を強めたオフショア等、積極的にバリエーション展開を行ってきました。

 

オーデマピゲ ロイヤルオーク 15500ST

そんな多彩なロイヤルオークの中でも、現行の基幹モデルとなるのはRef.15500ST系です。

3針モデルがシンプルながら優美な印象で、文字盤には独特のエンボス加工が施されております。ちなみにロイヤルオークは、第一次世界大戦下で作られた同名のイギリス軍艦に由来した名前です。ロイヤルオークの特徴的なオクタゴンベゼルは、この軍艦の舷窓をモチーフにしたと言われています。この舷窓モチーフも、以降の時計に受け継がれたデザインコードの一つです。

現行ロイヤルオークのスペックは50m防水と、日常生活用強化防水とは言え、機能面では他のラグスポに後塵を拝することとなりました。

一方「ラグジュアリー」という点でほぼ満点であったのも、ロイヤルオークを見ればさもありなん。知名度は時計好きに限られるかと思いましたが、当店スタッフからは意外にも知名度に関しても高いといった評価を得ることとなりました。

確かに最近は時計市場が広がっており、これに伴い「雲上ブランド」「世界三大時計ブランド」に位置付けられるオーデマピゲは、業界外のメディア等でも取り上げられるようになってきました。

シースルーバックから鑑賞できるムーブメントも、これぞ高級機!

 

もっとも、メディアで取り上げられる際に、最近とみに話題になるのが、ロイヤルオークの実勢相場です。

ロイヤルオークはラグジュアリー・スポーツウォッチの中でも最高峰に位置付けられるため、国内定価2,915,000円と、ステンレススティール製モデルとしてはかなりの高価格帯に位置付けられます。しかしながら、現在実勢相場(正規店での定価購入ではなく、二次流通市場で出回る価格)はこの定価を遥かに上回るような高騰を描くこととなりました。

ロイヤルオークのように作り込まれた時計は大量生産はなかなか難しく、メーカーからの供給が限られます。にもかかわらず供給をはるかに上回る需要が世界的で高まった結果、正規店はおろか二次流通市場ですら品薄となり、結果として実勢相場がグングンと上昇を続けているといった状態がここ数年ほど続いているのです。

オーデマピゲ ロイヤルオーク 15500ST

ちなみに15500STはブラック・グレー・シルバー・ブルーの4種類が存在します。

最も高騰の激しいブルー文字盤は、実勢相場が1000万円超になることも・・・!最近では少し落ち着いてきたと言われていますが、依然として市場にモノがなく、今後もまだまだ高騰の波にさらされることが予測されます。

他の文字盤カラーも600万円~が当たり前といった相場状況となっている一方で、実勢相場が高いということはリセールバリュー(再販価値。資産価値などとも)が高いことを示しており、当店スタッフからはこちらもほぼ満点の数値が提示されることとなりました。

海外では時計は持ち運べる資産として扱われることもしばしばです。

スポーツウォッチでありながらもラグジュアリーなその雰囲気、そして確かな伝統のもとに培われてきた美しさは、まさに資産と呼ぶにふさわしい代物となっております。

 

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②パテックフィリップ ノーチラス

ノーチラス 5711/1A

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
100点 60点 85点 100点 86点

満場一致で「ラグジュアリー」「リセールバリュー」に太鼓判を押されたラグスポが、パテックフィリップのノーチラスです。前項のオーデマピゲ ロイヤルオークで「世界最高峰のラグスポ」と表現しましたが、ノーチラスもこれに分類することができるでしょう。

パテックフィリップのノーチラスは、1976年に誕生しました。ちなみにこちらのデザインもジェラルド・ジェンタ氏に拠るものとなります。

ノーチラスもまた薄型のケース・ブレスレットを備えており、オクタゴンフォルムが基調となります。しかしながらロイヤルオークと比べると、ノーチラスは優美なラインも大切にされており、柔和な印象が強くなります。また、ケース両サイドから張り出た「耳」も特徴的ですね。これは防水性を高めるための構造的理由で取り付けられており、現在ではその必要はなくなりましたが、今なおノーチラスのシンボルとして愛されるディテールの一つとなっております。

「ウェットスーツにもタキシードにも完璧にマッチする時計」というコンセプトで製造されたと言うノーチラスは、まさにドレッシーにもスポーティーにも死角のないラグスポと言えます。

パテックフィリップ ノーチラス 5711/1A

「耳」があるゆえ、ケース直径としては41mmと、なかなかスポーティーな大きさです。一方で厚みは僅か8.3mmで抑えられているため、優れた装着感を実現することはもちろん、スーツの袖口にもしっくりと収まる正統派なスタイルをも獲得しております。

