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WEBマガジン, 廣島浩二, 時計の雑学, 腕時計選びのためのお勧め記事

時計のムーブメントとは?意味や歴史、よくある疑問を徹底解説!

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腕時計の駆動をつかさどる「ムーブメント」。内部機械を指しており、時計用語として広く用いられる言葉です。

イメージとしては車のエンジンに近く、どんな種類のムーブメントを搭載しているかによって時計の性能や精度、特徴は大きく異なります。

 

この記事では時計のムーブメントについて解説するとともに、、普段は気にしないマニアックなところまで深掘りしていきます!

自動巻き・手巻き・クォーツ・スクリングドライブといった駆動方式の種類、それに加え振動数や石数の違い、そして知っておきたい偉大なムーブメントの数々。

時計に興味のある方、また機械がお好きな方にぜひ読んでいただきたい内容です!

腕時計 ムーブメント

 

ムーブメントとは?種類ごとに徹底解説!

冒頭でも述べている通り、ムーブメントは時計の駆動を司る内部機械です。ファッションアイテムでもある時計はまず外装(デザインの良さ)に目が行くものですが、内部機械であるムーブメントも時計を楽しむ上で重要なポイントと言えるでしょう。

 

時計のムーブメントには大きく分けて「機械式」と「クォーツ式」が存在します。

機械式は巻き上げられたゼンマイがほどける力を利用して時を刻むムーブメントで、クォーツ式は電池によって駆動するムーブメントです。

さらに機械式・クォーツ式の中でも複数種類に分けられており、機能や価格はピンキリです。時には、ムーブメントが時計のデザインに大きな影響を及ぼすこともあります。

なお、アナログ式であれば、この「動力源」の他に調速機構と輪列でムーブメントは構成されます。

 

すなわち、どのようなパーツが使われていて、どのような機能を持つのかはムーブメントによって大きく異なり、どのムーブメントを選ぶのかも時計選びの醍醐味となります。

ちなみに、ムーブメントの種類を表す際にCal.という略語が用いられますが、これは「キャリバー」と読みます。

 

①機械式ムーブメント

世界三大腕時計

機械式ムーブメントは、前述の通りゼンマイを巻き上げ、それがほどける力を利用して駆動させるムーブメントです。

機械式ムーブメントは主に「香箱(ゼンマイを格納する歯車)」「基本輪列(歯車が組み合わされて、香箱の回転を伝達していく機構)」「調速機」「脱進機(エスケープメント)」で構成されています。地板と呼ばれるムーブメント本体に、各パーツが組み込まれていきます。ちなみに各歯車類は、ブリッジでサンドイッチ状に挟み込むことで固定します。高級機などではこのブリッジにコート・ド・ジュネーブやペルラージュなどの装飾が施されており、それは見事ですよね。

また、ルビーは歯車の軸受け等に用いられており、摩耗を防ぐ目的がありますが、美観にも一役買っています。

 

そんな機械式ムーブメントの仕組みを簡単に解説すると、ゼンマイがほどける力を調速機・脱進機で制御し、各輪列(歯車)に伝えることで、規則正しい時刻表示をします。

とりわけ調速機・脱進機は機械式ムーブメントのキーアイテム!今後、「ムーブメントで時計を選ぶ」うえで、ぜひ知っておきたいパーツと言えます。

機械式時計 仕組み

出典:https://www.seiko-watch.co.jp/

調速機はテンプとも呼ばれる(テンポにちなむ)パーツのことで、ヒゲゼンマイを備えます。ヒゲゼンマイは伸縮性を持ったバネで、テンワの往復運動とともに膨張・伸縮し、ゼンマイを格納する香箱の回転スピードを制御します。ちなみにこのテンプの振動数はメーカーのスペック欄に記載されることも多く、「28,800振動/時(1秒間に1秒間に8振動)」「21,600振動/時(1秒間に6振動)」などといった表記を見たことがあるかもしれません。

テンプの振動数が高ければ高いほど細かく時間を刻むことが可能となります。

機械式時計 仕組み

出典:https://museum.seiko.co.jp/

このテンプの「テンポ」と各輪列を繋げ、精度を維持するのが脱進機です。ガンギ車とアンクルで構成されたこの機構はレバー脱進機と称されており、200年ほども前に発明されました。レバー脱進機は基本設計がほとんど変わらないまま、現代機械式ムーブメントに用いられることも驚きですよね。もっとも各パーツは格段に進化し、実用性はいや増しています。

なお、当然ながらゼンマイはほどけきると、時計の針が止まります。ゼンマイの持続時間のことを「パワーリザーブ」と呼び、文字盤にゼンマイ残量を示すパワーリザーブインジケーターが搭載されたモデルをラインナップするメーカーもあります。

パネライ PAM00964

また、ゼンマイのパワーをトルク(回転力)と呼び、めいっぱい巻き上げられている状態だと最もトルクが強く、ほどけるにつれて弱まっていきます。トルクが弱まると、時計本来の精度が出しづらくなる傾向にありますが、これまた近年では各社が安定した精度維持のための機構開発に余念がありません。

 

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②機械式ムーブメントの種類

機械式ムーブメントには、さらに種類分けすると「自動巻き」「手巻き」が存在します。

 

