歴史、ステータス、時計としての価値。
どれをとっても最高峰と言えばパテックフィリップを置いて他にはありません。創業180年の実力のもと、超絶技法が駆使されたコンプリケーションを始め傑作時計を数多く輩出しており、芸術と呼ぶに等しい銘品が数知れず存在します。
しかも、現在パテックフィリップの需要が世界的に非常に高まっており、相場は右肩上がりの状態。供給を抑えることでブランド価値を高めており、常に品薄なことも同社製品の大きな特徴と言えるでしょう。
そんな中で売れ筋というのは、「まだ手に入りやすく」「しかも評価が高い」ということを表します。
この記事ではパテックフィリップをこれから購入しようと思う方に向けて、東京銀座の高級時計専門店GINZA RASINの2021年上半期の最新売上データをもとに、最も人気が高かったモデルをピックアップしてみました!
パテックフィリップの中で一番人気が高いモデル
アクアノート エクストララージ 5167/1A-001



[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] 324SC
[パワーリザーブ] 最大44時間
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 120m
[重さ] 142g
[ケースサイズ] 直径40.8mm×厚さ8.1mm
現在パテックフィリップの人気ナンバーワンは、スポーツ・エレガンスきわまる「アクアノート」です。
1997年にノーチラスに次ぐパテックフィリップのスポーツモデルとして誕生しました。
ノーチラスよりもスポーツテイストが強く、また、スペックもアクティブ寄りであることが特徴です。
でも、パテックフィリップの人気シリーズと言えば、ノーチラスやカラトラバがまず思いつきますよね?
実際、カラトラバは初出1932年、ノーチラスは1976年ですので、同社の長い歴史の中ではアクアノートは新参者な印象が強いかもしれません。
しかしながらアクアノートを見て、ちょっと試着していただければその完成度の高さがノーチラスと決して遜色のないものだとおわかりいただけます。
むしろ、クラシカルなカラトラバとスポーティーなノーチラスの良いとこどりをした外観で、どのモデルとも一線を画しております。
多角形ながら丸みを帯びたケース。暗闇でも視認性を確保する夜光アラビアインデックスと優美な時分秒針。
そしてアクアノートをアクアノートたらしめる格子模様のブラック文字盤は、スポーツウォッチなのに見ていると引き込まれるような気品や美しさを感じさせます。
出典:https://www.patek.com/ja/
これだけ品格があるのに、120m防水という堅牢性も特徴的です。
確かに120m防水程度は、今では珍しくありません。ロレックスはほとんど全てのシリーズで100m以上の防水性能を堅持していますし、中には1,000mを超えるものも。
しかしながら、パテックフィリップほどの雲上ブランドはあまり高い防水性が確保されていないことが少なくありません。品格を保つために、薄型設計にしてあることが多いためです。
パテックフィリップレベルのブランドでここまでのスペックというのはアクアノートならではでしょう。実際ノーチラスは120m防水ですが、カラトラバなどドレスラインは日常生活用防水に留まります。
出典:https://www.patek.com/ja/
なお、世界的な人気はノーチラスに軍配が上がります。
しかしながら流通量は決して多くはなく、品薄すぎてなかなか入荷できないこと。ちなみに正規店では、予約すら受け付けていないようです。
さらに価格が上がりすぎて誰もが気軽に手に入れられるような一本ではなくなってしまったことが売れ筋に大きな影響を与えている状態です。
具体的な相場を提示しますと、最もシンプルなSS製3針モデルのノーチラス5711/1Aの青文字盤は、現在の新品並行相場が1500万円を超えてきました(数年前は500~600万円程度)。
中古であっても1300万円を切ることはありません。
正直なところ、ノーチラス5711/1Aはランキング対象外のモデルになっているといえます。
もっとも、アクアノートもまた決して低い相場ではありません。
5167/1A-001は、2021年の新品並行相場を700万円超まで上げてきており(コンディションによるが、中古でも600万円超えがほとんど)、国内定価は2,860,000円であることを考えると400万円以上のプレミアがついています。
パテックフィリップはもともと製造本数が多いブランドではないため、今後も生産本数が需要に追いつくとは考えづらく、まだまだ相場を上げる可能性があります。
パテックフィリップのスポーツモデルが欲しい方は、まだ売れ筋にランクインできてる今のうちにご購入されることをお勧めいたします。
ちなみに2009年バーゼルワールドで発表された18金ローズゴールド製のアクアノート エクストララージ(5167R-001)も人気です。上品なローズゴールドとブラックダイアルのコントラストが美しく、ラグジュアリーな一本として世代を超えて愛されています。
ただ、他のスポーツモデル同様に手に入りにくい状態が続いているので、相場が上がってしまう前に手に入れた方が賢明です。
価格に関しては並行価格は900万円台~となっており、ステンレスモデルを大きく上回る相場となっています。
パテックフィリップの中で人気が高いモデルとは?
パテックフィリップの2番人気はアクアノート トラベルタイム 5164A-001です。
アクアノート トラベルタイム 5164A-001



