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WEBマガジン, エントリーモデル特集, ハミルトン, ブランド時計豆知識, 南幸太朗, 時計の雑学

ハミルトンの伝説的復刻モデル「パルサー」を徹底解説

最終更新日:

ハミルトン パルサー

出典:https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/psr-penonline

アメリカのフロンティアスピリットとスイスの高い技術を兼ね備えた腕時計ブランド、ハミルトン。

革新的なインスピレーションで常にモードの最先端を歩み続ける同社ですが、今回注目したいモデルはパルサーです。

LED式デジタルウォッチの原点と称されるハミルトン パルサーは2020年、誕生50周年を記念してハミルトン PSRとして生まれ変わりました。

レトロ・フューチャーが一世を風靡した1970年代の味わいを色濃く残す、アメリカンスピリッツとスイス時計の精密さのフュージョンウォッチ、パルサーに迫ります。

 

ハミルトン パルサーとは?

ハミルトン パルサーが誕生したのは、1970年です。

 

1892年創業。鉄道を始めとした各種アメリカ産業に大きく貢献してきたハミルトンは、1969年、大きな転換点を迎えます。

ホイヤーやブライトリングとともに世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントの一つ「Cal.11」を開発したこと。そして拠点や向上を全てスイスに移転し、スイスの高級腕時計ブランドとしての歩みをスタートさせたことです。

 

そしてこの勢いを保ちながら翌1970年、ハミルトンはパルサー(当時の商品名はパルサー タイム コンピュータ)を堂々リリースさせます。

初代モデルはP1と称され、世界初のLED式デジタルウォッチとして、腕時計史にその名が刻まれることとなりました。

今でこそデジタルウォッチは珍しくありません。

しかしながらまだアナログ式―そして機械式―時計が主流であった当時、物理的に動作する時分針などのパーツが一切無い、ソリッドなフューチャリスティックスタイルは革命と言っても差し支えのないものでした。

ハミルトン 初代パルサー

出典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

1972年に市販がスタートすると、宇宙や近未来を思わせるフューチャリスティックなデザインや、400本の限定発売という稀少性から大変な話題となりました。

もっとも当時はゴールド素材で非常に高価なうえ、電力の問題でボタンを押している間しか時間が表示されませんでした。

しかし3日と経たずに売り切れた初代モデルP1。ちなみにハミルトンファンで知られるエルビス・プレスリー、後のフォード大統領など超セレブが愛用したことでも知られています。

アメリカのスペースエイジ到来の旗印となったパルサーは、自動車1台分という驚きの高額腕時計にも関わらず、瞬く間に人気商品となったのです。

 

なお、パルサーという名は「脈動変光星」(周期的に光が変化する星)からつけられています。デザインは1968年のヒット映画「2001年宇宙の旅」にハミルトンが提供した、宇宙で使われている設定の時計がベースです。

パルサーは、ハミルトンがスイスブランドとなってもなお、アメリカの宇宙開発黄金時代のアイコンとして君臨しました。

 

ハミルトン パルサー

出典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

初代パルサー発売の翌1973年、2代目パルサーが誕生します。バリエーションも増え、ゴールドめっきモデルとステンレススチールモデルがリリースされました。

この2代目パルサーはP2と呼ばれ、やはり爆発的な人気を博していきます。

ハミルトンはあまりの人気にパルサーをタイム・コンピュータ社として子会社化させ、生産量を増やしたほどです。

P2はミックジャガーやエルトン・ジョンなど世界的セレブが愛用しました。

また3代目007でジェームズ・ボンドを演じたロジャー・ムーアも、映画の中で身につけています。

パルサーが火をつけたLED腕時計人気はうなぎのぼりとなり、1974年ころには電子機器メーカーがこぞってデジタル腕時計業界に参入し始めました。

ハミルトン パルサー

出典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

パルサー人気を受け、アメリカの大手半導体メーカーも参入して、次々とLEDやLCDデジタル腕時計を生産し始めました。

パルサーはソリッドなスタイルが特徴の腕時計だったため、腕時計作りのノウハウがない企業でも簡単に同様のデジタル腕時計が生産できたのです。

 

1974年にはハミルトンはパルサーに未来を託し、従来の時計部門であるハミルトンウォッチを現在のスウォッチグループに売却します。

 

パルサーが火付け役となったLED腕時計ブームは1975年に及びました。

もっとも1976年には10ドルを下回る廉価版を売り出す企業が登場し、風向きが変わります。

パルサーは変わらず高級LED腕時計として君臨し続けたものの、一方で市場ではLED腕時計が過剰供給となり、1977年にはLED腕時計ブームが去ってしまったのです。

同時にLED腕時計を追うように研究が進められていた、液晶デジタル時計LCDの人気が高まってきました。

 