自動巻きはその名の通り、「ゼンマイを自動で巻き上げる」ムーブメントです。

機械式ムーブメント 自動巻き

自動巻きムーブメントは半円形のローターを持ちます。腕の動きに合わせてローターが回転しますが、この回転を利用して香箱を回転させ、ゼンマイ巻き上げを行うことを大きな特徴とします。ちなみに自動巻き機構自体は18世紀にアブラアン=ルイ・ブレゲが実用化していますが、懐中時計の時代には発達せず、腕時計が普及した20世紀に入ってから飛躍的に進化しました。とりわけロレックスが特許を取得した「パーペチュアル」によって全回転型センターローター式が確立され、自動巻きのスタンダードとなります。

もっとも自動巻きであっても、現在流通しているモデルはリューズを使って手での巻き上げも行えます。ただし後述する手巻き式時計は「巻き止まり」と呼ばれる、これ以上ゼンマイが巻き上げられない地点があることに対し、自動巻きはこれを持たないことがほとんどです。

 

なお、ローターがどちらの方向に回転してもゼンマイ巻き上げが行える両方向巻き上げ式開発でも一家言持ってきたのがロレックスです。現在は両方向巻き上げ式が一般的ですが、ローターの右回転ないしは左回転でゼンマイ巻き上げを行う片方向巻き上げ式を採用するブランドも結構あります。片方向巻き上げ式は構造がシンプルで、薄型設計がしやすいためです。また、腕の動きのみに依存せず、ローターの空転した勢いを利用して巻き上げを行うため、デスクワークなど腕をあまり動かさないユーザーであってもゼンマイが巻き上がりやすいといった魅力も備えています(その分、ローターの空転時の振動が腕に伝わりやすい傾向にあるのですが)。

両方向巻き上げ式も片方向巻き上げ式も、ライフスタイルや好みによって意見が分かれることもあり、優劣はありません。ただし片方向巻き上げ式ムーブメントの時計でワインディングマシーンを使う時は注意が必要です。空転する方向に巻き上げる設定だと、いつまでたってもゼンマイが巻き上げられないためです。ワインディングマシーンの使用時は、メーカーや購入店で巻き上げ方向を確認しましょう!

 

一方、手巻きはリューズを使って、手でゼンマイを巻き上げるムーブメントです。

昔ながらのスタイルが手巻きムーブメントで、自動巻きが主流になった今なお、根強い人気を誇る機構です。

「手でゼンマイを巻く」という行為は一見手間なようで機械に向き合う楽しさがあり、手巻きは趣味性の高いムーブメントと言えるでしょう。また、使うたびにムーブメントと向き合うこととなるため、不具合にも気づきやすくなります。

さらにローターがない分衝撃に強く、メンテナンス費用も抑えられる傾向にあります。シースルーバックであれば、その古典的なメカニズムや美しい仕上げ・装飾を鑑賞できるというのも嬉しいですね。特にクロノグラフは手巻きムーブメントの景観が最高です(もっとも自動巻きムーブメントでも、マイクロローターやペリフェラルローターを採用したり、あるいはセンターローターを肉抜きする等してメカニズムを強調する手法は近年では多くなってきています)。

 

ただし、手巻き腕時計はやはり自動巻きに比べると選択肢が少なく、高価格帯のブランドがラインナップする傾向にあります。

 

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③クォーツ式ムーブメント

クォーツムーブメント

クォーツ式は電池(一次・二次問わず)を動力として作動するムーブメントで、さらに精度は水晶振動子(クォーツ)で司ることを特徴とします。動力源の「電池」「水晶振動子」「電子回路(IC)」「ステップモーター」「輪列(アナログ式の場合)」で構成されています。

 

仕組みとしては、電池から得たエネルギーを利用して、水晶振動子に電圧印可します。

水晶には圧電効果と逆圧電効果という特性があり、簡単に言うと水晶を押したり引いたりするとプラスとマイナスの電気が生まれ、かつ水晶にプラスとマイナスの電気を交互に加えると振動する、といった性質です。

前項の機械式ムーブメントでもお伝えしている通り、時計は動力源のみならず、このエネルギーを制御して正しく針を刻ませる仕組みが必要です。水晶の振動がこの「仕組み」に当たるのですが、その振動数はなんと1秒に32,768回。この安定した高速振動をIC回路で1秒間に1回のパルス信号に変換し、変換された信号がステップモーターに伝送され、歯車を動かして時を刻むというのがクォーツ式ムーブメントのおおまかな仕組みです。

 

この仕組みからもわかる通り、クォーツ式ムーブメントは機械式と比べて高精度であることがほとんどです。

例えば機械式で「時間の精度」を表す時、日差(一日に何秒ズレるか)を用います。対してクォーツ式ムーブメントでは月差、すなわち一か月に何秒ズレるかという指標が使われています(中には年差クォーツも!)。

また、機械式ムーブメントに比べて構造がシンプルであるため小径薄型化しやすく、衝撃・振動・磁気などといった精密機器の大敵にもある程度の耐久性を有する特徴を持ちます。

さらに量産も容易であることからも、現在販売されている腕時計の多くはクォーツ式ムーブメントで、幅広い世代に馴染みが深いと言えるでしょう。特にレディースはこの傾向が強いですね。