[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] 324 SC FUS
[パワーリザーブ] 最大45時間
[ケース材質] ステンレススティール
[防水] 120m
[重さ] 100g
[ケースサイズ] 直径41.0mm×厚さ10.2mm
5164A-001はホームと目的地の時刻を表示するデュアルタイムゾーン機構「トラベルタイム」を搭載したアクアノートです。二つの時間帯の昼夜表示、ポインターデイト、センターセコンドを備え、実用的なアクアノートとして40代・50代を中心に支持を集めています。
パテックフィリップ×GMTのイメージはあまりないかもしれませんが、そのスペックは他の有名ブランドのGMTを遥かに凌駕しています。
出典:https://www.patek.com/en/home
2011年に生み出され、絶大な支持を集める5164A-001。これ程までに評価されるのはトラベルタイム初の自動巻き機構が搭載されているからです。
伝統的な手巻き式も機械式時計の魅力ですが、やはり日常使いを考えると自動的にゼンマイを巻いてくれる自動巻きは現代のライフスタイルにマッチしています。
雲上ブランドの複雑機構モデル×スタイリッシュなデザイン性を持つこともあり、アクアノート屈指の人気作に数えられるようになりました。
3番人気はカラトラバの名作 3919Jがランクインしています。
近年のパテックフィリップはスポーツウォッチが高い評価を得ていますが、永遠のクラシックとも称されるカラトラバの人気も未だ健在です。
カラトラバ 3919J



[駆動方式] 手巻き
[キャリバーNo.] Cal.215
[パワーリザーブ] 最大43時間
[ケース材質] イエローゴールド
[防水] 30m
[重さ] 47g
[ケースサイズ] 直径33.0mm×厚さ6.5mm
カラトラバは1932年に誕生した歴史深いドレスウォッチです。
薄型で上品なデザインが何よりの魅力で、「永世定番」「ラウンドウォッチの模範」とまで称される銘品です。
長い歴史の中で多数のバリエーションを持ちますが、カラトラバからはこちらのドルフィン針とスモールセコンドが特徴的な3919Jがランクインしました。
3919Jはパテックフィリップの顔として広告イメージにも採用され、惜しまれながらも2006年頃に製造が終了したモデルです。発売当時は、海外で絶大な人気を誇ったモデルですが、生産が終了した現在では日本での人気も高まっています。
ムーブメントは1976年に登場して以来、多くの手巻式に採用されてきた信頼性の高いCal.215を採用しています。
左:カラトラバ 3919G 右:カラトラバ 3919R
3919シリーズではイエローゴールドの他にホワイトゴールド「3919G」、ローズゴールド「3919R」といったラインナップも人気です。
パテックフィリップの4番人気は、こちらもカラトラバの定番と称される 5119G-001です。
カラトラバ 5119G-001



