冒険家の為に作られたモデル「エクスプローラー」はロレックスファンのみならず、世界中の時計好きに愛用される定番スポーツウォッチです。
1953年にエベレスト登頂の公式スポンサーになったことで世界中で注目を集めるようになり、現在はビジネスでもカジュアルでも身に着けられる万能な時計として人気を博しています。
また、1972年に発売された洞窟探検用モデル「エクスプローラーII」も「I」にはない独特な個性を持つ時計として人気です。
そこで今回は「I」と「II」で全く雰囲気が違う「エクスプローラー」について是非知ってもらいたい基礎知識をまとめてみました。
エクスプローラーを持っている人はもちろん、エクスプローラーが気になっている方に必見の内容となっています。
ロレックス エクスプローラーの歴史
エクスプローラーは人類未踏の地へチャレンジする探検家(エクスプローラー)のために、1953年に開発されたモデルです。
実用性を最重視したシンプルなデザインであることが特徴で、正確に時刻を確認できる高い視認性にも注目されました。
冒険家が身に着ける時計はとにかくタフでなければなりません。すぐに壊れるようなヤワな時計では冒険家のパートナーとは認められないため、どんなに過酷な状況でも動き続ける時計であることを証明しなければなりませんでした。
そこでロレックスはエクスプローラーの実用性を証明するためにメディアを使ったイメージ戦略を実行します。
それは「公開実験」です。
ロレックスは「エベレスト登頂への同行」など数々の偉業に挑戦する人に自社の時計を同行させてもらい、エクスプローラーの知名度を高めるとともに過酷な環境でも壊れる事なく最後まで役目を果たすことができることを証明したのです。
その戦略は功を奏し、エクスプローラーは最高の実用時計として高い評価を獲得し、瞬く間に人気モデルとなります。
エクスプローラーIIの誕生
エクスプローラーが発売されたのは1953年ですが、エクスプローラーIIが発売されたのはさらに時代が下って1972年のこと。IIが発表された理由はエクスプローラーIの人気に陰りがみられたからです。
どんなに優れたモデルでも時間が経つにつれ飽きが来ます。そのマンネリを打破するために生まれたモデルこそエクスプローラーIIだったわけです。
※詳細は後述しますが、初代エクスプローラーII 1655がこちら
エクスプローラーⅡは探検家用モデルから洞窟探検家用モデルに発展させた新たなるプロ仕様の時計です。日付機能やリューズガードが装備され、シンプルなエクスプローラーIと比較すると機能性が重視されました。
エクスプローラーIとIIの違い
エクスプローラーIとIIではデザインに大きな違いがあります。ここでは両モデルの違いについて触れていきます。
まずはエクスプローラーI。
前項でもお伝え致しましたが、エクスプローラーIは実用性を最重視したシンプルな時計です。カラーバリエーションはブラックのみとなっており、スッキリとした印象を与えます。
新旧によって細かな違いこそありますが、概ね1953年の誕生から大幅にデザインを変えることなく今に至ります。
続いてはエクスプローラーⅡについて。
エクスプローラーⅡは洞窟探検家用として誕生した耐久性と機能性が重視されたモデルです。エクスプローラーIにはなかった日付機能やリューズガードが装備され、特徴的な24時間針が採用されました。
また、現行モデルであるRef.216570には時計の「揺れ」対策としてパラクロムゼンマイに、パラフレックスショック・アブソーバが装備されています。この機能は衝撃等によって時計のテンプ部分にある天真が折れたり破損しないようにするシステムです。
簡単にいうと「壊れにくく」なっているのです。
洞窟探検には揺れがつきものですので、その対策というわけですね。
尚、エクスプローラーIIは黒と白の2種類がラインナップされています
ロレックス エクスプローラーの軌跡
エクスプローラーは1953年に誕生してから現在まで幾度なく進化を重ねてきました。
ここではその軌跡を辿ってみましょう。
【1953年】初代モデル Ref.6350の誕生
初めてエクスプローラーとしてロレックスの広告に掲載された記念すべき1stモデル。長短針ともにペンシル針でCal.A296搭載のセミバブルバック。ブラック文字盤のハニカムダイヤルが多いことが特徴的です。防水性能は50mを誇りました。