カルティエ タンクフランセーズ

高精度で扱いやすいクォーツ式ムーブメントですが、一方で機械式に比べるとトルクが弱く、デザインや機能で制限されることがあります(例えば力強く高級感のある針を載せづらい、等)。また、機械式ムーブメントに比べると趣味性の面では後塵を拝する傾向にあります。

もっとも近年は技術力の発展や各ブランドの企業努力によって、こういったクォーツ式ムーブメントのデメリット(とは一概には言えませんが)を克服し、かつ強みをいっそう訴求した高級クォーツ式腕時計も市場に送り出されています。精度はもちろん、外装や文字盤、針・インデックスの一つひとつをこだわりぬいた高級クォーツの特別感は、ひとしおです。

 

なお、クォーツムーブメントにはアナログ式だけでなく、液晶ディスプレイを使ったデジタル式も存在します。

G-SHOCK GMW-B5000

デジタル式のクォーツムーブメントでははステップモーターや輪列の代わりに液晶ディスプレイが採用されており、針の動きではなく数字を用いて時刻を表示するのが特徴です。

ステップモーター式を「アナログクォーツ」、液晶ディスプレイ式を「デジタルクォーツ」などと呼ぶこともあるので、合わせて覚えておきたいですね。

 

さらにクォーツ式ムーブメントのバリエーションとして、光エネルギーを利用して電池を動かすソーラー発電式時計もポピュラーです。

ザ・シチズン キャリバー0100

出典:https://www.facebook.com/CITIZENwatch.jp/

太陽電池のような二次電池は充電と放電を繰り返すため、一次電池のように頻繁な交換が必要ありません(ただし長く使っていれば容量低下や機械的な可動部の経年劣化は避けられず、メンテナンスは求められます)。ちなみに世界で初めてソーラー発電のアナログ式腕時計を開発したのはシチズンです。シチズンの「エコドライブ」を愛用している方も少なくないでしょう。

 

加えて、機械式の「自動巻き」のようにローターの回転からエネルギーを得るオートクォーツ(セイコーのキネティック等)も存在します。

セイコー キネティック

ひとくちに「クォーツ式ムーブメント」と言っても、バリエーションに富んでいることがわかりますね。

 

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④スプリングドライブ・ムーブメント

セイコー スプリングドライブ

セイコー独自のムーブメントとなりますが、スプリングドライブも知っておきたいですね。

 

スプリングドライブは1999年に発表された機構で、セイコー曰く「メカとクォーツのハイブリッドなメカニズム」と。

この表現通り、スプリングドライブは機械式とクォーツ式の良いとこどりをした機構です。どういうことかと言うと、動力源はゼンマイでありながらも、精度はクォーツで司る構造を世界で初めて採用。すなわちスプリングドライブは、機械式ムーブメントのように力強いトルクを持ちつつ、クォーツ式ムーブメントのように高い精度を誇ることに成功しているのです。

 

スプリングドライブの構想は1977年からあったようですが、実用化に至るまでに20年以上かかっています。この理由の一つは、パワーリザーブが理想よりも足りなかったことが挙げられています。1999年にようやく72時間の持続時間を実現することで、製品化に至りました。スプリングドライブの文字盤にはパワーリザーブインジケーターが搭載されているのですが、どこか誇らしげですね。

ちなみにゼンマイが動力源であることから、スプリングドライブにも「自動巻き」「手巻き」が存在します。

出典:https://www.grand-seiko.com/jp-ja

なお、グランドセイコーでは2020年―グランドセイコー創設60周年―、最大巻き上げ時で約120時間の、超ロングパワーリザーブを獲得した最新世代スプリングドライブCal.9RA5(および9RA2)をリリースしています。

構造が複雑なためグランドセイコーのラインナップの中でもスプリングドライブは高価格帯ですが、非常に人気が高く、売れ筋ムーブメントとなっております。

 

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⑤駆動方式の見分け方

普段は外装に包まれているムーブメント。自動巻き、手巻き、クォーツ・・・いくつかの種類をご紹介してきましたが、パッと見はなかなか判別が尽きません(文字盤にAUTOMATIC等の表記をするモデルもありますが)。

しかし、針の動きや音等をよく観察すると、実は見分けることができます。

ムーブメント 駆動方式 見分け方

 

■機械式とクォーツ式を見分けたいなら:秒針の動き

秒針を見れば機械式とクオーツ式を簡単に見分けることができます。

両者の違いはズバリ運針です!