1977年には低価格デジタルウォッチが出回り、LED腕時計の時代はいったん終わりを告げました。

1978年にはパルサーの名前がSEIKOに売却され、ついに「ハミルトン パルサー」自体が消えてしまったのです。

 

ハミルトン パルサー

出典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

しかしながら時は下って1997年、ハミルトン パルサーは意外なところで再ブームを迎えました。

超人気映画「メン・イン・ブラック」で、エージェントKを演じたトミー・リー・ジョーンズ氏(現在はコーヒーのCMで大人気の俳優)が作中で使用したことがきっかけです。

ハミルトンは映画業界、特にハリウッドと深いつながりを持ち、古くから多くの腕時計を映画作中の小物として提供してきました。

近未来を描いた「メン・イン・ブラック」に、コズミックなデザインのパルサーはとてもよくマッチしており、再度注目されたのです。

 

しかしハミルトン パルサーの名前はすでに売却されているため使用できません。

ハミルトンの名機パルサーが、復刻モデルとして本格的に時計業界に戻ってきたのは「メン・イン・ブラック」公開からなんと18年後のことでした。

2015年にパルサー誕生40周年モデルとして、パルサーの復刻モデルが誕生したのです。

パルサーという名は売却してしまったため使うことができません。そこで「パルソマティック」という名前でのデビューとなりました。

さらに2020年、パルサーは生誕50周年を迎え、ハミルトン PSRとして新たな時代を迎えます。

 

50周年に復刻を果たしたハミルトン「PSR」とは?

 

①概要

ハミルトン パルサー

典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

スペック

外装

ケースサイズ: 直径34.7mm×40.8mm×厚さ13.3mm
素材: ステンレススチール/ステンレススチール・イエローゴールドPVD
文字盤: デジタル

ムーブメント

駆動方式: デジタルクォーツ
ムーブメント:
パワーリザーブ:

機能

防水: 10気圧防水
定価: 99,000円 (H52414130)/ 132,000円 (H52424130)

ハミルトン パルサー誕生50周年を記念して2020年に発売された、ハミルトン PSRです。

パルサーという名称は売却したため今も使用できませんが、誰が見てもパルサー!

ちなみにハミルトン PSRのモデルとなっているのは、007でジェームズ・ボンドも使用した二代目パルサー「P2」です。

1972年発表のP2はハミルトン パルサーの中でも理想的なデザインとされ、実際に現代においても魅力を失わない普及の名機と称されています。

ハミルトン PSR パルサー

出典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

ハミルトン PSRはオリジナルモデルとなるP2を3Dプリンターでスキャンし、完璧にコピーすることで宇宙船を思わせるまろやかな形状をよみがえらせました。

ただしオリジナルに刻印されていた「Pulsar」の文字は使用できないため、ハミルトン PSRには「HAMILTON」の刻印が入っています。

ケースバックにはアトミックな原子や宇宙を思わせる刻印が入り、宇宙科学が発達した未来への憧憬が強く感じられるのではないでしょうか。

なお、オリジナルでは風防にルビーが用いられていましたが、ハミルトン PSRは現代の腕時計らしくサファイアクリスタル風防を採用しています。

LEDだった時刻表示は有機ELへと進化を遂げ、さらに液晶画面とのハイブリッド表示になってクオリティもアップしました。

ハミルトン PSR パルサー

出典:https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/h52414130-american-classic-psr-digital-quartz.html

ハミルトン PSRは有機ELと液晶を組み合わせたことで、エネルギー消費を抑えて常に時間が表示されるようになっています。

しかし、機能はこの上なくシンプルな時間表示だけ。そこはハミルトン PSRのこだわりポイントです。

ブレスレットの質感も高級腕時計に相応しく、ラグジュアリーな装着感を高めています。

 

ハミルトン パルサー PSR イエローゴールド

出典:https://www.hamiltonwatch.com/ja-jp/h52424130-american-classic-psr-digital-quartz-limited-edition.html

ちなみにハミルトン PSRステンレススチールモデルは数量に限定はありませんが、イエローゴールドPVDモデルは限定品です。

ハミルトン PSRイエローゴールドPVDモデルは世界限定1970本で、コズミックなイメージの専用ボックスに入っており、コレクターズアイテムとしても注目されています。

ケースバックにはアトミックな刻印のほかに、「リミテッドエディション」の文字とシリアルナンバーを刻印しました。

新たなモデルでありながら、ハミルトンのアメリカ時代を彷彿とさせるヴィンテージな1本です。

ゴールド一色のつるんとした形状を眺めていると、どことなく「スターウォーズ」のC-3POを思い出すのは私だけでしょうか。

 

②大人気ハミルトン PSRはどこで買える?