なお、ノーチラスは兎にも角にも「装着感」が傑出しています。それはブレスレットが薄くしなやかに設計されているため。こういった随所に行き渡った作り込みの高さも「ラグジュアリー」の要素の一つですよね。

さらにこのノーチラスの、120m防水というハイスペックさは特筆すべきでしょう。

前項でもご紹介した通り、ラグジュアリー要素の強い薄型ウォッチはどうしても防水性や耐久性が犠牲になりがちです。しかしノーチラスはこれだけの薄さ―すなわちラグジュアリーテイス―を保ちつつも、120mと十分な防水性をも担保している。オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンとともに世界三大時計に名を連ね、さらにその中でも頭一つ抜きんでていると評価される、パテックフィリップならではの仕事ですね!

シースルーバックから鑑賞できるムーブメントも、最高です。

パテックフィリップ ノーチラス Cal.324SC

 

なお、パテックフィリップにとってもノーチラスは大切なコレクションとなっており、多彩なバリエーションが展開されてきました。

しかしながら、初代ノーチラスの系譜を引くステンレススティール製の3針モデルは、2021年のRef.5711/1A-014を最後に、レギュラーモデルからは姿を消しています。

※レディースラインのSS製3針のRef.7118は2022年のカタログに健在です。

そしてこの生産終了は、ノーチラスの実勢相場を大きく変えることとなりました。

ノーチラスは、オーデマピゲ ロイヤルオーク以上に実勢相場の高騰の著しさを見せています。これはもう、狂騒的と言っても良いでしょう。

2017年頃からジワジワと相場が上がり始め、2020年を過ぎると1000万円超の個体がちらほら・・・!

もともとの人気が高かった、という背景もあります。

そこに加えて急騰の大きなきっかけとなったのは、Ref.5711/1A-011が生産終了したことにあります。

パテックフィリップ ノーチラス 5711/1A

ノーチラス Ref.5711/1Aは、初代モデルから系譜を引く3針ステンレススティール製モデルです。

ノーチラスは何度かのモデルチェンジを経ていますが、5711系は2006年に誕生しました(2010年にマイナーチェンジ)。さらに2012年、バリエーションとして白文字盤が追加されます。

それがRef.5711/1A-011です。基本となるブルー文字盤のRef.5711/1A-010とともにノーチラスの顔をこの二機種が張ってきたのですが、2020年、突如として白文字盤が生産終了した形となります。

この生産終了後、前述の通りノーチラス相場は急騰。またパテックフィリップのCEOティエリー・スターン氏が2019年頃から、自社のステンレススティールモデルの在り方について言及したこともあり(現状のような、ステンレススティール製モデルがコレクションの中心になることへの危惧)、ノーチラスSSモデルの更なる生産終了が噂された結果、買いが集中したという背景もあるでしょう。

大方の予想通り、2021年にブルー文字盤の5711/1A-010も生産終了に。さらに相場は急騰し、現在では市場にほとんど出回らないことはもちろん、稀に出品された個体は2000万円超にもなっているとか・・・!

 

その後、いくつかのSSノーチラスがリリースされるものの、いずれも稀少なまま生産終了に。現行ノーチラスではステンレススティールの3針モデルはレディースのみとなっており、いよいよ品薄は加速する一方と言って良いでしょう。

もっとも、ゴールド製ノーチラスやコンプリケーション搭載ノーチラスは、いっそうのラグジュアリーを楽しめるというものです(もっとも、5711系ノーチラスは2022年にローズゴールドモデルもカタログから消えています・・・)。

パテックフィリップ ノーチラス

また、間もなくノーチラス50周年(2026年)ということで、ここに向けて何らかの特別モデルが出るかも!?といった噂も。

ラグスポの中でも、特に動向が見逃せないのがノーチラスという存在です!

 

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③ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ

ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
91点 81点 95点 86点 65点

ラグスポに求められる要素において、総じて高評価を獲得しているヴァシュロンコンスタンタン。

確かに知名度といった面では、ロレックスやオメガなどといったメジャーブランドに後塵を拝するかもしれません。しかしながら時計業界においては、巨塔。前述したパテックフィリップ・オーデマピゲと並んで世界三大時計に名を連ねており、さらに1755年創業と、この三社の中においても最古という、深淵たる歴史を有したブランドとなります。

また、名うての職人らのDNAを受け継いだ、精密・精緻で美しい製品群を展開していることもヴァシュロンコンスタンタンの大きな魅力。とりわけ「レ・キャビノティエ」と称されるビスポークサービス工房にて紡がれる超複雑時計については、他の追随を許さないところです。

 