機械式は、秒針が連続的に動く「スイープ運針」が採用されており、引っ掛かりなく一周スムーズに動きます。対してクオーツ式は、秒針が1秒刻みで動く「ステップ運針」が採用され、カチカチと機械的な動きをします。

ただしスプリングドライブはゼンマイ駆動であるため、スイープ運針です。

なお、機械式ムーブメントは近くで耳を澄ませば「チチチチ」とビートが刻まれる音がするので、音によっても判別することが可能です。

 

■自動巻きと手巻きを見分けたいなら:リューズを巻く

自動巻きと手巻きの違いでは、実はリューズを巻く手応えと音が異なります。

機械式ムーブメント 見分け方

自動巻きはリューズを撒いた時の手応えが弱く、ゼンマイ音も僅かしかありません。また、巻き止まり(ゼンマイの巻き上げの限界)がないことも特徴です。

逆に手巻き式はリューズを巻いた時の手応えがシッカリしており、音に関しても強めです。巻き止まりがある為、ゼンマイが限界まで巻かれていることが手応えでわかります(ただし、巻き止まりを持たない手巻き時計も存在します)。

見た目だけではわかりにくいですが、リューズを回せばどちらかは一目瞭然です。

 

なお、クオーツ式に関してはリューズを巻いても手応えはなく、音もしません。

機械式よりも感覚が軽いのですぐにわかると思います。

 

■自動巻きを見分けたいなら:時計の音で見分ける

自動巻き式の時計を振ってみると、ローターが回転し「シャー」と音がします。

手巻き式やクオーツ式はローターがないので、振っても音がしません。自動巻きと手巻きの違いを見分けるだけなら、一番早い方法だといえます。

 

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ムーブメントの歴史

現在では当たり前のように時計業界で認識されるムーブメントですが、その歴史を紐解くと雄大さに驚かされます。

 

機械式ムーブメントの歴史

16世紀 機械式ムーブメント

ムーブメントの歴史は大変奥深いものがあります。この歴史を語るうえで欠かせないのが、機械式時計です。

その黎明は13世紀頃の塔時計まで遡ります。塔時計は動力源に「おもり」を使って歯車を動かす仕組みでした。おもりを巻き上げ、それが下がってくる力を利用する、というものです。もちろん現在の機械式時計のような機構が確立されていたわけではありませんが、脱進機と調速機を既に備えており、おもりが下がる速度を調節することで時を刻む仕組みとなっていました。

塔時計は主に教会に備えられ、鐘を鳴らすことで時刻を広い範囲に伝えました。

とは言え現在のような精度(時計の正確性のこと)はなく、調速機・脱進機は改良されていくものの、針は一つしかなかったと言います。また、おもりを動力源とする初期の機械式ムーブメントはどうしもて大きくなる傾向にあり、携帯や移動はなかなか難しいものがありました。

 

しかしながら15世紀後半にはいると、ついに「ゼンマイ」を動力とする小型ムーブメントへと発達することとなりました。ちなみに人々が携帯できるほどの大きさになったのは、1600年頃と言われています。

懐中時計 機械式ムーブメント

もっとも、当然ゼンマイだけでは正確な時刻を表示するとは言えません。前述した調速機・脱進機がなくては「正しく時を刻む」ことは困難であるためです。

優れた調速機・脱進機のために様々な手法が採られていましたが、1583年にガリレオ・ガリレイが「振り子の等時性」原理を発見したことで、時計の精度は大いなる進化に向かいます。

振り子の等時性は簡単に言うと「振り子が振れて一往復する時間は、外的要因(風など)に影響されない」というものです。この振り子の等時性を、調速機構として活かそう、と。

ガリレオ・ガリレイは振り子時計を完成させませんでしたが、後年1656年、オランダの時計師クリスチャン・ホイヘンスが振り子時計を世に送り出すこととなりました。

振り子時計の誕生によって精度は飛躍的に高まり、針も二つになっていった、すなわち「分」という概念が生み出されたと言えます。

ちなみにクリスチャン・ホイヘンスは1674年に、振り子の代わりにヒゲゼンマイを応用します。1654年にイギリスの物理学者ロバート・フックがヒゲゼンマイもまた振り子のように一定周期で振動することを発見しておりましたが、クリスチャン・ホイヘンスはこれをうずまき状として、さらなる小型化に成功したことも特筆すべき点です。こういった功績から、クリスチャン・ホイヘンスは「機械時計の父」と称されることもあります。

 

そうして機械式ムーブメントは17世紀なる頃には懐中時計として貴族を中心に親しまれるようになりますが、同時にさらなる高精度が時代の要請となります。

なぜなら、世は大航海時代であったため。

貿易拡大やカトリック教会の布教を目的に、ヨーロッパからは数々の商船や捕鯨船が大海原に漕ぎ出されます。こういった時代背景から、遠洋航海術の発展は、時代の急務でした。

とりわけ船の位置を知るための経度測定は重要です。従来、あまり陸地から離れずに航行する手法が一般的でしたが、これは座礁や海賊行為といったリスクを伴うため、安全かつスピーディーな遠洋航海術として経度測定が求められたのです。

そこで注目されたのが、やはり「時計」です。

正確な時計があれば、天体や出発地点からの時刻である程度の位置を予測することができたためです。しかしながら船上は大きく揺れるため、当時の振り子時計では、とても安定した時刻計測などできません。温度変化も精度を狂わせる大きな要因となったことでしょう。

そこでイギリス議会は1714年に経度法を公布。正確な経度測定法に対し、2万ぽんどもの賞金をかけて公募したのです。ちなみにフランスもこれに追随しています。

※グリニッジ天文台のTime Ball。グリニッジ天文台は、1675年にイングランド国王チャールズ2世が設立しました。ここを通る子午線をもとに世界標準時の基準となっていることは有名ですが、設立の背景には大航海時代の航海術支援が一つにありました。

