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その他, 廣島浩二, 時計の雑学

クォーツショックとは?知っておきたい時計業界の歴史

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クォーツショック

近代時計史において最も重要な出来事と呼べるのがクォーツショックです。

このクォーツショックによってスイスの時計産業は大きく変化することになります。

今回はクォーツショックとな何なのか、そしてどのように時計界が変わっていったのかについて解説致します。

 

クォーツショックとは?

クォーツショックは日本の時計ブランド セイコーによってクォーツ腕時計が開発されたことにより、時計に関する価値観が一変した出来事です。

クォーツ腕時計は現代における約97%を占める時計機構であり、水晶を動力に電池を入れることで稼働します。

今では当たり前のように馴染んでいるクォーツ機構ですが、実はこの機構が誕生したのは割と最近のことで、1969年にセイコーからクォーツウォッチ「アストロン」が発売されたことを切っ掛けに世界中で広まることになりました。

セイコーアストロン 初代クォーツ

クォーツショック以前の腕時計は機械式時計であることが当然でした。

時計は16世紀頃から懐中時計として実用化されましたが、20世紀には腕時計へとその姿を変化させても、歯車の一つ一つが繊細にかみ合うことで動く機械式機構は変わらずに存在していたのです。

しかし、セイコーが開発したクォーツムーブメントはその常識を一変させます。

 

■機械式時計を遥かに超える精度
■製造コストの低さ
■ゼンマイを巻く必要がない
■衝撃に強い

 

当時の時計業界は各社がより優れた精度を目指して凌ぎを削っていましたが、クォーツ時計の精度はそれを無に帰すほどに優れていました。

製造コストが低く、ゼンマイを動力としないため手で巻く必要がない。

まさに時計界における革命となり、これを切っ掛けに腕時計はクォーツが主流になっていきます。

 

※クォーツ時計は販売当初サラリーマンの年収に相当するほど高価な価格で販売されましたが、セイコーが特許を公開したことにより、世界中に普及。製造環境が整い始めるにつれ、次第に安価になっていきます。

 

スイス時計業界の崩壊

クォーツ時計が普及すると、時計技術にノウハウがない企業であっても時計の製造が可能となり、人々は安くて正確なクォーツ時計ばかりを求めるようになります。

それに伴い機械式時計の需要は下がり、スイス時計業界は非常に苦しい状況に置かれることになりました。

世界最古の時計ブランド ブランパンは事業を一時休止。
IWCは倒産寸前に。
エルプリメロにて一世を風靡したゼニスも機械式時計部門を売却。
ドイツ時計の至高 ランゲ&ゾーネも休眠に陥ります。

クォーツ時計の開発により、スイスの時計業界は壊滅的打撃を受けることになりました。

クォーツ時計

この影響は1980年代後半まで続き、その間の約15年で大半の機械式時計ブランドは姿を消すことになってしまいます。

クォーツ時計の販売価格は機械式時計の10分の1以下。手軽に正確な時間が分かる。

時計を時間を測るだけのモノと考えるのであれば、機械式時計を使う理由がなくなってしまったのです。

 

機械式時計の復活

さて、クォーツ時計の普及により機械式時計は無くなってしまったのか?

ロレックスやパテックフィリップ、オメガといったブランドが人気を博し続ける現代を見てわかるように、答えは否です。

ではクォーツショックからスイスの時計業界はどのようにして立ち直ったのでしょうか。

ここではクォーツショック後の動きについて解説します。

 

クォーツ時計との住み分け

実用品として、機械式時計がクォーツ時計に勝つことは不可能です。

そこでスイス時計業界は機械式時計が持つ「芸術性」に目をつけ、これまでとは別のマーケティングでその魅力をアピールすることにしました。

その先駆けとなったのがブランパン、そしてジャン・クロード・ビバー氏です。

ジャン・クロード・ビバー

出典:https://www.hublot.com/ja/news/mr-jean-claude-biver-biography

ジャン・クロード・ビバー氏は時計界のスティーブ・ジョブズ”とも称され、常に時計界を牽引し、革新を与え続けてきた人物です。

機械式時計は必ず復活できると固く信じていたビバー氏は1983年にブランパンを買収し、再興に尽力。

「機械式時計にしかない魅力を全面的に打ち出す」ことに重きを置き、機械式時計の存在を忘れていた人々の心を大きく動かします。

高級時計 ブランパン

ビバー氏が行った戦略は「ウルトラスリム」「ムーンフェイズ」「パーペチュアルカレンダー」「スプリットセコンドクロノグラフ」「トゥールビヨン」「ミニッツリピーター」という機械式時計ならではの機構や特徴を取り入れた時計を1年ごとに発表することで、機械式時計の素晴らしさを世界に発信しました。

これらの機構はクォーツ時計では表現することができないため、次第に機械式時計は芸術性の高い美術工芸品のようなポジションを確立していきます。

このブランパンの再興を切っ掛けに機械式時計は注目を浴びる様になり、オメガ・パネライ・IWC・ランゲ&ゾーネといったブランドの復活やウブロ・フランクミュラーなどの新興ブランドの誕生と共に、盛り上げりを見せる様になりました。

 

時計業界のグループ化

クォーツショック後の業界再編として抑えておきたいのが時計業界のグループ化です。

ブランパンの再興により新しい一歩を踏み出したスイス時計業界ですが、規模の経済が効く業界特性があったこともあり、再編後はどのブランドも巨大資本グループの傘下に入って経営を続けることになります。

そのため、現在はロレックス・パテックフィリップ・オーデマピゲといった一部のブランドを除く多くのブランドが巨大資本の傘下として営業を行っています。

時計業界 グループ 相関図

2020年4月現在においての時計ブランド相関図は上の図の通りです。

リシュモングループ・スウォッチグループ・LVMHグループを中心に、ブランド単独ではなく、グループが凌ぎを削る状態になっています。

 

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最後に

クォーツショックはセイコーがクォーツ時計を開発したことによって、機械式時計そのものが窮地に陥ることになった出来事のことを指します。

時計の常識が変わったことにより、数多くのスイス時計ブランドが閉鎖を余儀なくされました。

ただ、機械式時計はそのまま過去の産物とはなりません。15年ほど冬の時代が続いた後はブランパンの再興を切っ掛けに嗜好品・芸術品として蘇り、現在では大手資本グループの傘下としてクォーツ時計とは異なる土俵で販売が展開されるようになっています。

ここまでの流れを考えると、いかにクォーツショックが時計界に影響を与えたか分かりますね。

もしかしたら技術の進化により再び業界に激震が走る時が来るかもしれません。しかし、スマートフォンが誕生しても上手く住み分けがなされている今の時計業界であれば、まだまだ歴史を繋げてくれる予感がします。

 

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この記事を監修してくれた時計博士

廣島浩二(ひろしま こうじ)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任

1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年

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