[駆動方式] 手巻き
[キャリバーNo.] Cal.215PS
[パワーリザーブ] 最大44時間
[ケース材質] ホワイトゴールド
[防水] 30m
[重さ] 51g
[ケースサイズ] 直径36.0mm×厚さ7.43mm
Ref.5119は3位にランクインした3919の後継機として36mmにサイズアップをして登場したモデルです。ベゼルには鋲打ち模様と言われるホブネイルパターンが刻まれており、カラトラバらしい高級感のあるクラシカルなデザインを持ちます。
現代人の腕にしっくり合うサイズ感で作られており、ビジネスとの相性が良いことから、こちらも人気は絶大です。
派手さはありませんが、伝統的な機械式時計の魅力をじっくり味わえるモデルだといえるでしょう。
左:カラトラバ 5119J 右:カラトラバ 5119R
3919と同じく5119にも幾つかのバリエーションが存在します。
悪目立ちしないホワイトゴールドに需要が集まりがちですが、イエローゴールド「5119J-001」、ローズゴールド「5119R-001」もカラトラバ屈指の売れ筋として注目されています。
ノーチラスやアクアノートのような高騰は見受けられず、中古であれば100万円台で買えることが、上位に食い込んだ要因と言えるでしょう。
5番人気はノーチラスのプチコンプリケーション 5712/1A-001です。
ノーチラス プチコンプリケーション 5712/1A-001



[駆動方式] 自動巻き
[キャリバーNo.] Cal.240PS IRM C LU
[パワーリザーブ] 最大48時間
[ケース材質] ホワイトゴールド
[防水] 60m
[重さ] 121g
[ケースサイズ] 直径43.0mm×厚さ8.52 mm
ノーチラスは、言わずと知れたパテックフィリップ随一の人気スポーツウォッチ。1976年、かの有名なジェラルド・ジェンタによってデザインされて以来、オリジナルの意匠はそのままに多彩なデザイン・機能の派生モデルを生み出してきました。
こちらの通称「プチコン」もまた非常に評価が高く、長年愛され続けてきた一本です。文字盤を見ると、その多機能さが一目でおわかりいただけるでしょう。
ポインターデイト、ムーンフェイズ、パワーリザーブとあまたの便利機能を備えつつも、それが巧妙な配置で文字盤に並び、むしろ端正な表情を構えます。
ノーチラスらしい薄型、そしてパテックフィリップが誇る多機能ムーブメントCal.240PS IRM C LUをシースルーバックから垣間見ることができるのも時計愛好家には嬉しいポイントとなります。
近年のノーチラスの相場高騰は凄まじく、2021年6月現在の平行新品相場は何と驚異の1350万円〜。
元々の定価は4,785,000円だったので、3倍に迫る勢いで高騰しています。
それに伴い品薄状態がずっと続いており、この傾向はしばらく続きそうです。
なお、今回ノーチラスは5712/1A-001がランクインするだけに留まりました。
ノーチラスのド定番5711/1Aは今回上位にランクインしていません。
その理由は冒頭でもお伝えした通り、新旧問わずノーチラスは本当に需要が集まっており、なかなか市場に出回らないからです。
比較的手に入れやすい 3800/1A も殆ど入荷がなく、人気はあれど手に入らないのが現状です。
出典:https://www.patek.com/en/home
まとめ
パテックフィリップの、当店での人気売れ筋トップ5をご紹介いたしました。
パテックフィリップの特徴として、相場が上がったから需要が減るということは殆どありません。
相場が上がっても人気モデルは売れ続け、むしろより人気を博すこともあります。
現在異常なほどの値上がりを続けていますが、市場では品薄続きで、なかなか手に入りづらいモデルが多いです。
人気商品にしろそうでないにしろ、本当にパテックフィリップで欲しいモデルがある方は出会った時に買うことをお勧めします。
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この記事を監修してくれた時計博士



田中 拓郎(たなか たくろう)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN シニアマネージャー
当サイトの管理者。GINZA RASINのWEB、システム系全般を担当。スイスジュネーブで行われる腕時計見本市の取材なども担当している。好きなブランドはブレゲ、ランゲ&ゾーネ。時計業界歴12年