 

この賞金を獲得した(厳密には前払いさせた)のが、かの有名なジョン・ハリソンです。

ジョン・ハリソンは船上の激しい揺れや温度変化にも耐えうる時計の開発に、初めて成功しました。この経度測定できる時計を、マリンクロノメーターと称します。ジョン・ハリソンは30年に渡ってマリンクロノメーターの製造を続け、1761年に「H4」を完成。これは81日間の航海でも5.1秒という誤差を実現したのみならず、携帯できる懐中時計型にまで小径化していたことも大きな特徴です。

結局ジョン・ハリソンのマリンクロノメーターは製造難易度が高かったために量産はされないのですが、いかに高精度な機械式ムーブメントが人々にとって重要であったかがわかる偉業ですね。

 

なお、この時代の流れの中で脱進機が大きく改良されていきますが、現在多くの機械式時計に用いられる「レバー脱進機」が発明されたのは1754年のことです。発明者はトーマス・マッジで、ムーブメントや時計の技術発展に大きく貢献しました。

 

時計は大航海下やあらゆる産業への応用のみならず、趣味性の追求も行われていきます。

七宝細密画や彫金を施した装飾の面ではもちろん、トゥールビヨン・ミニッツリピーター・パーペチュアルカレンダーといった複雑ムーブメントも開発されます。

 

一方で各地で起こった産業革命で、標準的な時間の要請がいっそう高まり、精度や耐久性が重要視されてもいきます。

これまで「セレブの贅沢品」であった時計は実用品としてのポジションが求められるようになり、オートメーション化による量産技術も大いに飛躍しました。

ちなみにムーブメントの話からはそれますが、腕時計が普及するきっかけとなったのは第一次世界大戦と言われています。小型ムーブメント開発が進んでいたこともありますが、同時に戦時下では大規模な砲撃戦が各国で始まると、懐中時計をいちいちポケットから取り出すのではなく腕に巻いて時刻確認する扱い方が主流になっていったのです。ちなみに1894年に日清戦争が始まりますが、その際日本軍の兵士が時計を腕に巻き付けていた資料もあるようです。

 

機械式ムーブメントの発達とともに、人々の時間の概念はいっそう細かく正確になり、人々の生活に欠かせないものとなっていきました。

 

クォーツ式ムーブメントの歴史

クォーツ式ムーブメントは、機械式と比較すると非常に新しいです。しかしながら、その利便性やリーズナブルさから、時計市場のシェアを早い段階で獲得していきます。

 

そもそもクォーツ式ムーブメントの開発の背景には、「高精度への訴求」がありました。各種工業や交通手段が発達する中で、「より正確な時計」への需要が高まっていったためです。

機械式ムーブメントでも高精度への試みがなされていましたが、20世紀は、様々な産業で電子化が図られていた時代。トランジスタの発明等、半導体産業の発展が大きく寄与したのでしょう。その潮流は時計業界にも流れ込み、従来の機械式時計に代わる、電子式のムーブメント開発が急速に推進されていきました。

電子式ムーブメントには音叉時計やトランジスタ時計等が研究されていましたが、普及したのはクォーツ式です。

ちなみにクォーツ(水晶)が電圧印加によって振動する、と言う性質が発見されたのは19世紀後半です。フランスの物理学者兄弟ジャック・キュリーとピエール・キュリーによる仕事です。その後1927年、アメリカの研究者マリソンらによって腕時計への応用が始められました。

とは言え腕時計サイズへの小型化の難易度が高く、各社がクォーツ式時計の開発・製品化に難航します。この先陣を切って世界で初めて「アストロン」としてクォーツ式腕時計を市販化したのが、わが国が誇るセイコーです。1969年のことでした。

セイコー  クォーツ

※1969年に発表されたセイコー アストロン。後にクォーツ式腕時計は低価格帯が魅力の一つになりますが、初代アストロンはゴールド製で、小型自動車並みの高価格帯でした。

余談ですが、日本は欧州や米国と比べると時計産業が開花したのは歴史的に見てかなり後年でした。また、明治初期頃までは時間にルーズで、お雇い外国人を嘆息させたとか。そんな日本から「高精度の時計」の歩みが始まったかと思うと、感慨深いものがありますね。

 

機械式に比べて圧倒的に高精度なクォーツ式ムーブメント。さらに人工水晶が量産化されていたことも相まって、安価かつ高精度なクォーツ式腕時計が世界を席捲することとなりました。

1970年代に入ると「新たなるムーブメント」への訴求はますます加速していき、1973年にはセイコーが世界初6桁表示のデジタル式腕時計を、1974年にはカシオが世界初オートカレンダー搭載「カシオトロン」を、1976年にはシチズンがやはり世界初となる太陽電池充電式のアナログクォーツ腕時計を商品化しました(ちなみにG-SHOCKが誕生したのは1983年です)。

 

一方の機械式時計は、当時のスイス時計業界の不振も相まって、一時衰退します。この時代をクォーツショックなどと呼ぶこともあります。

しかしながら1980年代に入ると時計業界再編により、機械式時計も息を吹き返します。これまで旧態依然としていたスイス時計産業でもオートメーション技術を導入したり、新しい時計企業グループが誕生したりと、生まれ変わっていきます。