ハミルトン PSRは往年の超人気モデルということもあり、2020年の発売以来アメリカ・日本をはじめ世界的に人気を博しています。

またハミルトン PSRはゴールドカラーモデルでもPVD加工であるため、価格も税込で132,000円と抑えられています。

ステンレススチールモデルに至っては税込でも正規価格が10万円以下なので、正規価格でも手に入りやすいタイムピースと言えるでしょう。

まだ発売してから日も浅いということもあって、並行市場や中古市場にはあまり商品が流れていません。

世界的なコロナ禍、非常事態宣言の中で発売となってしまったハミルトン PSRですが、ハミルトンはオンライン販売用の流通経路を豊富に確保しています。

そのため、世界中どこにいても購入できるという強みがあります。

ハミルトン ネット販売

出典:https://www.facebook.com/Hamiltonwatch/photos/

オンライン販売チャネルを豊富に持っているスイス高級腕時計ブランドは珍しいため、販路拡大においてもハミルトンは革新的ブランドと言えるでしょう。

また、イエローゴールドPVDモデルは1970本限定モデルで、専用ボックスに入った特別仕様のため、すでにほとんど出回っていません。

今後も入荷情報をチェックしていただき、入りましたらできる限りお早めにお問い合わせくださいませ。

 

Column;知っておきたいハミルトンのもう一本の名作「パルソマティック」

ハミルトンでは、パルサー誕生40周年に「パルソマティック」という腕時計を製作しています。

そう、パルソマティックはパルサーの正統なる後継機となる、アイコニックなスタイルのデジタルウォッチなのです。

1970年代の終わりに、ハミルトンはパルサーの名前を他社に売却、パルサーは事実上姿を消したことは前述しました。

しかし超人気映画「メン・イン・ブラック」をきっかけに、腕時計ファンの間で人気が再燃、復刻を望む声が高まったのです。

そして2015年、パルサー誕生40周年を記念して製作された復刻モデルが「パルソマティック」です。

英語の接尾語「-tic」には~的な、~らしいといった意味があります。

つまり現代における「パルサー的な」腕時計と捉えられるのではないでしょうか。

 

ハミルトン パルソマティック

デザインはパルサー2代目のP2を彷彿とさせ、ファンをスペースエイジの輝かしいアメリカへと誘ってくれます。

デジタル表示はそのままに、新開発自動巻きムーブメントを使用しています。かつてLEDだった表示は、LCD液晶ディスプレイへ変化しました。

新開発ムーブメントはエコ蓄電が可能で、フル充電すれば120日間のロングパワーリザーブが実現します。

デジタル表示ではありますが、内部機構は機械式腕時計。操作感覚は機械式で表示はデジタルという、不可思議な感覚が味わえます。

まさに「パルサー的」であって、パルサーそのものをただ復刻しただけではない、革新と技術力のハミルトンらしい腕時計が完成したのです。

パルソマティックはハミルトン パルサーのDNAを継ぎながらも、見た目だけでは判らない大いなる進化を遂げた、ハミルトンが誇る名作の1本です。

 

まとめ

ハミルトン パルサーは、アメリカが宇宙開発に沸くスペースエイジに誕生しました。

コズミックでフューチャリスティックな世界初のLEDデジタルウォッチは、空前のブームを巻き起こします。

しかしブームは彗星のように去り、ハミルトンはパルサーを失いました。

復刻を望む声の中、ハミルトンは2020年に復刻モデル「ハミルトン PSR」を生み出します。

往時を知る世代にはセピア色の夢そのもの。若い世代には最高にクールなレトロフューチャーウォッチとして人気を博しています。

世界の最先端技術を駆使しながら、たった1つのシンプル機能という新境地も拓きました。

ハミルトンにしか作り出せない世界観を、ぜひお手に取って堪能してみてください。

 

ハミルトンのご購入はこちら

 

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この記事を監修してくれた時計博士

南 幸太朗(みなみ こうたろう)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
高級時計専門店GINZA RASIN 買取部門 営業企画部 MD課/買取サロン プロスタッフ

学生時代に腕時計の魅力に惹かれ、大学を卒業後にGINZA RASINへ入社。店舗での販売、仕入れの経験を経て2016年3月より銀座本店 店長へ就任。その後、銀座ナイン店 店長を兼務。現在は営業企画部 MD課 プロスタッフとして、バイヤー、プライシングを務める。得意なブランドはパテックフィリップやオーデマピゲ。時計業界歴13年。

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