尚、同時期にはノンクロノメーター仕様であるRef.6150も同時に展開されています。
【1954年】2nd モデル Ref.6610の誕生
初代モデルが発売されてから僅か1年後には、両方向巻上げ式のCal.1030を搭載した2ndモデルが発売されました。
フラットな裏蓋、ゴールドインデックス、ダイヤルの外周ラインといった特徴があります。
【1960年代】海外向け2ndモデル Ref.5500/Ref.5504



ケースサイズ:直径34mmまたは36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.1530またはCal.1520
防水性:50m(当時)
製造期間:1960年代~1970年代前半頃
1960年代には日本国内ではなく海外向けに作られたRef.5500、Ref.5504が展開されました。Ref.5500はイギリスで販売されたモデルで、34mmケースが採用されていることが特徴。通称ボーイズエクスプローラーと呼ばれます。
Ref.5504は北米向けに作られたドレスラインとして人気を博しました。なお、5504の方は本来エアキングとしてのリファレンスであったことから、ビッグエアキングと呼ばれることもあります。
このようにエクスプローラーは誕生してから約20年ほど試行錯誤期間が続きます。この時期のモデルは着々と進化を遂げたわけではなく、買い手のニーズに合わせてデザインやコンセプトを開発していく姿勢が取られていたためです。
なお、この世代までのエクスプローラーが一般市場に出回ることはほとんどなく、その稀少性からオークション級の価格で売買されることもあります。
【1963年頃】3rdモデルRef.1016



ケースサイズ:直径36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.1560またはCal.1570(ハック無・有)
防水性:100m(当時)
製造期間:1960年頃~1989年頃
現在のエクスプローラーの原型となったともいえるエクスプローラーI 3rdモデルRef.1016。約30年にも渡って製造された、エクスプローラーきってのロングセラーとなります。さらに言うとエクスプローラーの基本デザインを確立した世代としても有名です。
1016は生産時期と搭載ムーブメントの違いによって前期・後期モデルに分けられます。
前期型はハック機能(リューズが引くと秒針がストップする機能のこと)無のCal.1560またはCal.1570を搭載した個体。そして後期型はハック機能有のCal.1570を搭載した個体となります。
さらに前期型には「初期」として分類される文字盤仕様があります。
この初期文字盤は、前項でご紹介したRef.6610で使われていた(らしい)ミラーダイアルがそのまま採用された仕様です。
ミラーダイアルは1967年頃までロレックスで使われていましたが、マットダイアルへの移行期にあたる1967年前後、恐らく同一リファレンス内で併用されていたのでしょう。
なお、製造年が新しくハックという便利機能がついた後期型の方が人気は高い傾向にあります。
ただし、この初期文字盤のミラーダイアルの中でも、キレイなブラウンに変色した「トロピカルブラウンダイアル」はファン垂涎のレア仕様としてきわめて高い相場を築いています。
詳細は、後述している「レアリティの高いエクスプローラー」をご確認ください。
【1971年】エクスプローラーIIの初代モデルRef.1655



ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.1570
防水性:100m(当時)
製造期間:1971年~1984年
白くペイントされたペンシル型の長短針にビビッドカラーの大型24時間針、スクエアインデックスを採用するなど、スポーツロレックスの中でも最もデザイン的なチャレンジが試みられた初代エクスプローラーIIが1971年に誕生しました。
現行エクスプローラーIIとは雰囲気が異なるこのモデルは1984年頃まで販売され、ロングセラーモデルとなりました。
現行での文字盤カラーは黒・白がラインナップされていますが、初代は黒一色のみとなります。
しかしながら実は24時間針にカラバリがあると言われており、レッドやオンレジ等が確認されます(経年変化説もあり)。