「機械式ムーブメントの趣味性」「伝統」「複雑さ」等の特性を活かしたブランディングも功を奏し、現在では機械式ムーブメントも、クォーツ式ムーブメントも、時計業界にとって欠かせない存在です。伝統的なプロダクトが新時代のプロダクトに呑まれた後、巻き返してシェアを獲得するというのは、時計以外ではなかなか見られませんよね。

 

つまり時計を手にするということは、これまでのムーブメント製造や市場でのポジショニングの歴史を楽しむということです。

 

ちなみに「歴史」は歩みを止めていません。

今なお機械式・クォーツ式ともにムーブメントテクノロジーは進化し続けており、各社がより高精度で、より高性能な開発を展開しています。一方で昔ながらの機械式ムーブメントをより美しく精巧に「魅せる」技術も負けじと発達を遂げてきました。

せっかく時計を身に着けるのなら、外装のデザインだけでなく、こういったムーブメントに関するウンチクを蓄えておくのも悪くありませんね。

 

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ムーブメントよくある疑問

ムーブメントの解説を読んでいると多くの専門用語が出てきます。

ここではムーブメントに関する、よくある質問をまとめてみました!

 

振動数とは?何を基準に選べば良い?

機械式時計のスペックにはよく「振動数」という言葉が書かれていますが、振動数とは時計の心臓部であるテンプが振動する数を指します。

ムーブメント 振動数

現在の機械式ムーブメントは28,800/時(1秒間に8振動)振動が主流となっており、28,800振動以上のスペックはハイビート、逆に28,800振動未満の振動数はロービートと言われることが多いです。

ロービートのメリットは振動数を抑えることにより、部品の摩耗を防ぎムーブメントを長持ちさせやすい傾向にあることです。ハイビート設計よりも耐久性も高く、故障しにくいと言われています。ただし高精度を出すためには、調整に高度な技術を要するという側面を有しており、主に高価格帯のブランドで取り入れられています。

逆にハイビートのメリットは安定的にビートを刻むことで生まれる高い精度です。振動数が多ければ多いほど細かな時間計測が可能で、かつ精度は安定する為、高精度を訴求する機械にハイビートが多くなります。特にクロノグラフなんかはハイビート機が好まれますね。ただし振動が早い分、部品の摩耗が早くなったり、エネルギーを消費する分パワーリザーブが短くなったりする傾向にあります。

 

もっとも、各社の技術や素材の選定等により、メリット・デメリットは一概には言えません。

「ロービートなのに精度が高いムーブメント」や、「ハイビートなのに耐久性が高いムーブメント」も存在するため、あまり深刻に考えすぎない方がいい気もします。

 

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石数とは?多ければ多いほど高級?

機械式ムーブメントは歯車に軸を通し、「地板」と「ブリッジ」で挟み込むような構造になっています。

時針分針といった各種針は歯車が回転することで動作をしますが、機械内部では歯車が回転する際に軸が摩擦が起こし、少しづつすり減っていきます。

この摩耗を最小限に抑えるために軸を挟む地板と受けの両方に設置されているのが「穴石」であり、そこに入れ込まれるのが石です。

機械式時計 石数

石は正確な軸の動きを長く保つために設置され、現在では人工ルビーが主に配されています。

ルビーはダイヤモンドにつぐ硬度を誇る宝石であり、古くから機械式ムーブメントの石として使われてきました。

軸以外にも磨耗しやすいアンクルの爪にも使われ、一般的には石数が多いほど耐久性が高いムーブメントだといえます。(昨今は少ない石数で十分な耐久性を持つムーブメントも多いです。)

ちなみに、かつては石数が多ければ多いほど高級機の象徴として扱われてきましたが、現在は素材や加工精度の向上から、この限りではありません(ただしルビーをデザインコードとして美しく魅せるのは、やはり高級機の醍醐味だと思います)。

 

マニュファクチュールとは?

ムーブメントに関する時計用語としてマニュファクチュールという言葉があります。

様々な扱われ方がなされていますが、一般的にはムーブメントを自社製造する生産体制を指しています。そのため自社一貫生産などといった説明も同時になされますね。

なお、ヒゲゼンマイなどといったパーツの製造から行えるブランドを、リアル・マニュファクチュールなどと区別して呼ぶこともあります。

 

時計のムーブメントを分業制で製造してきた時計業界において、全てを自社製造することができるブランドはごく僅かしかありません。

有名どころとしてはロレックス、パテックフィリップ、ランゲ&ゾーネ、セイコーなど。いずれも圧倒的な技術力を誇る名門ブランドばかりです。

マニュファクチュールはブランドの一つの付加価値となっており、「完全自社製」ではなくとも、自社のハイエンド商品に関してはマニュファクチュールムーブメントを採用している、というメーカーもあります。

ランゲ&ゾーネ ヒゲゼンマイ

出典:https://www.alange-soehne.com

なお、ムーブメント製造メーカーからエボーシュ(未完成ムーブメント)を仕入れ、組み上げるメーカーのことをエタブリスールと呼びます。

エタブリスールはムーブメントや部品を外部提供に頼り、時計の設計や文字盤デザインは自社で行うスタイルです。

 