そんなヴァシュロンコンスタンタン、実は現代では珍しく、スポーツウォッチのコレクションがそう多くはないブランドです。

なぜ「珍しい」と言えるか。それは、スポーツウォッチが現行ラインには非常に多いためです。

例えばパテックフィリップであればスポーツラインに「ノーチラス」と「アクアノート」を。オーデマピゲであれば「ロイヤルオーク」「ロイヤルオーク オフショア」をなどといったように、二本柱くらいは構えているものですが、ヴァシュロンコンスタンタンは「パトリモニー」「トラディショナル」「マルタ」などといった、どちらかと言えばクラシカルなコレクション展開を意欲的に行っているのです。

とは言え、もちろんスポーツラインがあります。そしてヴァシュロンコンスタンタンのスポーツラインは、紛れもないラグスポです。それが、オーヴァーシーズです。

ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ 4500V

オーヴァーシーズは「海を超える」のコレクション名が指し示すように、「旅」が一つのコンセプトになります。そのため旧型には裏蓋に帆船―イタリアの探検家 アメリゴ・ヴェスプッチ帆船―がエングレービングされ、また現行ではシースルーバックから覗く22K製ローターに、コンパスが取り付けられました。

ヴァシュロンコンスタンタンのブランドのアイコンであるマルタ十字に範をとったベゼルや、エッジが効きつつも優美なラインを描くフォルムは、他のラグスポとはまた違ったラグジュアリーかつスポーティーな印象がありますね。

 

オーヴァーシーズは1996年の誕生と、「ラグスポ」として後発と思うかもしれません。

しかしながらその原型は、1977年まで遡ることができます。この年は、ヴァシュロンコンスタンタンの創立222周年として、Ref.222が発表されました。

ヴァシュロンコンスタンタン 222コレクション

※オリジナルのRef.222コレクション

上記がRef.222です。薄く上品なケース・ブレスレットを有しつつも、これらがシームレスとなった美しいフォルムはまさにラグスポですよね。1970年代に端を発するラグスポブームの中でも、傑出したエレガンスを有していると言えるでしょう。

ちなみに、オーデマピゲ ロイヤルオークやパテックフィリップ ノーチラスのデザインをジェラルド・ジェンタ氏が手掛けたことは前述の通りです。Ref.222も、氏による作品ではないかと囁かれていました。しかしながらRef.222を手掛けたのは、ドイツ出身のデザイナーであるヨルグ・イゼック氏でした。ヨルグ・イゼック氏はブレゲのマリーンやタグホイヤーのキリウムなどを手掛けたことでも知られています。

余談ですが、2022年に突如としてRef.222が復刻したことで、時計愛好家からのヴァシュロンコンスタンタンへの注目度がいや増したことは言わずもがなです。

 

そんなRef.222を引き継いだのが、オーヴァーシーズです。222由来のアイコニックなベゼルやケース・ブレスにかけての優美なライン等はそのままに、エッジを効かせることでいっそうのスポーティーを醸し出すこととなりました。

ラグスポと一口に言っても様々ですが、本当にオーヴァーシーズはこの「スポーティー」の強調のさせ方が巧みで、上品にまとまりすぎないデザイン性を有します。

 

なお、オーヴァーシーズは1996年以降、いくつかの世代交代を経てきました。現行は2016年に発表された、第三世代です。

ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ 4500V

第二世代までは8葉であったベゼルが6葉へと変わり、デザインが一新されました。従来のトノーフォルムは堅持しつつもベゼル下にディスクを導入することでラウンドフォルムが強調され、いっそうのラグジュアリーさを感じられるようになっております。また文字盤が広く取られたことで、視認性が向上しました。

さらに第三世代のオーヴァーシーズで特筆すべきは、シースルーバックが採用されるようになったこと!ヴァシュロンコンスタンタンの高度な仕上げと装飾をオーナーご自身がいつでも楽しめるというのは、雲上ラグスポならではの味わいですよね。

前述の通り「旅」がオーヴァーシーズのコンセプトの一つとなっているため、ローター部分にコンパスがエングレービングされているのも嬉しいところです。

ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ 4500V

加えてオーヴァーシーズは、「機能性」の面でもきわめて高い評価を獲得しています。ここが、ラグスポの中でもオーヴァーシーズが特別な存在になっている大きな理由のように思います。

オーヴァーシーズの防水性は150m。ケース直径41mm×厚さ11mmと、ラグスポらしい抑えられた薄さを実現しながらも日常使いに最適な150m防水というのは、非常にユーザビリティ高いですよね。

オーヴァーシーズは高度な耐磁性能をも有しているため、気軽に毎日のビジネスで使えるラグスポとしても、死角がないと言えるでしょう。

 