なお、エクスプローラーII 1655もまたロングセラーであるため、製造年代によって文字盤がマークI、マークII、マークIII、マーIV、マークVに種類分けされます。
※マークIV
最も稀少性が高いのは最初期にのみ製造されたマークIダイアルで、秒針にドットが無いストレート針が使われています。
その後1972年頃から秒針にドットが付き、ロゴ表記などが大きくなったマークIIダイアル、1974年頃からセンタースプリット(「レアリティの高いエクスプローラーで詳述)に移行していき、その後量産されたマークIV、マークVと変遷していきます。
【1988年】エクスプローラーII 2ndモデルRef.16550



ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3085
防水性:100m(当時)
製造期間:1984年~1988年
Ref.16550は1980年代半ばに登場したエクスプローラーIIの第2世代です。生産期間がわずか4、5年しかないという希少なモデルであり、レアリティの高い個体が多く存在しています。
ちなみに、この4、5年の間でも「実際の製造は二年ほど」とか、「1988年に再販された」とか、様々な噂が飛び交う非常にミステリアスなリファレンスです。
ただ、外装デザインはぐっとモダンに近づきました。メタルベゼルやドットインデックスなど、現行エクスプローラーIIのデザインコードが出来上がったと言えます。
なお、Ref.16550より白文字盤がバリエーションに追加されました。
デザインのみならず、風防がサファイアクリスタルになったり、ムーブメントがより高精度なCal.3085へと移行したりと、大幅なスペックアップが加えられています。
ただ、なぜ16550だけ製造期間がここまで短いのかは、明かされていません。一説にはCal.3085が初期不良が多かった、というものがありますが、現在市場に出回っている16550の性能が特別悪いと言った話は聞きません。
【1990年】エクスプローラーI 4thモデルRef.14270



ケースサイズ:直径36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3000
防水性:100m
製造期間:1990年~2001年
ロングセラーとなったRef.1016の後継機として登場したエクスプローラーIの4世代目Ref.14270。
サファイアクリスタル製のフラット風防を採用し、インデックスはメタルフレーム付きに改良されました。Ref.1016から大幅にダイヤルデザインが改良されており、デザインが現行モデルに近づいています。
2020年現在も中古市場で非常によく売買されており、その人気は留まるところを知りません。
ちなみに、14270こそ、日本国内でのロレックス人気の火付け役と言われることがあります。
月9ドラマで、木村拓哉さんが実際に着用していたことで認知度が急速に広まったためです。
なお、14270は数年前と比べると相場を上げているとは言え、中古価格は概ね落ち着いております。ただし、後述するブラックアウト(3・6・9インデックスに白い着色がない仕様)は長らくプレミア価格を築いています。
【1991年】エクスプローラーII 3thモデルRef.16570



ケースサイズ:直径40mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3185またはCal.3186
防水性:100m
製造期間:1991年~2011年
前モデルのRef.16550とほぼ変わらないデザインですが、最たる違いはCal.3185へムーブメント移行を果たしたことです。
Cal.3185はGMTマスターII 16710などにも搭載されたムーブメントで、精度やメンテナンス性の向上が図られました。
なお、2007年以降に製造された個体はこのCal.3186に耐衝撃性を加えたCal.3187が搭載されることとなり、以降はCal.3187がエクスプローラーIIの専用ムーブメントとして活躍していきます。
また、20年間と長きに渡って製造されたモデルながら、上記ムーブメント以外ではややこしい分類はあまりありません。
文字盤バリエーションもRef.16550と同様で、ブラックとホワイトの2色展開です。
そのためエクスプローラーIIの持つ堅牢性と併せて中古市場で「リーズナブルに質の良い中古が入る」ロレックスの代表格でもあり、今なお人気が衰えません。