マニュファクチュールが良いのか?エタブリスールが良いのか?に、答えはないと思っています。

例えばマニュファクチュールはブランドの高い技術力の象徴のような面があり、実際高度な設計や製造技術、あるいは独自の品質規格のもと、オリジナリティあるプロダクトを製造できるメリットがあります。一方で高価格帯になりがちであったり、メンテナンスも正規でのみ行えるなどといった側面を持ちます。

エタブリスールは比較的リーズナブル・どこでもメンテナンスが受けやすい等のメリットを有しますが、デザインの制約を受けやすいなどといった側面もあります。

なお、高価格帯のブランドはエタブリスールであっても、自社でモデファイしたり高度な仕上げを施すことが多いです。

 

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ヒゲゼンマイとは?

ヒゲゼンマイは時計の心臓部であるテンプを構成するパーツの一つであり、伸縮を繰り返すことにより、正確な時間を刻む役割を持っています。

ロレックス ヒゲゼンマイ

出典:https://www.rolex.com/ja/watches/rolex-watchmaking/new-calibre-3255.html

ヒゲゼンマイはテンプと呼ばれるパーツの中心部に備えられ、ヒゲゼンマイの先端にある”ヒゲ持ち”と、中心の円柱金属にはめられた”ヒゲ玉”を支点として伸縮を繰り返します。ヒゲゼンマイが伸縮をすると、テンプは車輪のように左右に回転運動をはじめ、他の歯車やパーツに1秒間に1回針を進めさせる振動を与えます。

この振動こそが、時計の精度に繋がるわけです。

ヒゲゼンマイ

なお、現在普及しているスイス製機械式ムーブメントの大半は「ニヴァロックス・ファー社」というヒゲゼンマイ製造専門メーカーの部品が使われています。

現在のスイス時計業界において、ニヴァロックスヒゲゼンマイの供給率は90%以上といわれ、オメガ・ブライトリング・タグホイヤー等といった有名ブランドの時計にもニヴァロックスヒゲゼンマイが採用されてきました。

 

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シースルーバックとソリッドバックはどっちがお勧め?

シースルーバックは「裏スケルトン」「トランスパレントバック」とも呼ばれるガラス張りの裏蓋のことです。

サファイアガラスをあしらうことで、ムーブメントの美しさを視覚的に楽しめるようになっています。

対してソリッドバックはステンレスやゴールドで作られた堅牢性のある裏蓋です。シースルーバック以外の裏蓋は広義でソリッドバックと呼ばれ、ムーブメントの動きを楽しむことはできませんが、高い防水性と耐久性を持ち合わせます。

機械式時計 シースルーバック

↑シースルーバック

機械式時計 ソリッドバック

↑ソリッドバック

どちらがお勧めかとよく質問されますが、「時計に何を求めるか」で選択は変わってくるのではないでしょうか。

例えば機械が好きで、その動きを逐一楽しみたいという方はシースルーバックがお勧めです。何なら、文字盤もスケルトナイズされたモデルを選んでも良いかもしれません。

ブレゲ トラディション

一方でアクティブに時計を活用していきたい方は耐久性の高いソリッドバックが良いでしょう。実際、きわめて高い防水性を誇るダイバーズウォッチなどは、ソリッドバックがほとんどです。

ちなみに、「シースルーバックの方が耐久性や耐磁性に劣る」と言われますが、前述したダイバーズウォッチなどのスポーツ下での使用を除き、これはモデルに依るものです。ただし現在ガラスに用いられるサファイアクリスタルは一点に強い衝撃がかかると割れるため、その点ではソリッドバックの方が安心感はあるかもしれません(そもそも、そのような衝撃を加えることは、どんな時計でもお勧めできませんが)。

 

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知っておきたい偉大なムーブメント

機械式ムーブメントには大きく歴史を塗り替えた偉大なムーブメントが数多く存在します。

特に世界最大のムーブメント製造メーカーETA、「ETA2010年問題後」にETAの代替メーカーとして注目されるようになったセリタ社のムーブメントはあらゆるブランドのベースムーブメントとして活躍中です。

 

ETA7750

ETA7750 ムーブメント

出典:https://www.eta.ch

ETA社に吸収合併されたバルジュー社が1974年に開発したムーブメントETA7750。

クロノグラフムーブメントの歴史を大きく変えた名機であり、高い精度、安定性、改良のしやすさが人気を博しました。

大量に生産されていたためパーツの流通が多く、メンテナンス性や拡張性に関しても優れています。

現在でも100万以下のモデルを中心に幅広く使用されており、ブライトリングやタグホイヤーといった有名ブランドのクロノグラフにも採用されています。

 

ちなみに前述した「ETA2020 年 問題」ですが、これはスウォッチグループが、「2010年よりETA社製ムーブメントは、段階的にグループ外への出荷を制限する」と発表した時計業界の事件です。2002年のことでした。

そう、まさに「事件」と称するにふさわしいでしょう。ETAを傘下に収めるスウォッチグループの言い分としては、「ETA社製ムーブメントの価値を守るため」。

一方であまりにもETA製ムーブメントに頼っていたメーカーは多く、スイス連邦競売政策委員会(COMCO)が裁定に入ったこともあり、当初2006年からの供給停止が2010年、次いで2020年へと延期された問題です。