なお、現行オーヴァーシーズはインターチェンジャブル式ストラップが搭載されていることも、機能面の肝。

ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ 4500V

これは、工具なしにユーザー自身でストラップ交換ができる、というものです。

利便性に富んでいるのみならず、オーヴァーシーズはメーカー付属品としてデフォルトのメタルブレスレットの他、ラバーストラップ・レザーストラップが用意されているため、様々な「ラグスポ」の顔を楽しめることでしょう。

 

ちなみに、同じ世界三大時計ブランドのオーデマピゲ ロイヤルオーク及びパテックフィリップ ノーチラスと比べて、資産価値の点では「86点」となりました。

確かに近年のラグスポの実勢相場の動向を見てみると、まずノーチラスが急騰し、これに続いてロイヤルオークが高騰した、といった流れがあります。ヴァシュロンコンスタンタンのオーヴァーシーズは長らく落ち着いた相場動向を描いており、「再販価格」を見ると確かにこの二機よりも低くなります。

しかしながら「家宝として末永く愛せる」「次世代に引き継げる」といった点では、ヴァシュロンコンスタンタンの製品の資産価値は随一であることは、言うまでもありません。

なお、2019年以降、オーヴァーシーズもまた他のラグスポ同様に実勢相場をみるみると上昇させていき、2020年には定価超え。現在も定価2,926,000円(SS・3針モデル)のところ、中古であっても400万円~500万円超の値付けがなされております。

あらゆる面で死角を持たず、日常生活の相棒になってくれる雲上ラグスポの雄・オーヴァーシーズ。気になる方は、ぜひ一度お手に取って頂きたいと思います。

 

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④ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
98点 71点 91点 100点 61点

ドイツの至宝ランゲ&ゾーネ。1845年にフェルディナント・アドルフ・ランゲ氏によってドイツ グラスヒュッテに創業され、以降、「ランゲとその息子たち」のブランド名通り、一族による経営が振るわれてきました。

時計製造と言うと、スイスのイメージが強いかもしれませんが、実はドイツも聖地です。そしてドイツ グラスヒュッテの地に時計産業を根付かせるきっかけとなったのが、ランゲ&ゾーネです。現在、グラスヒュッテの土地にはランゲ&ゾーネを筆頭にグラスヒュッテ オリジナルやノモス、モリッツ・グロスマンなどといった有名時計メーカーが軒を連ねますが、アドルフ・ランゲ氏がこの地に時計産業を奨励した結果と言えるでしょう。

もっとも、ランゲ&ゾーネは時代に翻弄された結果、一度その歴史が途絶えています。

第二次世界大戦およびその後のドイツ東西分裂によって、グラスヒュッテの各種産業は国営企業として飲み込まれることに。ランゲ&ゾーネの名は、時計市場から長らく姿を消すこととなりました。

ランゲ&ゾーネ

出典:https://www.alange-soehne.com

しかしながら1989年にベルリンの壁が崩壊し、ドイツ東西統一が果たされます。

西側に亡命していたランゲ&ゾーネ四代目のウォルター・ランゲ氏はIWCやジャガールクルトのCEOを努めていた故ギュンター・ブルームライン氏とともに、1990年、ランゲ&ゾーネを再興したのです。

1994年には復興コレクションとして「ランゲ1」「サクソニア」「アーケード」「トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」の4モデルをローンチ。以降、長い歴史と高度な時計製造技術に裏打ちされた、類を見ない至高の銘品を世に送り出し続けてきました。ランゲ&ゾーネの、その丹念に作り込まれた外装と優美なムーブメントは、時計愛好家を魅了してやみません。

 

ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

そんなランゲ&ゾーネ、長らくスポーツウォッチやステンレススティール製ウォッチは手掛けてきませんでした。しかしながらブランド再興25周年にあたる2019年10月24日のその日、突如として「ラグスポ」に当たるオデュッセウスを発表します。

初のスポーツウォッチかつ初のステンレススティール製に加えて、初のねじ込み式リューズによる12気圧防水の実現。これまでのランゲ&ゾーネのウォッチとは異なるコンセプトを備えたモデルとして、時計業界に大きな一石を投じました。

 

もっとも「これまでとは異なる」とは言え、ランゲ&ゾーネらしい「至高」は健在。

ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

出典:https://www.alange-soehne.com/ja/odysseus

複雑な造形を持ったケース・ブレスレットは、サテン仕上げが基調となりつつもエッジ部分は鏡面とコンビネーションになっていることが見て取れます。さらにこれら仕上げは、当然のように丁寧かつ美しく施されます。ケース直径40.5mm×厚さ11.1mmと、ラグスポらしい上品さも十二分ですね。ちなみに、当店でオデュッセウスの実機レポートを作成したことがあったのですが、装着したスタッフ全員が口を揃えて「装着感が素晴らしく良い!」と。