ちなみに、エクスプローラーIIにおいては、こちらの16570が「最後のケースサイズ40mm」となり、また次世代からは24時間針の意匠も大きく変わることとなりました。この仕様の数々が、「今後相場が上がるかも・・・」と囁かれていることも付け加えておきます。
【2001年】エクスプローラーI 5thモデルRef.114270の誕生



ケースサイズ:直径36mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3130
防水性:100m
製造期間:2001年~2010年
2001年に誕生したRef.114270は、2020年現在の現行エクスプローラーIの一世代前のモデルであり、かつ「最後のケース直径36mmモデル」でもあります。
14270とデザイン面で大きな違いはありませんが、Cal.3130が搭載されることとなりました。
エクスプローラーIIにも言えることですが、この31〇〇と番号が振られたムーブメントは1990年代~今現在に渡って「高性能ロレックス」を実現してきた立役者的存在です。
3000番台からの変更点としては、精度面とメンテナンス面でチューンアップが図られた、ということです。
さらにフラッシュフィット(ケースとブレスレットを繋ぐパーツ)の堅牢性が向上したり、夜光のクロマライト化が進んだりと、実用性がアップしています。
なお、114270は比較的どの個体もリーズナブルに購入することができますが、製造年が新しいほど相場は上がる傾向にあります。特に2007年以降に製造されたルーレット刻印が入った個体、およびランダム品番、G番は稀少性から高め相場となっております。
【2010年】エクスプローラーI 6thモデル(現行) Ref.214270



ケースサイズ:直径39mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3132
防水性:100m
製造期間:2010年~(2016年にマイナーチェンジ)
ケース径を36mmから39mmへサイズアップするという最も効果的な方法で視認性の向上が図られた現行モデルです。
さらにムーブメントがCal.3132へと移行を果たしました。このムーブメントは、、ロレックスが独自開発したパラクロムヒゲゼンマイおよびパラフレックス・ショックアブソーバーが採用されており、きわめて高い耐磁性・耐衝撃性を有することとなりました。
さらに214270は、2016年にマイナーチェンジが施されています。
上:新型文字盤 / 下:旧型文字盤
マイナーチェンジの変更箇所は、文字盤です。
アラビアインデックスの3・6・9にもクロマライト夜光が塗布され視認性が向上。さらに時分針にも変更が加えられ、これまでより長く太い針になりました。
エクスプローラーI 214270は現行ロレックスの数あるラインナップの中で最も人気が高いモデルです。
【2011年】エクスプローラーII 4thモデル(現行) Ref.216570



ケースサイズ:直径42mm
素材:ステンレススティール
ムーブメント:Cal.3187
防水性:100m
製造期間:2011年~
「約20年ぶりにエクスプローラーIIがモデルチェンジ!」と騒がれていたのが、こちらの現行216570です。もっとも、2020年5月現在、既に発売から9年が経過することとなりました。
Ref.216570は初代モデルの意匠だった24時間針を復活させ、ケース径が42mmに大型化されたことが特徴です。
さらにケースやブレスレットの堅牢性がアップし、ムーブメントにはパラクロムヒゲゼンマイやパラフレックス耐震装置といった、最新設備も搭載されることとなりました。
夜光塗料がクロマライト化し、従来の倍(8時間)にアップしたことも21570の実用性を飛躍的に向上させます。
デザイン性がややカジュアルになったことも特徴として挙げられます。
24時間針がオレンジカラーに彩られ、かつ大きくなったというのがモダン・テイストを強調させたのでしょう。
なお、現在ロレックスはセラクロム製ベゼルを順次スポーツモデルに追加させており、216570は貴重なメタルベゼルと言えます。
■14270と114270の違いは?ロレックス エクスプローラーI 新旧比較
■114270と214270の違いは?ロレックス エクスプローラー新旧比較!!