いかにETA社製ムーブメントが時計業界で大きな役割を担っているかが、垣間見える一幕ですね。

 

ETA 2892

2892a2

出典:https://www.eta.ch

シンプルな3針ムーブメントで使用され、幾度の名作に搭載されてきた名機ETA2892。

クロノメーターレベルの高精度が魅力で、チューンナップしやすい構造も特徴となっています。

ベーシックなETA2824-2と主に上級モデルで使用されているETA2892A2の2種類が存在し、ETA2824-2はパワーリザーブ約38時間、ETA2892A2はパワーリザーブ約42時間のスペックを誇ります。

なお、ETA2892A2は薄型タイプムーブメントとしても名を馳せており、オメガシーマスターといった人気シリーズにも採用されました。

 

ETA 2824

ETA2824

出典:https://www.damasko-watches.com/en/

ETAを代表する、もうひとつの3針ムーブメント。それがETA2824です。

3針ムーブメントとしては標準グレードにあたり、ETA2892系よりもムーブメントに厚みがあります。

ただ、トルク力や精度の安定性に関しては絶大な支持を集めており、「チューダー サブマリーナ 」「ロンジン レジェンドダイバー」「ハミルトン カーキフィールド」といった人気モデルでも使われた歴史を有します。

センター秒針、日付表示、自動巻機能(両方向巻上げ)といった基本機能を持ち、パワーリザーブ は42時間です。

 

SW200

出典:https://www.ablogtowatch.com/

前述した、「ETA社が2010年より段階的にスウォッチグループ外への出荷を制限すること」と発表したETA2010年問題をきっかけに、ETA社製品を使えなくなったブランドの中にはセリタ社のムーブメントをベースとするようになったところも少なくありません。

このSW200はセリタ社が現在最も多く製造している低価格モデル用のムーブメントであり、ETAムーブメントのETA2824に相当する性能をもちます。

開発当初は荒が目立ちましたが、現在は性能が格段に向上し、評価も高まっています。

 

SW300

セリタ SW300

出典:https://www.calibre11.com/

セリタ社が製造する3針ムーブメントの中で上位機種に当たるのがSW300。

ETA社の2892の代替ムーブメントとして開発され、こちらもクロノメーターレベルの高精度を持ちます。

ETA2892A2よりもルビーを4石増やしたことにより安定性が向上しており、カスタマイズ性能も申し分ありません。

ムーブメント装飾がシンプルになっていますが、その分手を加えることで個性を出しやすくなっています。

 

SW500

セリタ SW500

出典:https://www.calibre11.com/

あらゆる名機に採用されたETA7750の代替品として開発された「SW500」は汎用クロノグラフムーブメントとして絶大な支持を集めています。

ETAムーブメントと互換性のある「ジェネリックムーブメント」として作られましたが、スペックにおいて本家とそん色ありません。

パーツの細部まで作り込まれており、耐久度や精度、メンテナンス性は抜群です。

パワーリザーブ関してもETA7750よりも4時間ほど長く、現在はスウォッチグループ以外の企業で重宝されています。

有名どころとしてはドイツの一流ブランド「ジン」などに採用されています。

 

エルプリメロ

エル・プリメロ キャリバー 3019 PHC

出典:https://www.zenith-watches.com/jp_jp/movements

ゼニス社によって開発されたエルプリメロは36,000振動のハイビートに0.1秒まで計測可能な高性能クロノグラフ機能を備えた自動巻きクロノグラフムーブメントです。 「最初」と「最高」という意味を持つ「エルプリメロ」は時計の歴史の中でも革新的なムーブメントとなりました。

当時(現在も)の機械式ムーブメントは28,800振動が基準でしたが、エルプリメロはそれを大きく上回る36,000振動(1秒間に10振動)という数字をたたき出し、時計界の常識を大きく覆した功績を持ちます。

5桁リファレンスのロレックス デイトナ”Ref.16520″に搭載されたことで話題を生み、現在もハイビートムーブメントの雄として人気を博し続けています。

 

まとめ

ムーブメントは時計の命です。

精度や信頼性・機構の美しさ・対磁性能やパワーリザーブなど、時計の機能は全て「ムーブメント」に集約されます。

今回紹介したムーブメントは数ある名機のごく一部に過ぎず、広い時計業界を見渡せば、まだまだ無数の名機が存在します。

デザインだけでなくムーブメントの良さを味わうのも時計の楽しみ方なので、ぜひ時計の中身についても興味を持ってみてください。

 

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この記事を監修してくれた時計博士

廣島浩二(ひろしま こうじ)

(一社)日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチ コーディネーター
一級時計修理技能士 平成31年取得
高級時計専門店GINZA RASIN 販売部門 ロジスティクス事業部 メンテナンス課 主任

1981年生まれ 岡山県出身 20歳から地方百貨店で時計・宝飾サロンで勤務し高級時計の販売に携わる。 25歳の時時計修理技師を目指し上京。専門学校で基礎技術を学び卒業後修理の道に進む。 2012年9月より更なる技術の向上を求めGINZA RASINに入社する。時計業界歴19年

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