ケース・ブレスやバックル厚が抑えられていることも要因としてありますが、これに加えてオデュッセウスのために設計されたブレスレットが良い仕事をしているのでしょう。この5連リンクのブレスレットはしなやかで、腕を動かしてもフィットするため、デスクワークの際にも邪魔にならない、といった意見もありました。

 

なお、ブレスレット・バックルには独自の調整機構が搭載されています。

まずバックル部分にはロゴが搭載されていますが、これを押したままにすることで長さ調節が可能となるエクステンションとして利用できます。近年のダイバーズウォッチの標準装備となりつつありますが、こういった微調整機能は重量のある時計の装着感を向上するのに、大いに役立つとあって、むしろタウンユースにももってこいとも言えるでしょう。

ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

また、5連リンクのブレスレットは付属の専用ピンによって分解でき、ブレス調整も比較的容易にできるとのことです(もっとも傷をつけるのは本意ではないので、調整時はメーカーや専門店にお任せしたいところですね)。

さらにデザイン面でも特筆すべき点が多々あります。

まずフォルムの大胆さ。非対称フォルムを作り上げるケース3時側のピラミッド型の張り出しですが、このプッシャーによってカレンダー操作を行うという独創性は、さすがランゲ&ゾーネ!ちなみに日付・曜日はこのプッシャーを使った早送りのみならず、針を使って戻すことになった、というのも驚かされますね。

ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

ランゲ&ゾーネらしいアウトサイズデイトにスモールセコンド、そしてアジュラージュと呼ばれる同心円状の溝が入った文字盤は、なかなか他社のラグスポではお目にかかれない代物です。

さらにムーブメントは、オデュッセウスのために製造されたL155.1 DATOMATICが採用されました。

ランゲ&ゾーネはムーブメントを自社一貫製造するのみならず、「一つのモデルに一つのムーブメント」という驚異の理念を有しています。そのため他コレクションから使いまわすのではなく、オデュッセウスのために新機種が発表された、というわけです。ちなみにDATOMATICは独語で日付を意味するデイト+オートマティックを組み合わせた独自用語です。

L155.1 DATOMATICにはラグスポらしく耐震性・耐衝撃性が備わっており、またテンプも新たに設計され、28,800振動/時のハイビート機となりました。

ランゲ&ゾーネ オデュッセウス

出典:https://www.alange-soehne.com/ja/odysseus

シースルーバックからグラスヒュッテ様式が踏襲された、美しい洋銀製3/4プレートにグラスヒュッテストライプ、そしてテンプ受けのエングレービングなどが鑑賞でき、ランゲ&ゾーネの至高を存分に味わい尽くせることでしょう。

 

惜しむらくは、どのラグスポに比べても、格別に入手困難なこと!

現在、ランゲ&ゾーネはオデュッセウスのラインナップとしてステンレススティールモデル、ホワイトゴールドモデル、チタンモデルを公開していますが、いずれもほとんど市場に出回らず・・・!

ステンレススティール製モデルは発表から3年が経過したこともあり、一般市場に時たま姿を現すものの、中古であっても1000万円超が当たり前といった相場感です。

ランゲ&ゾーネは手作業に拠る製造も多く、どうしても大量生産とは無縁。そのため、どの製品も稀少性はきわめて高いと言えます。一方で近年のラグスポ人気、そしてオデュッセウスそのものの魅力も相まって、従来のそれを遥かに上回る需要が世界中で見受けられており、今後のオデュッセウスの出回りがじょじょに増えてきたとしても、なかなか実勢相場は落ち着きを見せないことが予想されます。

時計業界屈指の超稀少ラグスポと言って良いでしょう。

 

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⑤ショパール アルパインイーグル

ショパール アルパインイーグル

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
86点 88点 91点 81点 65点

ショパールという時計ブランドをご存知でしょうか。恐らく「知る人ぞ知る」といった立ち位置であるとは思います。もっとも時計業界でのショパールの評価は「名門中の名門」です。

ショパールは1860年に創業した老舗の時計ブランドです。高品質なショパールの時計はヨーロッパの王侯貴族に愛されていき、国際的なブランドとなるのに時間はかかりませんでした。

1963年にはドイツの高級ジュエラー・ショイフレ家が経営を引き継いだことで、美しいジェムを扱ったレディースウォッチ、あるいはジュエリー分野等でも頭角を現していきます。とりわけ1976年にリリースした「ハッピーダイヤモンド」の大ヒットは、ショパールの栄光の歴史の一つです。独自の特許技術によって時計の文字盤上をムービングダイヤが美しく転がるこのハッピーダイヤモンドは、今やレディース時計の定番です。

また、1990年代に入ると、ショパールはいち早く自社開発ムーブメントの製造に着手し、1996年には創業者ルイ-ユリス・ショパール氏の名前にちなんだ「L.U.C」を発表しました。