ロレックス エクスプローラーの魅力
エクスプローラーは街でも着けている方をよく目にするロレックス定番モデルです。シンプルかつスタイリッシュな「I」も個性的な「II」も絶大な人気を誇ります。
①誰でも高級な時計だと知っている
ロレックスを選ぶ最大のメリット。それはステータス性です。
パテックフィリップ・ランゲ&ゾーネ・ブレゲ等。どれだけ優れている時計を着けていたとしても、知名度がなければ「それどこのブランドの時計?」で終わってしまいます。
対してロレックスの時計を身に着けていれば、それだけで高い時計を持っている=(イコール)社会的地位が高い人という印象を与えることができます。
派手なモデルですと多少なりとも厭らしさが出てしまいますが、エクスプローラーは非常にシンプルな外観のためビジネスシーンにも最適です。
②文字盤デザインがシンプルで時刻が確認しやすい。
エクスプローラーIはカレンダー表示もクロノグラフ機能もない無駄を一切そぎ落としたシンプルな文字盤は視認性が極めて高いです。
インデックスには夜光塗料が塗られている(最新型のみ)ため、暗所でも視認性が抜群です。
どんなシーンでも抜群の安定感があることもエクスプローラーIの魅力といえます。
③オーソドックスでありながら高級感のあるデザイン性。(エクスプローラーI)
エクスプローラーは100m防水性能に加え、優れた視認性を誇る実用性の高い時計ですが、高級感のあるデザイン性にも定評があります。
ケース、ラグ、ブレス。どのパーツも耐久性が高く、一体感があります。そしてステンレススティールと漆黒に煌く文字盤のコントラストは非常にスタイリッシュです。
さらには、針の長さや文字の位置、ロゴのデザインといった細部までも拘りぬかれており、デザイン性はオーソドックスでありながらも高級感に溢れています。
④個性的でありながらもスポーティーなデザイン(エクスプローラーII)
エクスプローラーIよりもカジュアルな印象を与えるエクスプローラーII。24時間計の回転ベゼル・ポップなカラーリングのGMT針・2タイプを選べる文字盤など、「I」にはない個性を持ち合わせます。
まさにエクスプローラーIIはステータス性とカジュアル性を両立させたセンスの良さが光る時計です。
ロレックスの定番モデルを求めていながらも「個性」を重視したい人にうってつけのモデルだといえます。
⑤高い精度。ゼンマイさえ巻いていれば一日数秒の日差はあまり気にならない。
エクスプローラーIに搭載されている”Cal.3130″もエクスプローラーIIに搭載されている”Cal.3187″もクロノメーター認定を受けたムーブメントなので、非常に優れた精度をもっています。
使用環境にもよりますが、一日数秒の誤差しかおこらないため、ゼンマイさえ巻いていれば日常的な時間のズレはあまり気になりません。
出典:https://www.rolex.com
“Cal.3130″も”Cal.3187″もスイス公認クロノメーター検査協会(COSC)のテストに合格した高精度の時計にのみ与えられる高品質ムーブメントです。これらのムーブメントにはヒゲゼンマイと呼ばれる「パラクロム」という特殊な素材から作られていて、「温度変化に強い・磁力に耐性がある」といった特徴があります。
⑥アフターケアが手厚い
高級時計メーカーの中でも、ロレックスの正規オーバーホールはコストパフォーマンスに優れています。エクスプローラーIのオーバーホール基本料金は43,000円~。エクスプローラーIIの基本料金は45,000円~。他社の比較しても安価な価格設定となっています。
驚くべき部分は通常別料金となる仕上げをロレックスは基本料金に含んでくれていること。末永くエクスプローラーを使うための維持費が安く済むのはとても魅力です。ちなみに製品保証期間は”5年間”(2015年7月以降のモデル)であり、こちらも他社と比較して長めの設定となっています。
レアリティの高いエクスプローラー
誕生から約65年が経過したエクスプローラーには一部のモデルにレア個体が存在します。そのどれも価値が高く、時計マニア垂涎の逸品として知られています。
エクスプローラーのレア個体① ブラックアウト
ブラックアウトはエクスプローラーⅠ Ref.14270に存在する特殊仕様モデルです。通常インデックスの3・6・9の上には通常、白いラインが入っているのですが、ブラックアウトにはこのインデックスの上に白いラインがありません。