※今でこそ自社製ムーブメントを手掛ける時計メーカーは少なくありませんが、もともとスイスは分業体制が主流で、ムーブメントサプライヤーが製造したエボーシュ(半完成品ムーブメント)をもとに時計製造が行われてきました。エボーシュを用いることはユーザーに低価格で、高性能かつ信頼性高い時計を提供できることを意味します。一方でデザイン(レイアウト)やパワーリザーブなどといった性能の自由度を使用する時計ブランドが享受しづらいといった側面もあります。そのため自社の独自性や付加価値を打ち出しやすい自社開発ムーブメントは今や時計業界のトレンドの一つなのですが、1990年代という早い時点で既にこれを行っていたショパールが、いかに先見の明に優れているか。そして自社開発ムーブメントを開発・製造できるだけの実力を有しているかがおわかり頂けるのではないでしょうか。

 

さて、そんな名門の呼び声高いショパールですが、やはりスポーツラインはそこまで多くはありませんでした。当然ラグスポもコレクションには見受けられませんでした。

しかしながら2019年に突如としてリリースされたラグスポこそが、アルパインイーグルです!もっとも、アルパインイーグルも過去のレガシーから着想を得ています。1980年代にショパールが手掛けていたスポーツライン「サンモリッツ」に原型を見ることができます。

ショパール アルパインイーグル

そんなアルパインイーグルは、「アルプス」と「イーグル(ワシ)」の力強さが伝わるラグスポです。

ちなみにサンモリッツはスイスのアルペンスキーリゾートに由来していました。ショパールの、スイスの自然への愛の深さが伝わるネーミングですね。なお、アルパインイーグルの基幹モデルの文字盤には独特の装飾が施されています。これは、ワシの瞳の虹彩がモチーフになっているとのことです。

 

アルパインイーグルもまた、他のハイメゾンらしく高度な仕上げが施されたケース・ブレスレットの美しさを存分に味わえるラグスポですが、その「スティール素材」についても一工夫あります。

と言うのも、ショパールはアルパインイーグルのステンレススティールに「ルーセント スチールA223」という高性能スティールを用いているのです。この高性能スティールは一般的なそれと比べて1.5倍もの摩耗耐性と優れた硬度を有しており、かつ金属アレルギーを誘発しづらいといった特性があります。アルパインイーグルが今回の当店スタッフへのアンケートで「機能性91点」という高評価だったのも納得ですね。なお、防水性は100mです。

ショパール アルパインイーグル

当然ムーブメントも、ショパールらしく高性能。

アルパインイーグルはラージ41mmモデル、スモール36mmモデル、クロノグラフXLの44mmモデルがラインナップされていますが、それぞれサイズに合ったムーブメントが搭載されております。ショパールのグループメーカー「フルリエ」が製造したエボーシュをベースにしており、その信頼性は多くの業界人が墨をつけるところです。

 

さらにアルパインイーグルのラグスポとして嬉しい点。それは実勢相場が他のラグスポと比べると落ち着いており、中古であれば150万円台~手に入れられる、ということです。

一方でアルパインイーグルの人気は年々高まっている事実は、リセールバリューの観点からも無視できません。

この人気を裏打ちするのが、当店でのアルパインイーグルの売れ行きです。どういうことかと言うと、当店でアルパインイーグルの売れ行きを調べてみたところ、なんと多くの個体が仕入れから成約まで(いわゆる滞留日数)一か月を要していない、ということが判明しました。低価格帯のブランドだと珍しいことではないのですが、100万超の高級スポーツウォッチとしては驚異の回転率です。いかにアルパインイーグルの人気が高いかを如実に表します。

そのため業者間ではアルパインイーグル争奪戦というものがじょじょに起き始めており、買取相場はジワジワと上り傾向に。今後、さらに実勢相場が上がってしまう可能性もあるため、まだお得な今のうちに買っておきたいラグスポですね。

 

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⑥ジラールペルゴ ロレアート

ジラールペルゴ ロレアート デザイナー

出典:https://www.girard-perregaux.com/ja/laureato/

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
86点 86点 86点 68点 52点

ジラールペルゴもまた、ショパール同様「知る人ぞ知る」。一般的な知名度はそう高くないかもしれませんが、紛れもない名門時計メゾンです。

とは言え、近年ではこのロレアートが火付け役となり、時計業界ではにわかに人気が高まっていることを既にご存知の方も多いかもしれません。

 

ジラールペルゴは1791年と、現存する時計ブランドで4番目に深い歴史を持つことが大きな特徴です。自社一貫製造を伝統的に担ってきた点でも稀有ですが、加えて1880年という非常に古い記録から、ドイツ海軍将校用に腕時計を開発したという歴史的エピソードを垣間見ることができる老舗中の老舗です。