ブラックアウトはRef.14270の “E”、“X”品番の一部に見られる数少ない個体です。ブラックアウトのインデックスはメタルのみとブラックラインの2種類が確認されています。こちらはシルバープリント文字(シルバーレター)に369にブラックのラインが乗っている有名なタイプです。
エクスプローラーのレア個体② センタースプリット
エクスプローラーⅡ「Ref.1655」「Ref.16550」に見受けられるレア個体「センタースプリット」。
センタースプリットには「中央で分割」という意味があり、これは文字盤に書かれた文字に対する名称です。
すべてのロレックス オイスターの文字板には、真のクロノメーターであることを意味する
SUPERLATIVE CHRONOMETER
OFFICIALLY CERTIFIED
という2段に分かれた英語表記があります。
通常は中間のスペースが上の行と下の行でずれた状態となっていますが、「センタースプリット」と呼ばれるモデルは中間のスペースが揃っており、表記が「きれいに中央」で分かれています。
左:通常印字 右:センタースプリット
エクスプローラーのレア個体③ アイボリーダイヤル
ロレックス エクスプローラーII 「Ref.16550」「Ref.16570」に見受けられるレア個体「アイボリーダイヤル」。変色具合にもよりますが、通常のモデルとは異なる色合いをしています。
左:通常ホワイトダイヤル 中央、右:アイボリーダイヤル
ロレックスのレアモデルは文字盤表記のちょっとした違いによるものが多いですが、アイボリーダイヤルはパッと見て個性があるため、時計愛好家からの評価が特に高い個体です。
アイボリーの色味が濃ければ濃いほど価格は上がり、状態が良く美しく焼けている個体は200万円以上の買取価格になる場合もあります。
エクスプローラーのレア個体④ トロピカルブラウンダイヤル
トロピカルブラウンダイアルは、エクスプローラーI 1016の初期製造個体にのみ見られるレア仕様です。
「レア仕様」とは言え、該当の仕様全てがこの文字盤になるかと言うと、そうではありません。
そう、この南国の日差しを浴びたかのように焼けた美しいブラウンダイアル・・・
1016には、1967年頃までに製造された個体で、ミラーダイアルが使用されたものがある、と前述しました。
そのミラーダイアルは経年による退色で、稀にこのようにブラウンチェンジすることがあります。
ただ、この退色がどのような条件下で起こるのかわかっていません。
ひとくちに経年と言っても、ひび割れたり塗装が剥がれたりするものがほとんどであるためです(これもまたヴィンテージの味わいの一つですが)。
そのため、美しくブラウンチェンジした個体というのは、本当にレア中のレア。さらにこちらの画像のように、焼けムラのないような個体は数年に一度出会えるか、という確率だとか・・・
相場としては、200万円~250万円が当たり前の世界です。
なお、さらに外周に円を描くようにラインが入ったミニッツサークルが入った個体は、MMダイアルと呼ばれてさらに稀少性を上げてきます。
相場感としては、大体300万円ほどでしょうか。
エクスプローラーファンなら、一度は実機を見てみたい。
そんなレア仕様と言えるでしょう。
まとめ
ロレックスの中でも圧倒的な人気を誇るエクスプローラーシリーズ。シンプルで使いやすいデザインである「I」、個性的でありながらも機能性に優れる「II」、どちらもロレックスの人気ランキングを常に賑わしています。
人気であるが故に人と被ることもありますが、それは誰からでも支持される魅力的な時計であるからでしょう。
初めて高級時計をご購入される方。どのロレックスにしようか迷っている方。さらには一生モノの時計を探している方。
エクスプローラーシリーズはどんな方にもオススメです。
是非一度ご検討くださいませ。
この記事を監修してくれた時計博士



池田 裕之(いけだ ひろゆき)
(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 銀座ナイン店(ロレックス専門館) 店長
昭和57年生まれ 37歳 熊本県出身
19歳で上京し、22歳で某ブランド販売店に勤務。 同社の時計フロア勤務期に、高級ブランド腕時計の魅力とその奥深さに感銘を受ける。しばらくは腕時計販売で実績を積み、29歳で腕時計専門店へ転職を決意。銀座ラシンに入社後は時計専門店のスタッフとして販売・買取・仕入れを経験。そして2018年8月、ロレックス専門店オープン時に店長へ就任。時計業界歴17年