さらにジラールペルゴの創業者一族フランソワ・ぺルゴ氏は日本に初めてスイス時計を正規輸入した人物であり、和時計として独自進化を遂げていた日本市場において、スイス時計の普及に尽力したことでも知られています。氏は現在、横浜の外国人墓地に永眠しており、今なお時計愛好家が墓参したり、日本のジラールペルゴ代理店によって偲ぶ会が催されます。

 

そんなジラールペルゴのラグスポと言えば、ロレアートです。

現行ロレアートは2016年に誕生していますが、ラグスポ黎明の1975年、そのオリジナルが発表されました。

ジラールペルゴ ロレアート

出典:https://www.girard-perregaux.com/ja/

オクタゴン(八角形)フォルムを基調に、重層構造としたベゼル。ケースとブレスレットが一体型となった全体像。オーデマピゲ ロイヤルオークに端を発するラグスポのトレンドを巧みに取り入れた初代ロレアートは高い評価を獲得したと聞きます。そこから約40年の時を経て、いっそう時計市場が拡大し、ラグスポ市場も確立した2016年に限定復刻、そして翌2017年にレギュラー入りを果たした現行ロレアートの人気は、今や飛ぶ鳥落とす勢いと言って良いでしょう。

ちなみにロレアートの名前は「資格のあるもの」というイタリア語に由来しているとのことです。

 

現行ロレアートもまた、立体感と高級感あるオクタゴンベゼルに、ケース・ブレスレットが一体構造となった美しきラグスポをお楽しみ頂けます。ちなみにベゼルは円の上にオクタゴンベゼルが重ねられたデザインとなっているため、他のラグスポとは一風変わったエレガンスを楽しめるのも素晴らしいですね。ともすればラグスポは似たようなデザインに陥ることもありますが、ロレアートは高級感やエレガンスの中にも、確かな存在感を放ちます。

さらに言うと、ジラールぺルゴが名門ゆえ、特に仕上げのコンビネーションが美しいのも、高級時計オーナーとしては嬉しいところ。ロレアートの基幹モデルはケース直径42mm×厚さ10.88mmと薄いにもかかわらず上品な立体感があるのは、デザインの独創性や高度な仕上げのなせる業となっています。

ジラールペルゴ ロレアート

加えて、ロレアートの魅力の一つは、コレクションの多彩さです。

ステンレススティールモデルを始め、多彩な素材やデザインのモデルが用意されており、ご自分の気に入ったラグスポが見つけやすいのも、ロレアートのオススメできる点となっています。

基幹モデルであれば中古の実勢相場150万円台~となっていますが、お値段以上の満足感を得られることは間違いありません。

 

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⑦ゼニス デファイ エリート

ゼニス デファイ クラシック

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
81点 86点 88点 65点 88点

1865年創業のゼニスもまた、時計業界では名門の立ち位置を揺るがせません。大正期より日本に輸入された歴史があり、長らく日本では「ゼニット」といったフランス語読みで親しまれてきましたね。

なお、ZENITHは英語で天頂を意味していますが、これは1900年にパリ万博で金賞を受賞した、同名の懐中時計用ムーブメントにちなみます。

そう、ゼニスは創業時からムーブメント製造には一家言持ってきたブランドであり、いち早く近代的な工場を構えることで、上質な時計の生産体制を確立してきました。とりわけ1969年に発表された自動巻きクロノグラフ「エルプリメロ」は、誕生から60年以上経過する今なお傑出した機械としてゼニスの大きな強みになっております。

 

そんなゼニスのラグスポとしてご紹介したいのは、デファイ クラシックです。

ゼニス デファイ クラシック

デファイは1960年代後半から既にゼニスで用いられてきた用語で、「挑戦する」という意味を持つ、とのこと。
もともとはゼニスにとってスポーツラインといった立ち位置でしたが、2017年にコレクションが一新され、ラグスポと呼ぶべき特性を獲得するに至りました。

ゼニスがラグスポを意識していたかどうかはわかりませんが、ケース・ブレスレット(またはストラップ)が一体型となったシームレスなフォルムに、サテン仕上げを全面に施しつつも随所のエッジや鏡面仕上げが見受けられる立体感・高級感は、ラグジュアリーにしてスポーティー。ゼニスの代表コレクションというとクロノマスターが主流でしたが、デファイの刷新以降、当店でもゼニスの人気ランキングを行うと、上位をデファイが独占するに至っています。

 

デファイはエルプリメロを搭載した、アヴァンギャルドなクロノグラフモデルが人気ですが、エレガンスな「デファイ クラシック」はラグスポの特徴を巧みに取り入れていると言えます。

このクラシックはエルプリメロではなく、基本的にエリートを搭載します。

ゼニス デファイ クラシック

ゼニスと言えばエルプリメロ、といったイメージも強いですが、エリートもまた同社を代表する基幹ムーブメントの一つ。シンプルな3針機能となっているがゆえ、薄さが強調されたラグスポとの相性は抜群と言えるでしょう。

実際、デファイ クラシックのケースは直径41mm×厚さ10.75mmとなっており、とても上品ですよね(ちなみにエルプリメロ搭載デファイは厚さ14.5~15mm程度が主流)。

デファイらしいエッジの効いたスポーティーなフォルムと上品な薄型設計によって、スーツの袖口からも品よく収まっているのがポイントですね。

 

なお、デファイ クラシックもまたバリエーションが豊富ですが、上記の画像のような、アヴァンギャルドなスケルトンモデルがとても多くお問合せを頂きます。

実勢相場もブレスレットモデルで70万円台~と、ラグスポの中ではリーズナブルに入手できますので、初めてラグスポをご購入になる方にもお勧めです。

 

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⑧ウブロ クラシックフュージョン ブレスレット

ウブロ クラシックフュージョン ブレスレット

出典:https://www.instagram.com/hublot/

ラグジュアリー スポーティー 機能性 リセールバリュー 知名度
81点 75点 71点 65点 91点

ブランド創業時から「FUSION―融合―」を掲げ、伝統的な高級時計と前衛的な世界観を融合させてきたウブロ。

2005年、ウブロ人気の火付け役となったビッグバンが有名ですが、クラシックフュージョンこそウブロの伝統を体現するコレクションと言えます。

ウブロは1979年、イタリア人のカルロ・クロッコ氏によって創設されました。ウブロはフランス語で舷窓を意味しており、この舷窓をモチーフとした「クラシック」という薄型時計でデビューを果たします。
このクラシック、高級時計に定番のゴールド製ケースでありながらも、ラバーベルトを付属しているという、非常に新しすぎる手法が採られたことで話題になりました。

このクラシックに範を取りつつ、現代風にリファインしたのが現行クラシックフュージョンです。

ウブロ クラシックフュージョン

ビッグバンの「デカ厚」とはまた違った様相を呈するクラシックフュージョン。
基幹モデルのケース直径は42mmと大きいものの、ケース厚は10.5mmほどに抑えられています。またビッグバンは多層構造によってダイナミックなインパクトを強めていますが、一方のクラシックフュージョンを形成するパーツは大きく三つとなっており、すっきりとしたフォルムに仕上がります。
また文字盤も華美な装飾は見受けられず、ドレッシーが基調となりました。

 

なお、ウブロと言うとラバーストラップが主流でしたが、近年ではブレスレットモデルにも力が入れられており、クラシックフュージョンも御多分に漏れず。

ウブロ クラシックフュージョン

出典:https://www.instagram.com/hublot/

ケースからブレスレットにかけて流れるようなラインを描く様は、まさにラグジュアリー&スポーティーですよね。

なお、防水性は5気圧とビッグバンに比べると低くなるものの、日常防水といった面では不足とは言えません。

クラシックフュージョン ブレスレットの現行のバリエーションは、33mm・38mm・42mmの3サイズ。チタン・ブラックセラミック・キングゴールドの素材が展開されております。

また定番の3針の他、レーシーなクロノグラフモデルも人気があり、ウブロ人気を下支えしています。

 

クラシックフュージョンはビッグバンと比べて、お値段が抑えめなのも嬉しいところ。

3針のチタンモデルであれば中古70万円台~となっており、ウブロほどのネームバリューの高級時計の価格帯としては、お得感が強いですよね。
ラグスポを購入するうえで、良い選択肢の一つになるのではないでしょうか。

 

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まとめ

最近トレンドになっているラグスポについて、まとめてみました!

オーデマピゲ ロイヤルオークやパテックフィリップ ノーチラスを筆頭に、至高のラグジュアリー&スポーティーな世界観をお伝えできていれば幸いです。

 

なお、近年では加工技術が発達し、ミドルレンジ~リーズナブルクラスの時計でも、ラグスポの造形や仕上げを楽しめる個体が増えつつあるといった側面もあります。例えばモーリスラクロアのアイコンやチューダー ロイヤル、ベル&ロスなどは10万円台~30万円台で楽しむことができ、初めてのラグスポとしてもオススメ。

流行とともに、ますます広がりを見せるラグスポの世界を、今後も追っていきたいと思います!

文:鶴岡

 

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この記事を監修してくれた時計博士

田中拓郎(たなか たくろう)

高級時計専門店GINZA RASIN 取締役 兼 経営企画管理本部長
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター

当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年

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